罪と罰 中
ドストエフスキー(作)
,江川卓(訳)
/岩波文庫
この作品のレビュー
平均 3.9 (35件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
上巻の冗長さが嘘のように、中巻以降は山場につぐ山場である。息もつかせぬ展開と言ってもあながち過言ではなく、いよいよ作者の本領発揮という感じだ。
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中巻の見どころは、主人公ラスコーリニコフと予審判事ポルフィーリイの2度にわたる対決と、ラスコーリニコフとソーニャの密会である。中でも、ラスコーリニコフとポルフィーリイの初回の対決は際立ってエキサイティングだ。推理小説ばりの心理戦が展開されるだけなく、ここで初めて主人公の思想の全容が明らかになるからだ。上巻でちらりと示されたテーマが、さらに過激な形をとって再び読者に提示される。
すなわち、人間は「凡人」と「非凡人」に大別される。凡人は従来の思想の枠組みを越えることができず、既定の法に従うしかない人間である。一方、非凡人は新しい思想を創り、新しい法を制定することのできる稀有な人間である。よって非凡人は、その新しい思想が人類の進歩に繋がるなら、より良き未来のために既定の法を踏み越える権利を持つ。実際、ナポレオンなどの革命家たちは目的のためには流血も辞さない犯罪者だったが、同世代の大衆にとっては犯罪者でも、次世代の大衆は彼らを崇拝するようになる。ゆえに非凡人が思想の実現のため、未来の人類のために流血が必要だと判断した場合には、彼らは自分の良心に照らして、その許可を自分に与えることができる。(p141-155)
これに対する私の見解は置いておく。ただ私はこの説を否定したい、とだけ記しておく。ともあれ、このような思想的議論が、あくまで殺人犯と探偵との心理的駆け引きという体裁を崩さずに進行してゆくのだから、何とも心憎い演出だと思う。
この後、ラスコーリニコフはソーニャの家を訪れる。先の頭脳戦から一転して、こちらはスピリチュアルな熱狂に満ちたシーンである。不幸のどん底に落とされながらも信仰によってかろうじて正気を保っているソーニャに対し、ラスコーリニコフは「神なんかいない」とうそぶいてサディスティックな愉悦に浸ったかと思うと、いきなりひざまずいて彼女の足に接吻し、「ぼくはきみにひざまずいたんじゃない。人類のすべての苦悩の前にひざまずいたんだ」という有名な科白を口にする。そして、罪びと同士ともに行こうとソーニャを誘惑するのだ。
これはあまりに観念的というかほとんど誇大妄想であり、とても求愛とは呼べないものだろう。しかし、どこか「聖女を誘惑する堕天使」という構図を思わせる光景であり、主人公の勢いに気圧されて、こちらまでついファナティックな陶酔に浸ってしまう。ちなみにソーニャは金髪碧眼の美少女、ラスコーリニコフは栗色の髪に黒目の美男子という設定だから、ビジュアル的にもほぼ完璧である。
さらにこの後、再びポルフィーリイとの論戦が行われ、きわどい所まで追い詰められるが、偶然のアクシデントにより両者引き分けに終わる。そして「戦いはこれからだ」と主人公が自虐的な決意をかためるところで中巻は終わる。
この濃厚なメイン・ストーリーのほかに、主人公の妹ドゥーニャに恋する3人の男達(熱血漢ラズミーヒン、功利主義者ルージン、虚無主義者スヴィドリガイロフ)の物語も同時進行してゆく。中巻だけで3~4冊の本を読んだような酩酊感を読者に与えながら、物語は失速することなく、一気に下巻へとなだれ込む。投稿日:2012.02.01
上巻よりも動きは少なめだが、しっかり読書を惹きつける展開が用意されている。
今のところ主人公が1、2を争う嫌なやつだが、まあ人間ってこんなものかもしれない。投稿日:2024.02.11
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