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powered by ブクログ近年、アメリカの黒人系ヒスパニック系、アジア系、イスラム教徒のマイノリティの票を増やしているトランプ大統領。 『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書 新赤版 1938)』 渡辺靖 #ブクログ #読書 #KindleUnlimited https://booklog.jp/item/1/4004319382 渡辺靖 ワタナベ・ヤスシ 著者プロフィール 1967年生まれ。慶應義塾大学SFC教授。専攻は、文化人類学、文化政策論、アメリカ研究。上智大学外国語学部卒業後、1992年ハーバード大学大学院修了、1997年Ph.D.(社会人類学)取得。2004年、『アフター・アメリカ』でサントリー学芸賞を受賞。著書に『アメリカン・コミュニティ』(新潮選書)、『アメリカン・デモクラシーの逆説』(岩波新書)、『文化と外交』(中公新書)、『アメリカのジレンマ』(NHK出版新書)など。 「社会面ではキリスト教保守派、とりわけプロテスタントの保守派(福音派)の影響力が増した。時代の変化に応じて聖書を柔軟に解釈する主流派とは異なり、聖書を字義通り厳格に解釈し、かつ政治的に活発な点が特徴だ。家父長的な核家族のあり方が「家族の価値」とされ、人工妊娠中絶や同性婚の非合法化を求めた。また、ヒスパニック(中南米)系の移民急増に伴い、英語の公用語化運動も熱を帯びた(合衆国憲法は英語を米国の公用語 =国語とは規定していない)。 安保面ではソ連を「悪の帝国」と称し、民主主義の擁護や拡大の手段として単独行動主義や軍事力行使をも厭わない強硬論が台頭した。民主党内のハト派(反戦・平和主義)に幻滅したタカ派(リベラルホーク)も合流し、新保守主義(ネオコンサーバティブ =ネオコン)を形成した。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「これら三つは厳密には必ずしも調和しない。例えば、軍備増強は政府の歳出拡大や規制強化につながり得る。人工妊娠中絶や同性婚の非合法化は公権力による私権の侵害とも受け止め得る。自由放任の経済は社会の規範や紐帯を容易に破壊し得る。しかし、それらを「小さな政府」「家族の価値」「強い米国」といったレトリックと巧みなバランス感覚で融合し、「保守大連合」を実現したのがレーガンだった。「レーガン保守革命」と称される所以でもある。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「その根底にあるのは米国がグローバリズムによって蝕まれたという被害者意識であり、トランプの米国第一主義の通奏低音となっている。大統領就任演説でトランプは「米国の殺戮はたった今ここで終わる」と述べ、他の演説でも「今やグローバリズムの時代は終わり、これからはナショナリズムの時代だ」と繰り返した。国家の指導者が自国の利益を第一に考えることは当然だとしても、トランプの掲げる米国第一主義は米国がこれまでに被った不利益を徹底的に取り戻すという宣言であり、より暗く、重い。レーガンが演説で一七世紀の清教徒の指導者ジョン・ウィンスロップの説教、とりわけ「丘の上の町( a city upon a hill)」という表現を好んで用いながら、楽観的で前向きな米国のビジョンを示し続けたのとは対照的だ。さらに言えば、レーガンは笑顔とユーモアを絶やさず、しばしば自らをジョークの種にした。それに対して、トランプは険しい表情が目立つ一方で、自らの弱点や過ちを決して認めず、批判には激しく応酬した。トランプのスローガンの一つ「米国を再び偉大に( Make America Great Again)」( M A G A)はレーガンが一九八〇年の大統領選挙で用いた「米国を再び偉大にしよう( Let' s Make America Great Again)」を想起させるが、そのトーンは大きく異なる。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「伝統的に左派は平和団体や人権団体、環境保護団体、労働組合、消費者団体などとの関係が深く、自由貿易に対しては懐疑的だ。クリントン政権の北米自由貿易協定( N A F T A)やオバマ政権の環太平洋パートナーシップ( T P P)協定などにも左派は反発。バイデン大統領も T P Pへの復帰を打ち出せないでいる。加えて、一九六〇年代後半のベトナム反戦運動に象徴される反戦・平和の立場から軍備増強や「力の行使」にも否定的で、対イラク開戦を支持したヒラリー・クリントンなど主流派への不信を隠さない。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「ちなみに左派が権威主義と強固に結びついた例としては、「国家」を優先したソ連や東ドイツの国家社会主義、「人種・民族」を重視したナチスの国民社会主義が挙げられる。サンダース自身は民主社会主義の「民主」を強調することで両者と一線を画している。たしかに「生産手段の社会(国有)化」などを唱えているわけでもなく、政策的にはヨーロッパにおける社会民主主義の立場に近い。イギリスの労働党に喩えるなら、ビル・クリントンやオバマ、バイデンがニュー・レイバー(トニー・ブレア元首相ら)であるのに対し、サンダースはオールド・レイバー(ジェレミー・コービン元党首ら)といったところだろうか。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「二〇二〇年の米国が直面したもう一つの危機は人種問題であり、とりわけ黒人の尊厳を訴える「ブラック・ライブズ・マター」( B L M)運動は世界的な注目を集めた。 もともとは二〇一二年にフロリダ州オーランド郊外で起きた自警団による黒人少年射殺事件を契機に、人種差別を告発する S N S上でのハッシュタグの拡散から始まった。それが大きなうねりとなったのは、二〇年五月にミネソタ州ミネアポリスで起きた白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドの暴行殺害事件だった。「息ができない」と絶命するまでの一部始終をスマートフォンで撮影した女子高校生の動画は瞬く間に拡散。全米のみならず日本を含む世界各地で、人種や民族、ジェンダー、宗教などをめぐる差別への抗議運動が広がった(例えばインドネシアでは、パプア系住民に対する差別撤廃を呼びかける「パプアン・ライブズ・マター」( P L M)運動が生じた)。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「B L M運動に対する不信感はトランプ支持者や共和党内でも広く共有されていた。米ピューリサーチセンターの調査によると、フロイド事件直後の二〇二〇年六月の時点では回答者の六七パーセントが B L M運動を支持していたが、同年九月には五五パーセントに減少。白人成人に限定すると、民主党支持者では九二パーセントから八八パーセントへとほぼ横ばいだったのに対して、共和党支持者では三七パーセントから一六パーセントへともともとの低水準からさらに半減している。 B L M運動に抗う側からは、白人の尊厳を唱える「ホワイト・ライブズ・マター」( W L M)や、全ての人種の尊厳を訴える「オール・ライブズ・マター」( A L M)、警察を擁護する「ブルー・ライブズ・マター」( BlueLM。ブルーは警官の制服の色とされる)などのスローガンを掲げる運動も派生した。 B L Mの側からは、いずれも B L M運動の意義を矮小化するものであり、白人ナショナリズムと表裏一体であるとの批判の声が上がった。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「ちなみに、二〇一八年にロイターが Ipsos(マーケティングリサーチ会社)やバージニア大学政治センターと行った共同世論調査によると、「現在、米国では人種的マイノリティが攻撃されている」という指摘に、強くまたは多少なり同意すると答えた人が五七パーセントだったのに対し、「現在、米国では白人が攻撃されている」と答えた人も四三パーセントいた。「白人ナショナリズム」に関しても八パーセントが同意していた( Reuters/ Ipsos/ UVA Center for Politics Race Poll 2018)。白人ナショナリズムに共感する――あるいはその素地を有する――米国民は少なからずいるということだ。二〇二二年の世論調査によると、政治的指導者が白人ナショナリズムを非難することが「全く」ないし「さほど」重要ではないと答えた人は、民主党支持者で一〇パーセントだったのに対し、共和党支持者では四八パーセントに達した( CBS News/ YouGov poll, May 22, 2022)。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「 当然ながら、銅像撤去から歴史記述に至るまで、右派からの反発は凄まじい。トランプは一連の動きを「左翼文化革命」と糾弾。二〇二〇年秋には自虐史観ではなく「愛国教育」を推進するための大統領令に署名し、諮問機関として「一七七六年委員会」を設置した。同委員会がトランプ退任の前々日に提出した報告書は「一六一九プロジェクト」とはおよそ正反対の内容で、公民権運動やフェミニズムの意義にも疑念を挟んだ。しかし、一八人の委員の中に米国史の専門家が皆無だったこともあり、アメリカ歴史学会( A H A)や大学出版局協会( A U P)などから批判が続出。バイデンは大統領就任初日に大統領令で同委員会を廃止した。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「だ。「学校では自分が生まれ育った価値観が否定され、試験で良い点数を取るためにわざとリベラルな解答を書かなければならない」と疎外感を抱く生徒もいると主張。二か月間に及ぶ議論の末、決議は採択されたものの、原案よりかなり控え目な文言となった。トラバースシティは人口約一万六〇〇〇人で、うち白人が九割以上を占める小さな町だが、 C R Tをめぐって住民間の感情は大きくもつれた。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「このように自らにとって「自然」と思われた規範や制度が次々と否定され、尊厳や居場所が失われつつある状況を、右派は「キャンセル文化」と批判する。「政治的に正しくない」とされる言動が S N Sなどで拡散・炎上し、社会的立場を追われる風潮を揶揄する表現だ。米国の過去は恥辱の歴史でしかないのか。「多様性」とは自らの尊厳や居場所を否定する隠語でしかないのか。自らは謝罪と補償を行う存在でしかないのか。こうした疑念が右派の被害者意識をさらに駆り立てている。年に一度の保守派――もっとも近年はトランプ支持者を中心に右派が存在感を強めている――の祭典である「保守政治行動会議」( C P A C)の二〇二一年のテーマは「キャンセルされない米国( America Uncancelled)」で「キャンセル文化」への敵対心を露わにした。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「しかし、歴史の極端な単純化、専門知の否定、議会手続きや独立した司法機関の軽視、政治的多元性への不寛容、マイノリティ(移民・難民、人種、性的指向など)に対する侮蔑的言動など、二〇世紀のファシズムの特徴と重なる様相を呈したことも否定し難い。ワイマール共和国の立憲制度や選挙制度を通してナチスが台頭した当時、オーストリアの法学者ハンス・ケルゼンは「民主制の擁護」(一九三二年)と題する論文において、民主主義がまさに民主的手続きによって崩壊する逆説をこう表現している。「自由の理念は破壊不可能なものであり、それは深く沈めば沈むほどやがて一層の情熱をもって再生するであろうという希望のみを胸に抱きつつ、海底に沈み行くのである」(鵜飼信成・長尾龍一編『ハンス・ケルゼン』東京大学出版会、一九七四年)。党派的な選挙区割りや大統領令の乱発が可能な点など、米国の政治制度には隙間も多い。規範を蝕むような政治家の言動がそこに重なれば、民主主義といえども質的劣化は容易い。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「一般的に、経済的に豊かになりミドルクラスが増えると、私有財産の保護や言論の自由、民主的な政治参加、法の支配などを求めるようになるとされる。しかし、歴史学者デヴィッド・モタデルは、ミドルクラスは自らの利益や社会秩序の安定を優先し、しばしば非リベラルな政府を支持してきたと言う。「共産主義の脅威に怯えたヨーロッパのミドルクラスは、リベラルな民主主義や議会主義の理想にはほとんど関心を示さず、右派の強者に群がったのである。ムッソリーニやフランコ、ヒトラーのような独裁者こそは、彼らの富を保護してくれるように映った」「今、世界中のミドルクラスの多くが再び非リベラルな政治に目を向けていることは驚くべきことではない。この一〇年間には様々なショックがあった。グレート・リセッション[二〇〇〇年代後半から一〇年代初頭までの世界的な景気後退]や新たな「金ぴか時代」の過剰な新自由主義は格差の拡大を招き、ほぼ全ての国でミドルクラスを圧迫している。と同時に、従来の社会の主流派はこれまで疎外されてきた少数民族や移民、貧困層などからの社会的・経済的・政治的要求に脅威を感じている。ミドルクラスの一部は、社会的・経済的地位を維持するために、ポピュリストの強者が自らの利益を守ってくれると信じ、抗議政治( protest politics)に走っている」( David Motadel, “The Myth of Middle-Class Liberalism,” New York Times, January 22, 2020)。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「もっとも、第一章で述べたように権威主義はナショナリズムと親和性が高く、その一部は自由主義やリベラル国際秩序の土台を成してきた近代啓蒙思想の理念そのものに懐疑的だ。例えば、保守系の「 F O Xニュース」の政治トーク番組の人気司会者で、トランプと懇意のタッカー・カールソン。自らを白人ナショナリストとは認めていないが、白人ナショナリストからの支持はすこぶる高い。そのカールソンは二〇二一年八月の米軍のアフガニスタン撤退後、バイデン政権が「米国を変えるため」にアフガン難民を米国に入国させていると批判した。この発想は白人ナショナリストが好む(非白人による白人文化の)「壮大な乗っ取り( great replacement)」という米国理解に連なるものだ。リベラル系の「 C N Nニュース」は、極右が集うオンラインサイトでイスラム主義勢力タリバンを賞賛する投稿が相次いでいると報じている(同年九月一日)。タリバンが反ユダヤ主義や同性愛嫌悪、女性の自由への厳しい制限を標榜している点や、わずか八万人のタリバンが米国の支援を受けた数十万人のアフガン政府軍を駆逐した点などを称えているようだ。なかには「西ヨーロッパの白人がタリバンのような勇気を持っていたら、現在のようにユダヤ人に支配されることはなかった」との投稿もあったという。ちなみに武闘派の白人ナショナリストは同年二月にミャンマーで起きた軍事クーデターを賞賛し、トランプを大統領に復帰させるために同様の行動を呼びかけていた。そのトランプはロシアのウクライナ侵攻直前、保守系のラジオ番組に出演し、プーチンがウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認したことについて、「天才」「素晴らしい」「抜け目ない」と賞賛。同地域へのロシア派兵を「最強の平和維持軍」とし、メキシコ国境の不法移民対策にも応用できると述べた。この発言はロシアのメディアに広く引用された(後日、トランプは発言を修正し、侵攻を非難)。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「権威主義が共和党の右バネを強める一方で、民主社会主義は民主党の左バネを強めている。第一章で述べたように、民主社会主義はミレニアル世代やその下の Z世代を中心に支持を広げており、格差や人権、環境などにかかわる社会正義を重視する。その根底には、貧困や差別、環境破壊などの問題は互いに深く結びついており、新自由主義と共犯関係にあるとの認識がある。新自由主義とは略奪と抑圧と破壊の体系であり、社会主義こそが正義というわけだ。例えば、全米最大の社会主義団体「アメリカ民主社会主義者」( D S A)は二〇一七年にバージニア州シャーロッツビルで白人ナショナリストと反対派が衝突した事件の後、「私たちは同志に放たれたテロを打ち負かすことができると信じています。また、より広汎な人種差別的な抑圧の体制を打ち破ることができると信じています。それには、それを生み出した資本主義体制の終焉が必要です」との声明を発している。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「A O Cは、民主社会主義の外交政策とは「帝国主義、植民地主義、搾取、「安全保障国家( security state)」の枠組みではなく、脱植民地化、国際労働権、貧困層の経済的機会の重視、先住民の権利と保護の拡大、気候変動対策のための強力な国際協定などに基づくもの」と自身のインスタグラムで述べている。また、「貿易政策とは対気候変動政策であり、気候変動に対するグローバルな協力のための最も強力な手段の一つです。もし貿易政策に気候に関するベンチマーク(指標、基準)がなければ、あなたの貿易政策は気候対応を否定していることになります。だからこそ、私は U S M C A(米国・メキシコ・カナダ協定)、別名 N A F T A 2. 0に反対票を投じたのです」と説明している。自身のツイッターでは「戦争とは階級闘争でもあります。戦争を始めた金持ちや権力者は、その決定の結果から逃れることができます。彼らの子どもたちが暴力の犠牲になるわけではありません。その代償を払うのは、紛争にほとんど口を出せなかった弱者、貧困者、労働者であることが多いのです」とし、米国が海外の戦争に関与することを非難する。格差や人権、環境などにかかわる社会正義を米国自身が実践してゆけば自ずと平和で持続可能な世界が拓けるとの信念から、国家間のパワーポリティクスや米国のハードパワー行使には極めて否定的だ。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「反共・反リベラルの立場から経済保守・社会保守・安保保守の三派が「保守大連合」を形成したのがレーガン以降の共和党だった。しかし、権威主義が台頭する中、「偉大なる古き党( Grand Old Party)」( G O P)たる共和党は大きなアイデンティティの危機に瀕している。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著 「興味深いことに、排外主義的な言動が目立ったトランプだが、二〇二〇年の大統領選挙における黒人やヒスパニック系、アジア系、イスラム教徒などマイノリティからの得票率は一六年時の大統領選挙よりも増加している。例えば、メキシコとの国境を流れるリオグランデ川沿いに位置するテキサス州ザパタ郡(人口約一万四〇〇〇人)。ヒスパニック系が人口の八五パーセントを占めるが、二〇年には五ポイント以上の差でトランプが勝利した。同郡は一二年にはオバマが四三ポイント、一六年にはヒラリー・クリントンが三三ポイントの差で大勝した民主党の牙城で、住民の多くはトランプの移民政策や国境壁建設には反対している。しかし、シェール産業に依存した労働者層が多く、バイデンが提唱する脱化石燃料の方針に強く反発した( Austin American-Statesman, November 5, 2020)。黒人やヒスパニック系の大卒者の割合は白人より低い。もちろん、アジア系やイスラム教徒の中にも低学歴層や労働者層は少なくない。ジェンダーや宗教に関して保守的な価値観を持つマイノリティも多い。」 —『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋 (岩波新書)』渡辺 靖著
2投稿日: 2026.01.17
powered by ブクログこの本は、2022年8月、今からおよそ3年前の出版ですね。 「求心力よりも遠心力を強める米国」について論じられています。 _…コロナ禍という国家的危機を前に、権威主義、民主社会主義、リバタリアニズムはそれぞれ独自の意味付けを行い、自らの主義主張と政治的立場を強めていった。 この前読んだ、『アフター・リベラル』とも同時期というか、テーマとしても権威主義の動き、リベラルの思想の流れ、が一つテーマとなっていますが、とくにアメリカの近年の政治や言説をより身近な時事ニュース等に参照しながら論じられていました。
0投稿日: 2025.07.26
powered by ブクログ蛸壺化し議論をしなくなった民主主義に価値はないが修正される余地があるのも民主主義である。もともと議論の素地がない日本では静かではあるがもっと深刻な事態になりかねないと思う。
0投稿日: 2024.12.27
powered by ブクログ保守とリベラルのあり方の変遷を辿れる一冊。 経済格差が何もかも超えて影響を及ぼしているのは、日本もそうだよなと思う
0投稿日: 2024.12.02
powered by ブクログトランプからバイデンにアメリカ大統領が変わっても、深い分断に苛まれ、遠心力が強まるアメリカの現状とその歴史的背景、今後の展望について解説。 米国流の「保守」と「リベラル」の歴史的形成過程、近年台頭する従来型の「保守」・「リベラル」とは別物の「権威主義(米国第一主義)」・「社会民主主義」・「リバタリアニズム」という潮流などの解説がわかりやすく、分断を深める現在のアメリカを理解するに当たって頭が整理された。 コロナ禍も契機に非科学的な陰謀論が米国を跋扈している現状も改めて認識し、頭が重くなるが、分断をこれ以上深めないためにも、本書で指摘されているように「陰謀論者の主張に同意する必要は全くないが、彼らが何故に過激な言説を信じるに至ったのか、理解しようとする姿勢は不可欠」だと考える。その上で、本書でも指摘されている「リベラル疲れ」というのは(リベラルな考え方にシンパシーを感じるとしても)考えなくてはならない課題の一つだと思われる。日本も他人事ではない。
0投稿日: 2023.11.12
powered by ブクログ期待してた通りの本でした。こういうのが読みたかった。同じ岩波新書のアメリカの歴史も読んでいたので、よりわかりやすかった。この著者すごい。客観的にいろいろ扱ってる。私からみた客観なのだが。
0投稿日: 2023.02.02
powered by ブクログまた渡辺靖先生だ。米国という興味深い国について、最新の分析と評論を提起し、様々な課題に不安を覚えつつ、民主主義の理想を垣間見る事例で、未来への期待を感じさせる内容は、毎度のことながら敬服する。 今回はコロナ禍で、氾濫する文字情報がいつになく沢山インプットされ、その一つ一つのドットを繋げて3次元のアメリカ社会を描こうという挑戦。決して掴むことのできないアメリカという偶像を、時代の流れとともに追いかける渡辺靖先生の著書を追いかけていくことで、自らのアメリカへの関心と理解を深め、公私共に関わり続けていきたい。
0投稿日: 2023.01.05
powered by ブクログ「実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。 これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。」 とも言われたように、民主主義は微妙なバランスの上でポピュリズム化の危険性の上に成立していたのだろう。 でもアメリカの民主主義もSNSの引き起こすポピュリズムにのまれようとしている。エコーチェンバー現象とフィルターバブル現象は、人間の根源的に持つ性質とSNSのというメディアの特性が生んだ必然ではないだろうか。 この先アメリカは新時代の民主主義を生み出せるのか、それとも本当にポピュリズムよって滅びてゆくのか。
0投稿日: 2022.12.30
powered by ブクログおすすめ資料 第533回 アメリカの描く自画像(2022.10.14) 昨年の議会襲撃事件に象徴されるアメリカの社会的分断は、 ますます深刻になっているようにみえます。 近年のアメリカ政治の変化は、 どのような状況で起こっているのでしょうか。 基本的な構図を理解しておくことは、 今秋の中間選挙に関する報道を理解するのにも役立つでしょう。 【神戸市外国語大学 図書館蔵書検索システム(所蔵詳細)へ】 https://library.kobe-cufs.ac.jp/opac/opac_link/bibid/BK00359379 【神戸市外国語大学 図書館Twitterページへ】 https://twitter.com/KCUFS_lib/status/1581876408447512577
0投稿日: 2022.10.19
powered by ブクログアメリカン・デモクラシーの逆襲の続編である。それほど新しいことは記載されていないものの、最新のこととして参考になることもあるであろう。
0投稿日: 2022.10.04
powered by ブクログ新大陸でイギリスを追い出し「大国なのに君主なき民主主義」の道を進んだ実験国家=「理念の共和国」はいま、岐路に立つ。現代アメリカの政治状況を解説する、非常にためになる本だ。 ソ連が崩壊して冷戦が決着した1990年代以降、この国は党派対立が鋭くなり、政治不信が進んだ。これがオバマ、とトランプという2人の大統領を生んだ。2人は手法は違えど根は同じなのだという(p18)。 保守は右へ、リベラルは左へ重心を移し、中道は求心力を失った。コロナとSNSはこうした動きを加速した。いまや米国は「交わることのないパラレルワールドを形成」(p170)しているのだ。本書で紹介される「キャンセル文化」だの、「暗黒啓蒙」だのといった事例は、驚きを超えて、すごく怖い。 さて、その中で、中国のような権威主義国家が持ち得ない、民主主義の自己批判力や自省力という「メタ・ソフトパワー」を維持できるか。「理念の共和国」の命運を決めるのはここだろう。もちろん、これはアメリカに限ることではない。
0投稿日: 2022.09.06
powered by ブクログ今のアメリカを理解するための著者の見立てを提示するという新書。米国民全体を巻き込んだ政治的な党派対立による分断の深刻さが主要なテーマとなっている。210ページほどの新書。 第4章までで米国の社会や政治、対外関係をマクロな視点と近年のミクロな動向の両面から捉え、これを踏まえて終章にあたる第5章で分断が深まる米国の今後を占う。現在のアメリカの動向の分析が目的だが、その背景を理解するためにアメリカの政治を中心とした基本的な歴史も紹介される。そこではヒエラルキーを重んじるピラミッド型社会の欧州とは異なる、市民主体の「自立・分散・協調」を重んじるネットワーク型の統治の画期性と、この思想についての米国の矜持が核心として重視される。 アメリカの歴史のなかで取り上げられるもうひとつの重要なポイントが、政府のあり方をめぐる「保守」と「リベラル」への支持の変遷である。世界大恐慌から1970年代までは優勢だったリベラルだったが、レーガン大統領あたりから保守派優位へと傾き、両党派が激しく反目する現代につながる。そのなかでも著者はとくにトランプ元大統領の特殊性と影響力の大きさに着目し、本書中でもっとも言及される機会の多い人物かもしれない。 本書でとりわけ印象づけられるのは、やはり「保守(共和党支持)」「リベラル(民主党支持)」間の分断の深刻さである。著者によれば現在のアメリカにおける二派の分断は生理的な嫌悪にまで及ぶ、過去にない深刻さであり、この対立の収束が可能であるかについては予断を許さないという。そして両党のなかでは、近年の変質がとくに激しいのは重要な政治家たちの離脱が目立つ共和党であるとされ、ここでもトランプ元大統領の影響の強さがうかがえる。最後は著者による、分断の行く末についての「楽観的シナリオと悲観的シナリオ」を提示して終わる。 本書内でもっとも興味深く読んだ箇所は米国の政治と社会の歴史的背景とその先にある現状をマクロな視点から捉えた第1章で、アメリカの政治にまつわる基本情報がわかりやすい。ただ、本書全体を通して伝えられる情報には重複や類似が多く、そのため読み進めるにつれて似たような内容に出くわすケースが多くなり、次第に関心が薄れていったのが正直なところだった。俯瞰的な視点からの分析に対して、具体的な生きた情報が少なく思われたことも、メリハリに欠ける印象を与えられる一因だった。個人的には期待したよりも、文献やネット上から得られる一般的な情報に偏っていたのが残念だった。現地を訪れにくいコロナ禍の現状も影響しているのかもしれない。
8投稿日: 2022.08.28
