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黒川博行インタビュー「連載の前に」

今回の小説のテーマにはパチンコを選びました。パチンコ業界というのは、時代の変化を反映しています。法律の改正、景気の変化などが直接影響しますから。少し前までパチンコ店がつぶれるなどということは考えにくかったですが、最近ではそれも少なくないようです。売上高が20兆円とも言われる巨大産業であることは変わりませんが、時勢によって漸減しているのも事実です。パチンコホール間の競争が激しくなれば、常時人気の新台を仕入れていかなければなりません。パチンコの台はかなり高額ですから、新台の購入もたやすいことではないでしょう。すると、個人経営の小さな店は苦しくなりますし、規模で勝負できる郊外の大型店は生き残れる。この状況は、僕にとって身近な書店にも似ていると感じます。もちろん、パチンコ業界は出版業界の売り上げの20倍近くはありますから、規模が全然違いますが。
時代の変化でいうと、パチンコ台も変わりました。現代のパチンコ台はまさにコンピューターそのものです。昔のように技術は通用しません。「パチプロ」という職業はもう成り立たないようです。店内のすべてのパチンコ台をコンピューターで一括管理する、非常にシステマチックな業態です。
パチンコという、身近にありながら、実はあまり知られていない産業について丁寧に取材して小説に取りこみ、「へぇ、こんなことがあるのか」と読者に知ってもらえたら面白いかな、と思っています。

パチンコをめぐって、堀内、伊達という元大阪府警の刑事を主人公に物語を紡いでいきます。この二人を主人公にして、これまで二作の作品を書いてきました。お陰さまで読者に支持されて、今回の連載小説でも彼らが再登板することになりました。
僕はデビューのときからキャラクターで物語を動かす「キャラクター小説」を書いてきました。登場人物にはモデルは一切いません。僕の頭の中だけで作った人物像を動かします。この人物ならこんな話し方をするだろう、これくらいの値段のこんな物を食べるだろう、あるいはこんな服を着るだろうという明確な像があります。それをぶらさずに描いていく。
よく小説の中の会話が面白いと言われますが、会話はものすごく考えて書いています。何度も声に出して言ってみますし、パソコンに打ち出した会話文を推敲しながらどんどん削り込んでいきます。だから、会話を書くのはとても時間がかかる。僕は無口なんですけどね、登場人物はよくしゃべります。僕自身が大阪に暮らしていますから、会話は大阪弁です。でも、実際に話されている大阪弁ではありません。読んだときに自然な大阪弁になるように僕が作った、いわば疑似大阪弁です。今度の小説でも会話を多く書くと思うので、楽しんでもらえたらと思います。
黒川 博行 (くろかわ ひろゆき)
1949年愛媛県生まれ。京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。大阪府立高校の美術教師をへて、83、84年「二度のお別れ」「雨に殺せば」で第1、2回サントリーミステリー大賞佳作、86年「キャッツアイころがった」で第4回サントリーミステリー大賞受賞。96年「カウント・プラン」で第49回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)受賞。2014年「破門」で第151回直木賞を受賞。著書に「疫病神」シリーズ、「悪果」シリーズ、『勁草』『後妻業』『落英』『大阪ばかぼんど』など多数。


