精神の危機 他15篇
ポール・ヴァレリー(著)
,恒川邦夫(訳)
/岩波文庫
作品情報
第一次世界大戦後「精神の危機」を書いたポール・ヴァレリーは、西欧の没落に警鐘を鳴らし、人間における〈精神〉の意味を根本的に問い直した。先端技術の開発にしのぎをけずり、グローバル化する市場経済の盲点を逸早く洞察し、「歴史」の見方に改変をせまった数々の論考は、二十一世紀の現代に通じる示唆に富んでいる。
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商品情報
- シリーズ
- 精神の危機 他15篇
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波文庫
- 書籍発売日
- 2010.05.14
- Reader Store発売日
- 2012.04.27
- ファイルサイズ
- 2MB
- ページ数
- 518ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (6件のレビュー)
-
岩波文庫
ポール ヴァレリー 「 精神の危機 」精神に関する論文や講演録
表題「精神の危機」は ヨーロッパの精神が アメリカやアジアに移転することにより、先に 大国化したヨーロッパが 相対的…に 衰退することを危惧した論文。
表題の精神の意味は、技術開発や植民地政策により先に大国化したヨーロッパの資本主義システムや利益に限定している
表題以外の論文については、精神という言葉に 知性、主義、文明、言葉と結びつけて価値を見出しており、かなり多様な意味を持たせている。精神に主体性があり、普通に読んでも 精神が何たるかわからない
*精神は 過去の中から重要なものを探り出したり、新しいシステムを構築する
*精神は 反省し、存在条件を考え、徳性、権能、財産を脅かす危険を考える
*精神は 群れ集うことを嫌悪し、離散、異議、差別は、精神にとって活力の証
*精神は、問題を解決するための変形力〜反射や記憶、習慣では問題が解決しないと 精神が登場する
*精神は、我々をとてつもない冒険に誘いこむ など
精神の危機
序文「我々文明なるものは、今や、すべて滅びる運命にあることを知っている」
「ヨーロッパは〜アジア大陸の小さな岬の一つになってしまうのか〜地球の貴重な部分、巨大な体軀の頭脳
として、とどまり得るのか」
「ヨーロッパ精神が支配するところには、必ず、最大限の欲求、最大限の作業、最大限の資本、最大限の野心、最大限の勢力、最大限の外的自然の変形、最大限の関係及び交換が出現する。この最大限の集合がヨーロッパ」
方法的制覇
「大国の仲間入りをする国〜古くからの大国が何世紀もかけて築いたものを駆け足で模倣し〜自らを組織する〜ドイツ、イタリア、日本」
精神の政策
「精神は、あるときは 過去の中に〜重要なものを探り出し、保存しようとする。別のときは すべてをご破算にして、人間世界の新しいシステムを構築しようとする」
「精神は自分自身について反省し、自分の存在条件を考え、自分の徳性、権能、財産を脅かす危険について考える」
「精神は群れ集うことを嫌悪し、他の精神と衝突することで何かを得る〜離散、異議、差別は、精神にとって活力の証」
精神連盟についての手紙
「精神とは、生体の自動反応では解決しようのない問題を解決する変形力〜反射や記憶、習慣では問題が解決しないことが分かると、精神が登場して、切ったり、貼ったり、変化させ、想像上のテストを繰り返し、自由をよそおい〜」
知性の決算書
「私たちは存在の奥深いところにある本質的な静けさ、かけがえのない忘我の感覚を失ってしまった〜その静けさ、忘我の時間こそ、生命の最も繊細な要素がリフレッシュされ、力が回復され〜精神を本来の自由に返す空白状態である」
精神の自由
「精神とは、その冒険に瞬間的な方向づけ、刺激、推進力を与えるとともに、行動に必要な口実と幻想のすべてを与える」
「地中海〜精神の自由および精神そのものが最も発展した地域で、同時に交易も発展した」
「精神は、我々の内部にある一つの力だが、我々をとてつもない冒険に誘いこみ、その結果、人類は生命の正常な初期条件の一切から遠く離れてしまった」
「精神の自由のないところでは、文化も衰退する」
精神の戦時経済
「知識は自由な精神においてしか増大しえない。自由な精神とは、始めから自分に厳しい制約を課す強さを持つ」
ペタン元師の謝辞に対する答辞
「どうか誰も新たな戦争が人類の運命をよりよくし、和らげることができるなどと思わないで下さい」
続きを読む投稿日:2023.06.02
ヴァレリーによる文明論的な論考集。要するに急速に近代化されていく社会に警鐘を鳴らしてるわけだけど、1世紀近くも前の著作とは思えないほど現代に通じる。近代化を駆動するのはグローバル化、新興国の成長、科学…技術の発展で、この論点整理もそこから見えてくる問題点も驚くほど現代的。もちろん100年前と今とでは個々の要素は大きく違うけど、それでも問題意識それ自体はまだまだ現役だと思う。
面白かったのが、ドイツの台頭を考察した「方法的制覇」。最近の欧州でのドイツの独り勝ち状態と状況的によく似ている。特に、ドイツの強さをその"方法"に見出す主張は、インダストリー4.0なんてものがドイツから登場した背景を読み解くヒントになりそう。続きを読む投稿日:2016.03.06
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