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ある奴隷少女に起こった出来事(新潮文庫)
ある奴隷少女に起こった出来事(新潮文庫)
ハリエット・アン・ジェイコブズ、堀越ゆき/新潮社
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総合評価

135件)
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    人間が生まれてきた役割というのは大きいものです。 150年後の我々が読むことになり、知ることになるのですから。

    1
    投稿日: 2018.12.16
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    以下、思ったことをただ書き殴る。 ☟☟☟ なんか、すごく嫌な嫌悪感しかない表現がたくさんあった。 人をあげるとかもらうとか買うとか売るとか、もうなんなの?意味わかんない。 女だから、15歳を超えたら、性暴力の対象になるの?なんで?は? 特にこの2つ。なんでそんなことを考えられるんだ... でもそんなこと言ったって、わたしが同じ立場で、しかも白人側だったら、小さい頃からそれが普通の環境だったら、喜んですることなんて決してないって言いたいけど、少なくとも批判する勇気はなかったと思う。 書店でたまたま見つけて、たまたま手に取った本だったけど、この本に出合えてよかった。 夢中で読んだ。 自分の中で勝手に想像していた奴隷制とは違うところもあって、勉強になった。 でもなんか、同じ人間なのに、ただ肌の色が違うってだけのほんっとしょうもない理由で、なんでこんなひどい扱いを受けなくちゃいけなかったのかって考えると涙が出る。わたしが日本人だから、島国だから、人種差別なんて接してこなかったから、そう思うのかもしれないけど。 ジェイコブズさんの折れない強い心と聡明さ、よくこんな時代に、ちゃんと教育を受けられなかったにも関わらず、、すごい。死んだ方がマシなくらいひどい扱いだったのに。 けど最後は自由になれて、たくさんのいい人に出会えて、本当によかった。もちろん運もあると思うけど、けどまっすぐ折れない生き方をしてきたから、素敵な人に出会えたんだろうな。 (表現は違うけど)奴隷制は白人も黒人もだめにする。当事者だったのに、しかも被害者側だったのに、そう思えたことがすごい。 今の日本でもまだ差別は残ってるし、男尊女卑的考えもまだまだ蔓延ってる。けどこの時代よりは確実にマシだから、だから頑張るって変だけど、もっと社会が変わっていくように折れないで生きていこう。

    3
    投稿日: 2018.10.16
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    南北戦争当時の南部を舞台にした「風と共に去りぬ」には、奴隷解放を謳って南北戦争を勝利した北部の人間たちが必ずしも黒人を同じ人間として尊重していなかったこと、南部人たちは奴隷を所有してはいるが、その健康に心を砕き、病気の時は屋敷の女主人が献身的に看護するなど、奴隷たちは家族同然であったと描かれている。 オールコットの「若草物語」が同時代の北部の家族の物語だとすれば、「風と共に去りぬ」は南部側の視点から切り取った物語であり、物事の二面性を示す好例だと思っていた。 本書はその見方をまた新たに、そして強力に覆す。過酷な運命に抗い、自由と人間としての尊厳を求めて闘い抜く奴隷少女の物語である本書の稀有であるのは、奴隷であった人間にこれほど知的で正確で鋭い文章が書けるのかという疑問から長らくフィクションだと思われていたのが、ある研究者により著者および本書に登場する人物が実在したこと、数々の事実と符合するノンフィクションであることが判明し、120年の時を経てベストセラーとなった点だ。 著者ハリエット・アン・ジェイコブズは、奴隷所有者を忌み嫌うと同時に、彼らもまた、この社会制度の元に生まれていなければ、真のキリスト教徒として誰にも恥じない価値観を持って人生を歩めたかもしれないと語る。部落差別、人種差別、民族差別など、現代にも残る全ての差別に通じる洞察に、この時代の、人生の前半を奴隷として過ごした人物が、過酷な生活の中で到達したことに尊敬の念を覚える。 翻訳家ではない訳者の堀越ゆきさんと本書との偶然の出会い、堀越さんがこの本を今の格差社会に生きる日本の少女たちに届けたいと自ら翻訳に乗り出し、出版社に持ち込んで日本での刊行にこぎつけたという経緯もドラマチックで、この人に訳されるべくして訳されたという感じである。極めて読みやすく、それでいながら著者の心情が文字の後ろから立ち上ってくるような翻訳に仕上がっている。 ただ、あとがきの中の「地方に生まれ落ちた少女たちにデフォルトで与えられた人生から抜け出すこと」云々の記述は、やはり一面的な見方と感じざるを得ない。高校大学をアメリカで過ごし、大手コンサルタント会社でグローバルビジネスの真っ只中ではたらく著者からは、大手住宅メーカーが低予算で建てた画一的で無個性な家が立ち並び、量販店とファミレスとパチンコ屋が目立つ閉塞感に満ちた地方都市は、少女たちが夢を抱けない、抜け出したいと思う場所なのだろう。そして「地元の大手企業の工場に運良く勤められる」ことが才覚を生かしてその土地から抜け出せなかった少女たちの最大の成功であり、それさえもいつ何時巨大な権力を持った者たちに予告なく奪われるかもしれないといった状況が、自らアッパーミドルクラス出身と称する訳者には、当時の陰湿な南部の空気と重なるのかもしれない。 地方に住んでいると、都市部との格差、ギャップ、地方であるが故のハンディを感じることは確かに多い。しかし、人生とか豊かさとかは、もっと多面的で多様なものである。可能性も無限である。「どんなに努力しても、あの子たちが今持っている正しい価値観を曲げることなく、自分らしく自由に働ける仕事は、あそこにはない」との言葉は、おそらく何かに反発しながら闘いながら努力を重ねて今の場所にたどり着いたであろう訳者にとっては真実であっても、やはり一面でしかない。

    6
    投稿日: 2018.09.30
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    奴隷はお手伝いさんではなく、女中でもなく、相続や売り買いの対象となる所有物だということが、この本を読むまでわかっていなかった。

    2
    投稿日: 2018.08.31
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    映画や歴史の教科書の中でしか知らない「奴隷」。その実態を生々しく語ったノンフィクション。人間ではなく、家畜と同様に扱われ、売買され、虐待強姦は日常茶飯事、殺されても文句は言えない。白人が父親でも、奴隷の母親の子供は奴隷となり、父親は平気で母子を売り飛ばす。そんな目を覆いたくなるような事実。肌の色だけでなぜこんな差別を受けるのか。著者を守る善良な白人、同じ黒人なのに他の黒人を痛めつける黒人の存在が一層の闇を感じさせる。

    1
    投稿日: 2018.08.16
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    『アンクルトムの小屋』から映画『それでも夜は明ける』まで、米国の奴隷制度に関する話にはいくつか触れたことはあったが、白人の主人に対して最も弱い位置にいる奴隷少女の一人だった著者が語る半生には、初めて知る事実も多く、衝撃が大きかった。 そして歴史のことでかつ外国でのことと看過できないのは、専業の翻訳家ではない訳者がなぜこの本と出会ったのかを語るあとがきにも現れている。自分も少女だった頃にこの本と出会ったら、かなり影響を受けたかもしれない。それだけ現代にもつながる歴史が詰まった、重要な本であった。

    1
    投稿日: 2018.07.23
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    アメリカ南部で、奴隷として生まれ育った女性の自伝的ノンフィクションと聞いて、読んでみたいと思った本。 彼女の人生全てを握る白人の主人は、あらゆる陰湿な手を使って、彼女に性的関係を迫る。 どれほど彼女が恐ろしく辛い思いをしたのかと心が痛む。南部の沼地に住む大きな毒蛇ですら、文明社会の白人男性ほど怖くないという言葉も出てくる。 その文明社会、その文化の中では、彼女の主人のような男性が非情で卑劣とされていたわけではなく、むしろ、社会的地位のある紳士として扱われる。そして、彼自身も、自分のことを真に寛大な人物と心から思っていたのでは、と思われるふしがある。力ずくで彼女を思うままにできるところをわざわざ、彼女の子どもや親族の生活の保障やらを挙げては、彼女が自ら彼の物になるように仕向けているわけだから・・・。 その文化の中での常識となると、人間は思考停止に陥り、どんなこともしてしまえる。自分が優位な立場にあると、どこまでも残忍になり得る。そういう恐怖が時を超えて伝わってきます。 反面、知性に富み、強い意志を持った彼女の生き方は、多くの人に勇気を与えるものと思います。 舞台は19世紀だけど、人の世が続く限り消えることのない問題提起を含んだ話と思います。

    1
    投稿日: 2018.07.13
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    翻訳者のトークイベントのの取材で、問題作と聞いて読んでみた。 これはさぁ、もっと沢山の人に読まれるべき作品だね。

    1
    投稿日: 2018.06.26
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    長らく創作だと思われていたのも納得の、現実に起こり得るとは想像もつかない壮絶な回想です。 まず共感をしようにも現在の日本に生きる身には理解しにくい社会背景があります。本職の手によるものではない文章は説明不足に感じられる部分も多く、つまりこれはどういうことなのかと首を捻ってしまうことも頻繁に出てきて、著者が祖母に支えられながら良心や信仰を持ち続けられる強さを持った少女であったことだけは分かるものの、どうも寄り添いきれない。数々の出来事に、しょうがないとどこか突き放した視点で読み進め、神に背く行いでも当時はそうせざるを得なかったとする少女の懺悔に、それほど追いつめられていたのだから自分を責める必要はないと、それこそ別の世界の出来事のように感じてしまったくらいです。けれど、ふとその章を読み終えて現実の世界に戻ったときに、少女が選んだ行動を「仕方ない」と思ってしまった自分に愕然としました。現実には「仕方ない」で片付けられる行いだろうか。「追いつめられたから」で肯定していいことなのか。信仰心の篤い少女が正常な精神状態で選べる道ではありません。それまでは過酷では済まないような状況にも賢さと強さで凜と立ち続けていたように見えた少女像が崩れ、自分も少女と共にまともな判断力を失った状態だったとわかった瞬間、これは現実にあった出来事なのだと痛感し、視点が変わっていきました。 潜伏生活、脱出、家族の再会。所有者や社会を恨む間もなく、非現実的な希望を抱くこともなく、ただただ逃れ、家族を守り、生きることだけを考えてきた彼女に、人間の根源の姿をみたように思います。一時は創作の物語だとされ、埋もれていたこの作品が、回想だと証明され、現代に残るに至った意義について、考えずにはいられません。

    1
    投稿日: 2018.06.24
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    奴隷として産まれた女の子の波瀾万丈な人生。 あまりにも荒唐無稽に思われて、最初の出版後130年近くも事実だと思われていなかったのだという。書き残したこの話は、いくつもの偶然によりこうして未来で発掘され、読み継がれているのだそうだ。 あとがきに、女性サラリーマンの訳者が仕事で移動中、米国Kindleで名作古典ランキングに入っているのを発見し、夢中で読んだことをきっかけに訳したとあるのだが、ないよ!日本語訳の電子書籍版!本業じゃない方の訳なのに読みやすいし、紙も売れてるみたいだしもったいない。さらに未来に残したいとは思わんのかー! 偶然どこかでレビューを目にしたのかなんだったのかで購入したのだけど、出会えてほんとうによかった。 想いを未来に遺す、言葉と本はほんとうに素晴らしい。

    1
    投稿日: 2018.05.24
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    「事実は小説より奇なり」ということは、往々にしてあることを痛感させてくれる一冊。 同じことが『アンネの日記』にも言えるのでしょうが、ジェイコブズの場合は、ある少女に起こった出来事を事実として記すだけでなく、読者に伝えようとしています。その点において、小説を読んでいるかのように思えるときがあり、結果として文学性を獲得しています。訳者あとがきにおいて、本書を『ジェーン・エア』などの古典文学と並ぶ位置づけにしているのも頷けます。 本書の訳文はすばらしく、その読みやすさに感じ入ったのですが・・・。あとがきを読むと、現代の読者には通じにくい箇所などを割愛したりと、意図的に読みやすくしているとのこと。判断の分かれる訳業ということで★★★★。

    7
    投稿日: 2018.04.08
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    子供の頃からアメリカの奴隷制度についての書籍、映画、テレビ番組等を見てきましたが、またとても悲惨な証言に巡り合ってしまいました。奴隷制度はホロコーストに並ぶ人類史上最悪の犯罪だと思いますが、ドイツが常に反省を表しているのに比べ、アメリカの振り返りは見たことも聞いたこともありません。日本も戦時中にアジア諸国に対してやはりとてつもない罪を犯し、未だに事実認定すらせず逃げ回っていますが、アメリカとニッポンは似た者同士のお粗末な国という思いです。この本がアメリカでベストセラーになったという点がわずかな救いです。

    1
    投稿日: 2018.04.07
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    リンダが、たとえ黒人であっても、もし現代に生まれ、普通に育ち、普通に教育を受けていれば、どのような人生を送ったか…。どのような女性に育ったか…。

    1
    投稿日: 2018.03.29
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    どうコメントして良いかわからない。 実際の奴隷であった方の半生がリアルに綴られている。 人種差別だけでなく、差別は常に行われている。 区別でなく差別が。 心の弱さ、体の弱さ、生まれた地域、全てが差別になりうるし、自分が差別される側になる可能性はいつだってある。 自由に生きる。というのはとても難しい。 自分は差別に対して何もできないかもしれない。 ただその事実を理解しようとすることはできる。 この本に出会えてよかった。

    1
    投稿日: 2018.03.04
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    19世紀半ば。アメリカ南部で奴隷として生まれた女性の回想録。 こわごわ読み始めたけれど、夢中になって一気読み。 人間が人間を家畜と同様に扱う事の恐ろしさがよくわかる。 奴隷制における奴隷の悲惨さは容易に想像できるが、所有する家庭にも品性の下落ををもたらすものであることはちょっと思いがけなかった。(むしろこちらの方が怖かった。) そんな痛ましい話ではあるが、読後感はさほど悪くない。 奴隷であっても毅然として屈せず、ついには自由を手に入れるという一種の成功譚でもあるからだ。 著者の強さと賢さに感動する。 Amazonの類書に著者の写真が掲載されている。 年は重ねた姿だが、真っすぐにこちらを見る目が知的で美しい。 イラストも悪くはないけど、この写真が表紙だったらもっとインパクトがあったかも。 それにしても、このおぞましい奴隷制度を最近まで継続してきた人間社会、そして容認してきたキリスト教(だけではないけど)の教えとはなんだろうと考えざるを得ない。 人間はどうして自分より惨めな存在を欲するのか? 自分の心の中に答えを探りたい。

    2
    投稿日: 2018.02.19
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    アメリカの国営放送(VOA)が英語学習者向けに編集しているサイト「VOA Learning English」の中の1コーナー「America's Presidents」が非常におもしろくて、1代目から順番に楽しんで読んでいます。(でもまだ8代目あたりですが) で、3代目のトマス・ジェファーソンの回で衝撃を受ける事実が。 トマス・ジェファーソンと言えば、ラシュモア山に顔が刻まれている4人の大統領の一人で、「全ての人間は平等に造られている」と謳う独立宣言を起草し、今でもかなり人気のある、あのトマス・ジェファーソン。「奴隷制度には反対」を表明していたらしいですが、そんな彼が、黒人奴隷と長く性的な関係を持ち、子供も複数いたと書いてあるではありませんか。 ・・・( ゚Д゚)はぁ?! と思って、リンクが張ってあった記事から記事へと読み進めるうち、彼の正妻とその奴隷の女性は異母姉妹(つまり、父親はその奴隷の所有者)だったということも分かりました。遺族の反発などもあり、彼のこうした側面はずっと謎のひとつだったようですが、比較的最近(1980年代?)、その奴隷女性の子孫とされる人たちのDNA鑑定などを経て、今ではほぼ事実と認められ、ジュラシック・パークのサム・ニール主演でTVドラマも作られたらしい。  ま、まじすか! と、さらに関連記事をむさぼるように読んだのですが、その中で、アメリカの奴隷制を知る貴重な資料として、この本が紹介されてました。というわけで、読んでみることにしました。(・・・長い前置きでスイマセン) ジェファーソンの奥さんと、ジェファーソンの子供を産んだ奴隷とが異母姉妹だった、という事実、聞いた時は、胃がひっくりかえりそうになりましたが、この本を読めば、それが当時は非常にありふれた出来事だったと分かります。 白人紳士が黒人奴隷との間に子供を持つことは全然恥ずかしいことではなかった一方で、子供を買い取って自由にしてやることは、南部の経済基盤を脅かすとして、とても軽蔑される行為だった、と書いてあって、ビックリしました。なんだ、その都合の良い道徳観は! 著者は、当時の感覚からすれば、もしかしたらラッキーな方だったのかもしれないなと思います。狭いコミュニティに住んでいたおかげで、体面を気にする所有者から力ずくで乱暴されることはなかったのだから。(当時はレイプなんていくらでもあっただろうと思うし、彼女の所有者であるドクターも、本気で「自分は寛大だ」と思っていただろうと想像する) ジェファーソン記念館の公式サイトにアップロードされているビデオは「ここを訪れる人は、ジェファーソンが良い奴隷所有者だったかと知りたがるが、なかなか説明が難しい。制度的に、善い奴隷所有者でいるのは不可能」と言っていました。 この本を読むと、著者一人の生涯だけでなく、この制度そのものがいかに恐ろしく、抜け道がなく、奴隷たちをあらゆる方向から苦しめてきたかが構造的に分かります。 良い奴隷所有者なんてものはこの世に存在しないという事実、少なくとも、私はこの本を読むまでは分かっていませんでした。 ちなみに、この本を訳された方はプロの翻訳者ではないせいか、あとがきがちょっと変わっていて印象的でした。非常に熱い思いからこの本を訳したようで、思いが過熱しすぎて、あとがきのところどころが「ちょっと、何言ってるのか、よく分からない」状態になっていて、少し笑いました。 こういう変わった経歴の人が訳す本には、プロとはまた違った気合が入っていて良いなぁ、と思いました。

    6
    投稿日: 2018.02.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

     昨夏途中で投げ出してしまっていた本。似たような描写・感情の反復が多く飽きてしまった。重いテーマであることは分かっているのだけど。  この本に貼る大きなテーマは、人種差別、奴隷制度、そして女性蔑視も含まれるだろうか。  女性蔑視はともかくとして、モンゴロイド一色の日本で人種差別と言われてもピンとこない(民族という意味ではアイヌ、在日外国人問題はあれど、目立たない)し、奴隷制度もあくまで制度として存在したのは1000年以上前のことで、やはり身近なものとして捉えるのは難しい。性別による差別でさえ、これは私が男だからかも知れないが、それが制度化ないし構造化され、それが当たり前の世界に進んでいる以上、なかなかピンとこなかったりする。  以上のことから、この本はあくまで歴史資料であり、読み物としてはこちらの教養不足とはいえつまらないものである、というのが正直な読後感だった。もちろん、生産であり許せないことだと言うことはできるけど、身の周りとどこか細い糸でも良いから地続きでいないと、自分の中に落とし込めないのはいかんともしがたい。  ただ、たとえば主人公のためにある北部の人が彼女を善意で買ったように、奴隷制度が存在する構造の中にいる以上、それはごく当たり前のことだったのだろう。訳者が「奴隷少女が自分らしく生きるために感じなければならなかった心情が、現代の日本の少女にとってかけ離れたものであるとは私には思えない。少女たちには、奴隷制ならぬ現代グローバル資本主義的で、稚拙で雑多な情報に翻弄された現実が立ちはだかっている。」というように、見るひとが見れば、あるいは未来から見れば「奴隷」という言葉に相当するおぞましいことが今の日本で行われているのかもしれない。自分はもしかしたら加害者なのかもしれない。ドクター・フリントなのかもしれない。  そして、フリントのような人間が正しいといわれるような、現代から見れば非道な考え方が未来のスタンダードになる可能性だってある。この物語が対岸の火事としか捉えられないままであれば、そうした未来に歯止めをかけることも、疑問に思うことすらもできないのだ。

    0
    投稿日: 2018.02.04
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    極めて高い知性を持つ作者は奴隷である。自由を求め、平等を求めて想像を絶する苦闘をする。近代国家でありながら奴隷制を持つ国は、他にあったろうか?人を家畜とみなす恥づべき制度だ。先住民虐殺にせよ奴隷制にせよ、米国が銃を手放せない真の理由はここにある。

    1
    投稿日: 2018.01.21
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    ‪2018年3冊目。「奴隷制」当事者の自伝。人間が作り出した愚かな制度や法律に、同じ人間が虐げられ、想像を絶する苦悶に満ちた人生を余儀なくされ…読んでいて辛くなります。同時に、理不尽で非情な環境に身を置きながら、希望を忘れず、思慮深く、強く生きた著者を尊敬します。家族への愛や、信仰の深さから、著者は崇高な魂を失わずに生きることができたのかな。著者の家族を含め、周囲で支援してくれた様々なひとの存在に、人間の温かさを感じます。わたしも、愛を注げる生き方をしたいです。‬

    0
    投稿日: 2018.01.05
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    新年早々に重たいテーマの本を読んでしまった…! しかし、読んで良かった。 約120年前にアメリカで書かれた実話です。 アメリカ南部で奴隷として生まれたリンダ(本名はハリエット・アン・ジェイコブス)は早くに両親と死別し、12歳で好色なドクター・フリントの奴隷となった。 奴隷をレイプし妊娠させては出産後に母子ともに売ってしまう外道な男はリンダにもその魔の手を伸ばす。 ドクターから逃れるためリンダは他の白人男性の子を身ごもることを決意。 そこから長く、辛い戦いが始まる。 しかし、彼女は孤独では無かった。 奴隷制が暴く人間の堕落と、彼女を支援する人たちの崇高な精神が描かれている。 出版当時は元奴隷がこんな文章を書けるはずがないとフィクションとして見なされていた。 しかし、出版から126年後、実話と証明されるやいなや全米でベストセラーに。 人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遥かに凌ぐ格差の闇を打ち破った究極の魂の物語。

    0
    投稿日: 2018.01.05
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    奴隷制とは何か。ただ単に酷い制度だろうと思っていたが、これを読むと当時の黒人に対する白人への仕打ちは想像を絶するものがあった。 それは、人間ではなく物であり家畜でもありペット以下の扱い。 言葉には言い表せない行いは人間の業による利己的な感情から起こり、こうも人を人とは思わない愚劣なやり方ができるのかと思うと恐ろしい。 この作品から国家とは何か。法律とは何か。自由とは何か。生きるとは何か。そもそも人間とは何かを問題提起している気がする。 未だに黒人と白人の差別があるが、こういった遺恨のDNAが伝承している限り、本当の意味で心穏やかな平和はないのかもしれない。

    5
    投稿日: 2017.12.08
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    1800年代のノースカロライナ、価値ある所有物としての奴隷。主人からの虐待を逃れるため、より寛大な白人紳士の子を産む。逃亡して屋根裏に7年暮らし、北部に逃れる。 人間を堕落させる構造的なしくみを気づかせてくれる。 自分の子という認識が遺伝子によるものではない、母系性的な認識との並立。

    0
    投稿日: 2017.11.25
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     黒人奴隷による自伝です。この作品は特に文学的でもなく、はっきりいって日本語訳も上手ではないと思います。原文に問題があるのか翻訳のせいなのか判りませんが、読んでいて首をひねらざるをえないところもありました。  それでもこの作品に引きつけられる理由は、以下にあると思います。 ①この物語が事実に基づき書かれていること ②その事実があまりにも衝撃的であること ③その衝撃的事実を、黒人奴隷が自ら、飾らずありのままに書いていること  この本に描かれている奴隷制の非人道性、残虐さには驚くばかりです。奴隷とされるのは黒人だけではありません。奴隷の所有者である白人男性は、自分と奴隷との間に生まれた実の子(外見上、白人と区別のつかない人もいます)を、奴隷として平気で売るというのです。また、奴隷を家族のように受け入れ愛情をもって接しているように思われた人でさえ、いざ金に困るとその奴隷を平気で商品として競売にかけるというのです。  作品中でリンダは述べています ── 奴隷制は、黒人だけではなく、白人にとっても災いなのだ。それは白人の父親を残酷で好色にし、その息子を乱暴でみだらにし、それは娘を汚染し、妻をみじめにする。〔中略〕しかし、この邪な制度に起因し、蔓延する道徳の破壊に気づいている奴隷所有者はほとんどいない。葉枯れ病にかかった綿花の話はするが、我が子の心を枯らすものについては話すことはない。  奴隷制は法律を根拠とし、当時の人々の常識や習慣にしっかり根付いていたようです。そのため、今にして思えば信じられないような行為を人々は当たり前のことのように行い、あるいは受け入れていたのでしょう。  社会や国家というものは、個々の人間の努力や意志だけではどうにもならない悪(奴隷制、戦争、差別、貧困など)を生み出してしまうのか? それとも、そういった悪は、詰まるところ社会や国家を構成する個々の人間の本質に根ざしたものなのか? そんなあれこれを考えさせるところに、本書の一番の価値があるのだと私は思いました。

    0
    投稿日: 2017.10.25
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    すごい。あの7年間を、こう書けることがすごい。決して淡々とはしていない、けれど、荒ぶりすぎてもいない。(私が感じ取れていないだけかもしれないが。) 2017_021【読了メモ】(170911)ハリエット・アン・ジェイコブス著、堀越ゆき訳『ある奴隷少女に起こった出来事』/新潮文庫

    0
    投稿日: 2017.09.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    奴隷制度の残るアメリカ南部から逃げ出し、人間らしく生きようとした元奴隷女性の自叙伝というか啓蒙文というか。 良かった所: どれだけ困難に襲われようとも、諦めず何とかしようとする彼女の意志と行動力がすごいと思う。ある程度の自由を得ていた少女時代と、よきキリスト教的な信仰心と、祖母や弟など家族の支えが大きかったのかなぁと。 特に7年もの屋根裏潜伏がすごいし酷い。錐の穴から子供たちが見えるとはいえ、閉所暗所で何もすることがない毎日なんて体壊すか気が狂いそう。あと母親を必要とする年頃の子供たちの傍にいてやれなさ、申し訳なさが縷々書いてあって、こういう所は不変の母性愛だなあと思った。 よく分からなかった所: 「別の白人男性の子供を持てば医師の毒牙を免れる」ってのが何でかもうちょい説明してほしいかなと思う。当時のアメリカ人なら言わずもながなのかもしれないけど、子持ち女はダメなの?子供の父親に遠慮してってのもないみたいだし、何でだろう鬼畜の割に嫌われたくないというか手ぬるいなと。 あと重要人物なのに筆の重げなサンズ氏について。彼もどういうスタンスで彼女と2度も婚外子を持ったのか、金で全部解決する気だったのか、トラブルは面倒じゃなかったのか、彼女をどう思ってたのか謎なのでモヤモヤ。罪だとか恥だとか、子供たちに読まれたくなかったのか、思い出したくもないのかもしれないけど、当然ぎりぎりのドラマがあっただろうにと残念。 総評:「奴隷制度にフォーカスしたノンフィクション」だからこその重みと歪みがあるかなあと思った。自由と尊厳に対しては饒舌だし崇高。今じゃ当たり前すぎてハッとさせられる部分も多い。反面、話の進みと描写は幾分弱いかも。賢く美しく母性にあふれたハリエット個人の、狡さとか弱さにも踏み込んで、もうちょい客観性を持たせたら半生記としてもっと面白くなったのになーと図々しく思わなくもない(本の趣旨が下世話な方にブレちゃうから駄目か?)。

    0
    投稿日: 2017.08.24
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    黒人奴隷を母に生まれた少女。ある程度の教育を受ける事ができ、何とか生き延びたので、自分の境遇を書き残すことができた。 社会的な制度の上に縛られてはいない今の日本では有るけれど、昔からの習慣に縛られているのは感じる。曰く、女のくせに 女だてらに 女の子でしょ。まぁ年も年だし、今ではそんな縛りには目もくれないで、好きなことをしているけどね。

    2
    投稿日: 2017.08.22
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    * _______________________________________ 『ある奴隷少女に起こった出来事』 ハリエット・アン・ジェイコブズ 'Incidents In The Life Of A Slave Girl' Harriet Ann Jacobs ________________________________________ 好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。 卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。 自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを―。 奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。 しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。 人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遙かに凌ぐ“格差”の闇を打ち破った究極の魂の物語。 (表紙裏、内容説明より) * * あまりの内容に、ちょっと言葉が出ない…。 人間の愚かさと残酷さと想像力の欠如に、震えが走った。 * 一部本文を抜粋。 「奴隷制から生まれる、品位の堕落、悪事、不道徳について、どんなに言葉をつくしてもわたしは言い表すことができない」 * * 内容説明を読んでちょっと読むのを躊躇ったんだけど、黒柳徹子さんの言葉に後押しされて読んでみた。 これは、皆さん読んだ方が良いと思う。 * 正直、読みやすい文章ではないし目を背けたくなるような、悲しい記述で溢れてるんだけどこれは知っておくべき事だなと思った。 きっと、世界のどこかでは未だにこんな現実があるのかも知れない…。 考えさせられる。 * * * #ある奴隷少女に起こった出来事 #ハリエットアンジェイコブズ #IncidentsInTheLifeOfASlaveGirl #HarrietAnnJacobs #活字中毒 #読書 #本 #book #小説 #読書時間 #novel #Bookworm #本の虫 #読了 #読書倶楽部 #なほんだな #ブクログ #booklog #bookaddict

    1
    投稿日: 2017.08.09
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    奴隷だった本人の生涯の著書って本当に貴重だと思う。文章かけるは海外に出かけるし、生涯の生き様を見る限り容姿にも恵まれてしまったばっかりに、より苦しむことになるとは。 途中、様々な雇い主の家族を知っている著者が、奴隷制度が黒人にも白人にも害悪をもたらすとの記述が印象的だった。 やはり人としての尊厳を排除した制度は完全に人間を堕落させるのだなと。

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    投稿日: 2017.08.09
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    新潮文庫の夏の100冊の冊子を観て購入。一気に読み進む。アメリカ南部の奴隷制の真実が綴られている。 映画「それでも夜が明ける」を観た時も奴隷制の真実を知り衝撃だった。 リンダという女性の心情が文章から痛いほど想像できる。堀越ゆきさんの翻訳も素晴らしい。日本語で読むことができ感謝。今の時代だからこそ読む価値あり!佐藤優さんの解説付き。

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    投稿日: 2017.08.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    図書館より。 ブクロブで発見し、気になったので。文庫しかないので、こちらでレビューを。 スゴい作品。始めはさらっと読み飛ばすつもりだったけど、いつの間にかがっつり読んでた(笑)。 主人公の考え方がスゴい。奴隷制度って黒人だけじゃない、白人男性を豹変させ、白人女性を鬼と化す制度なんだって(ちょっと表現に語弊がありそうだけど(笑))。いいこと何にもない制度だってあの若さでしっかり考えてるところがスゴい。 私的にもうちょっと性的表現があるのかと思って読んでいたけど、そんな事もなく(想像すれば分かる程度)。それでも、この時代・宗教感覚からすれば、好きでもない男性と...は衝撃的なんだろうな(尊敬できる白人、だったのかも知れないけど)。 自分ひとりの為でなく、家族や子どもの為に頑張る女性って兎に角スゴい! 奴隷制度とか、気になる人にはオススメかな(でも、目線は偏っているのかもしれないが)。勉強になりました。

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    投稿日: 2017.08.02
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    アンネの日記を思い出す。実話だけに読んでて胸が苦しくなった。現代人がいかに恵まれた環境にいるかを知る良書だと思う。 あらすじ(背表紙より) 好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを―。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遙かに凌ぐ“格差”の闇を打ち破った究極の魂の物語。

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    投稿日: 2017.07.31
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    アメリカ南部の奴隷制度。 知ってはいたけど…ここまでとは。 この本は120年くらい忘れ去られていたという、本人が匿名で書いたため、フィクションと思われたので。 奴隷として生まれた人に字が書けると誰もが想像しないこともあり。 今でも人種差別があり、人は自分の下を作ることで満足している人もいる。 人は平等で自由である! 私も私らしく生きなくてはいけないと改めて。

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    投稿日: 2017.07.29
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    偶然出会った本。届いて一気に読みました。 150年前に実在した女性が実体験を忠実に綴った、奴隷少女の話。 当時、奴隷は読み書きができなかった時代に 運良く読み書きができたアメリカ南部の黒人女性。 自由州と呼ばれた北部の女性に、南部の奴隷女性のことを知らせたくて 筆をとったそうです。 当時は、フィクションと思われ、自費出版だったこともあり 埋もれてしまったそうですが、 いくつもの偶然が重なり、時をこえて掘り起こされたアメリカの名著です。 この本の翻訳者と同様に、 自分も読まずにはいられず、一気に読みました。 内容は大変過酷なものです。 でも、こういった歴史のうえに世界が続いていて、 今があるということを知っておくことは のちのち大変重要な要素になると思うのです。 そういった側面で、この本に出会えてよかったと思います。 気になった方は、ぜひ読んだ方がいいと思います。

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    投稿日: 2017.07.13
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    ある奴隷少女リンダの伝記小説 126年後に実話と証明され作者が主人公の奴隷少女だったとわかるという長い時を得て日の目を見た本 奴隷少女が書いたとは思えないほど知的でセンスの溢れる文章 だからこそ、執筆者を著名な白人に間違われていたのかもしれない それほど物語としての惹きつける力がある そして彼女に起こる残酷で凄惨な現実に打ちのめされる 死を選ばなかったことを単純に賞賛できないほど苛烈だった 実際自分に置き換えたら... リンダの弟ウィリアムは言う 鞭で打たれる痛みには耐えられる でも、人間を鞭で打つという考えに耐えられない リンダは思う 大きな毒ヘビですら文明社会と呼ばれる地に住む白人男性ほどは怖くはなかった リンダは奴隷売買に思う 自分の心が啓発されていくに従い自分自身を財産の一部とみなすことはますます困難になった 正しく自分のものでは決してなかった何かに対し、支払いを要求した悪人のことは嫌悪している 私は売られる 私の自由を売買される リンダは奴隷逃亡生活の苦しい中で尊厳は取り戻していく 自分を差別しない友との交流で リンダは自分の子供を奴隷制度から逃れさせるため逃亡をするが、人間の自由が売買される制度に強烈な嫌悪感を抱く 剥奪されるのは人権だけではない 尊厳や自主性、主張も持つ事を許されない 奴隷のくせに傲慢だとみなされる 聖書がなんの救いになるのだろう 何を我慢すればいいのだろう なぜ なぜ なぜ と憤るしかなかった 弱者に押し付けられる清廉という欺瞞の中で これだけの意見を持つ彼らはその聡明さが故に理不尽極まりない現実に苦しみ悶えた リンダの戦いは自由になったから終わるわけではない 奴隷制度が撤廃されても歴史は残る リンダの言葉は今を生きる私にも必要なもの 先人が血と汗と涙をふり絞って手に入れた人権、尊厳を権力の元に投げ出してはいけないと リンダという名も無き奴隷少女が綴った小さくて聡明で抗う力を与えてくれる本

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    投稿日: 2017.07.09
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    ハリエット・アン・ジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』新潮文庫。 出版から120年以上経過し、やっと陽の目をみたという貴重な自伝的ノンフィクション小説。本作に描かれているのは生まれてから物心がつくまで自身が奴隷であることを知らなかった著者が、奴隷として生きてもなお希望を失わずに、自由を求める物語である。 奴隷制度について描いた作品と言えば、アレックス・へイリーの『ルーツ』が有名である。しかし、『ルーツ』は、あくまでも事実に基づいたフィクションということで読み物としては確かに面白い作品だった。一方、本作は奴隷という身分に身を置いた経験を持つ著者が書いただけに恐ろしいまでのリアリティを感じると共に人間の残虐さを再認識する内容になっている。そして、読み進むうちに知らぬ間に著者の奴隷という視点で考えることを追体験することとなり、本当に不思議な感覚を味わうこととなった。

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    投稿日: 2017.07.06