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Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.6 効く笑い

※本記事は2011.2.18時点のものとなります。

女性の十代後半は、“箸が転んでもおかしい”と言われますが、その幸せなバカ笑いもいつまでもは続きません。一口に笑いといっても、とても悲しい出来事が一瞬にして爆笑に変わることも、笑わないとやってられないことも、人の自意識過剰を笑うこともあります。笑いは知らず知らず見えない良い作用をもたらしているのです。

楽しさと哀しさは表裏一体。それが日本人らしい“笑い”

 

落語はじっくり育てる芸。切磋琢磨してるうちに何かを掴む。

一口に“笑い”といっても、たとえばテレビと落語じゃ大分違う。ほかの落語家さんはほとんど観ないかもしれないけど、僕はテレビ番組でショート・コントなんかを観てはゲラゲラ面白がってるんですよ。でも、今しかお目にかかれない人も多い。果たして3年後、5年後に残っているのが何人いるのか。


一方、落語はじっくり育てる芸。今はヘタクソでも、のちにバケることがあるんです。寄席なんかで切磋琢磨してるうちに、いきなり何かを掴んで「こいつ良くなったね~」って言われるのが落語なんです。そうして高座だとか上がるところが深くなっていき、深さに応じた話を自分で作れるようになっていく。それが噺家になっていくってことなんですよ。その過程で落語家独特のニオイっていうのかな、身に付いていくんですよ。

落語の成り立ち同様に、喜怒哀楽を組み込んだ映画を。

代謝の激しいテレビの世界では、最初から面白さが求められ、結果として一発ギャグが流行る。そうして多くが代謝のサイクルに埋もれていくんです。でも、いつまでも埋もれずに残る人もいる。お笑いをきっかけに司会をやったり、いろんなことができる人たち。最近は「何か持ってる」なんて言いますが、結局、その人のなかにエンターテイメントがあるか否かってこと。今回僕が監督した『落語物語』で主演を務めてもらったピエール瀧さんもそう。彼はミュージシャンなのに楽器を弾かない変わった人ですが、ライヴをやればお客さんみんなを笑わせる。ツボを押さえた人なんです。彼が出ている映画も一通り観ましたが、どの映画でも彼なりのエンターテイメントが活かされてるから、魅力的に映る。本作ではピエールさんに、落語家の日常を演じてもらいました。さっきも言ったように、落語家には独特のニオイや口調がある。これはやっぱり一朝一夕で身に纏えるものじゃないんですよ。でも、普段の面白みを演じさせることで、不思議と落語家のように見えてくる。落語家仲間が「すげーなこいつ。落語できんじゃないの?」って言ってましたよ。もちろん話せませんがね。

今の映画は笑いだけをギッチギチに詰め込んだものや、ココで泣け泣けってだけのものが多いけど、そればっかりじゃ何も残らない。落語家の僕が作るんだから、落語の成り立ち同様に、喜怒哀楽を組み込んだものにしたかった。楽しさと哀しさは表裏一体。泣き笑いってのが人には一番応えるし残る。寅さんみたいな邦画のコメディーって、今じゃほとんど絶滅しちゃったけど、『落語物語』ではそういう日本人らしい笑いを描きました。

Profile

林家 しん平 落語家・映画監督・脚本家

古典落語から、新作落語、古典にしか聴こえない新作落語、三題噺まで幅広く、3つのお題を即座に一席にまとめて噺す三題噺の完成度は高いものがある。

また、アニメ好きで、怪獣グッズや落語家の書籍収集家でもあり、2003年の映画初監督作『駕瞑羅(ガメラ)4真実』は特撮・怪獣ファンの伝説となり映像の世界を開眼。2008年作『深海獣レイゴー』と2009年作『深海獣雷牙』で、怪獣映画は大手以外には作れないという常識をくつがえすなど、まさに希代の落語家として名を馳せる。2月には小説『落語物語』を出版。プライベート・ムービー『ひゅ~どろ 呪いの種』がプロデューサーの目に止まり、公開も予定されている。

紙で味わう一冊

『ゴジラ』 / 香山滋(著)/ 奇想天外社

台詞回しや言葉選びなど小説としてはあっさりしているけど、これがあって映画『ゴジラ』が誕生した。日本の怪獣映画、特撮ものの元祖。しかも著者は官僚あがりで、そんなインテリが怪獣を考え出したというのも面白い。オススメしても誰も読まないと思うし、笑いとも関係ないけれど(笑)。まじめなゴジラです。

こんな本はいかがでしょう

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