Reader Store

世間を震撼させた森博嗣のデビュー作!(すべてがFになる The Perfect Insider)

シミルボンに投稿された要注目記事をピックアップ!

今回は『すべてがFになる The Perfect Insider』(森 博嗣 著)を取り上げます。

世間を震撼させた森博嗣のデビュー作!

すべてがFになる THE PERFECT INSIDER

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

この作品は、1996年4月に発刊された森博嗣さんのデビュー作である。国立N大の工学部建築学科の犀川助教授と学生の西ノ園萌絵のコンビが活躍するS&Mシリーズの第1巻でもある。しかし処女作ではない。「森 博嗣のミステリィ工作室」(講談社文庫)などの記述によれば、最初に書いたのは「冷たい密室と博士たち」だそうで、この作品は4作目らしいが、先にこちらの方を発表することになったらしい。

 

主要な登場人物は3人。まずは、14歳のとき両親を殺したために、それ以来妃真加島という孤島にある私立研究所で幽閉生活を送っているコンピュータサイエンスの天才真賀田四季。そして犀川、犀川の恩師の娘である萌絵だ。この物語を一言で表せば、真賀田四季という神に近い存在の天才に、犀川と萌絵の二人の天才が挑むという話になるだろうか。

 

事件の発端は、かなりショッキングだ。四季に会いに研究所を訪れた犀川と萌絵だが、突然のコンピュータの暴走により島外への連絡が一切できなくなる。さらには、手足を切断された四季の死体が、白い花嫁衣裳を来て、P1というワゴン型ロボットに載せられて出てくるのだ。ところが四季のいた部屋には誰も出入りした形跡はない。そうこれは密室殺人のトリックをいかに暴いていくかというところが一つの見どころなのである。残されていたのは、「すべてがFになる」という言葉。さらには、四季の実の叔父で研究所の所長である新藤清二 、副所長の山根幸宏までもが殺害されてしまう。いったい犯人はどうやって四季の部屋に出入りしたのか。どこに潜んでいるのか。

 

作者が当時名古屋大学の建築学科の助教授だったというのは有名な話だ。それまでは、作家にはバリバリの理系人というのはあまりいなかったように思う。しかし森さんの場合は、十分な理系人としての素養があり、作品中にもそれを伺わせるような科学・技術に関するテクニカルタームがちりばめられている。そのうえミステリー(森さんのこだわりによればミステリィ)としても、本格的で読み応えがあるのだから向かうところ敵なしだろう。

 

ただ、俗に10年ひと昔というが、20年前の作品だということで、その間に凄まじい発展を見せたコンピュータ関係の記載については、やはり時代の隔たりを感じてしまう。例えば萌絵がコンピュータウィルスについてよく知らなかったり、情報がフロッピーディスクに入っているといったようなところである。

 

興味深かったのは、萌絵がコンピュータは好きだけどプログラムが組めないといったような発言をしていたところだ。私たちの若いころはコンピュータを使えるというのは、ほぼ自分でプログラムを組めることと同義だった。たぶんこの頃だったと思うのだが、コンピュータは、乗せてあるアプリを使うものに変わってしまったのである。だから「F」が16進数の一つであることに犀川は思い当たり、萌絵はピンとこなかったのだろう。

 

そしてミステリー要素以外に気になるのが犀川と萌絵の関係である。萌絵は、日傘をさしてキャンプに来る、それまで焼きそばを食べたことがないなど、お嬢様キャラを炸裂させているが、犀川のことが好きで、彼に絡んでくる儀同世津子(実は犀川の妹)にやきもきしているところなど、とっても面白いのだ。さてさて、二人の関係は、以後のシリーズでどうなっていくのか、こちらもお楽しみである。

あなたにおすすめの特集