Reader Store
厳島(新潮文庫)
厳島(新潮文庫)
武内涼/新潮社
作品詳細ページへ戻る

総合評価

(6件)
4.2
2
3
1
0
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    この作品の面白さは、厳島の戦いを「合戦の記録」としてではなく、その背景や謀略まで掘り下げて描いている点にある。忍びや調略といった「見えない戦い」が鮮明に描かれ、戦いとは武力だけでなく、人心の掌握と情報戦で決まるものだと実感させられる。 毛利元就の凄みは、奇襲そのものじゃない。敵を厳島という不利な地形におびき寄せ、「攻めれば勝てる」と信じ込ませた前段階にこそある。まさに「戦う前に勝負を決める」孫子の兵法そのものだ。 陶晴賢が厳島に上陸したのも、罠と知らずに乗ったわけじゃない。元就が周到に仕込んだ情報工作と偽装内通によって、攻める価値があると確信させられた結果だ。さらに武断派には「大軍なら押し切れる」というおごりがあり、弘中隆兼の冷静な進言も退けられた。外から嵌められ、内側からも崩れていった。 元就はさらに、この作戦を見破れる唯一の知将・江良房栄を陶自身の手で排除させたとも言われている(諸説あり)。勝負は戦場に出る前に、すでに決まっていた。 一方、最も心を打たれるのは弘中隆兼の生き方だ。謀略を使いながらも、私欲のためには絶対に使わない。それは領民や家族、部下への深い思いやりと、仏の教えに根ざした価値観から来るものだ。 私欲がないから、視野が損得を超えて広がる。三本松の戦いの最中でも、これまでの労力や損失を脇に置き、「今下すべき決断」だけに集中して進言できた。それは上に立つ者の意思決定として最上のものだと思う。 そして冷静な判断力と、人間的な温かさが一体になっているところが隆兼の稀有さだ。何度進言を退けられても、最後まで勝機を探し続けた。知性と情の両方が宿った人物だった。 この作品は「勝者だけが正しいわけじゃない」と教えてくれる。敗者の中にこそ、より人間的で尊い生き方があるのかもしれない。 元就の調略には暗い影がつきまとう。それが彼が信長や秀吉ほどクローズアップされない理由かもしれない。でも、謀略・情報戦・人心掌握こそが戦いのリアルだと思う。華々しい武勇の裏に隠れた、見えない調略と情報戦の中にこそ「戦いとは何か」の本質があるんじゃないだろうか。

    0
    投稿日: 2026.04.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    『尼子経久』からの、中国地方 鳴神響一さんが解説で、毛利元就と弘中隆兼の二者の視点からって書いてて、そうかと思った。元就には全然共感・共鳴出来ずに、弘中視点ばっかりで作品を読んでいた自分に気が付いた。

    0
    投稿日: 2026.03.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

     27000の陶軍を、4000の毛利軍が奇襲により討ち果たした戦い。元就の周到な謀略が凄い。一方、陶軍にも元就に引けを取らない知者がいたのに、冷静で慎重な声は、愚かで勇猛な声にかき消されていく。まるで、現代日本を見ているような恐ろしさを感じる。

    0
    投稿日: 2025.11.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    陶方の武将弘中隆兼から見た、厳島の戦い。謀多ければ勝つ、とは言うものの、負けた側から見た歴史が語られる。重い

    0
    投稿日: 2025.11.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    毛利元就が大きく飛躍するきっかけとなった奇襲の戦いである厳島の戦いを描く。 当時西日本最大の勢力をもつ大内家を取り仕切る陶晴賢がひきいる二万八千もの軍勢をわすが四千もの毛利軍でいかに撃破したのか。 陶晴賢の智将弘中隆兼が魅力的であり、やはり毛利元就については好きになれない。

    0
    投稿日: 2025.10.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    弘中隆兼よりなのが気になるが、相当資料を読み込んで書かれていると想像される。史実に沿って、作者が創作された世界観に感服。毛利元就がかなり嫌いになる。

    0
    投稿日: 2025.10.11