死の猟犬
アガサ・クリスティー(著)
,小倉多加志(訳)
/クリスティー文庫
作品情報
ベルギーの小さな村に侵入したドイツ兵士を原因不明の爆発で吹き飛ばしたのは、村で聖女と評判の修道女であった。超人的な行為を起こした彼女は、やがて「死の猟犬」という奇妙な話を始める・・・・・・。超自然現象とそれに絡む犯罪を描いた短篇集。
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商品情報
- シリーズ
- 死の猟犬
- 著者
- アガサ・クリスティー, 小倉多加志
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- クリスティー文庫
- 書籍発売日
- 2004.02.15
- Reader Store発売日
- 2012.02.17
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 464ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (23件のレビュー)
-
12話が収録された、短編集です。
戯曲にもなった法廷ミステリの「検察側の証人」以外は、いわゆる"怪奇譚”で、オカルトやサイコサスペンスばかりなので、ミステリ目当てで読むと、あてが外れるかもです。
私は…、このちょいと不気味な雰囲気を堪能しつつ読みました。
心霊的な描写が多く、日本語訳が難しかっただろうと、お察ししますが、時々読んでて「?」となる部分がありました。
特に「死の猟犬」は、正直内容がよくわかりませんでしたね(苦笑)。
この話が表題作で、しかもトップバッターなのは、短編集の構成としてどうなんだろう、と余計な事を思った次第です。
本書唯一のミステリ「検察側の証人」は普通に面白くて、ラストの一文に「!!」となりました。続きを読む投稿日:2021.01.29
クリスティの短編集。
幻想、怪奇小説が集まった作品。クリスティはミステリ、恋愛のイメージが強かったが、今作では新しいクリスティ像が見られる様な気がする。今作は過去に読んだ事が無く初めて読む事になる。
…
死の猟犬
表題作。友人の話からイギリスの田舎に住む姉を訪れ、戦争時代に謎の爆発現象にてドイツ兵を吹き飛ばした修道女の行方を聞く。彼女を匿う医者と彼らの元に起きる事件。それぞれに現れる「猟犬」の痕。幻想怪奇にまつわる作品ではあるが、未来予知と死の猟犬については「不思議」と思うしかないのだろう。
赤信号
サスペンスミステリー。短い作品だが出来は良く面白い。テーマは予感、直感。主人公が親友の妻に恋してしまい、叔父から警告され、更には医師である叔父が彼等の家に招待を受けた理由が医師としての考えからで、殺人狂の症状が見える為監禁しなければという提案(この時点では女性の方がと思ったが)に、主人公は反発する。その後、主人公が帰宅すると家から身に覚えのないリボルバーがみつかり、同時に警察もやってきて、叔父が殺害されたと知る。主人公が感じていた危険な予感。結末もしっかりしており面白い。
第四の男
多重人格の女性の話。医者、弁護士、牧師が列車の中、過去にあった多重人格者の研究見解について議論している。その議論の中に多重人格者フェリシーを知る男性が参加し、アネットという女性を含めた彼ら3名の関係を語り出す。最後、少しミステリアスに閉じているのが印象的だ。
ジプシー
ジプシーについてのイメージは難しいが、クリスティ作品ではテーマにされる事も多くイギリスやヨーロッパでの彼らの歴史はとても興味をそそられる。婚約を破棄した友人と謎の女性。助言に従わず手術を受けた友人は死んでしまい、謎の女性も亡くなってしまう。事件の詳細を推察することは可能だが、「不思議」で捉えていた方が面白い作品だ。
ランプ
ホラーの印象が強い作品。中々買い手が見つからない屋敷。幽霊を信じない女。屋敷に住む様になり、旦那やお手伝いさんは子供のすすり泣く様な声を聞く。やがて、息子の具合が酷くなり女にも子供のすすり泣きぐ聞こえる様になり。短く完結。わかりやすいホラー作品だ。
ラジオ
因果応報とはこの事だろう。老婦人は決して真相を知らなかったと思うが、メイドへ渡した金額等実は何かを勘ぐっていた可能性はある。少なからず結末は日本の昔話の様に悪い事をすれば悪い事が起きるという教訓ににている。近く殺人の痕跡も発見される事だろう。
検察側の証人
この作品は戯曲化され、映画化され、ドラマ化されたクリスティの短編の中でも知られている作品。主人公は弁護士であり、絶体絶命な容疑者を救う為奔走するが、彼にとって不利になる様な証言ばかり、合わせて彼と同居している女性から証言を得ようとするが、彼女も彼を落とし入れる様な証言を持ちだし、弁護士を困らせる。そんな中で謎の夫人から手紙が届き、とある証拠を金で譲ると言われ、弁護士は彼女に会う為、彼女の家を訪れる。そして裁判が始まる。
この作品が人気の理由として、後半の裏切りや怒涛の展開があり、更にはドンデン返しで閉めている事だろう。とても衝撃的な作品で、この一作だけでも抜き出す価値がある物語だ。
青い壺の謎
この作品も面白い。ゴルフ中、助けを求める声が聞こえ周りを探すが何もない。同じ時間、同じ場所で助けを聞くが近くの家の美しい女性はそんな声等聞こえないといい、不審な目で主人公を見る。彼は自身がおかしくなったのかと思いながら同じホテルに泊まる精神科医と知り合い、事の解明に乗り出す。その内、例の女性が現れ、謎の夢を見る様になり、精神科医と協力し、彼女の住む家を調べにいく。最後、こんなに親切な詐欺師がいるのかと思わず笑ってしまった。
アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件
怪奇小説。呪いによってと言っていいのだろうか。ミステリーにおいては魔法や呪いの様な類はタブーになる事が多いが(僕自身は言及があれば認めているが)今作はミステリーでは無い為、問題ないだろう。実際、アーサーを救う手立ては奇跡しか無いわけだが、見事に奇跡的な展開を用いて解決に導くのは流石の物語巧者だ。
翼の呼ぶ声
この男は何故この様な結末になってしまったのか。富や金に対する不安や不信は今も昔も変わらないが、この男の人生はなんとも寂しくて切なく感じてしまう。彼は富む事で満足を得ていたが一方で恐怖感や恐ろしさもあった。不思議な笛を吹く足の無い男。彼との出会いが全ての始まりであり、愉悦感と愚鈍な感覚が彼にのしかかる様になり、恐らく彼は壊れていったのだろう。恐怖感の強い作品だ。
最後の降霊会
ホラー作品。子供を亡くした母親の狂気なわけだが、実際に降霊者の体が半分無くなり、降霊した子供を持ち帰ってしまった母親の罪になる訳だが理論的に説明が出来ない現象がおきる。ラウールの立ち位置は不明で本当にシモーヌを愛していた様だが結末は反するものだ。
S•O•S
周り数キロ何もない所に立つ怪しげな家。そこで暮らしている怪しげな家族。何かが起きようとしている雰囲気。外は嵐。偶々自動車の故障により、助けを求め家を訪れた精神科医。急遽宿泊出来ることになり、感謝しながらも怪しげな雰囲気を持つ家族に興味を持ち始めるが、彼の用意された部屋にS•O•Sの文字がかかれている。
結果として殺人未遂の様相だが、最後この様な判断ではまた何かしらの事件が起きそうだと予測してしまった。
幻想怪奇小説は乱歩以来で期間も空いており読み慣れていない為、充分に理解できていないと思う。幾つか素晴らしい短編作品もあり、気分転換になった作品集だ。続きを読む投稿日:2023.09.08
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