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Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.39 50オヤジの、原動力 ~格闘バカから家族バカへ~

※本記事は2012.6.8時点のものとなります。

プロレスラーや総合格闘家を経て、現在はタレントとして穏やかな笑顔を見せている髙田延彦さんが、今年50歳という節目を迎えて思うこととは。心に抱き続けてきたプロレスへの愛と葛藤、家族についての率直なお話からは、テレビでは見ることができない意外な素顔も伺えます。

プロレスの“光と影”の間で

今年の春、50歳になりました。格闘家としての現役を引退してから10年。現在の自分を“自己採点”すると、ちょっと輝いてないよね(笑)。もちろん「髙田道場」の運営や、テレビでのタレント活動にはやりがいを感じています。でも、ファイターとしてバリバリ闘っていたときとはやっぱり違う。かといって、今の状態が別に悪いことだとも、かっこ悪いことだとも思っていません。自分を冷静に見て、今はそういうときなんだ、と思うだけです。


そうはいっても、テレビでの私を見て“ノーテンキなおじさん”とか“熱いヤツ”だと思っている人には、意外かな。こんなふうに自分のことをどこか引いた目で見るようになったのは、今の年齢ももちろんあるけれど、若いときからずっとプロレスに関わり続けてきたからかもしれません。プロレスはスポーツであると同時にある種のエンターテインメントでもある。だからこそかっこよくもあるし、その反面で矛盾も抱えて向き合ってきました。

今の自分を突き動かすもの

プロレスラーや総合格闘家として20年以上闘い続け、引退したのが40歳。今でも「プロレスは最強の格闘技だ」と思っているけれど、格闘技との関わり方は変わりました。主宰している「髙田道場」には格闘技の選手も所属している一方で、子供たちへの指導にも力を入れています。外遊びや兄弟が少ない今、子供同士が体を触れ合わせてさまざまな感覚やルールを覚えること=ルールの下での取っ組み合いは、人間の心と体を育てるのにすごく役立つんです。私自身が8年前に、双子の男の子の父親になったことも大きなきっかけでした。今、私の存在価値は、と問われたら、真っ先に“家族”と答えます。

納得のいく60歳を迎えるために

あえて言いますが今の私には、「夢」はありません。私にとって「夢」とは、ほかのことをすべて犠牲にしてでも手に入れたいと思う“人生のスペシャルなターゲット”のこと。そういう意味では、「プロレスラーになる」という人生でただひとつの夢は、ありがたいことに、すでに叶えてしまった。


でも、今、夢がないからと言って毎日を無為に過ごしているわけじゃない。手が届く範囲の、目の前のことをひとつひとつクリアしていくことが、幸せな未来につながると思っています。実は今回、50歳の節目に本を出すことになり、プロレスラー・総合格闘家時代のこと、自分と親との関係、妻の病気や息子たちのことなどを、改めて振り返りました。この年齢になったからこそ言えることだけれど、時が経つのは本当にあっという間。まだ現役選手だった40歳になるとき、体力の限界も感じて「もう40歳か、キツいな…」と思っていたのに、もう50歳ですよ。すーっと10年経って、60歳になったら赤いちゃんちゃんこを贈られる。だから、自分が“いい60歳”を迎えるためには、濃密なそこそこ充実した50代を過ごさなきゃいけないな、と気を引き締めているところです。

いつも年齢や時間のことを考えていたらつまらないけれど、30代なら40歳、40代なら50歳と、節目を意識しながら己に課題を与え、自分をゴシゴシ磨いていくことが必要なんじゃないかな。嫌なことも辛いことも含めて、自分で自分に肥料をまいていかないと、だれもそんな環境はつくってくれないからね。それに、この混沌とした世の中でそういう意識をもっておかないと、自分自身までがつまらない存在になってしまう。もったいなさすぎるよ。


私の当面の目標は、息子たちが20歳になるまでは“一筋縄じゃいかないオヤジ”でいること。もう少し大きくなったら、ときには道を誤りそうになる局面がくるかもしれない、そんなときに「オヤジにバレたらヤバいよ」「ぶっとばされるぞ」と私(オヤジ)の存在そのものがストッパーになれるくらいの繋がりをつくり上げていきたいですね(笑)。

高田さんの著書紹介

『覚悟の言葉~悩める奴らよでてこいや!~』 髙田延彦(著)/ワニブックス

50歳を迎えた髙田延彦さんが、テレビタレントとしての優しい笑顔を脱ぎ捨てて放つ、体験的メッセージ集。

プロレスラー・総合格闘家時代の栄光と挫折や、家族への思い、テレビ現場へのリスペクトと違和感etc.。

過去や現在のみならず、未来への不安も赤裸々に語り、独断の苦くて熱い人生論が胸に刺さる一冊。

高田さんの素顔を拝見!

大好きな1冊

『おかげさん』/ 相田みつを(著)/ダイヤモンド社

「相田さんの本は40歳ごろから読み始めて、数冊もっています。自分が思っていることをうまく言葉に表現できないときにペラペラとめくると、必ずどこかに当てはまるフレーズがある。人間の矛盾したところや弱さを描きながら、勇気を持って前に向かっていけるよう、背中を押してくれます」

ファイターとしての糧となった三冊

『宮本武蔵』/吉川英治(著)/講談社

『竜馬がゆく』/司馬遼太郎(著)/文藝春秋

『大場政夫の生涯』/石塚紀久雄(著)/東京書籍

「『宮本武蔵』や『竜馬がゆく』は、プロレスラーとしてデビューした直後、20代前半で読みました。最初は「ファイターたるもの、武士道を知っておかねば」という義務感から読み始めたのですが、読み始めたら一気に引き込まれて。特に『宮本武蔵』は、真剣勝負の緊張感や持久戦のかけひきなど、レスラーとして学ぶところもたくさんありました。


『大場政夫の生涯』は、1960~70年代に活躍した伝説のボクサーを描いたノンフィクション。貧しく中卒だったことをバネに世界チャンピオンまで上りつめ、若くして事故死した彼の生きざまには、自分自身を重ねるところも。私も中卒で、体が小さかったり家庭環境に恵まれなかったりしたんですが、それらのいわば“負”の部分が前に進む原動力になった。今の“草食”の風潮を非難するつもりは全くないけれど、高度成長期の日本人の“欲望”がもつエネルギーは、若い人にも知ってもらいたいと思います」

純粋に楽しめる三冊

『血と骨』/梁石日(著)/幻冬舎

『GO』/金城一紀(著)/講談社

『リング』/鈴木光司(著)/角川書店

「“本の世界にどっぷり浸りたい”という願望を叶えてくれる三冊。どれも生々しく迫力のある描写に、時間を忘れてグイグイ読み進めました。『リング』はとにかく怖かった! 本で読者をここまで震えさせるなんてすごい! と感動」

Profile

髙田延彦(たかだのぶひこ) 「髙田道場」代表

1962年生まれ。17歳で新日本プロレスに入門し、19歳でデビュー。UWFインターを経てPRIDEで活躍。二度にわたるヒクソン・グレイシー戦、ミルコ・クロコップ戦など数々の名勝負を経て、2002年に現役引退。現在は総合格闘家を育て、子供が心身を鍛える「髙田道場」を主宰する傍ら、テレビタレントとしてバラエティ番組などでも活躍。

http://www.takada-dojo.com/top.php

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