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Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.10 ローカル再発見

※本記事は2011.4.15時点のものとなります。

全国で再開発が進み、街の風景が画一化しつつある日本。それでも、地方にはその土地独自の文化やライフ・スタイルがいまも息づいており、それらを積極的に発信していこうという機運も高まっているようです。観光地を巡り、グルメを楽しむだけでは見えてこないご当地文化を探してみませんか。そこにはきっと新鮮な喜びがあるはず。

「ドチャック」も「とんまつり」も、自分なりのカテゴライズ

これまで地方文化を扱った本を色々と書かせてもらってますけど、近著の『ドチャック』は、「土着」をポップな響きで名付けたキャラクターが主人公なんです。古来、日本家屋には台所から便所まで八百万の神様が宿っていると信じられていたんですよね。たとえば、便所には烏枢沙摩明王が奉られている。インドから来た神様が、何故か便所担当にされて、関西辺りではまだ身近なんでしょうか、「うっさん」なんて呼ばれたりしてます。ドチャックは、そういった古くから伝承されてきたものの総称、一種のカテゴリーですね。


僕は昔からカテゴリー分けが好きな、「カテゴリアン」なんです。小学校1年の時からノートを使って始めた怪獣スクラップも、いちいち「怪獣」や「星人」に分類して。でも、たまに『猿の惑星』のオランウータン人のように、「怪獣」でも「星人」でもない、どのジャンルにも入れにくいキャラクターが出てきて困ったりする。そういう、どこに入れても居心地の悪いものが出てきた時に新しいカテゴリーを作るわけです。僕はこれまでも「カスハガ」(観光地の珍妙な絵葉書)や「とんまつり」(地方のとんまなお祭り)、「マイブーム」(極私的なブーム)なんて言葉をつけてきましたけど、これも同じことで、自分なりのカテゴライズなんですよね。最初に響きのいいネーミングを考えて、さも既存のジャンルとして成立しているように見せちゃうという。それが僕の仕事ですから。

 

「いやげもの」ってのも同様で、旅先で売られているお土産には、特にもらった方は嬉しくない、それどころか、ひとつ置いてあるだけで部屋全体が台無しになるような(笑)ものがあることに気づいて名付けたんです。これは自分のなかで欲しいものを買う時代が終わって、欲しくないものに目を向けた時に、まっ先に思いついたネーミングでした。僕は不思議とじきに廃れそうなもの、絶滅寸前のものに鼻が利くところがあって。それで、各地を回って地名や特産品を使った土産からショック・トイまで買い集めました。なかでも昔ながらのゴムヘビは絶滅危惧種だと思いまして。今では誰も驚かないどころか、使われていたフタル酸が体に悪いことがわかったので、最近では「本品はフタル酸を使っておりません」なんて安全玩具のような注意書きまでしてあって。ショック・トイなのに本末顛倒なことになってます。いつか1冊の本にオールカラーでまとめたいんですが、今のところ、どの出版社からも同意を得られませんね(笑)。

地方ならではユルさが好き

土産物って作るにしても売るにしても、きっと地元の商工会なんかが会議して決めていると思うんです。ただその席で、どうして誰も疑問を持ったり、発売を止めたりしなかったんだろう?って思っちゃうものが出来上がる。僕はそんな地方ならではユルさが好きなんです。昔は地方キャラやご当地キャラなどと呼ばれていたのですが、敢えて「ゆるキャラ」というネーミングでカテゴライズしました。これは名前がついたことで逆に増えた例ですね。誤解が生じて生き残った(笑)。ゆるキャラの魅力は、限られた人間の価値観で物事が進むため、不意にスキが生じるところです。せんとくん騒動が記憶に新しいですけど、予想外の面白みを含んでいることがあるんですよ。そもそも、ゆるキャラの作り手は地元や特産品をPRするために大まじめなんで、何が「ユルい」のかには無自覚だと思いますよ。そこが魅力的なんですけどね。

 

最終的な意思決定権を持つ人……偉い自称ユーモア好きオヤジの「これ、おもしろいやろ!」の一存で物事が進んじゃう。そういうところが、愛すべき地方らしさだったと思うんです。今では都市目線というか、大手制作会社の介入など団体の判断が働いて、どこも画一化されてきている。正直、向こう10年くらいはマスコミもゆるキャラなんて放っておいた方がいいと思いますよ。そうしたらまた、地方発のパンチの効いた面白いやつがバンバン出てくるんじゃないかな。

Profile

みうらじゅん イラストレーターなど

1958年京都市出身。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、イラストレーター、作家、ミュージシャンなど幅広い分野で活動。1997年造語「マイブーム」が流行語大賞受賞語になる。2004年日本映画批評家大賞功労賞受賞。著書に「見仏記」シリーズ(いとうせいこう氏共著)、「アイデン&ティティ」(2003年映画化)、「色即ぜねれいしょん」(2009年映画化)、「ゆるキャラ大図鑑」、「アウトドア般若心経」、「自分なくしの旅」、「ムカエマの世界」、「ドチャック」など。音楽、映像作品も多数ある。

みうらじゅんさんの紙で味わう一冊

『みうらじゅんマガジンvol.3 フィギュ和』 / みうらじゅん(著)/ 白夜書房

10年くらい前に地方を回っていた頃、店の戸棚に飾ってあるような人形とか置物……「フィギュ和」を言い値で譲ってもらって。そういうものばかりを集めてグラビア撮りした本です。昭和30年代に作られたものはみんな陶器なんだけど、それ以降は手がプラスチック製になったり、微妙に進化してるんだよね。でも今や、文化としては残ってないでしょうね。これはある種、僕の集大成、いずれ民俗学になる日も来るでしょう。

こんな本はいかがでしょう

¥649

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