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Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.14 会話のチカラ

※本記事は2011.6.10時点のものとなります。

いちばん身近なコミュニケーション方法であるお喋り。何気ない一言で、グッと親密になったり、どんなに言葉を重ねても、上手く気持ちが伝えられなかったり…。日々、言葉を交わすことは、誰にとっても楽しいものであり、一方で悩ましいものでもあるのではないでしょうか。ラジオ・パーソナリティーの小島慶子さんと一緒に、そんなお喋りの持つチカラについて考えてみましょう。

何気ない会話から、豊かな共感が生まれる

私は大学一年生ぐらいから放送業界で働きたいと思っていました。でも、その時に感じていた疑問があって、それは「なんでテレビの中の人は、ものすごくちゃんとしているんだろう」ってことだったんです。考えてみてわかったのは、テレビは「見物とつっこみ」のメディアだということ。見ている側は帽子が曲がってたり座り方がだらしなかったら、「おかしい」って言いたくなってしまう。情報を伝えるにあたって、余計なつっこみをなくすために形を大事にするんですね。でも、人と人が関わる時に、形を見せることばかりが優先されなくてもいいじゃないですか?ラジオは映像なし。いわば真っ暗闇の中の隣人のようなメディアだと思うんですけど、見えないからこそ話し手の声が身近に感じられるし、聴き手の意識も、そこで交わされてる会話へと自然にフォーカスする。それで、ラジオへの興味がより強くなっていったんです。


喋る仕事をしていると、どういう言葉を扱うかが注目されがちなんですけど、私は生放送の会話も日常の世間話と同じように、言葉になってない部分で共感することが大事だと思うんです。大したことない話であっても、その人が話している気持ちに参加する、繋がることで共通項が見えてきて、豊かな共感や関係性が生まれる。例えば、私が子育てに鬱鬱(うつうつ)となっていた時期に街を歩いてたら、近所のおばさんが「ちっちゃいから大変でしょ?でもすぐ大きくなるから大丈夫よ~」って言ってくれたことがあったんですが、その20秒ぐらいの世間話ですごく気が楽になったんです。特別な言葉でもないし、その人と私の関係なんて行きずりみたいなものですよね。でも、確かにそこには私の魂が救済された瞬間があった。それが会話の力だと思うんです。ただ、そういう価値って何気ないものだし、商品になり難い。でも、それを放送に持ち込んでもいいんじゃないかなって思って生まれたのが、世間話をテーマにした番組『小島慶子キラ☆キラ』なんです。

言葉の後ろにあるものを追い求めたい

お喋りって、相手がどのような距離を取りたがっているのか、どんな共感を求めているのかを知ることが一番大事だし、面白いですね。お喋りのコツは、どんな有名な人でも生身で会うのが初めてなら、知らない人だと思って会うこと。ビジネスでは人との間合いを計って主導権を取るのが大事なのかもしれないけど、私はそういう風には考えてないですね。話が合わなそうだなと思っても、あるポイントでぐっと近づくかもしれないし、その逆もある。そのままでいいんです。



ラジオは災害時には欠かせないものですし、なくなることはないと思います。その他にも「会話の力」という意味では価値は増すのかもしれません。今テレビは「何を見せるか」ってところばかり夢中になっているように感じますが、そこにメッセージがなかったら非常に虚ろなものになってしまいますよね。人と関わる時に、その人から出てくる言葉の後ろにあるものを追い求めたい。メッセージを持って、場を開いて人と関わっていくコンテンツを作っていきたいんです。マスメディアの根底にあるのは、目の届かないところにいる人たちと一緒に生きている実感が欲しい、凡百の中の一人である自分に価値があるって言って欲しいって気持ちだと思います。特に今後は、多様化していく価値観を互いに許容することが大事になってくる。それは同時に、人々はこんなに違っているのに、それでもなお同じだと思える瞬間があることに辿り着くチャンスが増えるってことだと思うんです。出来れば私は、そういう機会がたくさんの人にあるような世の中を作るために喋っていられたらいいなと考えています。

小島慶子さんの紙で味わう一冊

『小島慶子キラ☆キラ』 / TBSラジオ・アスペクト(編)/ アスペクト

私の番組についての記事が詰まった、いわゆる「ラジオ本」です。番組に出演しているいろんな方のインタビューが載っていて、みなさん喋ることについて喋ってるわけですね。だから、何かを言うこと、人と話すということを考えるうえで参考になるんじゃないかなと。そういう意味で、番組と縁のない方でも楽しんで読んでいただけると思います。

Profile

小島慶子(こじま けいこ) ラジオ・パーソナリティ

1972年オーストラリア生まれ。1999年、第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞受賞。ラジオ、テレビのレギュラーの他、エッセイ連載も多数。他の出版物に『ラジオの魂』(河出書房新社)などがある。

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