
Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.12 家族写真の効用

家族で出かける機会が多かったゴールデンウィークが終わり、みなさんのカメラにも家族との思い出写真が増えたのではないでしょうか。家族4人でさまざまな シーンのコスプレをし、記念写真を撮るユーモラスな写真集『浅田家』で木村伊兵衛賞を受賞した写真家、浅田政志さん。家族をテーマに、斜めからも正面からも向き合った浅田氏が考える、家族写真の効用とは。
写真がなかったら、家族にこんなに興味も示してなかった
家族だったら否定出来ないし、納得出来る
家族写真は、専門学校の“写真1枚で自分を表現しなさい”という課題として撮ったのが最初でした。一生で一枚だけ持っていられるプリントと考えてみたら、家族という答えが浮かんだんです。家族だったら否定出来ないし、納得出来るかなと。でも、ただ普通に家族を撮ってもおもしろくない。それで思いついたのが家族の思い出を再現して撮るということでした。小学校時代、母親以外全員が同じタイミングで怪我したことが一番印象に残っていて、その時の病室に行って、当時怪我した場所で包帯を巻き、母親は看護婦の格好をして再現しました。母は実際、看護師だったんです。その写真はちゃんといま実家に飾ってありますが(笑)、そこでハマっちゃったというか。すごく楽しくて、めちゃくちゃいいじゃんって。
兄弟二人でお揃いの服を着て三重県のいろいろな名所で撮った
今でこそ家族写真を撮っていますが、ゴールデンウィークのような長期休暇だから出かけるという家族ではありませんでした。だから観光地で記念写真をたくさん撮るということもなかったんですが、年に一回だけ父親が僕と兄の並んだ年賀状用の写真を撮るという行事があったんです。0歳から高校生の時まで、毎年10月くらいに「今日は年賀状の写真撮るから」って、兄弟二人でお揃いの服を着させられ、三重県のいろいろな名所に連れて行かれて撮っていました。名所も何だかよくわからない石碑の前とか(笑)。でも、やっぱり今の僕はその影響を受けているんでしょうね。気づいたのは自分が家族写真を撮り始めてからですが、やっていることは浅田家と一緒なんですよね。撮影日があって、衣装を着て、ある場所に行って、決まった人数で撮る。あらためて年賀状写真を見たときは眼から鱗的な感覚でしたね。

家族写真を見てもらうと、見てもらった人との関係性が変わる
自分の家族を見てもらうって不思議な体験で、家族写真を見てもらうと見てもらった人との関係性が変わるんです。写真を見てから、実際に会うと立体的に理解できるというか。接し方も変わってくる。だから、みんなもっと家族の話をしたり、写真を見せたりすればいいのになって。家族写真って、撮った直後は必要としないものなんだけど、時間と比例して価値が増していく感じがすごく大切だと思うんです。小さいころの恥ずかしさも我慢して撮っておいた方がいいし、時間が経ってから見るとそこに喜びがあったりする。若い人は、そこに期待を込めて撮ってみてもいいんじゃないかな。携帯電話も含めて、いまカメラは一人一台の時代。写真がある意味で身近になってより力を発揮できる時だとも思うんです。でもカメラの普及に対して、家族写真を撮る人が増えているかというと少し増えたくらい。僕としては、もっともっと増えてほしいですね。
写真がなかったら、家族にこんなに興味も示してなかった
僕の写真が、ちょっとでも問題提起になればいいなと思っています。浅田家が変な格好してアホなことをやってんなー、でも楽しそう、と思ったときに、自分の家族だったらこういう写真を撮るなとか自分の家族はそもそも撮ろうと思うかなとか、考えるきっかけになればすごくうれしい。家族同士でも実際わかりきれない部分は多いと思うんですけど、僕は分かっておきたいなとも思うんです。そのためにも写真はありがたかった。写真がなかったら、家族にこんなに興味も示してなかったでしょうから。経験から言っても、まずは撮ってみてほしい。家族全員が揃って年に一回でも撮ってくれたら、それはきっと将来大切な手紙のように帰ってくると思います。
最高に、最強に喜んでもらえるような写真
被写体に喜んでもらえるような写真が第一です。最高に、最強に喜んでもらえるような写真。家に帰って毎日見たくなるような。その人が人生でどの写真が一番好きかと聞かれたとき、これと答えてもらえるようなものを撮りたいですね。
浅田政志さんの写真集 紙で味わう一冊
『浅田家』 / 浅田 政志(著)/ 赤々舎

父、母、兄、そしてぼくの4人家族が、家族の思い出の入院風景や消防士、極道など様々なシーンに扮するシリーズ。僕が撮ったというより、家族みんなで作った作品です。是非見てください!
Profile
浅田 政志(あさだ まさし) 写真家

1979年三重県生まれ。日本写真映像専門学校(大阪)在学中に「浅田家」シリーズを撮り始める。2003年上京、スタジオフォボス勤務を経て、07年に写真家として独立。08年写真集『浅田家』(赤々舎)を刊行し、第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。その他の著作に、兄の嫁とその息子が増え、家族6人となった『NEW LIFE』(赤々舎)や日本の様々な家族の肖像を取材した『家族新聞』(幻冬舎)がある。






