三浦綾子 電子全集 この土の器をも ―道ありき 第二部 結婚編
三浦綾子(著)
/三浦綾子 電子全集
作品情報
愛を持続させることはいかに大切であるか――。新婚生活から新聞懸賞小説に入選するまでを綴った自伝的小説。
37歳で結婚し、綾子の実家に近い一間だけの小さな新居で始まった結婚生活。新聞社の1,000万円懸賞小説に『氷点』を投稿し、入選するまでの愛と信仰の日々を描く。「大きな愛」に包まれた「小さな家」には、さまざまな人が立ちあらわれる。また日常生活の中で、人を信じる、愛することの重要性を説く。
「道ありき 青春編」の続編。
「三浦綾子電子全集」付録として、週刊新潮1999年10月28日号の記事「墓碑銘・作家、三浦綾子さんの苦難を支えた信仰と夫の愛」を引用収録!
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商品情報
- 著者
- 三浦綾子
- 出版社
- 小学館
- 掲載誌・レーベル
- 三浦綾子 電子全集
- 書籍発売日
- 2003.04.01
- Reader Store発売日
- 2012.11.22
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 275ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (30件のレビュー)
-
三浦綾子氏の自叙伝三部作の第二部。本作品は処女作『氷点』が朝日新聞小説の大賞を受賞するまでを描き、主に三浦綾子氏と夫である光世氏との旭川での生活が描かれている。
信仰に生きて穏やかに慎ましやかに日々…を送る2人の姿が印象的だ。夫婦とも長く病に臥しており光世氏35歳、綾子氏37歳での晩婚であったが、ゆえに平穏な日常に感謝する姿が意味合いを帯びてくる。綾子氏自身はとても社交的で自身で雑貨店を開業し成功させる当時の女性像とは一線を画すほど活動的な方であったようだが、13年という病そして大切な人々との別れと聖書との出会いが「生きる」ことの真剣さを綾子氏にもたらしたのであろう。光世氏が度々語る「神が与えてくれる」という言葉、真摯に人生と向き合う大切さを教えてくれる。続きを読む投稿日:2020.08.09
第一部から第三部と3冊の文庫本が在る。その中の第二部である。少し前に第一部を読了していて、「続き」に相当する部分も多い訳で、興味深かった。
美瑛を訪ねた際に、十勝岳の噴火災害の経過ということで話題にな…る小説の『泥流地帯』を手にしてみて、三浦綾子作品に関心を抱くようになった。何作かに触れた中、その来し方を綴った内容の『道ありき』が佳かったとする知人の感想を聞き、比較的短い期間で本作に触れる機会を設けてみた。『泥流地帯』について聞いてから手にする迄にはかなりの時日を要したと思うが、『道ありき』については何時迄も放置せずに、聞いてから然程の時日を経ずに手にしたのだった。
『道ありき』は、三浦綾子の自伝と言われている。が、作品を読む中では「小説を発表し、作品が好評を博して名を成した主人公が、御自身の来し方を振り返っている物語」という「純粋な小説」というような感も抱く。そういう雰囲気が好いように思った。
第一部では、戦前に就いていた小学校教員の仕事から退いた戦後に病を得てしまい、婚約を破棄して療養生活に入り、そうした中での様々な出会いを経験して来た様子が綴られる。そして障害の伴侶となる三浦光世と出会い、「病気がよくなったら…」と申し出を受け、何年も経って結婚をした。
この第二部では、結婚をした後の暮らし振りと、「小説家 三浦綾子」が世に出る契機となった『氷点』を綴って新聞社の懸賞に応募し、入選する迄の時期を振り返っている。
長く療養生活の中に在って、外を歩き廻っていないので、外に出れば眼に留まったモノに一つずつ感銘を受けて「あれ!」と感嘆して、傍らの「ミコさん」に話し掛ける綾子である。その「傍らに話し掛ける人が在る」ということの「歓び」が溢れている様子が凄く強く感じられた。
現代の言い方では「1K」というような感じになると思うが、1部屋に台所や御手洗が在るという小さな家に三浦夫妻は暮らし始める。そういう中で、以前から縁や交流の在った人達との間で、新たに出会った人達との間で色々な出来事が重ねられる。やがて家主の都合も在って、夫妻は移転を余儀なくされる。そして色々と経過が在って、思い切って小さな家を建て、綾子は家で雑貨店を営むようになって行った。
そういうような経過が、夫妻が詠んだ短歌も交えながら綴られる。三浦綾子は短歌の同人誌に参加して作品を発表するようなことは続けていた。そして雑誌の募集に応じて綴ったエッセイが誌面に掲載されたという経過も在った。が、特段に「文学的履歴」という程のモノは無かった。文学の世界では無名な、客観的に言って「旭川の雑貨店のおばちゃん」という以上でも以下でもなかった。そこから思い立った小説を綴り、「12月31日消印」という締切だったので、その日に郵便局へ走って懸賞に応募した。それが入選した訳だ。
本作を読み進めると、御夫妻や身近な人達の来し方に纏わる挿話が色々と出ていて、「あの作品の、あの人物の設定に反映?」というような内容も在り、そういう「小説作品のバックステージを観る」という面白さも在るかもしれない。
しかし、そういうこと以上に心動かされるのは「御夫妻の生き様」というような事柄だと思う。『道ありき』という題名そのものに様々な意味合いは込められていると思うが、自身が感じるのは御夫妻が生きる“道”を見出して、歩んで来た“道”の途中で少し振り返っているというような様子だ。長い病気療養を経て、何事にもとにかく熱心な綾子と、彼女を包み込むように傍らに在る光世の御夫妻、互いに「傍らに話し掛ける人が在る」ということを「生きる歓び」のようにしている生き様と感じられた。
出会い、紐解くことが叶って善かったと強く感じた作品であった。広く御薦めしたい。続きを読む投稿日:2023.12.06
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