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カラマーゾフの兄弟〈5〉エピローグ別巻
ドストエフスキー(著)
,亀山郁夫(訳)
/光文社古典新訳文庫
この作品のレビュー
平均 4.1 (118件のレビュー)
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【作品全体(1〜5巻)を通しての感想】
「世の中には二種類の人間がいる。カラマーゾフの兄弟を読破したことのある人と、読破したことない人だ。」と、村上春樹氏が『ペット・サウンズ』という小説のあとがきで…語ったことは、あまりにも有名だ。
正直読了するまでは、「いやいや、村上さん、それはあまりにも誇張しすぎでしょう!」と思いつつ読み始めた。エピローグを読了後にあまりの感動から、その後5巻目の続きの解説を読もうと思うまで、半日ほど掛かってしまった。小説を読了後に、半日も日々の生活が手につかなく、フワフワとした気持ちになったのは、生涯初めての体験だった。村上氏の発言で、注目すべき点として“読破“したかどうか、ズバリここがポイントだと思う。そう、一番感動するのは、最後の5冊目の60ページ程のエピローグだ。ここでアリョーシャが子供たちに語った言葉があまりに素晴らしく、感動の渦にのみこまれた。
坂口安吾氏が小林秀雄氏との対談集で、「僕がドストエフスキイに一番感心したのはカラマーゾフの兄弟ね、最高のものだと思った。 アリョーシャなんていう人間を創作するところ……。アリョーシャは人間の最高だよ。涙を流したよ。ほんとうの涙というものはあそこにしかないよ。」という発言もおそらく、最後のエピローグの部分を指しているんだろう。
もし途中でカラマーゾフの兄弟を読むのをやめてしまった方がいれば、ぜひもう一度チャレンジして頂きたい。
エピローグがあまりにも素晴らしいので。
作品のあらすじとしては、実は結構シンプルで、以下となる。
父親のフョードル・カラマーゾフは好色家で、淫蕩の限りを尽くし、自堕落な生活を送りながらも、地元の貴族の娘と結婚したことをきっかけとして財産を築き、小貴族となる。小貴族となったフョードルは、最初の妻との間に長男ドミトリーを、2番目の妻との間に次男イワン、三男アレクセイ(アリョーシャ)をもうける。最初の妻はフョードルと喧嘩別れ後に別の男と逃げ出すが、ある日突然亡くなる。2番目の妻もフョードルの女性遊びや毎日の乱痴気騒ぎにより気がおかしくなってしまい、亡くなってしまう。そして、残された兄弟は父親からその存在をすっかり忘れられ、見捨てられ、育児放棄される。3兄弟が大人になって、父親の元に帰ってくるところから物語はスタートする。そしてある事件をきっかけに父親のフョードルが何者かに殺される…。
そう、これだけ読めば、単純なミステリー小説だ。だが物語の奥に、神の存在の是非、人間の矛盾や両面性、良心また残虐性、科学の功罪や家族の愛憎劇、希望と絶望などなど、数え切れないほどの、著者の祈りにも似た思いがつまっている。約2,000ページにわたる物語の中に、ドストエフスキーが生前最後に生み出した集大成としての世界観が、この上なく濃縮されており、圧倒的な重厚感を持って迫ってくる。
今回カラマーゾフの兄弟を読んで、ドストエフスキー作品の凄さは、圧倒的な生への執着を、誰よりも生々しく描けるところだと思った。それはドストエフスキー自身が、実際に体験した人生経験からきていると思う。具体的には、死刑直前までいった臨死体験が、他の作家では決して描けない、生々しすぎる生への渇望や、死が目の前に迫った臨場感を、ありありとリアルに描けるのだろうと。
実際に銃殺刑直前まで体験し、恩赦という幸運から、奇跡的に生き延びた経験を持つ作家など、世界広しといえどもドストエフスキーを除いて、まずいないだろう。
そういった特異な体験が、ロシア正教への偏執的な啓蒙にも繋がり、作品に対して圧倒的な重厚感を演出できるのだろうと感じた。
【本書から得た気づき1.】
今回生涯で初めて、目的の小説を読む前に予習をした。理由は、20代前半で読んだ村上春樹氏の長編小説に対して、もうかれこれ20年以上も苦手意識が消えないでいる。一度読書で苦手意識を持ってしまうと、本当にずっと長年引きずってしまう。今回ドストエフスキーに対して、同じ轍はどうしても踏みたくなかった。予習の効果は想定以上だった。なぜなら「罪と罰」の読了時には、苦手意識があったのに、今は過去読んだ中で、最も影響を受けた著者に変わったのだから。
ほんの1日予習をするだけで、苦手な作家から好きな作家に変わるのであれば、これほど費用対効果の高い手法はないなと実感した。
【本書から得た気づき2.】
個人的に勝手に想像しただけだが、ミーチャ(ドミートリー)に対して、ドストエフスキーが自分自身を投影していたんじゃないかなぁと。そう思ったのは、ギャンブルをどうしてもやめられないドストエフスキー(詳しくはカラマーゾフの兄弟2の感想欄にて)と、纏まったお金が手に入ると、すぐ使えるだけ使ってしまうミーチャ。長期的視野に立てば、そんなことをすれば、自分で自分の首を絞めているだけなのは、本人含めてすぐに分かることなのに…。
だけどやめられない、ミーチャ。
ミーチャ、本当にバカだなぁと思いつつ、ふと普段の自分を振り返ってみた。
腹八分目で毎回食事を制限していると、最も健康体を維持しやすいのに、たまにお腹一杯食べてしまったり、残業してでも今日中にその仕事を終わらせてしまった方が、休日を気兼ねなく快適に過ごせるのに、ついつい仕事を後回しにしてしまったり…。
そんなこと日常茶飯事だなぁと。
そう、所詮完璧な人間などいないんだということを今回改めて再認識できたし、そういう欠陥があり、完璧じゃないからこそ、だからこそ人間なんじゃないかと。
そのことを上っ面じゃなく、完全に腹落ちし納得出来たので、今後の実生活でもぜひ活かしていきたい。今後他人がとんでもないミスをしても、そのミスをあるがまま受け入れ、相手を許せる度量を今回の体験で作れたと思うので、あとは実生活で実行するのみだ。
過去の知識と今回の読書体験で得た知識を融合することで得た、新たな知恵(詳しく知りたい方は過去読了した書籍、「行き先はいつも名著が教えてくれる」の感想欄をご覧ください)を、自分の血肉と出来たのが、今回最大の収穫だ。
【雑感】
さすが、世界文学の最高傑作の喧伝は、伊達ではなく、素晴らしい作品だった。だが内容を咀嚼するのに結構疲れた。なので、次はライトなエッセイでも読んで、気持ちを切り替えよう。次は、村上春樹氏の「村上さんのところ」を読みます。今回カラマーゾフの兄弟の本編を読む前に、100分de名著のカラマーゾフの兄弟編を読み、事前予習をしたことがかなり良かったと思う。いまだに苦手意識を拭えない村上春樹氏をそろそろ克服したいので、今回のエッセイ?を読んで、村上春樹氏をもっと知ることが目的です。続きを読む投稿日:2023.05.02
エピローグは登場人物たちのその後の物語。
全部読むと、「未完の作品」だと強く感じた。
続きを書く前に亡くなったことが本当に惜しい。
読んだ後、登場人物のことをずっと考えてる。
解題もめちゃくちゃ面白…かった。
解題を読むと、また頭から読み直したくなった。
自分なりにもっと細かく読みたい。続きを読む投稿日:2024.04.08
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