女ざかり
丸谷才一(著)
/文春文庫
作品情報
かつて、こんな小説があったろうか? 南弓子は、大新聞の論説委員。成人した娘がいるが、今は独身で、長年の恋人もいる、美しき女ざかり。書いたコラムが、政府からの圧力をうけ、思いがけず論説委員を追われそうになる。弓子は、恋人の大学教授、友人、家族を総動員して反撃に出るが、はたして功を奏するか? 大新聞と政府と女性論説委員の攻防をつぶさに描き、騒然たる話題を呼んだベストセラー。94年に吉永小百合・主演で映画化。小説の醍醐味をたっぷりと味わえる名作である。
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商品情報
- シリーズ
- 女ざかり
- 著者
- 丸谷才一
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 1996.04.10
- Reader Store発売日
- 2011.11.04
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 443ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (19件のレビュー)
-
「女ざかり」丸谷才一さん。1993年。
#
丸谷才一さんなので、大抵面白いのです。
丸谷さんの小説は、好きになったらもう、全部好き。噺家の語り口みたいなものなので。
1993年ですから、まだワー…プロの時代。携帯電話はありません。
舞台は、朝日新聞社を彷彿とさせる、都内の大新聞社。の、論説委員室。つまり、新聞の「社説」とか「コラム」を書く部署です。
主人公は南弓子。40代後半?くらいなんでしょうか。「女ざかり」。
バツイチのシングルマザー、若い大学生の娘がいます。そして、周囲には中年から老年の、社会的地位のある男たちが群がっている、モテモテ女流記者。
そんな弓子さんが、論説委員となり、健筆をふるいます。
論説委員の中でも、弓子さんに首ったけになる記者もいます。
社会的地位のある大人の恋のさや当て、片想い、口説きの手管。
ところが、弓子さんには人目忍んで長い歳月になる、妻子ある恋人さんがいて...。
さらに、弓子さんが書いた社説が政府の逆鱗に触れて、左遷の危機に...。
そんなドラマがありながら、物語の語り口は悠々自適の余裕を含んで軽やかに進みます。
軽快なオールド・ジャズが流れるウディ・アレンの映画のように、人生の色気、皮肉と偶然を醸し出しながら。
最終的には、血縁のコネから時の総理大臣に面会することで、(というか、偶然に総理の奥さんと出会ったことで)すべての危機は水に流れて目出度し目出度し。
ついでに、娘の恋愛も進展があってめでたし目出度し。
肩の凝らない娯楽。「へえ~」と「ふむふむ」満載の洒脱。逸話と脱線の快楽。
今にして90年代、バブル崩壊直前のふわふわした風俗を、振り返っては納得させる読み応え。
...って、正直手放し絶賛なのですが、実は再読。それも、初読時は新刊で読んだはずなので、僕は21歳の大学生だったはず。
うーん。
正直、全くこの本の滋味豊かな豊饒さが、判ってなかったなあ...と、振り返って自分の背伸びに苦笑してしまいました。
大人になるのも悪くないものです。続きを読む投稿日:2017.06.13
ぼくは本作の美点をいくつも挙げることが出来ます。
まず何と言っても、内容。
舞台となる大手新聞社は、政府の土地を払い下げてもらい、そこへ新社屋を建てる構想を持っています。
ところがこの構想が頓挫してし…まいます。
原因を作ったのは、主人公の美人論説委員・南弓子。
弓子の書いたコラムが政府関係者の逆鱗に触れてしまったのです。
社の上層部は事なきを得ようと、弓子を事業局へと左遷させるべく動きます。
ここから物語が大きく展開します。
弓子は同僚や友人・知人、恋人と伝手を頼り、あの手この手で事態を解決しようと画策します。
結果、どうなるかは言わぬが花でしょう。
ただ、ストーリーは実に起伏に富んで面白い。
優れたエンターテインメント作品と言えましょう。
最後まで読んで、この作品のテーマ(の少なくとも1つ)が「贈与」なのだと感じた次第。
ギブ&テイク。
政府と新聞社との間の土地のやり取りしかり、書き手としても優秀な弓子と、記事のからきし書けない論説委員・浦野の関係しかり、それから弓子と不倫関係にある恋人の豊崎の関係も「贈与」が介在しています。
そして、この関係が崩れた時、必ず「修羅場」が訪れているのです。
何とまあ凝った作りなのでしょう。
それだけじゃありません。
丸谷の博識ぶりが随所に発揮されていて読ませます。
特に哲学方面の知識はすごいと舌を巻くレベル。
しかも丸谷の場合、博識ぶりを披歴しても鼻につくのは稀です。
憲法改正ではなく、「憲法廃止」のくだりも印象に残りました。
それからユーモアね。
弓子が首相を問い詰める場面は愉快で何度も吹き出しました。
実作者としては、油断すると通俗的になりそうな設定なのに、文学的な強度を一貫して保っているのは、さすが丸谷と思いました。
痴話喧嘩も丸谷が書けば、高尚な文学になるんだから、もう逆立ちしたって敵いません。
ただただ脱帽。続きを読む投稿日:2019.09.18
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