祈る時はいつもひとり(上)
白川道(著)
/幻冬舎文庫
作品情報
バブル崩壊前、今や伝説となった仕手株「風」を動かしていた三人の男達がいた。一人は謎の死を遂げ、一人は十億の金とともに失踪した。残された茂木彬は失意の日々を過ごしていたが、純子という美女の来訪を機に立ち上がる。だが、それと同時に暴力団、香港黒社会、大物右翼の影がちらつき始める。魑魅魍魎を敵に回して、茂木は真相に迫れるのか?
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商品情報
- シリーズ
- 祈る時はいつもひとり
- 著者
- 白川道
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 幻冬舎
- 掲載誌・レーベル
- 幻冬舎文庫
- 書籍発売日
- 2012.04.09
- Reader Store発売日
- 2012.07.27
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- シリーズ情報
- 既刊3巻
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この作品のレビュー
平均 3.8 (5件のレビュー)
-
これぞ白川道を思わせる全部ありな作品
1000ページを優に超える大河は睡眠を妨げ、ちょっとした疲労感と興奮の後味だけを残している。ハードボイルド、経済小説、恋愛、友情などカテゴリーやラベルは全く意味がなく、単に白川道作品ですべての説明がつ…く。大幅に加筆、修正がされたとはいえ、今から15年以上前に書かれたことを考えると彼の代表作でもある『天国への階段』以前の作品になる。
読みながら次第に興奮している自分自身とは別にもう一人の冷静な自分がいて、どこかで藤原伊織と比べていた。雑誌連載のタイミングを藤原作品に置き換えてみると、『テロリストのパラソル』と『てのひらの闇』の間になる(実際にはその間に別の作品もあるが)。ここでこの2つを出したのは意味があり、部分的に似たようなところがあるからだ。本書『祈る時はいつもひとり』の主人公 茂木はどこか『てのひらの闇』の堀江を思わせる。茂木は空手、堀江は剣道の腕が立つという設定だけではなく、一般社会との距離感、思想、芯の強さや純粋さがどこか二人をダブらせる。
しかし二人の文章は似て非なるものである。白川の文章は文章の中に緻密な描写と心の動きを紡ぎながら展開し、セリフはかなり考えられたセリフ(ウィットがあり、かなり気障な部分が多い)で構成される一方、藤原の文章は緻密というよりも精密な描写の上に登場人物の色づけはすべてセリフで行う、という手法だ。どちらが良い悪いではなく、作品に求めるものが違うのだろう。ただし、共通するのは筆が立つだけではなく、相当な準備とプロットを重ねて書かれていると思われる。
少しだけ中身に触れておくと、東京・青山で「茂木リサーチ」という調査会社を一人で営む主人公の茂木はかつて「風」と呼ばれる仕手グループの一端を担っていた。が、5年前に中心人物・尾形が事故で亡くなり、同時に相場を担当していた大学時代からの友人・瀬口が巨額の金と一緒に失踪してしまった。茂木はほとんど仕事をせず、瀬口の消息を掴むことだけに没頭していた。尾形の5回目の命日を境にいろいろな「風」が動き出す。調査という「相場」にはこれまで付き合いのあったヤクザだけではなく、政治を陰で操る黒幕、香港返還を機に触手を伸ばそうとする中国の組織と大物の役者が次々と登場する。次第に調査は命がけのものになる。
展開は予想を裏切り続け、最後までわからない。おそらくこの結末は誰も予想し得ないだろう。
『天国への階段』や『終着駅』、『最も遠い銀河』に比べると初期の白川作品にあった緊張感と「粋」なセリフに読みながら思わずニヤけてしまうだろう。
そういえば、作品に登場するオールドパーは当時とデザインが違うんだよなあ。変わらないのはピースの香りだけかな。続きを読む投稿日:2013.09.27
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やはりハードボイルド・・・上巻では主人公・茂木の魅力が今ひとつだが。
氏の代表作と言える天国への階段・最も遠い銀河(この二作は設定があまりにも似すぎているが)と比較すると、上巻の最初から登場人物が多々出てくる。登場人物全体を把握しきれないうちに中巻に突入することになった…。一方で、“株式の仕手線”や“香港返還を目前にしての華僑の動き”など虚々実々の不気味な動きが見えてくる。これはこれで面白く読める。それにしても、主人公・茂木と純子の接近があまりにも早くないかな。全体としてハードボイルド調を貫いているが、この部分だけ妙に違和感を感じる。それはさておき中巻へ。続きを読む
投稿日:2017.03.20
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