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おじさん、あの娘は幸せになってほしいがしかしあの小僧は(ホーンテッド・キャンパス)

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今回は『ホーンテッド・キャンパス』(櫛木 理宇 著)を取り上げます。

おじさん、あの娘は幸せになってほしいがしかしあの小僧は

八神森司は、幽霊なんて見たくもないのに、「視えてしまう」体質の大学生。片想いの美少女こよみのために、いやいやながらオカルト研究会に入ることに。ある日、オカ研に悩める男が現れた。その悩みとは、「部屋の壁に浮き出た女の顔の染みが、引っ越しても追ってくる」というもので・・・・・・。次々もたらされる怪奇現象のお悩みに、個性的なオカ研メンバーが大活躍。第19回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞の青春オカルトミステリ!

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基本的に、鈍感な主人公というやつは苦手なんですよ。読んでてじれったくてしょうがない。明らかやん! その娘、きみに気ぃあるやん。ていうか、哀しい思いしてるやん! あかんやろ! というような気分に。

 でも、時々、いるんですよねえ。なんというか、にまにま(にやにやでもにこにこでもなく、にまにま)しながら見守りたくなることが。

 このシリーズの主人公である八神森司くんは、いやもう、どんだけ気がつかなかろうが、前へ出るべきところで一歩退いてしまおうが、「いいよいいよ。おまえさんのペースで進みなさいよ。いや、なんでもないよ。なんも言わないよー」と、ただ遠くから笑ってやろうと、そういう気分にしてくれます。

 いい子だよね。

 可愛げのある弟分って感じでしてね。いや、我が身との年齢をかえりみれば、息子とか娘の年齢差ですが、これが我が子であれば見守る前にケツをシバキにいっとる気もするので。

 というわけで、ホラーではなくて、ホラー風味のラブコメとして読んでおります、このシリーズ。

 ええ、ホーンテッドというからには、心霊要素があるんですね。

 舞台は、雪越大学オカルト研究会。幼いころから霊が見えた八神くんは、なるべく~ならそういうものに近づかないようにしてたんですが、高校時代から気になっていた美少女の後輩、灘「超かわいい」こよみちゃんが入ってるもんだから、彼女のために、ついつい入部してしまいます。

 実はこよみちゃんは、霊に憑かれやすく狙われやすい体質なので、我が身を守るために、オカルト研究会にいたんですね。会のメンバーは、一癖も二癖もそして能力もある面々だったので。

 八神くんは、自己評価の低い子です。超美少女のこよみちゃんが自分にふりむいてくれるとかないよね、と思ってます。

 でも、彼女のためになんかできないかって、いつも真剣です。霊だって、ただ見えるだけで、お祓いなんかはできないんですが、それでも次々にオカルト研に持ちこまれる(そしてこよみちゃんが巻きこまれる)事件に向き合います。

 ただねえ、最初は「こよみちゃんにいい顔したい」って理由で、依頼者に手を貸すんですが、事情を知るうちに、ほうっておけなくなって、真摯に事件に向き合うんですな。

 はたから見てれば、こよみちゃんが八神くんを慕っているのはバレバレで、気がつかないのは本人だけ、という鈍感主人公なんですが、それでもイラつかないで、微笑ましく見守っていられるのは、なによりも彼自身が「こよみちゃんが大好きだーーー!」ってことを自覚していて、むしろ自覚しすぎてるからこよみちゃんの想いに気がつかないってところで、にまにま感が生まれているのだなあ、と。彼にどんどん引っ張られて(いや、引っ張られなくても)こよみちゃんは可愛いなあ、なので、おとーさんは、ともかくも、今後も彼らの恋の行方を見守っていきたいと思います。

 成就のおりには、おとーさんは八神くんを一発どやしつけてから、あらためてこのシリーズの心霊ものとしての優れたところとか、幽霊+ロマンス作品のあれこれとか、語らせていただきたいなあと思うてはおるのですが。

 その日が早く来てほしいような、いつまでもこのままでいて欲しいような、ねえ。(友野詳)

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