この作品のレビュー
平均 3.9 (138件のレビュー)
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一日で読み切ってしまった。
数日かけて読み終えるタイプの読書をするわたしとしてはなんとも珍しい。
夜中にYouTubeで「1200年の祈り 比叡山延暦寺 不滅の法灯」を観ながら、読破してた。
すっっ…っごい乱暴な分類をするけれど、小説の系統って「芥川賞系」と「直木賞系」に分類されると思うんだ。
で、最近の自分の読書傾向は、完全に後者だったんです。前者は、好みが合えば、海でうおおおおおおと叫び出したくなるような、言葉では現しきれないものを、胸の中に残してくれる。合わなければ、理解できないまま物語が終わってしまうこともある。だから、自分の中で「これなら!」という作品でないとなかなか手が出ない。
ちなみにこの作品は「太宰治賞」を受賞しているので、この例にあてはめると「誰だっけ」と、若干混乱する。
津村記久子さんの作品は「ポトスライムの舟」と「この世にたやすい仕事はない」の2作品しか触れたことがなく、「ポトスライムの舟」は全くと言っていいほど覚えてなくて、昔使ってたmixiレビューをふり返っても残ってなかった。悲しい。ただ、「この世に~」の方はちゃんと覚えていて、「直木賞系」の作品だった印象が強い。だから「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞していたにも関わらず、本作品を「直木賞系」の気持ちで読み始めちゃってて、しかし漂う「芥川賞系」の雰囲気に、「すごい、こんな作品も描けるんだ」と勝手に驚いてる自分がいた。もともとは「芥川賞系」の作家さんでした。自分が忘れてるだけでした、すみません。2021年映画化決定、津村さんのデビュー作。
「この世に~」と本作品の2作品には共通点があった。主人公の正義感の強さと、仕事内容だ。
いずれも福祉の仕事が関連していて、津村さんといえばお仕事小説なイメージがあって、だから福祉関係のお仕事をされてたのかな?と思って調べてみたら全然違った。ちなみにわたしが福祉の仕事をしているのでこの2作品はすごく印象に残った。これを想像力で成し遂げるとは。いやはや。
この作品はもともと「マンイーター」というタイトルで太宰治賞を受賞している。
マンイーターは「人食い」を意味する。この作品においての「人食い」とは。
主人公は大学卒業を控えた22歳の処女。いや、童貞の女。
表紙に「だるい日常 その裏に潜む悪意」と記載があって。
しかし、わたしは気付いている。悪意は、常に存在している。
言うなれば「だるい日常 そこに常に存在する悪意」。
悪意なんてどこにでも存在している。でもわたしたちは日常をこなすために、いつもそれを見ないように、感じないようにしている。主人公は、そうじゃない。その悪意に、ちゃんと立ち向かってゆくのだ。
主人公の飾らなさと、気遣いの人でありたいという思いは、その場の空気につぶされそうになって、時に誰かを傷つけてしまうことがある。でもだからこそ、その偽善者たろうとしない彼女の人柄は信用され、人は彼女に話をする。そして、誰かの日常の奥へと入り込み、そこで毅然として悪意へと立ち向かう。それこそが、主人公が持っている正義感だ。「そこまでするか」というこの正義感は、「この世に~」に出てくる主人公も発揮している。
つかみどころのない登場人物たちと、その日常。普段見ないように蓋をしている出来事を、じっと見つめていくような作業。物語を通して、心の奥深くに入ってまさぐられたことが少しだけ久々で、なんとも形容しがたい気持ちになっている。まだこの世界から抜け出せそうにない。
この作品を読んでからずっと、アジカンの「ソラニン」を聞いている。続きを読む投稿日:2020.06.11
何かが起こった後の不穏な空気を孕みながら、本題にふれずにダラダラ進んでいく感じが、どこに向かっていくのかわからず、大丈夫かな、と多少不安になりながらも、ポツポツと挟まれるじめっとしたヒントのようなもの…を頭で繋げながら最後まで一気に読んでしまった。
絡むエピソードがどれも強烈で、主人公の周りに集中して起こるのはドラマが過ぎるけど、現実ではそれぞれの事件は日々起こっていて、私もまたそんなエピソードを持っていて、この物語の登場人物の1人だ。
イノギさんの過去の詳細が回想される場面は不意打ちで、胸に重りが乗ったみたいになった。
自分に対してどこか諦めた態度や、他人への嫉妬心も静観し部外者みたいに分析するホリガイは、若干22歳の若者というより、ミドルエイジみたいだな、と思ったりもしたけど、所々で突然衝動に突き動かされ、彼女曰く、"変"な部分が理性を突き破って面にでる。そんな情熱?を秘めているところに、あぁ、彼女はただ、若者特有の迷いの中にいるのだなと安心した。
彼女の思考には共感する部分が多く、児童福祉に関わろうと思った理由には(自分が児童福祉に興味を持った理由と同じで)とても共感した。
"それはあまりにもつたなく、衝動的なものだったからだ。……それをうまく他の人に説明する自信はまだなかった。その男の子のことを考えるときの、私の心の内は、明らかに標準の大人として不適切だと思われたし、どこか妄想じみてもいた。”
続きを読む投稿日:2024.04.09
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