ラピスラズリさんのレビュー
参考にされた数
57
このユーザーのレビュー
-
ホームグラウンド
はらだみずき / 角川文庫
読みやすい文体の中に息づくはらだみずきさんの世界を堪能
1
「お父さんたちが子供の頃は、家でゲームなんかせずに、外へ出て遊んだものだ」しかし、現実はどこの公園もボール遊び禁止。そんな問題提起から始まるストーリー。
老人と社会人になって日が浅い孫が主人公:圭…介のホームドラマ。はらだみずきさんの文体は本当に読みやすく、これなら小学校高学年ぐらいから充分読めます。前半では比較的淡々と進むストーリーが、後半になると登場人物の人生模様が変化していき、あっと驚く秘密も明かされていきます。はじめは電車の待ち時間などスキマ時間に読んでいましたが、後半はまとまった時間に一気に読んでしまいました。 続きを読む投稿日:2017.03.20
-
空飛ぶタイヤ(上)
池井戸潤 / 講談社文庫
圧巻のリアリティ
4
凄いボリュームと、まるでノンフィクションを読んでいるかのようなリアリティ。
三菱銀行にお勤めだった池井戸さんが実際に見聞きしたエピソードも多分に含まれているのでしょう。出来れば週末にじっくり腰を据えて…読むべき小説です。
他の皆さんが素晴らしい感想・レビューを書かれているので、私の出る幕はないのですが、一言だけ。
私の住む町は三菱自動車の企業城下町のようなところで、現実のリコール隠しに関わる影響で、地域経済は大打撃を受けました。原因個所と無関係の部品を担当した、たいへんに技術力のある下請けでも発注減による経営危機だけでなく、「三菱と取引があった」というだけで差別的な扱いを受けて、倒産した会社もあります。
大企業の論理に振り回させれるのはいつも無関係で善良な庶民や、ヒエラルキーの最下層の人々。戦争も原発事故もそうですね。
池井戸さんには、何年かした後には原発事故をテーマにしたフィクションも書いて頂きたいな、と思います。
余談が過ぎました。 続きを読む投稿日:2014.09.05
-
ルーズヴェルト・ゲーム
池井戸潤 / 講談社文庫
平成ヒト桁代までには存在した、こういう世界が懐かしい
1
「半沢直樹シリーズはヘビーすぎる」と思われている方にオススメです。
企業の業績不振や銀行からのリストラ要求、株主への対策、業界大手から仕掛けられるM&A、下請け製造業の悲哀。起死回生の新技術の開発。そ…れらの経営上の色々なドラマが、社会人野球チームの成績低迷とチーム内の不和、エースと主峰の引き抜き、監督の交代と新エースの成長というドラマに密接にリンクし、同時進行でストーリーが展開されます。野球チームを中心に再び心が一つになった青島製作所。
現実は変わりませんが、最後は野球というスポーツの面白さが全部を洗い流してくれる。
私の会社でも社内運動会や社内旅行的なイベントが無くなって久しいですが、なんだか平成ヒト桁代までには存在した、こういう世界が妙に懐かしくなりました。 続きを読む投稿日:2014.09.05
-
鉄の骨
池井戸潤 / 講談社文庫
後半は息つく暇もない展開に痺れます
1
中堅ゼネコンの現場で充実した仕事をしていた主人公の平太が、突然『談合課』と揶揄される業務課へ異動、現場とは全く異質な世界にカルチャーショックを受ける。会社や仕事に対する疑問や社会の「必要悪」に流されそ…うになる自分、恋人の心も自分から離れ、それらをどうすることも出来ない自分の未熟さを思い知る平太。。
しかし直属上司の西田、尾方常務、談合のフィクサーの三橋ら池井戸さん一流のキャラの立った登場人物たちとの痺れる
ようなやりとりが見ものです。「現場にいたんじゃ十年かかっても経験できないようなことが起こるだろうよ。お前は運がいいんだよ」この西田の言葉がこの小説のテーマなのでしょう。
ストーリーは最後に向かえば向かうほど息つく暇のない密度の濃い展開に、平日前の夜に読み始めるのは危険です(笑) 続きを読む投稿日:2014.09.05
-
砂の器(上)
松本清張 / 新潮社
現代においても燦然と輝く存在感
8
昭和40年代に書かれた推理小説で、登場人物もほとんどが戦前生まれ。コピー機もなく、あらゆる情報は手帳に書き写し、大家と店子の関係が密接だったり、と現代とは全く環境が違うが、推理小説の肝のトリックの部分…は本当に読ませる。今西巡査部長もスーパー刑事というわけではなく、地道な作業を積み上げて犯人を追い詰めていく。現代においても燦然と輝く傑作です。やっぱり松本清張は凄い 続きを読む
投稿日:2014.08.25
-
官僚の責任
古賀茂明 / PHP新書
官僚の生態を熟知する著者の提言
0
官僚組織の生態、官僚という人種の思考回路が実によくわかりました。単なる官僚批判ではなく、官僚の生態を熟知して、彼らを使う方法論を提示。提言はエネルギー問題から年金まで多岐にわたっています。
投稿日:2014.08.25