
担当編集者推薦!原田マハ『生きるぼくら』
元気のかたまり。やる気のかたまり。本気のかたまり。
そんな原田マハさんのお人柄から生み出される作品は、多くの人に「前向きになれる」「元気が出る」「もっとできる気がしてくる」と、生きる活力を与えてきました。
たとえば徳間書店から刊行されている『本日は、お日柄もよく』。 27歳のOLが結婚式場で忘れられない“スピーチ”を目の当たりにし、スピーチライターの世界に飛び込むという物語です。修行の過程で主人公は数々の名スピーチにふれます。
「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
3時間後の君、涙がとまっている。24時間後の君、涙は乾いている。2日後の君、顔を上げている。
3日後の君、歩き出している」
読者から一番反響が多かった言葉で、私もいつも思い出しては勇気をもらっています。
OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された! 20万部突破の、目頭が熱くなるお仕事小説。
そんな原田さんの「本気」を間近で感じたのが、『生きるぼくら』の取材でした。
「お米つくりやらない?」
いじめにあい、引きこもっていた青年が、農業を通じて、生きる力に目覚めていく──。その物語を書くために、原田さんは、自らお米つくりを一年かけて学ぼうというのです。お声がけをいただき、二つ返事で参加を決めた私。長野と山梨の県境にある学校に通い、米つくりを一から体験することになりました。
教わったのは「八ヶ岳自然生活学校」です。毎月一回通い、こんなスケジュールで学んでいきます。

2月 種もみ選別(よいお米になる種を選別)
3月 もみがら燻炭づくり(もみがらを燃やし土壌改良資材を作る)
田の溝切り(田んぼ全体に水を回しやすくする)
4月 苗床づくり 種もみおろし(種を土におろす)
5月 苗床の草取り、虫取り、苗のまびき、土手の手入れ、畦塗り(田の水が漏れないよう田の周囲を塗る) 田植え
6月 畦の修復 シカよけづくり
7月〜9月 土手の草刈り 田の草刈り 鳥よけ カカシづくり
10月 稲木立て 稲刈り 稲架かけ
11月 脱穀
12月 来年の田んぼの準備

何気なくいただいているお米に、こんなに工程があるって知っていましたか? 私は「田植え」と「稲刈り」くらいしか知りませんでした。それにしても種からはじめるなんて! やるならとことんやる。原田さんの本気を感じるカリキュラムです。
田んぼの草取りで熱中症手前になる私。畦つくりであまりの泥の重さに腰をやられる原田さん……。
でも、大変なことばかりではありません。
この学校には10名近くが参加されていましたが、共同作業がとても新鮮でした。一緒だからがんばれる。一緒だからもっと作れる。一緒だから力を合わせられる。一人での草取りは終わりが見えず苦しいものですが、みんなでやればあっという間。作業を重ねるにつれ、関係性が深まり仲間意識が高まっていくのはとても素敵な体験でした。
こうした体験は、『生きるぼくら』にも反映されています。
主人公の麻生人生君は、いじめにあって四年間の引きこもり生活を送っていました。しかし母が失踪してしまい頼れるのは祖母だけ。不安を抱えながら、田舎で暮らす祖母を訪ねることに……。すると予想外の状況が待ち受けていて、人生君は米つくりに携わるようになります。
慣れない作業に戸惑う彼を支えてくれるのが、周りの人々です。久米食堂の志乃さん、介護士の田端さんなど、いろんな人の助けを得て、人生君の人生は大きく変わっていきます。作中で描かれる人の優しさや温もりは、私が米つくり体験を通じて感じたのと同様のものでした。
もうひとつ、忘れられないエピソードは、学校が始まってすぐに発生した東日本大震災です。電力の供給は制限され、食料が手に入らないことも。
日本全体に自粛ムードが漂い、米つくりをしている場合なのだろうか、と迷いを抱えながら学校に行ったのですが、指導をしてくださった先生の一言が私を勇気づけてくれました。
「米と水、美味しい空気があれば大丈夫! 落ち込むこともあるだろうけど、負けない米をつくろう」
その言葉は心強く、“米づくりは生きること”なのだと実感しました。
このとき、計画停電区域にお住まいだった原田さんは『生きるぼくら』執筆中! 何度か真っ暗の中、パソコンで執筆されたそうです。それは人生くんがいじめをうけるシーンでした。『生きるぼくら』には、このように、原田さんご自身の体験が息づいているのです。

授業は進み、10月は稲刈り、11月は待ちに待った脱穀です。皆で苦楽をともにしてようやく収穫したお米。気づけば原田さんも私もお米のことを「この子たち」と擬人化! 一粒一粒が我が子のようで、一粒たりとも落とさないように気をつけながら炊きました。
長野の水で炊いて食べたのですが、その味のおいしいことといったら! 我が子たちは輝きを増し、どんな宝石よりも美しかったのでした。
「ひと粒のお米には七人の神さまが住んでいる」
と、人生君のおばあちゃんは孫に話します。
1年間の体験を通して、私はいつも豊作を祈っていました。そして収穫したときは自然に感謝をしました。そうした心でお米と接していると、本当にお米には神様が宿っているのだと実感できます。日本人にとってお米は単なる食べ物ではなく、いろいろな儀式や風習、生活様式に関わる特別な存在であるのだと改めて気づかされました。
人との繋がりの大切さ。そしてお米の尊さ。
こうした、人生でもっとも大事なものがたくさんつまった『生きるぼくら』は、きっとあなたの人生にも、力を与えてくれるはずです。ぜひ、お読みいただけますと幸いです。
(徳間書店文芸編集部 大久保光子)









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