幻想の肖像
澁澤龍彦(著)
/河出文庫
この作品のレビュー
平均 3.8 (16件のレビュー)
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やはりカラーで見たかった!
本書は澁澤龍彦氏が「婦人公論」で3年間連載した、
ヨーロッパ美術の女性像についてのエッセイを一冊にしたものです。
ピエロ・ディ・コシモ、ペトルス・クリストゥス、ヴィットーレ・カルパッチオ、
カルロ・…クリヴェルリ、パルミジャニーノ、コスメ・トゥーラ、アルブレヒト・デューラー、
ルーカス・クラナッハ、ヤコポ・カルッチ・ポントルモ、ジョバンニ・ベルリーニ、
シモーネ・マルティーニ、ピエトロ・カヴァルリーニ、ハンス・バルドゥンク・グリーン、
セバスティアン・ストッスコップフ、サンドロ・ポッティチェルリ、グリュネワルト、
ヒエロニムス・ボッス、ハンス・メムリンク、ディエゴ・ベラスケス、グイド・レーニ、
ルカ・シニョレルリ、ドッソ・ドッシ、ヤコポ・ツッキ、フランシスコ・ゴヤ、
グスタフ・クリムト、レオノール・フィニー、マックス・エルンスト、アントワヌ・ヴィールツ、
バーン・ジョーンズ、フェリックス・ラビッス、ロメオ・デ・トレス、ジェイムス・アンソール、
ハインリヒ・フュスリ、オディロン・ルドン、サルバドール・ダリ、アングルの以上36名の
作品について語られています。
澁澤氏独自の視点から作品とその作者について解説されており、一作品につき図版も合わせて
5ページと短いので楽しみながらスラスラと読み進められます。
中でも興味深かったのはフェリックス・ラビッスの「シャルロット・コルデー」と
ルドンの「一つ目巨人」に対する精神分析学的推理です。
特に「シャルロット・コルデー」は革命指導者のマラーを暗殺した実在の人物をモデルにしており、
見た目のユニークさと精神分析学により読み解かれる意味合いのギャップが興味をそそります。
図版ではグイドレーニの「スザンナと老人たち」とアントワヌ・ヴィールツの「美しきロジーヌ」が
とても美しく気に入りました。
また、日本では有名でない画家たちの作品も紹介されているので、その点も楽しめます。
ただ短くて読みやすい分、少々不足に思う個所もあります。
例えばフュスリの「キューレボルンがウンディーネを漁師のところへ連れてくる」では
フーケの描いた物語「ウンディーネ」の一場面として紹介されていますが、
終わりの数行のところでこの絵は別名[小さな妖精]と呼ばれており「ウンディーネ」は
この作品の後年に発表されているので関係なしに鑑賞すべきかも知れないと書かれています。
ではなぜこの絵が「キューレボルンがウンディーネを漁師のところへ連れてくる」という題名で
呼ばれているのか、その理由についてもう一歩踏み込んで解説して欲しかったのです。
そのあたりの点が美術評論家の堅苦しい文章と違い読みやすい分、ページの少なさも相まって
やや物足りなく感じられました。
それからこの文庫本版では口絵で紹介されている4枚以外はすべてモノクロの図版です。
やはり美しい美術作品をカラーで見られないのは残念!
あと数百円値上げしてもカラーで載せて欲しかったです。
(グリュネワルトの「死せる恋人」のようにカラーで見たくない作品もありますが…)
澁澤氏がどの様な画家や作品を愛し、それをどの様に捉えていたのか、
その博識で独特な趣味と思考に興味のある方には面白い読み物になると思います。続きを読む投稿日:2015.05.02
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〜澁澤めがねを借りて見る美女たち〜
澁澤流「美と官能」をゴシック期のシモーネ・マルティーニからシュルレアリスムのダリまで36点の絵について語ったもの。
各作品4ページ程。「婦人公論」で澁澤自身が選ん…だカラー口絵に寄せた文章だったそうで、サラッと読める。
しかし文は短いが、内容は濃厚。
文学・心理学・美術史…様々な要素を絡めてその魅力を解き明かしていくのだが…この本の魅力はやはり澁澤龍彦の審美眼そのものだろう。
「わたしが愛してやまないのは…」のような言い回しで、彼が無条件で惹かれるジャンルについて語られる。
そして私が凄いと思うのは、昨今では「萌え」という便利な表現で片付けてしまう、フェチズムなどの偏った嗜好について、非フェチの人にも頷ける解説がなされている点。
「そんなエエもんやったら、私も味わってみようかいな」
と思わせられる明晰な文章力。
最近読んだなかでは、橋本治の「ひらがな日本美術史」の異様な説得力を持った文章にもひれ伏した。(これも結構古い本ですが)
ふたりとも、何かの裏付けがあるとか、通説になっているとかの話ではない事柄を、解きほぐし、読者ひとりひとりの心に問いかけて、持論があやなす万華鏡の世界へ誘う。
読者は魔法をかけられたように、そこへ迷い込むだけでいいのだ。
この本を読んでいる間、澁澤ワールドで遊ぶ楽しさをじっくり味わえる。
あと同時代の三島由紀夫が好んだ絵についての話などもあって、面白い。
それから今回の再読では、中野京子の「怖い絵」シリーズで扱っていた絵(あるいはモチーフ)もあったので、興味深く読み比べてみた。
ユディット、美しきロジーヌ、一つ目巨人(キュクロプス)、三美神…。
男女の違いもあるが、やはり「美」と「怖」という着眼点の違いによる見え方の差は大きい。
同じ絵について正反対の解釈が成り立つ事の面白さも感じた。
しかし「官能」についてより深く切り込んでいる澁澤龍彦の方が、本質に迫るもののように思えた。続きを読む投稿日:2016.06.10
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