mag2000さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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その女アレックス
ピエール・ルメートル, 橘明美 / 文春文庫
評判どおり
11
話題作。評判どおり。大満足。ジェットコースターだった。訳者が上手い。私の大嫌いな翻訳調文体が薄くて文章が比較的自然。それでいてフランス文学のちょっとしゃれた感じは伝わる。そして話の展開がみごと。第一~…三部と内容が特徴的でわかり易く、自分なりに頭の中でよくまとまる。悲劇と事件を追う刑事たちの人物造形のおもしろさ。解説で訳者が彼らを、まるで「三銃士」と言っているがなるほどと思う。事件を追う刑事にトラウマがあるというのはよくあるパターンだが、彼の内面にも十分に興味が持てた。アレックスとカミーユの両方が主人公。
続きを読む投稿日:2015.03.04
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死のドレスを花婿に
ピエール・ルメートル, 吉田恒雄 / 文春文庫
やっぱりおもしろい
6
アレックスを読んだ後だったので、ソフィーの章はプロローグだなとすぐわかる。そしてタイトルからも展開はだいたいわかってしまう。でもそこに至る過程と動機が気になって、ぐんぐん読み進めてしまった。欧米人って…こんなに安易に薬に頼った生活をしているのか?いろいろ事件は起きるがだいたい警察だってそんなにぼんくらではないだろう?と突っ込みどころはある。でもミステリーの話の中の話だからぜんぜんOK。執拗な行動のわりには動機がちょっと弱いように思うけど、それもまぁまぁしかたがないかな。
続きを読む投稿日:2015.05.22
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去年の冬、きみと別れ
中村文則 / 幻冬舎文庫
精神が浮遊してしまう感覚
4
芸術が狂気を招くというのはけっして絵空事ではないと思います。「彼には欲望がない、いつも他人の羨望、模倣だった。」この表現にどきりとしました。本当の自分なんて確固としたものはないのかもしれない。そして物…事の価値基準も。 この登場人物たちはリアリティに欠ける、いってみれば怪物ですが、彼らの行いはそれなりに必然性があるように見えます。人形師とか死刑囚の告白とか、中盤は江戸川乱歩の世界を彷彿とさせる古風な感じもありました。 続きを読む
投稿日:2016.06.27
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江戸川乱歩傑作選
江戸川乱歩 / 新潮社
愛読書中の愛読書
4
何度読み返したかわからないくらいの再読。心理試験とD坂と人間椅子と二銭銅貨が読みたくて開いたが、結局昨夜ぜんぶ読んでしまった。蔵書の文庫はISBNが同じなのでこれなのだが、表紙は全然違う。赤&黒で鎖と…指紋と鍵のデザイン。「五軒町正直堂からおもちゃの札を受け取れ受取人の名は大黒屋商店」 デビュー作とは思えない完成度で、ただものではないという雰囲気を醸し出している。昭和初期の他の作家のミステリーも、現代の乱歩賞受賞作も、いろいろ読んだけどここに戻ってくる。 続きを読む
投稿日:2014.10.08
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小説の書き方 小説道場・実践編
森村誠一 / 角川oneテーマ21
すなわち小説の読み方
4
私は小説を書く気はないが、この内容はそのまま「小説の読み方」としてもとても参考になる。特に第四、五章の文章論、文体論はそもそも小説とは何かという本質的なところを示していてそれは優れた小説とは何かと言う…自分なりの価値観の見極めにも通じる。やはり私の読み方はまだまだ浅いなと反省した。森村ブームの頃はまだ子供で、作品名はよく知っていてもあまり読んだことがなかったが、著者の作品をもっと読んでみたくなった。 続きを読む
投稿日:2014.12.06
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思い出トランプ
向田邦子 / 新潮社
優しくて怖い小説家
4
短編13編。だから”トランプ”ということらしいです。私は思う。向田邦子こそ最恐のホラー作家なのではないかと。この本はどうも再読のようでところどころ読んだ覚えがある。学生の時にはわからなかった微妙な登場…人物の気持ちが今ならわかる。ちくちくと痛いほど。 続きを読む
投稿日:2014.01.19