
新撰組ファンでなくとも泣かされる、「平成の泣かせ屋」浅田次郎版新撰組(壬生義士伝)
ファンでなくとも涙涙、「平成の泣かせ屋」浅田次郎版新撰組
「平成の泣かせ屋」といわれる浅田次郎さんの新撰組小説第1弾。期待を裏切らず最後にだだ泣かされるので、人前ではお読みにならないほうがいいですよ、ご注意を(わたしは通勤中にラスト部分を読みえらいことになりました)。
新撰組が題材の歴史小説ですが、人物描写が見事なヒューマンドラマなので、新撰組に興味のない人でも大丈夫です。が、知った上で読んだほうがおトクな小説だと思います。でも単に泣いてすっきりしたい方にもオススメ!
物語で描かれるのは、周囲から守銭奴と軽蔑の目をむけられながらも妻子に送金を続け、やがて悲惨な死に様を迎える新撰組隊士 吉村貫一郎の人生です。主人公吉村の感覚が現代的で身につまされます(自分自身が以前少々お金や人間関係に苦労したことがあるもので余計…)。吉村の「銭こに名前は書いてねす」の言葉、本当にお金が欲しい時、この言葉を何度かつぶやいたことがあります(苦笑)。わたしにはこの言葉は吉村の守銭奴っぷりを表現しているようで、吉村が自分に言い聞かせている言葉のように感じられました。自分のプライドや信念が首をもたげてきても、それより一番大切なこと(吉村で言えば家族のための送金)を思って現実を考え自分をある意味抑えているような…。
物語の構成も本当によく練られています。現実世界でも本人から聞くより周囲からのその人への評判のほうが信憑性がありますよね、周囲の人々からの話と吉村の独白を織り交ぜながら、読み手の中で「吉村貫一郎」がつくられて、やがてラストの手紙まで見事に綴られる物語、感情移入しているからこそのつらいつらい吉村の人生の最後にこの爽快感がさすがの浅田節!
この感動は小説ならではと思います。映画をご覧になって原作未読の方は、ぜひ小説でもお読みください。
ストーリー以外にも、新撰組ファンならば「おっ」と思うような仕掛けもいくつかあり、それもこの小説を味わい深くしています。聞き手である狂言回し役が新聞記者なので、「司馬遼太郎氏がモデル?」と想像できたり、他の隊士からの吉村像とか、その描写の中で齋藤一がとても魅力的に描かれていて、後に出版された「一刀斎夢録」の読後に読むと二度美味しいとか。
なのでできれば最初に読む新撰組作品ではなく、小説なら「燃えよ剣」「新撰組血風録」「幕末新撰組」あたり、マンガならば「風光る」あたりを読んで、新撰組の年表が一通り頭に入ったうえで読んだほうが楽しめる作品だと思います。※話は違いますが、新撰組のことを知って「るろうに検心」読むと、ちょっと目線が変わって面白いですよ。
最後に、浅田版新撰組小説3部作はこの「壬生義士伝」のあと、「輪違屋糸里」「一刀斎夢録」と続きます。名ストーリーテラーである浅田次郎さんが長年構想を練りに練って綴った3つの物語、第1弾で立ち止まらず、3部作すべての読了を強くおすすめします。(いとま)


