さくらもちさんのレビュー
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16
このユーザーのレビュー
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ポーツマスの旗
吉村昭 / 新潮社
日露戦争
3
戦争とはこのように終わらせるものなのかと納得しました。
日本の近・現代史のことは本当に知らなくて、「日露戦争に勝利した」と知っていただけなので興味深かったです。
また、冒頭いきなりの「日本の国旗のはじ…まり」がおもしろいのですが、国歌については後半ときどき「国歌が演奏された」という感じでさらっと出てくるだけなのが少し気になりました。国歌の成り立ちも知りたかった。
続きを読む投稿日:2014.10.12
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女ことばと日本語
中村桃子 / 岩波新書
やはり短い伝統だった
2
会話文における女性ことばは「実際にこんな口調でしゃべる人はいない」といわれつつもそう書かないとなんとなく自然な感じがしない、という違和感に常につきまとわれますが、その引っかかりが部分的に解明された気が…します。
また、女性ことばとは別に、多くの日本人が信じている「日本語は複雑で外国人には難しい」という考え方の出どころがどうも第二次世界大戦中にあるらしいという記述も興味深いです。
著者はフェミニズム、ジェンダー系の研究者なので、その主張が強く述べられているわけではありませんが、人によっては気になる部分もあるかも。
続きを読む投稿日:2014.11.22
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新装版 白い航跡(上)
吉村昭 / 講談社文庫
幕末期の医師
2
開国をきっかけにどれほど医学に進歩があったか、本当に驚かされます。それは単に欧米の医学が進んでいたというだけでなく、欧米でもまた、医学が大きく進歩する時代だったということなのでしょう。
その時代を生…きた医師の話。予備知識が全然なかったので、上巻は田舎の大工の子ががんばって勉強して留学までできるとはすごいなーと漫然と読んでいましたが、下巻で脚気の話が出てきてから俄然おもしろくなりました。
続きを読む投稿日:2016.06.05
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給食のおにいさん
遠藤彩見 / 幻冬舎文庫
最近の給食はおいしそう
2
表紙の印象からほのぼのした軽い話かと思ったら、今日の小学校や給食が抱える問題が描かれていて読みごたえがありました。すべてがすっきり解決するわけじゃないのもいい。「進級」「卒業」と3冊で話がまとまってい…るのもよかったです。給食調理室の日常業務も興味深い。
ただ、もし自分に子供がいたらと想像したときに、自分の作った食事より「給食のほうがおいしい」といわれたら複雑な気持ちかも… 続きを読む投稿日:2014.10.18
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林蔵の貎(上)
北方謙三 / 集英社文庫
間宮林蔵が主人公なのかどうなのか
1
間宮林蔵の伝記っぽい電子書籍がなかなか見つからず、これを選びましたが、伝記ではなかったです。
完全に小説の体裁で、エンターテイメントとしておもしろい。しかし Wikipedia でざっと見ると意外と史…実に沿っているようで驚きました。もちろん細部は創作なのだと思いますが(嘘だという意味ではなくて、小説として完成させるには細かいところを想像で補うしかないということです)。
ひとことで言うなら「男の友情」か?
これを読んだあとは、いま北海道で普通に人々が生活しているのが奇跡のように思えます。
続きを読む投稿日:2014.11.28
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スロウハイツの神様(上)
辻村深月 / 講談社文庫
辻村深月ワールドのファン向け
1
どことなく、一昔、二昔ぐらい前の少女漫画を思わせる設定です。それを違和感なくこれだけの分量で書き上げる筆力は本当にすごい。書いてて楽しかったんだろうなと思えてほほえましいです。
ただ、この濃密な人間…関係はちょっと息苦しいな、と思ってしまうとハマりにくい。
あと、キャラクターがみんなとにかくクリエイティブ至上主義で、さらに基本的にこのアパートにクリエイティブ業界の上位の人がやや集中しているという設定なので、みんなの世界がすごく狭い。
おせっかいだけど、「世の中はクリエイティブじゃない仕事をしている人に支えられているんだよ」って言ってやりたくなる。
続きを読む投稿日:2016.06.17