
小川貢一さん 魚を知って、もっとおいしく!

『築地魚河岸三代目』は、小学館の『ビッグコミック』誌で連載中の人気コミック。すでに単行本は電子書籍でも30巻まで配信中ですが、今年3月、その単行本の巻末付録として掲載されている「小川貢一の超簡単! 魚河岸クッキング」をまとめた料理本『築地魚河岸三代目 小川貢一の魚河岸クッキング 春編』が電子書籍だけでオリジナル配信され、大好評を博しました。その夏版となる『魚河岸クッキング 夏編』が、6月29日より配信開始!さらにパワーアップした中身の秘密を探るべく、著者・監修者である小川貢一さんに直撃インタビューをしました。
―単行本『築地魚河岸三代目』はなんと35巻! かなりのご長寿コミックですね。

2000年5月から、『ビッグコミック』での連載がスタートしたので、ついに13年目に突入しました。まさかこんなに続くとは…(笑)。うれしい驚きです。そもそも単行本の巻末付録「小川貢一の超簡単! 魚河岸クッキング」は、連載をまとめて単行本化するにあたって、「せっかくなら、おまけがあった方がうれしいから何か巻末につけようよ」という当時の担当編集者の一言で始まったんです。だったら、実際にコミックに出てきた魚を使って、家庭でつくれる魚料理のレシピがいいね、という話になって。
それで、担当編集者や原作者、漫画家の方など関係者たちが読者の代表として僕の自宅に集まって、実際に僕がその料理を皆さんにふるまって、あれこれ感想を述べながら食べるという、試食の会が始まったんです(笑)。 だいたい3ヶ月に1回くらいかな、単行本化されるタイミングでみんなが集まるようになったんですが、その前に「今回収録される○話に出てきた、あの魚の料理が食べたい!」なんていうリクエストがあったりするので、試食会までに僕がいろいろと、簡単でおいしい魚のレシピを考案するんです。
―ご自身が店主をなさっている「魚河岸三代目 千秋」のホームページにもさまざまなレシピが掲載されていますが、あれだけの数のレシピをいったいどうやって生み出しているんですか?
外食先や旅先で、自分が食べて「おいしい!」と思った料理や味つけは舌が憶えているんですよね。同時に、この料理ならあの魚に合うかもしれない、この味つけならあの魚でやってみようとか想像して、僕の“味の引き出し”にしまっておきます。そして、実際に自分が料理をつくるとき、その引き出しからアイディアを取り出して、トライしてみる。だから、和食、中華、イタリアン、スペイン、フレンチなどジャンルを超えてさまざまな組み合わせに挑戦できる。もちろん失敗もたくさんありますが、意外な食材と味がマッチすると、「ウマい!これは新しい発見だ!」なんてひとりでほくそ笑んでます(笑)。
―今回の『魚河岸クッキング 夏編』の見どころはズバリ、なんですか?

例の試食の会でも大絶賛されたのが「ウニの卵焼き」。うちの奥さん(平野文さん)が北海道の美国(びくに)に行ったときの旅番組で、ウニ漁師のおかみさんに、ウニを箱詰めしたときに残ってしまう形のくずれたウニを使って、卵焼きをつくってもらっているのを見たんですよ。これはもう、絶対においしい! と思って。 それで、ウニをすり鉢でトロトロに潰したものをフライパンで焼いただけという、他には何も入れないまさに「ウニの卵焼き」をこしらえてみたんです。焼くことによって、ウニの旨みがみっしりと凝縮されていてね。濃厚でしっとりしたツブツブ感も味わえて・・・。これはもう超贅沢な、究極の卵焼きですね。
それから、「クルマエビのスパゲティ」もおすすめ。基本はペペロンチーノ風の味付けなんですが、クルマエビの味噌を潰しながら炒めるのでエビの風味が加わります。さらに最後にゴルゴンゾーラチーズをトッピング。ここがミソです(笑)。エビの濃厚なソースとゴルゴンゾーラの独特な味わいが絡まって、これがまたウマい! ワインに合いますよ。最初はパルメジャーノをかけようと思ってたんですが、実際に食べてみたら、「なんだか普通のエビのスパゲティだな、面白くないな」と思って。そこで、ゴルゴンゾーラとペペロンチーノって意外と合うかもしれない、と想像して、トライしてみたら見事にハマりました。
―聞いているだけでお腹がすいてきました…(笑)。では、小川さんご自身が、レシピで一番こだわっていることを教えてください!

なによりもまず、素材の味を生かすこと。だから必要のない行程はそぎ落としていく。結果、簡単なのにおいしいレシピができあがるんです。もとは築地の仲卸業をやっていましたから、やっぱりそれが僕の料理の基本です。だって、築地の魚のプロたちは、旬のもの、そのときいちばんおいしい魚が何か、そしてそれをどうやって食べたら一番おいしいかってのを知り尽くしていますからね。素材を追求し、お客様にベストの状態でその味をご提供するというのが僕らの仕事ですから。でも、一般家庭の方が、プロと同じような目利きの技術を身につけて、常においしい魚を手に入れるというのは、なかなかむずかしいことですよね。
だから、僕は思うんです。“おいしく食べる”というのが一番大切だな、と。極端な話、おいしければどんなことをやったっていいと僕は思っています。キンキなら煮つけにしなきゃいけない、サバは味噌煮が一番とか、そうじゃなくていいんです。もっと自由に、味つけや調理方法で工夫してみれば、料理はもっと楽しいよって。たとえ少し旬から外れていても、鮮度が少々落ちていても、おいしく食べられればそれでいい。僕のレシピがそのためのひと工夫のヒントになればうれしいな、と思っています。
そうそう、今回の『魚河岸クッキング 夏編』では、楽しみながら魚の知識を身につけられるよう、使っている魚自体の解説をしっかり加えました。たとえば、今回のレシピで登場する魚について、コミックの中で解説している箇所があれば、その部分をこちらのレシピ集に引用するなど、よりわかりやすい構成にしています。また、春編に引き続き、魚のさばき方や基本の料理法を新たに撮影、再編集・加筆しています。手順がキチンとわかるうえ、見たいところを拡大して見ることもできますし、キッチンでスペースを節約できるのも電子書籍の醍醐味。ぜひご活用ください。
Text / Miho Tanaka(staff on)
撮影協力/魚河岸三代目 千秋はなれ
東京都中央区築地4丁目7番5号 築地KYビル B1
Tel : 03-3543-8700
Profile

小川 貢一 (おがわ・こういち) 築地の魚料理店「魚河岸三代目 千秋」「魚河岸三代目 千秋はなれ」店主
1956年東京築地生まれ。築地仲卸の三代目として築地に生まれ育つ。現在は築地の魚料理店「魚河岸三代目 千秋」「魚河岸三代目 千秋はなれ」の店主。魚を知り尽くした元仲卸ならではの豊富な知識と、アイディア満載の簡単でおいしい魚料理に定評あり。コミック『築地魚河岸三代目』では、取材コーディネートや料理協力など監修を担当。奥様は声優の平野文さん。

小学館『ビッグコミック』で連載中の、大人気コミック『築地魚河岸三代目』の単行本巻末に収録されている「小川貢一の超簡単! 魚河岸クッキング」の一部を再編集・加筆した電子書籍オリジナルの料理本。大好評の春編に続き、夏編が登場! 夏が旬の魚に焦点をあてた簡単でおいしいレシピ全22品を紹介。魚のさばき方や料理法も見やすい写真つき。また、魚の豆知識などは本編コミックを使用してわかりやすく解説。レシピから知識まで全編カラーで網羅した、電子書籍ならではのオリジナルの料理本です。





