【感想】日輪の賦

澤田瞳子 / 幻冬舎文庫
(16件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
2
6
5
0
0
  • ”日本”をつくった情熱と信念

    強い国をつくるため、律令編纂に心血をそそぎ対立する豪族たちとの戦いを
    を描いた作品。女であり、夫と愛息をなくしながらも自分犠牲にして孤独な戦いを続ける讃良大王と、官吏になるため、京に上ってきた廣手を中心に物語が展開する。それぞれが、新しい国造りに信念をもやす様は感動です。
    また、男装の麗人 忍掌。廣手の敵である大麻呂。大友皇子の遺児である葛野王などの活躍と人間模様がうまくえがかれていて、読んでいて飽きさせない。最初、時代の役職や官職名など難しい名がでてきて読みにくいとかんじたことがありましが、中盤から終盤にかけて一気によんでしまいました。
    フィックションとノンフィックションがうまく融合されていておもしろいとおもいました。映像として見てみたい気もします。
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    投稿日:2016.06.26

  • 倭国が日本に、大王が天皇となる時代の大河小説

    一期校、二期校なんて言っていた時代の最後の理科系受験生である私は、受験の際、世界史を選択しました。日本史も大好きなんですが、なにせ人の名前の漢字が難しいですからね。
     また、この小説の扱っている時代は、まったくもって不勉強であります。そのために、とても興味深く読ませて頂きました。日本という国が日本という国になるための産みの苦しみ、胎動時代、フィクションを交え実に活き活きと描かれていたと思います。
     しかし、やはり人の名前が難しいですね。まず、読めない!最初に登場したときはフリガナがありますけど、二度目から無くなってしまい、適当に読んでました。しかも、「阿倍御主人」は途中、「御主人」とたけ表記され、一気に読まなかった私は、誰の主人だ?なんて混乱してしまいました。Readerの検索機能で事なきを得ましたけど。まぁ、冒頭に登場人物の紹介はあるんですけどね。
     物語の内容は、権謀術数渦巻く宮中の中で、必死に国としての体裁を整えようと奔走する人々のお話ですが、藤原不比等とか、山上憶良等、私も知っている人も登場します。忍裳(おしも)がもっと活躍する場面が出てくれば、充分映像化しても面白くなると思うんだけどな。
     とは言え、熱量を感じる大河小説でありました。
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    投稿日:2019.11.03

  • YAっぽい

    長い本でいろんな人が出てくるんですが、全体に散漫な印象です。

    投稿日:2023.02.24

ブクログレビュー

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  • ごまみそずい

    ごまみそずい

    このレビューはネタバレを含みます

    律令を完成させることで、日本が唐や新羅と渡り合えるような中央集権国家となることを目指した、人々の物語。
    持統天皇が主人公かと思ったが、彼女は大きな骨組みとして存在し、実際には兄が殺されたことが遠因で法令殿で反対派の動きを探ることになった廣手を中心に、世捨て人のふりをしつつ持統天皇を支える葛野王や、百済から亡命してきた渡来人、男装の女官人など、様々な人の想いが律令という目標に向かって収束していく。
    終盤、火事が起こり、律令を持ち出そうとする場面が好き。特に宝然と廣手のやりとりが胸熱。
    そして律令は完成し、持統天皇は累代の大王が守り継いできた権力を打ち砕き、律令の網の中に押し込んだ。国号も倭から日本となり、新しい世が始まる。その希望と胸の高鳴りを一緒に体感するようなラストだった。

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    投稿日:2023.02.01

  • 須田基平

    須田基平

    この時代の歴史小説は久しぶりで、作者も初読みでしたがとても面白かった。日本と天皇の始まりはこういう事だったのかと納得した。ストーリーや人物描写も入り込めるところがよく脇役として歌人も登場し彩りが加わった。この作者の他の作品も読んでみたいと思った。続きを読む

    投稿日:2022.11.05

  • :*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)

    :*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)

    誰も悪役に決めつけない著者の優しい視点が心地よい。
    最後の「大王」持統天皇、その意味は大王支配から官僚制への大転換。官僚制から転換するこれからの世界を想像すると、その困難さにハッとした。
    女を捨てた、人間を捨てたと揶揄される持統天皇の独白に共感。
    不比等の馬面髭面不細工描写に気を取られたが、今回は準主役というより脇役だったので、気になる存在になった。
    太政大臣(おおいまつりごとのおおおみ)大納言(おおいものもうすつかさ)など和訓読みが美しく感じた。

    中央公論新・日本の歴史3記述「対馬から金は出なかった」が五瀨の逸話に発展していて、さすがだなあと思った。
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    投稿日:2021.09.18

  • たすきがけ

    たすきがけ

    歴史初心者には、とても難しかったですが、とても興味深く面白く読めました。

    遥か昔から、平安に生きることを願いながら、大きな流れの中で自分のできる事に命を燃やしてきた人の思いが、少しずつ繋がって今ここにあるのかもしれないと、感じます。

    ずっと、続けていくことや、継承していくことはとても難しいことですが、今出来る自分を懸命に生きられたら良いなと思いました。
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    投稿日:2020.11.29

  • DJ Charlie

    DJ Charlie

    「7世紀の終わり頃から8世紀に切り替わるような頃」というのは、日本史では「持統天皇から文武天皇の時代」というようなことになる。現在の奈良市に在った平城京に遷都する前の、現在の橿原市に在った藤原京、読んだばかりの小説では推定される当時の呼称の新益京(あらましのみやこ)が築かれて日が浅い頃のことである。
    本作の主要視点人物は、阿古志連廣手(あこしのむらじひろて)(=作中では主に「廣手」)である。一部は讃良大王(さららのおおきみ)(=作中では主に「讃良」)となっている。
    因みに讃良大王(さららのおおきみ)というのは女帝の持統天皇である。現在でも知られている「〇〇天皇」というのは「諡号」というもので没後に冠せられる呼称である。存命中は、漠とした天皇に対する敬称で呼ばれるか、皇族の中での名で呼ばれることになる。そしてこの讃良の「大王」(おおきみ)という尊称だが、彼女の時代、後継の文武天皇(=作中では珂瑠(かる)王子または珂瑠(かる)大王)の頃に律令が定められたことを契機に「天皇」(すめらみこと)となって行く。
    本作はその「天皇」(すめらみこと)という呼称、「日本」(ひのもと)という国号が創出されて行ったという経過を背景とするような物語が、若者の成長譚というような色合いで、時代モノらしい謀略や冒険や戦いという要素も加えて紡がれている。
    廣手が新益京(あらましのみやこ)を目指して旅をしているという辺りから物語が起こる。紀伊国の牟婁(むろ)に在る地方豪族の次男である廣手は、新益京(あらましのみやこ)で仕事を始めようというのだった。
    廣手には八束(やつか)という異母兄が在った。文武に優れ、周囲の人達に慕われていた兄を廣手自身も敬愛していたのだった。その兄の八束は仕事をするために郷里を離れていて、新益京(あらましのみやこ)で不慮の事故によって他界していた。その兄を追って、新益京(あらましのみやこ)で働くことになる。
    本作では、廣手が色々な出来事に出くわす中、「天皇」(すめらみこと)という呼称、「日本」(ひのもと)という国号が創出されて行ったという経過にまで関わることとなり、兄の「不慮の事故」の真相にも迫るというような物語が展開する。
    一口に語りきれないような、多彩な要素を含む、なかなかに興味深い作品である。本作に出くわすことが出来て善かった!!
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    投稿日:2020.11.07

  • Ryohei

    Ryohei

    このレビューはネタバレを含みます

    持統天皇の治世、律令制の確立に奔走する者たちを描いた壮大な物語。概略だけを見れば地味なテーマではあるが、過去の遺産を捨てきれない古い勢力による反抗により話は国家を揺るがす大きな事件を生み出す。

    主人公の廣手たちの行動が律令国家の未来への希望を原動力としている点が非常に気持ち良い。制度は作るだけでは不十分であり、その中で動く人間がよく理解し、柔軟に対応してこそ本当の価値を生み出す(413p)。今に通じるものもある。

    ハイライトは廣手が兄の仇である大麻呂と対峙するシーン。諦観と後悔から自分を殺してみろと挑発する大麻呂に対し、廣手は兄の首を取るより国家に尽くすよう懇願する道を選ぶ(p403)。その上の首謀者である大伴御行や丹比嶋に対しても、律に照らした処分を望む(p490)この行動の一貫性と真っ直ぐな心持ちに爽快感を覚えさせられた。その点でも大河小説でありながら青春小説の側面が強いと感じた。これはこれまで読んだ澤田先生の作品に共通して見られると思う。

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    投稿日:2020.09.20

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