
徹夜できる時に開くべき本(村上海賊の娘)
徹夜できる時に開くべき本
織田方の軍勢は木津砦に襲い掛かった。雑賀党一千の銃口が轟然と火を吹き、その猛攻を食い止める。本願寺門徒の反転攻勢を打ち砕いたのは、京より急襲した信長だった。封鎖された難波海へ、ついに姿を現す毛利家と村上家の大船団。村上海賊には、毛利も知らぬ恐るべき秘策があった。自らの家を保つため、非情に徹し、死力を尽くして戦う男たち。景(きょう)の咆哮が天に響く――。波瀾の第三巻。
読みだしたら止まらない、読み進むとますます止まらない
2013年の本屋大賞受賞作。「ハズレなし」で定評ある本屋大賞だが、本作はその中でもぶっちぎり大当たりの一作にあたる。
主人公「景(キョウ)」は、瀬戸内海を牛耳る海賊一家「村上家」の娘。20歳で未婚。バタ臭い南蛮顔で当時基準の醜女。のクセに、浅ましいまでの面食いだ。背は高くぼんきゅっぼん体型で、気が強い。
景はイケメンの婿探しと本物の戦争見たさに、一向一揆に向かう農民たちに付き合って難波に赴き、木津川の合戦を目にする。
自由奔放な海賊姫が目の当たりにした戦の現実は、それまでの痛快なだけのものではなかった。
一揆を起こす農民たちの悲壮感や、雑賀衆鉄砲部隊の凄みが景を変える。
そして後半、景が鍵となって発動する「鬼手」が戦そのものを変えていく。
真面目に解説するとこうなるが、舞台は
【信長VS大坂本願寺戦のなかの一幕、第一次木津川口の戦い】
関東民には馴染みのない土地の話題で、かつテーマがどうしても地味(失礼)なため、正直なところ史実というよりもファンタジーである。
戦のシーンもいい感じに荒唐無稽が混じっており、特に後半、船vs船、武士vs武士の戦いになると、景が好んでいた痛快そのものの命のやり取りになる。
ラストバトルはドラゴンボールだ。のぼうの城の「あの感じ」が好きな人なら間違いなく気にいる。(和泉守さん大好き!)
面白すぎて家庭不和が起きた
後半、怒涛の船戦の最中に、本作のキーワードになる作戦「鬼手」が発動する。ここからは止まらない。どんどん引き込まれて、本から振り落とされないように、かぶりつきで読み込んでいくことになる。
息子を寝かしつけ、読み進めている時に同室の配偶者が
「今日◯◯さんがさあ…」
って話しかけてきたのがもう異常に非常にもんのすごく鬱陶しく、
「ごめん今ムリ」
と返したのが相当冷たい言い方だったらしい。引っ込んだ旦那は完全にスネていた。ごめん。
後で軽く修羅場った。悪いのは私だ。面白い本を人といるときに読んだ私が悪かったのだ。
難点は序盤
ただ、本作に限らず、和田竜作品の特徴というか難点が一つあって…序盤がどうにも読みづらいのだ。
中盤以降は本当に面白くでてグングン読めるんだけど、どうにも「面白いところ」に行き着くまでがちょっと大変。
日頃、本を読まない人は序盤で脱落してしまうのではないかなあと思う。本当に映画的で面白いので、この点は本当に残念。
納得の本屋大賞だった。
ただ、最近は本屋大賞も権威化してしまい、最初のころほど自由に本を選べなくなってきてしまっているのだとか。
このまま「これは面白い!これは読んでほしい!」って本を紹介する賞でありつづけて欲しいな、と思う。(Amati)


