
総合評価
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powered by ブクログ三者がそれぞれ過酷な人生を歩み偶然にも一緒に海岸に迷い込んだ鯨を見に行く重たい物語。本当に重たく普通に生きていくことの難しさを知った。
0投稿日: 2025.11.13
powered by ブクログ2025-07-27 大半は辛い。特に2章、社長の話は読むのが苦痛だった。たぶん、その状況だけは自分に絶対理解できないものだから、余計に辛かったのだと思う。 世界は自分のせいではなく残酷で、クジラは自分とは無関係に存在している。けれど、自分もクジラとは無関係に存在しているし、存在していていいんだ。
0投稿日: 2025.07.27
powered by ブクログ壊れかけた3人の主人公達の物語。結構、重いお話ですが3人のキャラが憎めなくて、何とか立ち直って欲しい思いでページをどんどん進めることが出来ました。でも、前半はしんどかった^^;
31投稿日: 2025.06.16
powered by ブクログ最初は一人の男性のお話で物語が進んでいく。章が変わると主人公が前章の男性と関わりのある女性のお話が始まる。そんなふうに章が変わるたび主人公が変わり、3人の物語が紡がれていく。 そして、バラバラだった3人の物語が一つになった時、物語の熱量が一気に高くなる。 精神的にしんどくて「もう、死にたい。」と思った時に読むと、生きるための強さをもらえるそんな小説だった。
0投稿日: 2025.05.21
powered by ブクログ手を止めることなく読み進めた。 感動しました。 由人も野乃花も正子も壮絶で、苦しかった,,,,。 特に野乃花の章と正子の章は涙止まりませんでした。 彼女たちがどうかこの先、強く逞しく生きていってほしいと思ったし、辛い時に手を差し伸べてくれる人は必ずいるという事をすごく感じた。
38投稿日: 2025.05.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
めちゃくちゃ面白かった。 4デザイン会社社長野乃花、デザイナー由人、高校生正子がそれぞれの事情の中で死を考える。 死ぬ前に一緒に座礁したクジラを見に行くことになり、その中で生きる事・死ぬことへの考えが変わっていく話。 正子の絶望がリアルで苦しくなった。 母に自分のことは伝わらない、でも母の事は理解しないといけない。好きだから切り捨てることもできない。これは地獄だと思った。 おばあちゃんの、死んだ大切の人が肩に乗っていると思ってその人達のために美味しいものを食べたり、楽しい事をしたりするといいっていう考えが良いなと思った。 大切な人を失ったりすると、悲しいし一つずつなくなっていく気がする。でも’大切だ’と思えた人やモノがいたことは素敵なことだし、もしそれがなくなったとしてもその気持ちは持ってていいと思う。その人やモノのためにもっと人生を楽しもうという考えは取り入れたいなと思った。 動物界がそうであるかのように、生きるとか死ぬとか第3者からするとどうでもいいことなんだよね。 死のうが生きようが関係ない。 助けるということも自己満足。 だったら、自分のために生きようと思えた。 幸せな時にもう1度読みたいなと思った。
0投稿日: 2025.05.03
powered by ブクログ絶望してるけどまだ死なない 自分を知らない人と話したりどこか遠くで休養したりすることって大事だし問題は解決しなくても延命していこう 今デザイン会社で働いてる人が身近にいるから重ねて読んじゃった
0投稿日: 2025.03.14
powered by ブクログある意味で毒親の元で育ったばらばらの3人が、どうにも生きるのがしんどくなった末、なぜか湾に迷い込んだクジラを見に行く話。亡くした大切な人を想うばあちゃんや、正子の母親を説得した野乃花のしなやかさが心強い。
0投稿日: 2025.03.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
『ソラナックスルボックス』では、15歳で子供を産んだ由人の妹の姿を、物語でよくある破滅した家庭の一つだと見ていた。由人、野乃花、そして正子がそれぞれの生活に苦しみ、沖合に迷い込んで自らの死を待つクジラに各々を重ね合わせる中、クジラがいる町の役員・雅晴の自殺した妹を思った、「生きてるだけで良かった」と言う言葉に出会った。それで、私は、家庭を壊した由人の妹は、病んで自殺するよりよっぽど健全だと思った。 この物語を通して、私は「生」と言うものがいかに貴いものであるかを痛感した。生きてさえいれば、若く身籠っても親の束縛に反してもなんでもいいのだ。
0投稿日: 2025.02.25
powered by ブクログ1〜3章目まで家族が崩れていく様子や、死にたくなる程の苦しみがこれでもかと盛り込まれていて息がつまった。家族というものは関心がなくても愛が強すぎても子供を持っても上手くいくものではなく、たくさんの境遇がある。最後の章で座礁した鯨を観に行き、そこで出会った家族に触れ合うことで3人の気持ちが少しづつ変化していく様子が人間的でとても良かった。「鯨が生死を彷徨っている=人間が生死の選択を迷う」ことがリンクしていて考えさせられる。 死にたくなるような事は生きていたら必ずあるけど、それでも生きるしかないと思える作品。
2投稿日: 2025.01.10
powered by ブクログ正子の話は苦しくなりました。母親の愛情も行き過ぎると毒です…でも由人の母のように無関心過ぎても毒…匙加減が難しい。 妊娠してからの野乃花の母にも気持ち悪さを感じました。彼女が逃げ出してからその母がどうしたのかが気になります。 最後は3人とも前向きに人生を歩もうとしているところが救いでした!
0投稿日: 2025.01.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
Ⅰ.ソラナックスルボックス 田宮由人 北関東の農家の次男として生まれる。東京の三年生のデザインの専門学校に進む。デザイン会社に勤める。失恋と激務でうつを発症した。 溝口 由人の会社の同僚。同じデザイン学校を出た先輩。 ミカ 輸入物の子ども服や雑貨の店で働く。専門学校の一つ上の科に通っていた。由人と付き合っていたが、浮気しておるところを由人に見られた。 由人の二歳年上の兄。 由人の二歳年下の妹。 亜優太 由人の妹が中学三年で産んだ男の子。 中島野乃花 由との会社の社長。年齢不詳。潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。 畠 会社でいちばん年長の男性。経理。 長谷川 いちばん年長のデザイナー。 心療内科の医師 Ⅱ.表現型の可塑性 野々花 野々花の父 漁師。 野々花の母 缶詰工場で働く。 若本 野々花の担任で美術部の顧問。 横川英男 若本の大学の同級生。 横川英則 絵画教室の先生。若本の幼なじみで大学の同級生の息子。 晴菜 野々花の娘。 島田 由人 Ⅲ.ソーダアイスの夏休み 篠田正子 小学校入学から母に記録をつけるように言われる。 正子の父 東京に本社のある文房具メーカーの営業マン。 正子の母 最初の子を七ヶ月で亡くし、正子を大切に育てようとしている。 風花 正子と同じマンションに住む。 海老原薫 バス停で正子に水色の棒アイスを差し出した。 忍 海老原の双子の姉。 Ⅳ.迷い鯨のいる夕景 由人 野々花 正子 前園 水産課クジラ守り隊隊長。 クジラ博士 ブルーのつなぎを着た男性。 雅晴 クジラ守り隊。 ばあちゃん 雅晴のばあちゃん。
0投稿日: 2024.12.27
powered by ブクログ3人の登場人物が、それぞれ少し歪んだ家族(母親)の愛に苦しみ、仕事や人生に疲れ果て、打ち上げられたクジラを見に行く。そこで過ごす数日間で、また前を向いて生きていこうと歩き始める。最後はスッキリ。 この話は親の愛がテーマではないが、私の心に一番突き刺さった母親の愛。どれも子供が可愛さゆえに、行き過ぎてしまう行動。 自分も気を付けなくては…。 この作家さんは初めてだったけど、すごく読み易くて引き込まれてしまいました。また違うものも探して読んでみようと思います。
0投稿日: 2024.12.18
powered by ブクログ薄皮一枚で繋がっている生というか、常にどんな人も死と隣り合わせで、その中でなんとか生きれるなら生きていく。 『僕は死なない。たぶん。』 というラストが印象的だった。 『たぶん』と最後につくことで、ものすごく現実味あふれる話になった気がする。
5投稿日: 2024.10.03
powered by ブクログ#42奈良県立図書情報館ビブリオバトル「雨」で紹介された本です。 2014.6.21 https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=871700252844417&id=100064420642477
0投稿日: 2024.09.26
powered by ブクログ家庭環境に恵まれず、生きづらさを抱えた3人が偶然にも出会い、クジラを観に行くことになる。由人が突拍子に「せめてあの迷いクジラを観てから死にましょう!」と野乃花に言う流れが強引で若干無理があり、ツッコミたくなるのだが、極限状態になったら人間何を思いつくか分からないもの。こういう展開は現実にあるのだろう。 3人が出会いクジラを観に行くまで、それぞれの人生が各章で詳細に紹介されているのだが、描写がとても直球でストレート。壮絶な経験を重ねる中で、悔しさ・惨めさ・反骨精神・諦めといった感情を抱え、時には押し殺しながら、3人が静かに1人で戦ってきた様子が描かれている。 苦しんできた3人が行動を共にする中で、疑似家族のような状態になるのだが、相互に理解を示し、気遣いをしつつ、自らの再起を見いだしていく。そのキッカケが、迷いクジラの事情を理解することや、現地の老婆との交流だったのだろう。クジラの専門家が登場して、3人にクジラの体質や行動特性を語る場面が印象的であった。3人は「クジラが可哀想、早くふるさとの海へ帰って!」という大衆のエゴに流されず、一歩引いた形で、迷いクジラを自らの人生に投影させていたのだろう。
17投稿日: 2024.09.22
powered by ブクログ3人の主人公が抱える絶望感に心苦しくなりながらも、それでも生きようとする3人の姿に救われたような気がした作品でした。 本作の主人公は3人いて、1人はデザイナー会社に働く由人、そのデザイン会社を経営する野乃花。そして高校生である、正子。この3人は自らの境遇に深く絶望し、自ら命を断つことを考える。そんなおり、ニュースでクジラが座礁したと知り、人生の最後としてそのクジラを見に行くことにするというストーリー。 まず素晴らしいと思ったのは、3人の抱える絶望的な境遇の描写です。親の愛情から見放される描写、窮屈な島暮らしの中で、若気の至りで子どもを妊娠してしまう描写、親の過保護が行き過ぎてしまい、親に縛られる描写。三者三様でありながらも、しっかり絶望感が伝わる丁寧な筆致で、辛すぎて思わず涙が出そうになりました。 それでもクジラを見に行くことを通して、生への希望を見出す3人に少し勇気をもらえた気がします。生きづらさの形は変わっても、生への執着は失ってはならないのだなと改めて思わされる素敵な作品でした。
65投稿日: 2024.08.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2013年(第6回)。6位。 いろんな目にあって、迷ってる3人と迷ったクジラの話。 人間がクジラを救うとか、おこがましいね。すべて自然の摂理。 って、由人くん、きもい。ミカかわいそうw ののか、会社がんばれ まさこ、親と離れるは正解
1投稿日: 2024.08.27
powered by ブクログデザイナー由人は多忙の中メンタル不調、社長野乃花は経営難を苦に自殺寸前、そんな2人がひょんなことからうちあげられたクジラを見にいくことに。友人や親との関係に苦しむ女子高生正子も巻き込んで不思議な人間関係の物語りでした。 私個人としては、もう少し意義深い展開を期待してしまったので少しだけ残念な読後感でしたが、リアル感のある人間描写など、面白い内容かと思います。 星1つ。
1投稿日: 2024.08.20
powered by ブクログ自分ではどうしようもない不幸な境遇の三人。湾に迷い込んだ、死を待つクジラのようにもがいて生きている。一緒にクジラを観に行かなければ、それぞれ死んでいたかも知れない。 窪美澄さん作品は究極を迫ってくる。
11投稿日: 2024.08.17
powered by ブクログ若者(思春期層)が好きそうな小説。孤独に追い込んでくる社会に怒りを感じた。 特に、未熟な女子を子育て要員として閉じ込める社会、閉塞感、絶望感にイライラした。自分は絶対そうはならないぞっていう誓いと、やるせなさ
1投稿日: 2024.08.09
powered by ブクログ家庭環境に恵まれなかった結果、生きづらさを抱えてしまった3人が絡む物語。 一人目は由人、24歳。 東京のデザイン会社に就職して激務を強いられるのだが、ミスも多く自分に自信が持てずに悩み続けていた。 二人目は野乃花、48歳。 由人が勤める広告制作会社の社長。 世の不況の煽りを受けて経営に行き詰まり、死を覚悟する。 3人目は正子、16歳。 神経質な過剰とも言える程の母親からの干渉に、正子は幼い頃から自分の意志を押し殺して生きてきた。 同級生の姉と知り合って自由な行動と考えを知り、自身の考えを押し殺して生きている自分に初めて疑問が生じる。 由人はどん底に陥った野乃花が自死しようとしている事を知り、ニュースで話題になっている東の港に迷い込んでしまった鯨を見に行こうと声をかける。 お互いに死ぬのはその後でいいじゃないかとの言葉に、何故か野乃花は同意し、二人の先が見えない旅が始まる。 途中、異様な風体の正子を野乃花が見つけ、強引に鯨見物に同行させてしまう。 そして港に迷い込み、死を目前にしている鯨を見ながら、3人はそれぞれの人生を振り返る日々を送るようになる。 この小さな港町で、3人を暖かく迎え入れてくれたお婆さんの優しさが、迷える3人に大きな影響を与えることになる。
6投稿日: 2024.07.11
powered by ブクログ誰が誰を助けたとかそういうことじゃなく 人は結局は自分で行動して少し先の未来を変えていくんだと思った。 それぞれが辛い思いをしてここまでやって来た。 どこにもぶつけられない気持ちを抱えて。 クジラが海に帰れたとしても、生き延びることができるかどうかはわからないのと同じで その選択をしたからと言って、いい未来が待っているかどうかは誰にもわからない。 でも、ほんのちょっと先の未来がよくなりそうなら やってみてもいいんじゃないかなと思う。
1投稿日: 2024.04.21
powered by ブクログ総じて面白い作品だったのですが、あまりに登場人物の苦悩が生々しく描かれているのでちょっとネガティブな印象は受けるかもしれません、その意味でやや好みが分かれる作品かと思いますがとにかく文章がきれいで引き込まれました。 少し長いですがガッツリとした読み応えを求める人にはおすすめの一冊です。
1投稿日: 2024.02.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
不器用ながらも一生懸命に生きて、過ちを犯して、傷つけられて、傷つけた、察するに余りあるほどの3人(本当はおばあちゃんと雅治の2人も入れたい)が出会い迷いクジラを見に行く。 ク、クジラ、、?!?! なんとも意表をつく展開で唯一無二のストーリー。そこをすんなり受け入れてしまえるのは、全てにおいてリアリティがすごいからだと思う。全ての登場人物が本当に実在するかのような、温度と痛みを抱えている。 もうダメかと思ったクジラが、もがきながらもう一度海へ帰っていく。その後、どれだけ生きるか、そんなことは分からない。クジラを人間と同じように考えてはいけないという、身近にいたらめんどくさそうなクジラ博士の言葉が真理である気がして胸に残った、けど。それでも、人間だから人間としての心でクジラを見た時に、やっぱり希望をもらうんだよね。重ねてしまっていいじゃない。クジラに勇気をもらった人たちが少し日が差し始めた明日へと進んでいく。それぞれにまだまだ課題は山積みのままで。なんなら何も現状は変わっていないのもしれないけど、それでも一つ大切なものを握りしめた3人が!さわやかな読後感。後書きも素晴らしかったです。 一つお願いが。↓ 若本先生に連絡してあげてほしい・・・今もきっと心配しているだろうから!
2投稿日: 2024.02.18
powered by ブクログ鬱の原因を煮詰めたどろりとした文章(しかも3人分)を詰めた前半に胃もたれしながら、迷いクジラを見に行く後半まで必死に読み進めました。読了後は雨が上がったようなさっぱりとした気持ちになれるので、何か思い悩むことがある人にはおすすめできる一冊です。 死なないでいられる理由なんて、些細なものだと思います。たとえば自殺を思い立った直後に鳩に糞を落とされたとか、飛び降りる直前にアイスの広告が目に入って食べたくなったとか、意外となんでもないことが、自死から離れるきっかけになったりすると思います。 だからもし、自殺を考えている人がいるのなら、自殺を思い立って迷いクジラを見に行くことにしたこの本の3人の話を追うことで、自殺から一瞬でも離れるヒントが得られるんじゃないかな、と思いました。そういう些細なきっかけになるものが、散りばめられている作品だと感じました。 思考をリセットして、新しく始めたいときにはおすすめしたいです。
2投稿日: 2024.01.31
powered by ブクログ2023/12/29 死のうかなと思った由人。死にたくなってしまった野乃花と、死なせたくない由人。死にたくなってしまった正子と、死なせたくない野乃花。 自分が死にたくても、死んで欲しく無い人はいるんだよね。 鯨を見に行く3人。 野乃花の人生がやり切れなかった。高校生に手を出す成人は総じてダメ男。 正子の人生も涙が滲んだし、リストカットの描写が胸が痛かった。かまってちゃんで切ってるわけじゃ無い。 人の人生、何があったかなんて外からはわからない。
1投稿日: 2023.12.29
powered by ブクログ4匹の迷いクジラたちのストーリーでした。皆の根本的な問題が解決した訳ではないけど、とりあえず生き抜こうという前向きさが良かったです。
2投稿日: 2023.12.02
powered by ブクログ生きる意味を失い、生きる気力を無くした三人それぞれの苦悶に胸が苦しくなったが、クジラを見に行くというきっかけで三人が行動を共にし、現地の人々のやさしさのなかで三人の絆が強まっていく様子と、もう一度前に進んでみようという心の動きに感動した。生きることで失う悲しみや苦しみも味わうはめになるけれど、新たな光を見出し大切な何かを得ることができる。生きることが許される限り強く生き続けていこうと思わされる作品だった。
4投稿日: 2023.11.25
powered by ブクログ登場するのは3人、いずれも人生に“生きづらさ”を抱えこんでいる。勤務するデザイン会社の激務と失恋から軽度のうつになった若者の由人。その社長で、会社を潰すことになったことをきっかけに練炭自殺を試みようとする野乃花。そして神経過敏で過干渉の母の呪縛に苦しめられる高校生の正子。描かれるのは、いずれも本人のせい、というより周囲の状況や人間関係により心理的に追い込まれる、といった状況であり、しかし人がそのように追い込まれるのは、得てしてそのような状況によるところが多いのかもしれない。 その描写は、特に後半女性2人は読んでいて胸が痛くなってくるものがある。このへんの痛みは、もちろん読む側の想像力の力量みたいなものによるところもあるわけだが、作者の絶妙ともいえる筆致によって、読む者みなの精神に食い込んでいくことだろう。この3人が、なぜだか地方でニュースとなっている“迷いクジラ”を見に行くことなるわけだが、そこから先については、とっておいたほうが良いだろう。 悲劇的要素がふんだんに盛り込まれながら、決して悲愴的にはならず、かえって喜劇的なポイントも打たれ、話にいい意味で輪郭をもたらしてくれる。三者三様の生きざまが、その出会いを通して人生の化学反応といったものを生じさせ、それぞれの人生を変化させていく。それがリアルに伝わり、読む人の心に届き、またその人生にも波紋を投げかけていくのだろう。
1投稿日: 2023.11.19
powered by ブクログ絶対に死ぬな。生きてるだけでいいんだ セリフとしては月並みなひと言かなと、 抜き書きして今思うけど、小説の中でこの一節を読んだ時、涙出そうになった。
1投稿日: 2023.10.23
powered by ブクログ再読本。 生きづらさを抱えた主人公3人の半生と、その3人が一緒にクジラを見に行く旅を描いた小説。 3人それぞれが生まれ育った環境や日々の生活で感じる息苦しさの描写が詳細でリアリティがあり、一度読んだことがあっても、読みながらこちらまで息苦しいような感覚になる。 浅瀬に迷い込んで弱っていく傷だらけのクジラの描写が、傷つき途方に暮れる3人と重なるように思えた。 明確な希望や救いがあったわけではないけれど、とにかく生きてほしいという強いメッセージを感じる、清々しい終わりだった。
2投稿日: 2023.09.17
powered by ブクログ由人、正子、野乃花それぞれの短編があり、最後の章でそれぞれと関わりある周りの人々との話がある連作短編のような1冊。突拍子もなく登場したクジラが、最終的にはクジラでよかった、クジラくらいの衝撃があったからそれぞれ前に進めたんだなと思えた。 血の繋がりは家族になるのに関係なくて、自分にとって居心地がいい場所が実家になるんだなと感じた
11投稿日: 2023.09.10
powered by ブクログ様々な理由で生きることを止めようとした3人が、一緒に過ごすことでそれぞれが生きる意味を見つけて行く。 触れ合った人達がくれる優しさの大切さを感じさせてくれる作品。
3投稿日: 2023.08.31
powered by ブクログ久々の窪さんの小説。多分17冊目。何故かこの作品は読むタイミングを逃していたようで…。 この小説の主人公3人のように人生に絶望して生きる気力を無くした経験はないけれど、3人の辛さ、孤独感、絶望感がひしひしと伝わって来ました。 1番身近な家族がきっかけだった場合は逃場がなくどうしようもないですね。少しでも早く離れて暮らすことが良いのでしょうが…。この小説のように赤の他人でも心配してくれる人も話を聞いてくれる人もいる。湾に迷い込んだクジラのように生きる事と死ぬ事の間で揺れ動く3人の姿を上手く描いていたと思います。
4投稿日: 2023.08.05
powered by ブクログ2023.8.3 読了。 4章で構成され前半3章で年齢も立場も悩みも違う3人の人物が「自殺」を考えているが、不意に出会い3人で海に戻れなくなったクジラを見に行きつつ今までの自分の人生や自殺について考える物語。 厳しめの感想だと☆2.8ほど。今の自分にはハマらなかったなぁ〜という感覚でした。 解説でも絶賛していて賞も取っているのだけれど、他の小説にも出てくるようなピースとしてはありきたりなものを寄せ集めた印象を受けた。 一番心に残ったのは雅晴のおばあちゃんが9.11の事件で湧き上がった正直な気持ち。 こういった大きな事件が起こると美談にされがちで「実は〜」という後暗い現実は当事者が亡くなったり高齢になったりしてから明かされることが非常に多いので。 前半3章で創りあげた苦悩を4章で解決するには随分とアッサリかなぁ〜?解決はしてないよなぁ〜?とモヤモヤっと終わってしまった感じ。
1投稿日: 2023.08.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
うーん、残念。何だか合わないなあ。 3人の自殺願望者がすんでのところで思いとどまり、ひょんなことから一緒になり、遠方の浅瀬に迷い込んだクジラを見に行くという話。自死を思いとどまり、何とかやっていこうという光明を見出して終わり、という感じ。 ・・・ この3人のそれぞれの話があり、独立して章が設けられています。これらはディテールに富んでおり、ドラマあり、読み物として面白かったと思います。 由人。田舎出身・三人兄弟の真ん中、母親からの半ネグレクトの末、東京で道を見つけるも自らをすり減らすデザイナー。ちなみに素敵な彼女に振られる。 野乃花。絵の天才と持て囃されるも赤貧の幼少時。高校の教師にすすめられた絵画の先生と関係を持ち18で妊娠、絵画の先生は政治家となるも、家と育児に馴染めず東京へ出奔。必死で生きてデザイン会社を興すも、最終的に倒産。 正子。死んだ姉を持つが、その死が母を過保護な毒親にしてしまう。生活のほぼすべてが母親の管理下にあり、正子の鬱屈した気持ちは高校で爆発。気持ちを理解してくれた同級生の双子の兄妹の忍は病気でなくなり、その同級生も忍の死後引っ越してしまう。自分を理解する人はいなくなる。 ・・・ ここから、おそらく鹿児島県辺り?と目される地方へ浅瀬に迷い込んだクジラを見に行く、そしてそのことで由人が理性のかけらで自殺をしてはいけないということから、先ずは野乃花と寄り添い、そして偶然にその後正子と遭遇します。 なんだろう。このあたりの出来すぎ感・偶然を装う必然のような展開が、個人的には今一つに感じました。 地方の人が偶然家に招待してくれる、そこのオバアさんの暖かい歓待、その家の抱えた悲劇、そして3人の回復。 そんなにうまくいくのか?仲間も地方の方も人が好過ぎやしないか。都合よくできていないか。毒親の元に正子は帰れるのか。等々考えてしまいました。 人の可塑性が高いのはよくよくわかりますが、何だか感動させようとした?みたいな疑念すらすこし湧いてきてしまいました。 もちろん、心を病んだことのある方にとってはビビッドでリアルなのかもしれません。第一章のタイトルは「ソラナックスルボックス」で、これは解説で白石一文さんも指摘していますがうつ病のクスリらしいです。その苦難を通ってきた方は首肯しながら読めるのかもしれません。 ただ私は残念ながらでは無かったです。 ・・・ ということで、初の窪美澄さんの作品でした。 個人的には今一つ合わなかったのですが、『52ヘルツのクジラたち』のように、陰→陽への回復、他社理解、絆、みたいなテーマが好きな方には合うのかもしれません。あとはYA系を読みたい方にはお勧めできるかもしれません。 他意はありませんが、偶然にもクジラつながり。
1投稿日: 2023.07.23
powered by ブクログはじめにほのぼの系のストーリーが読みたくてタイトルからこの本を手に取ったが、全く想像と違ったストーリーでしたが、凄く面白かったです 三人の主人公がそれぞれに悩みを抱えて生きてきて、もうどうにもならなくなった時に奇跡的に出会う、それから良い方向にやっと話が進み始める どうしようもなくなった時に安易に自死を選ばずになんとか踏ん張って欲しいと願った 最近大阪でもマッコウ頑張って迷い込んで死んでしまったので特に印象に残った
2投稿日: 2023.06.03
powered by ブクログとんでもなく良かった、最初の1ページ目から没頭できた…なんでこれが話題にならないのか不思議でしょうがない
2投稿日: 2023.05.28
powered by ブクログ出版が2012年!そんなに昔だったか。 有給の穏やかな朝、ぐいぐい読み進めて充実した休日となった。 双子の部分がすごく好き。
2投稿日: 2023.05.25
powered by ブクログ死にたい人たちのための希望の本 それぞれ思い悩んで、重い傷を抱えてある日死が身近に見えた時人間はどうやって行動するんだろう
1投稿日: 2023.05.17
powered by ブクログあなたは、『迷いクジラ』を見たことがあるでしょうか? かつて給食に当たり前のように登場したとも言われるクジラ肉。しかし、今の世でクジラは、”捕鯨は是か?否か?”という問題と背中合わせに語られる存在となってもいます。調査の名の下に続けられる捕鯨、その一方でそんなクジラが泳ぐ姿を見ることを楽しみとする”ホエールウォッチング”を観光の目玉とする場所もあるなど、私たちがクジラとどのように接していくべきかは国によっても、そして人によってもさまざまな意見の中にあるのだと思います。 そんな中で時々ニュース報道に登場するのが座礁したクジラの存在です。”何らかの理由により、クジラ類が浅瀬や岩場などの海浜に乗り上げ、自力で泳いで脱出できない状態になること”を指す”座礁鯨”という言葉。映像や”ホエールウォッチング”でしか見ることの叶わないそんな巨体をまさかの身近に見るその機会。動物一頭の話にも関わらず、テレビのニュース報道に大きく話題が割かれるのは、非日常の存在が日常の中に現れる違和感、そのことによる興奮、そんなところもあるのかも知れません。 さて、ここに湾内に紛れ込んだ一頭のクジラが物語を象徴的に演出していく作品があります。『クジラの座礁なんて、はるか太古の昔から起きていたこと』と説明される事象が目の前に起きる中に人々の興奮冷めやらぬ様を見るこの作品。そんなクジラを見る主人公たちのそれぞれの人生に、この世を生きることの悩み苦しみを見るこの作品。そしてそれは、そんな物語の中に、『生きる』ということに想いを馳せ、それでも『生き』ていく人たちの姿を見る物語です。 『二階の部屋のベランダから飛び込めるほどの近さに釣り堀が見えたから』という理由で『築三十年以上は経っている古ぼけた』アパートに暮らすのは主人公の一人・田宮由人(たみや ゆうと)。『水のそばに住むこと』が『精神状態にいくらかの安定をもたら』してくれると思う由人が『日曜日。午前〇時』という時間に釣り堀を見ていると『携帯が光』ります。『野乃花ちゃん行方不明。連絡つかない』というメールは『会社の先輩である溝口から』でした。『携帯をベッドに放り投げ』、『ベッドの上に体を投げ出』す由人は、『最後に見たミカの顔や、もうこの世にはいない祖母の顔』を思い浮かべます。そして、『ソラナックスとルボックス』、『由人の心を支え』る『二つの錠剤』を飲む由人は、『去年の十二月』にベッドの上でミカに告げられた『星占い』を思い出します。『来年は由人にとってショッキングな出来事がいろいろ起こる』、『最終的にはぜんぜんまったく大丈夫』、そして『その体験を糧にして、ひとまわり大きく成長していく』というその占い。『どんなことが起こってもミカさえいれば大丈夫』と思う由人でしたが、『年明け早々』『祖母が亡くな』りました。『三人兄妹のなかで』『由人を、いちばん可愛がってくれた』という祖母の葬儀に出た由人は『疲れと哀しさと緊張と、胸のあたりを大砲で吹き飛ばされたような喪失感』を抱きます。そして、『喪服を着たまま』『ミカのマンションに向かった』由人は、『緊急のとき以外、勝手に部屋には入らないでほしい』と言われて渡されていた『合い鍵』で中へと入りました。電気が消えた室内で、『寝室のほうから、かすかに音がし』、向かうと『子猫のような声が聞こえ』ます。そこには、『それぞれにイヤフォンを装着し』てつながりあうミカと男の姿がありました。『ビニール袋が由人の手からすべり落ち』た音で『ミカが驚いた顔をして』振り返ります。『なんで』と『やっとの思いで言葉を発した由人』。その日以降、『仕事の合間を縫って、何度もミカの携帯に電話』をするも連絡がつかないために待ち伏せした由人に『合い鍵を返して』と言うミカは『仕事、仕事って、あたしのこと、いっつも一人にして放っておいて…』と言い、『今度は浮気じゃないからね』と言うと扉の向こうに消えました。主人公の一人を務める中島野々花(なかしま ののか)が社長を務める『デザイン会社』で働く由人。迷いの中に生きる由人が思い悩みながらも生きていく日々が描かれていきます。 2023年1月、大阪にある淀川の河口付近にクジラが迷い込んだというニュースが流れました。潮を吹いている様子がテレビでも大きく報道された体長8メートルにもなるというクジラ。そんな中に、新年五冊目の作品を探していた私は、これまた全くの偶然に「晴天の迷いクジラ」という作品があることを知りました。あまりに運命的なものを感じてしまい、大急ぎで手にしたというのがこの作品の読書&レビューまでの経緯です。私の選書は女性作家さんの作品を三冊セットで選んでから読み始めます。そんな選書はその作家さんの作品リストをじっと眺めて、書名とページ数(笑)から直感で決めるため、今までになかった選書パターンとなりました。今後、私にとって、この作品のことを思い出すたびに大阪・淀川のクジラのことをセットで思い出すことになるだろう、そんな印象深い作品となりました。 ということで、まずはそんな選書の起点ともなったクジラに関することから触れていきたいと思います。たまたま大きくニュース報道されるタイミングだったこともあって、クジラが河口に迷い込むということの背景事情について図らずもニュースでさまざまに知ることができた私。この珍しいタイミングの読書ということもあって、この作品のクジラ登場の記述がやたらリアルに感じられるという予想外の演出効果の中に読み進めることができました。『東京からずっと離れた南の半島で、クジラが小さな湾に迷い込んだ』というこの作品の背景。そんな中で、このような浅瀬にクジラが現れることの意味、クジラにとってのそのことの危険性がこんな風に説明されます。 『クジラには人間のような皮膚の角質層がないから、浅瀬に座礁して空気中にさらされると、火傷をして剝がれてしまう』 魚ではなく、私たちと同じ哺乳類にも関わらず海に暮らす生き物であるクジラならではの、私たちとも違う側面に驚かされます。また、こんな風に迷い込む理由について、いろんな説の中からこの作品ではこんな説明がなされます。 『マッコウクジラとかのハクジラ類は、自分から超音波を発して、反響してきた音を聞き分けて、海と陸の区別をつけ』る。『どこまでが海でどこからが陸なのか』。しかし、『内耳っていうところに寄生虫が入り込んでしまうことがあって、それで反響した音を聞けなくなって、座礁してしまうといわれている』。 なるほど、海に帰りたくても帰れない、そんな可能性もあるのかと納得感のある説明です。であれば、素人考えとして『ロープとかくくりつけて引っ張』るということが思い浮かびます。しかし、 『クジラにロープをかけて小型船で引っ張っ』た、『だけど、途中でクジラが暴れて転覆して』、『それで亡くなった人もいた』 自然界の生き物、そんな生き物を、人の安易な発想で簡単にコントロールできるほど甘くはないのだと思います。また、この作品ではこんな視点も語られます。 『一頭や二頭のクジラ助けて、海に帰したところで、生態系にはなんの影響もないもの。クジラが感謝するわけでも、ましてや地球が感謝するわけでもない』。 なるほど、このように『迷いクジラ』として感傷的になること自体、人間の思い上がりとも言える行為なのかもしれません。ちょうどリアルにクジラが迷い込んだというニュースが大々的に報道されている中にこの作品を読めたことで、一方的に流れてくるニュースに別の視点を加味することができたように思います。結果、この作品の『迷いクジラ』登場のシーンをとても感慨深く読むことができ、読書にもタイミングというものがとても重要だと改めて思いました。 また、この作品には読み進めていく中で印象的な幾つかの文章が登場します。二つご紹介します。 ・『自分が見ていたのはライチの、あの茶色い、ゴジラみたいに硬い皮の部分だけだったのか。そのごつい皮の下に白い実があることなんて、ちっとも知らなかった』。 → 『デザイン会社』の社長としての野々花の姿しか見てこなかった由人が、彼女が見せる全く別人のような側面を垣間見る中にこの比喩が登場します。そんな由人はこんな風にも思います。『自分はミカが持っているかもしれないその実の部分にたどり着いたのだろうか』。恋人だったミカの全ての側面を見れていたのかと由人が振り返るなんとも印象的なワンシーンです。 ・『あじさいの葉の上にいるかたつむりの歩みを、野乃花は連想した』 → すみません。引用する場面は濡れ場シーンからです。『ひんやりとした○○の鼻先と、それとは正反対の熱い舌先が、ゆっくりと股の間を移動した』という場面で登場するこの表現。窪美澄さんと言うとデビュー作「ふがいない僕は空を見た」の激しい性描写に度肝を抜かれました(笑)が、この作品はそういう方向性ではありませんので、ご安心ください(何を?笑) このようにサラッと登場する比喩表現にも魅せられながら読み進めることのできるこの作品。そんな作品は、四つの章が連作短編のように構成されており、第一章から第三章までに、三人の主人公が一章ずつ、視点が移りながら登場していきます。そんな三人の主人公をご紹介しましょう。 ・田宮由人: 24歳。『北関東の農家の次男』として、看護婦をしていた母親の元に誕生。『体の弱いお兄ちゃんと小さな妹』を大切にする『お母さんチーム』に対して、三人兄妹の中で唯一『おばあちゃんチーム』で育つ。追われるようにして上京。専門学校時代に『親が金持ち』のミカと出会い付き合うも不穏な気配が…。『デザイン会社』で『下っ端』として働くも暗雲立ち込め…。 ・中島野々花: 48歳。漁師の父親と、『心臓病を抱え』ながらも缶詰工場で働く母親の元、『掘っ立て小屋のような』家で育つ。『物心ついたころから』『絵を描くことが好き』なものの大学進学はままならない中に、学校教師の紹介で『絵画教室』に通うようになる。さまざまな展開を経た後に上京。『デザイン会社』を興し社長を務める。由人を雇うが、経営に暗雲立ち込め…。 ・篠田正子: 16歳。全国転勤を繰り返す家庭の次女として誕生。『細菌性髄膜炎で生後七カ月で死』んだ姉がいた。母親はその死にいつまでも囚われ、正子に『良い子にならないとだめなのよ』と言い、『お母さんを大事にしてあげないと』と繰り返し正子を諭す父親の元に育つ。『午後五時という門限』の中に高校生活を送る正子は、その生活自体に違和感を感じていきます。 三人の主人公たちは、男性一人、女性二人、そして十代、二十代、四十代と、全く異なる世界をそれぞれに生きています。そんな三人の接点は、上記の通り、野々花と由人は社長と社員という繋がりがあります。一方で、三人目の正子との繋がりですが、これを書くのはネタバレ?なのか?と一瞬思いましたが、内容紹介にこんな風に説明されていますので、そのまま触れておきます。 “デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う”。 図らずもクジラとの接点までもが内容紹介に語られていますが、だからといってこの情報を事前に知ったとしてもこの作品を読む醍醐味は全く薄れません。それよりも三人目の主人公と正子が出会う、その運命の出会い、内容紹介で”拾う”とサラッと触れられる場面を逆にワクワクした感情の中に読むことができます。三人の主人公たちが行動を共にし、クライマックスのクジラを見る場面が登場する第四章へと繋がってるいく物語展開は、それまで鬱屈とした読書を強いられた読者にとっても、まさしく光を見る展開です。 『ぐるぐるとした同じ迷路。迷っているのはクジラと同じだ、と正子は思う』。 生きることに後ろ向きになる三人の主人公たち。 浅瀬へと迷い込み命の危機と紙一重な状況に陥るクジラ。この両者は一見なんの関係もない存在です。窪さんはそんな両者を巧みに重ね合わせていきます。そんなこの作品に込められた想いを“みんな精一杯やっているんですよね...。 でも、なんとなく歯車が合わなくて、上手くいかないことも多くて”と語る窪さん。そんな窪さんは、”もし自分が辛いのであれば、どう生きようかと難しく考えるよりは、とりあえず明日まで頑張ろうと感じられたら、それが良いかなと思います”とこの作品に込められた想いを続けられます。内容紹介からは決して見えない奥深いドラマがそこに描かれるこの作品。『迷いクジラ』という象徴的な存在を物語に登場させた窪さんの深い思いがそこには描かれていたように思いました。 『私たちクジラ見に行くんだけど、いっしょに行かない?』 そんな言葉の先に、それまでそれぞれに死と対峙していた三人の主人公たちが『クジラを見に行く』という行動を共にする様が描かれるこの作品。そこには、三人の主人公それぞれが抱える人生のドラマが丁寧に描かれていました。年代も境遇も全く異なるそれぞれの主人公が生きてきた人生が描かれる中、あまりの閉塞感に鬱屈とした思いに苛まれるこの作品。ニュース報道もされる『迷いクジラ』という存在についてさまざまな思いが去来するこの作品。 さまざまなことが起こる人生の中で、私たちは何を大切にすべきなのか?光差すその結末に一つの大きな示唆を与えてくれた、そんな作品でした。
146投稿日: 2023.05.13
powered by ブクログ正確に書くと星3.3。 暗めの、人間を描いた作品。三人の主人公が登場するのだが、どの人物の人生も波乱で前の3篇はご都合主義じゃない感じ。 どの話も、そこで終わりか…となった。 もうちょっと明るい作品だと思っていた。
3投稿日: 2023.04.28
powered by ブクログ何でもいいから、とにかく生きてさえいてくれればって残された人の気持ちも、 3人の主人公みたいに、過去の後悔は抱え続けるものなんだろうし、何かある都度思い出されるものなんだろう。 しんどい時に、死ぬなよって言ってくれる人とか、そのままでいいって思える場所とか、これをやりたい!っていう情熱とか、 そういうもので何とか自分を死なせずにやっていこうって思える人が増えますように。
1投稿日: 2023.04.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
いい話 こういう救いのある話は好き 欲を言えば野々花は娘と再会してほしいし、ミカがもうちょい優しくてもいいけど、そこまでいくと都合良すぎだからちょうどいいのかも
0投稿日: 2023.04.22
powered by ブクログ苦しくて暗い話だけど最後は希望や元気をもらえる作品。 親が押し付ける歪んだ理想や、家庭内の不和などから居場所が得られず生きてきた3人。 違う生き方を模索しても親友の死や倒産、恋人との別れなどで再び孤独になり、心が折れてしまう。 希望を失うには十分すぎる体験を読んでいると胸が苦しくなる。 全てが好転するわけではなく、この物語のあともどうなるかはわからないが、 それぞれの孤独がやわらぎ背筋を伸ばしてリスタートを切る姿で終わったのでよかった。
0投稿日: 2023.04.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
登場人物全てが何かしらの困難を経て、乗り越えていく物語なんだけど、 困難が大きい割に感情や考え方の変化があまり感じられなかったので、読み終わったあとの楽しさがなく、陰鬱な景色だけが残ってしまった。
0投稿日: 2023.04.01
powered by ブクログ自殺志願者がクジラを見に行く話し。 読み終わったあとに良かったなあと安心出来た、心温まる作品。 ぜひ皆んなに勧めたい。
0投稿日: 2023.03.04
powered by ブクログ『〝クジラ〟強調月間始めました!』16 第16回は、窪美澄さんの『晴天の迷いクジラ』です。2014年以来8年ぶりの再読。 読了済はシリーズに入れないと明言したのに、何故の翻意? 我ながらの朝令暮改・支離滅裂ぶりに残念! 許して! いや〜、再読してみて以前の印象との違いに戸惑ってしまいました。2度目の方が、自身に訴えるものが強かったように思いました。経験? いや年か、そっちですね。 本書の内容は・・・ブラックデザイン会社社員と女社長、共に日々の生活に絶望しているところ、社長の故郷の入江にクジラが迷い込み、観に行きます。 途中、引きこもりの女子高生が同行し、目的地までの道中、3人それぞれが抱える複雑な事情も明かされていくという展開です。 その後はやや現実離れしているものの、クジラが無事に沖に出られたらいいねという願望と、自分たちも一歩前に踏み出そうとする意志が表れ、温かな終末と思えました。 クジラと自分を重ね、他人事と思えなかったのですね。人生の転機は何処に転がっているか分かりません。私も日々悩みを抱え(ウソつけ! この能天気!)でおりますが、共有や共感の必要性も大事だと改めて感じました。
32投稿日: 2022.11.18
powered by ブクログだいぶ前になるけれど、当時の職場のそれなりの年齢の女性たちの(しかも離婚率やや高め)ランチタイムの時、人生いつからやり直したいかという話題になり、「卵から」と答えて爆笑されたことがある。ウケを狙った訳でなく、本気だったんですけどね。読んでいて、そんな懐かしい事を思い出しました。 主人公は三人。一人目は、母親が長男を溺愛するあまり、家族が崩れていった次男の由人。二人目は、海辺の貧困家庭に生まれ、絵の才能を持て余しながら、絵画教室の教師の子供を18歳で出産し、育児放棄して家出した野々花。三人目は、長女を乳児で突然亡くた母親から異常な愛情と管理を受ける女子高生正子。 東京という都会に飲み込まれながら三人は格闘してきた。彼らは限界を感じ都会の迷子になる。そして、入江に迷い込んだクジラに会いに行く。 格別不幸そうな三人でありながら、自分に友人に近しい誰かに重なってくる。その誰かのどこかに感情移入しながら読ませてくれる。 入る事は容易でも、抜け出す事は難しい。 迷ったクジラを助けようとする人がいるように、彼らの出口も見えてくる。 いろんな事を思い出して、残像が残る様な作品でした。
53投稿日: 2022.10.24
powered by ブクログ色々なキズがある3人。 誰でも浅いキズはあるが、同じくらい深いキズを持っている人が生についても死についても教えてくれた。 自分の存在意義を確かめたい、守りたい気持ちや、自分のマイナスの沼に落ち続ける気持ち、何からも結局は逃れられない辛い気持ち。 そんな気持ちを表現しつつ生について、生きたいと思う気持ち、死ぬなよ、と伝えたくなる気持ちを心から出してくれる素晴らしい作品だと思います。
1投稿日: 2022.10.14
powered by ブクログ何らかの理由で傷ついてしまった人間に対して、何があってもその生存そのものに価値があることを伝えたいという、執筆への強いモチベーションを感じた。 ただし、窪美澄さんのそれは生半可なものではない。他人の生にかけがえのない価値があることを伝えるためには、自分自身の生のかけがえのない価値こそを理解していなければいけないという、優しさとも厳しさともとれない、窪美澄節あふれる人間讃歌だった。「ベイビー・ドライバー」にも近い問題設定だと感じた。 僕は連作短編というフォーマットがあまり好きではない。本来独立した短編だったものが、連関のない人物の生を描いているのにも関わらず、書籍化される際に取ってつけたように書き下ろされる最終章で、なし崩し的に教訓めいたテーマが与えられてしまう気がするからだ。それは、たとえ優れた短編であったとしても、一本ではマネタイズができないから、出版社が作家の意向を無視して、物語の読まれ方を捻じ曲げて”一冊の商品”として結合してしまっている気さえする。 それがこの本に関しては、(巻末の書誌情報を眺める限りではだけれども)本来関係のなかった複数の人物について書かれた別々の短編が、描き下ろしの2章を付け足すことによって、先述の”窪美澄の人間讃歌”という通奏低音に基づいた、新しい長編になっていると感じる。それが署名になっている”クジラ”という生き物をめぐって結びついていく。 作者にも、編集者にも、そして制作に関わった人間すべてに、深く愛されながら世に問われた本なのだろうと思った。 自分の人生に投げやりになってしまいそうになったときに、折に振りて読み返したいと思える本にまた一つ出会えて、幸せな読書体験だった。
0投稿日: 2022.10.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初窪美澄。 全体の3分の2が登場人物3人の辛い人生を描く事に費やされて読んでるこちらも辛くてしょうがない。最終章でカタルシスが得られるんだと自分に言い聞かせながら読み進めて… 最後、あぁよかった、みんな生きてた。読み終えたらちょっと悲しくて、でも元気がもらえたいい小説でした。
1投稿日: 2022.09.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
家族 これは、人が生まれながらにして得られる初めての人間関係である。 この物語は3人の主人公を軸に展開されていく。 3人に共通して言えるのは、家族に関する問題や喪失感を抱えていること。 本作において特に印象的だったのは、「家族の問題」。 「親ガチャ」という言葉があるように、その人の今後の人生を左右するのは家族の存在だと考えている。 親ガチャを失敗した人にしか分からないだろうが、親の言動は、子が生涯抱き続ける「価値観」に影響するのである。 私自身、親ガチャに失敗した身である。 20歳になると同時に連絡を遮断し、今や両親は私がどこに住んでいるのかでさえ知らない状態なのだ。 距離を置くまで、20年間悩み続けた。 正子や由人がそうであったように、親は子にとっての「世界」そのものであり、無条件の愛を求めてしまうのである。 大人になるにつれてその魔法はとけるが、親と離れることを決断するのは、それまでの自分の時間を否定するのと同じことなのである。 さらに、例え距離が離れたとしても、親が自分に植え付けた価値観や思い出は決して離れてはくれない。 私たちは生涯これと共に生きていかねばならない。 とはいえ、考えに考え抜いて魔法がとけたときには、自分の自由さや身軽さを知るのである。 初めて本作を読んだ、中学生の自分に教えてあげたい。 もうすぐで魔法はとけるよ、と。
0投稿日: 2022.08.04
powered by ブクログ初美澄。デザイナーの由人、その社長・野乃花、そしてJK正子。構成としては在り来たりだが、各章一人づつ丁寧に描写(主に絶望)されていくので、巧く物語に引き込まれた。最後の章ではそんな三人が鯨を見に行くという——。自殺を通し、"生"そして命について描いた作品だろうか。正子の母が一番狂気じみていて怖かった…。暗くなりがちな題材だが、鯨のおかげか(?)読後感は良い。星四つ半。
2投稿日: 2022.06.11
powered by ブクログ図書館で借りて読んだ。 これもまた、ストーリーは現実離れしてて、突拍子もない展開だが、筆者の文体が好きなので、許す。本のタイトルも魅力的で、ついつい読んでみようかという気にさせられる。でも内容は、、、
0投稿日: 2022.06.02
powered by ブクログまず、私たちはよく見た目で判断しているけれど、その人のことを見た目と話した感じだけで判断するのは違うと思った。 幸せそうにしてる人だって本人は幸せじゃないかもしれないし、辛そうにしてる人がほんとに辛いかも分からない。 人間誰しも人に簡単に話せない闇を持って生きていると思う… でも、ほんとに辛いなら今の現状から逃げたらいいし、急にクジラを見に行ってもいい 何か変わるのかもって期待を持って行動して、辛い日々を少しでも忘れる瞬間があるのならそれでいいと思いました
0投稿日: 2022.05.15
powered by ブクログなんかあんまり覚えてない。印象に残らないお話だったのかな。でも、読み終わったあとは、曇った空が少しずつ明るくなってくるような気持ちになる(空は曇ったままだけど)、なんかそれが窪美澄さんの作品だよなぁ
0投稿日: 2022.03.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
窪美澄さんの作品にドハマリし、購入。 正直、前回読んだ、「ふがいない僕は空を見た」「よるのふくら」が面白すぎてこの作品は少し霞んでしまった。前半ではそれぞれの過去があまりにも辛すぎて読むのに苦労し、(主人公はただの失恋やんけ!って思ってしまった)後半はそれぞれの心理変化がイマイチよくわからなかった。 P145 この世界で生きていくためには、求められるように、その特別ななにかを、自由に形を変えていくことの方が大事なんだ。 P364 命を救うことよりも苦しみから解放させてやる方が大事なんだから。
0投稿日: 2021.12.30
powered by ブクログ窪美澄の晴天の迷いクジラを読みました。 デザイン会社のやり手の女社長と、その部下の若い男の子、母親の愛情が重くて拒食症になってしまった女の子と3人で最後は鯨を観に行く形で、オムニバス形式でなかなか面白かったです。
0投稿日: 2021.12.21
powered by ブクログ前半は割とヘビーでずっしり。 思っていたものと違うなあと思いつつ読み進めていくと、後半は前半の重みを少しずつ癒してくれるような内容だった。 どんな人でも心に一つや二つ、辛い経験を抱えて生きているのだなあ、私だけじゃないんだなあ、って少し心が軽くなった。 そして、最終的には登場人物がそれぞれ救われるような印象を受けたので、私自身も前を向いていこうという気持ちになれた。
0投稿日: 2021.12.13
powered by ブクログ失恋と激務でうつを発症した由人。 18で産んだ娘を捨て、必死で興した会社も倒産に追い込まれ、死を決意する野乃花。 過干渉な母親のため心を壊した女子高生、正子。 三人は、湾に迷い込んでしまったクジラを見に、南へと向かう。 * 3人それぞれの生きづらさがリアルで苦しい。 そんな状態に置かれたらナチュラルに死を選びかねないな、と思う。 真実の希望を描くためには真実の絶望を描くことから始めなければならない。 白石一文の解説にもある通り、窪美澄さんの描く絶望は本当にリアルな絶望そのものだ。 * そしてラストの力強さに救われる。 逃げて、捨てて、泣いて。そうやって死なずにいる。 ”「絶対に死ぬな。生きてるだけでいいんだ」” ”ただそれだけ、言えばよかったんだ。”
0投稿日: 2021.11.14
powered by ブクログ山田風太郎賞受賞作とかいてあったので買った一冊。 人生に疲れている3人がクジラを見に行く話だった。 母親にあまり愛されてなく育った男性 母親になれなかった女性 母親に束縛されすぎてる女子高生 母親がキーワードの話かなとも思ったが違った。 それぞれがちょっとかわいそうな生い立ちをもち、うまくいかない人生を送ってその結果死のうとするのは、なんとなくわかるような気もするが、なぜかこの3人に同情は出来なかった。 クジラを見た事で死ぬのをやめその先の希望もみつかったのならいい話だったと思う。 初めて窪美澄さんの本を読んだ 読みやすくスラスラ読めた。 また違う話しも読んでみたくなった小説でした。
7投稿日: 2021.10.07
powered by ブクログものすごく簡単に説明すると、それぞれ悩みを抱えた三人が一緒に鯨を見に行く話。 「ふがいない僕は空を見た」でもそうでしたが、登場人物の抱える苦悩がとてもリアルで生々しく、感情移入しながら読めます。 登場人物達の苦悩がリアルな分、作品から漏れる希望の光が、より一層強く暖かく届いてきます。 読んだ人の中に暖かい光を灯すような作品です。
0投稿日: 2021.09.16
powered by ブクログ”くじら”という題名と表紙の写真のみ、裏表紙のあらすじはほとんど見ることなくついつい購入してしまいました。表紙から、高校生が学校内で友達と様々なことを経験する…といった話かなと思いましたが全く違いましたね。自分の本の選び方を改めた方がいいと思いつつ、こんな選び方だからこそ思いがけないような本との出会いがあるのかなとも感じました。 それぞれの登場人物の家庭・親族・地域という閉ざされた環境がその後の人生に与える影響力の大きさを感じました。そのコミュニティを出る前は”当たり前”だと思っていた価値観が、変えざるを得ない状況になる、耐えることができなくなる、”当たり前”を支えていたもののもろさに気が付く。それを子供だから親の保護下にあるべき、大人だから自分で責任を取るべきとまとめてしまうことはまた違っているのではないかと思いました。 かといって、登場人物全員を擁護するわけでもありません。いい意味でも悪い意味でも物語の登場人物というより人間味を感じるような気がしました。(周りにいたらなるべく関わりたくない人種かもしれない…と思う人もちらほらいましたが…) 最後の方はおいおいそれでいいのかというスピード感でまとまっていったように感じました。それぞれの登場人物やその周りの人が今後どうなったのか書かれてはいませんが、物事そんな早々にうまくいくなんてことはないのでみんな幸せ美談!で終わるよりも個人的にはいいのかなとも思いました。 私は結構好きな一冊でした。また期間が空いた後に読みたいと思います。
0投稿日: 2021.09.13
powered by ブクログ重くて苦しかった。 家族のすれ違い、社会の闇、色々苦しくなる。 それでも鯨を見に行くことで死より生きることへ目を向け始めた3人にほっとした。生きていくって難しい。
0投稿日: 2021.09.04
powered by ブクログこの人の書いた本を初めて読んだ。最初の1行を読んだとき「なんかしっくりくるな」っていういい予感がした。久しぶりにワクワクする作家に出会ったかもしれないと思った。 イルカの群れやクジラが浅瀬に迷い込んでしまう映像を、ニュースで何度か見たことがある。イルカもクジラも苦しそうなので、早く水がたくさんある沖に戻してあげようと、たくさんの心優しい人間たちが彼らの周りを取り囲む。 これは、辛い今の状況から逃げ出そうとしている、年も性別も生活環境も全く違う3人が、そんな状態のクジラを見に行く話だ。 地味な話かもしれないが、強烈に心惹かれる小説だ。そして読み終わった後に、自分の心の中に何か素敵なものがひとつ加わったのだと感じることができる。 狭さに息苦しさを感じて、もしくは耐えられない現実から目を背けて、またはどうしようもないしがらみにがんじがらめにされて、そこからやっと逃げ出したと思っても、またその先の世界には同じような苦しみが手を広げてわたしたちを捕えようと待ち構えているのかもしれない。生きている限り、それはずっと続くのかもしれない。もっと強くならなきゃだめだ。仲間を見つけないとだめだ。道しるべとなる希望の灯がないとだめだ。全部揃ってなくてもいい、ひとつでもあればきっと大丈夫だと思う。 ■由人24歳 北関東の田舎から上京して、デザインの専門学校に通う。特にデザインの勉強をしたかったわけじゃない。そこで知り合った1つ年上のミカと付き合うことになるが、就職した小さなデザイン会社は異常なほど忙しく、なかなか会う時間もとれない。すれ違いが続いていたある日、ミカに別れを告げられる。 仕事に忙殺され、心から愛していたミカを失い、おまけに会社は倒産の危機。やがて由人は鬱を発症する。会社の先輩に紹介してもらった心療内科でもらった薬を服用しながら、なんとか一日一日をやり過ごしていたが。。。 ■野乃花48歳 由人が勤めるデザイン会社の女社長。男のように髪を短くしているヘビースモーカー。 生まれは南のほうの半島にある小さな村。漁師の父親と缶詰工場で働く母親に育てられ、幼い頃から人並み外れて絵が上手かった。地元の政治家の息子が教えている絵画教室に、特別にタダで通わせてもらうことになるが、その息子と関係を持つようになり、10代で妊娠・結婚する。 本当はもっと絵が描きたかった。冷たいわけではないが無関心な夫の両親と、絵を諦めて父と同じ政治家の道を進み始めた夫。子育てはいつも締め切ったドアの中でひとりだった。 育児ノイローゼになった野乃花は、子どもを置き去りにして逃げ出し、東京へ行ってデザインを勉強して会社を立ち上げたが。。。 ■正子16歳 正子には姉がいたが、生後7か月で亡くなってしまった。 長女の死を未だ乗り越えることができない母親は、正子の生活に異常なほど干渉し、厳しく管理する。寄り道をすることもできず、友だちを作ることもできない。家に帰れば、姉の亡霊に憑りつかれた母親が待っている。 そんなある日、正子に声をかけてきた男の子がいた。その男の子の家に強引で誘われて訪ねてみると、癌に侵されているという妹を紹介される。生まれて初めて友だちができた正子。しかしその妹は、病状が悪化してこの世を去ってしまう。 唯一の心の拠りどころを失った正子は、部屋に閉じこもり、食べることを拒否し、自傷行為を繰り返すようになった。そしてある朝、正子はどこへ行くでもないが家を抜け出した。ここにはもういられないと思ったからだが。。。
0投稿日: 2021.08.25
powered by ブクログ死ぬ前に座礁したクジラを見に行って何か変わるのかと思いながら読んだ。 座礁したクジラは、おそらく、耳が聞こえなくて、それはクジラにとって致命的なこと。もう生きていけないことを悟って、自分から選んで沖に来たのかもしれない。 逃がしてあげることが幸せ?安楽死させることが幸せ?博士の話から、自分の中に生きる力がないと、人も動物も生きていくことはできないのだと思った。 時に家族より他人の方が、よほど力を与えてくれることもある。 エピソードの部分を読むのは苦しいけど、クジラと出会ってからは、切り替えて読める。踏ん張って生きないとね。
0投稿日: 2021.08.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
由人と野乃花と正子。3人のこれまでの半生が各章で展開されて、最終章で3人が出会い湾に迷い込んだクジラを観に行く。それぞれの物語にすごくリアリティがあって、読んでいると3人ともに感情移入をしてしまい、割と長い小説なのに一気に読んでしまった。 最後は特に何が解決したわけではないけど、それぞれが、なんとか生きようとする方向になった。どうか、もがきながらでも生きていく居場所がありますように。
4投稿日: 2021.08.08
powered by ブクログ引き込まれた。一気に読んでしまった。でも読み続けるのは苦しかった。 家族、恋人、人とのつながりがあるから生きていると苦しいんだと思う。それでも、死ななければ、そこにいればいいのだろうか。 野乃花も由人も正子も、境遇が似ていたりするわけではないけれど、どのお話もしんどかった。それでもこの人の文章は好きだなぁと思った。
1投稿日: 2021.06.26
powered by ブクログ「クジラの気持ちなんかわかるわけない。そもそも、人間は自分以外の誰かの気持ちなんて、『わかる』ことがあるのか」 「絶対に死ぬな。生きてるだけでいいんだ。ただそれだけ、言えばよかったんだ」 個人的には正子の話が1番響いた。キャラクターそれぞれの過去は気持ちもすごく伝わってきて、読んでいて苦しくなったぶん、クライマックスが少し物足りない気がした。クジラを見て自分と向き合い、また元の居場所に戻るシーンをもっと読みたかった。
0投稿日: 2021.05.19
powered by ブクログ『死ぬなよ、生きてるだけでいい。』 作中の3人みたいな出来事がなくても、ただ日々生きてるだけでしんどい時もある。恋人にひどくされた時、思い通りにいかない時、とてつもなく嫌なことがあっても生きてればなんとかなる。 何にも我慢することない、好きなことするために生まれてきたんだって。大事な人を亡くした経験はまだ無いけれど、その人の分も生きたいと思う。
0投稿日: 2021.05.07
powered by ブクログ窪美澄、何気に好きなんだよね。 小さなデザイン会社に勤める由人は、激務に幼い頃から可愛がってもらっていた祖母の死や失恋が重なってうつ病になる。 彼の会社の社長・野乃花は、過去の過ちを捨て故郷を出てからしゃにむに働いてこの会社を興していたが、倒産の危機に会社とともに人生を終わらせる決意をする。 死ぬ前に湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、母の過剰な干渉に心を壊して家を飛び出していた女子高生の正子を拾う。 この3人のここまでに生きてきた経緯が描かれる3つの章は、それぞれの背景がじっくりと描かれ、物語としてとても面白かった。 ただ、とても辛い話にも拘わらず、淡々とした文章のせいか、彼と彼女らのありようが私の中では自殺に結びつかず、まして正子を拾ってからの野乃花と由人はもはや自分が死ぬことは忘れて正子を死なせないことに腐心したようにも見え、妙な感じが残った。 まあ、クジラを見に行くことにした時から、いつしか二人は死ぬのは止めてこれまでの人生にひとつの区切りをつけに行こうとしたのだろうと思えば、正子はそのことを互いに表明するための触媒だったのだろうし、3つの章と最後の章では、3人、特に野乃花は、別の人のようにも見えるが、それは周りの人がその人の生に対して大きな影響を与えているということの裏返しとも言えるようにも思う。 そんな感じでストーリー的にはややまとまってない感もあるのだけれど、全体的な雰囲気というか落としどころは悪くはなかったと思う。
9投稿日: 2021.05.02
powered by ブクログバッドエンドや暗い悲しい映画はよく見ていたけれど、本として読んだことはあまり無かったなと。自分がこんな境遇だったら、と想像するだけで苦しくて辛くて、3人の生い立ちの話はなかなか進まなかった。 人間はこんなにも脆くて、すぐ壊れてしまうんだと再認識すると共に命の大切さ、生きているだけでいいと強く感じることができた。 1人になってしまった大好きな82歳の祖母と本作のおばあちゃんを重ねて読んで、正子とソーダアイスを並んで食べるシーンでは号泣してしまった。コロナが終わったらすぐに会いに行こう。
2投稿日: 2021.02.15
powered by ブクログ涙を溜めながら本を読むことはあっても、ここまで涙を流しながら読むのは初めてだった。 死にたくなるほどの絶望 きっとそんな絶望を抱えたことがある人は少なくないと思う。 この小説ではたまたまそんな絶望を抱えた人たちが巡り会って、擦れ合って、ほんの微かな光を掴んだけど、現実世界ではそうはうまくいかない。みんな絶望を抱えていても隠したがるから、普通に接しているだけでは本当に分からない。 『自分が見てたのはライチの、あの茶色い、ゴジラみたいな硬い皮の部分だけだったのか。そのごつい皮の下に白い実があることなんて、ちっとも知らなかった』と小説中にもあったように。 よく自分はひとりぼっちだと思ってしまうことがあるのは、人の表面しか知らないからかもしれないなって思った。 とても良い本に出会えたと思う。 これからの人生で大事にしたい本になったと思う。
1投稿日: 2021.02.06
powered by ブクログデザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う。母との関係で心を壊した彼女もまた、生きることを止めようとしていた―。苛烈な生と、その果ての希望を鮮やかに描き出す長編。
0投稿日: 2021.01.27
powered by ブクログ捻じれに捻じれた人生が絞りだすのは、生きていくということ。 (以下抜粋) ○「よく見とけよ。会社の終わりってそいつがどんな人間なのか、よくわかるから」(P.83) ○「間違えたじゃないだろ。知らなかった、だろ」(P.127) ○自分の気持ちをのみこむたびに、自分がどんどん透けていく。(P.241) ○「つらいです」 一ページにたった一行だけしか書けなかった。(P.281) ○「毎日、後悔ばっかじゃい。薬飲んだって、入院したってよかと。どげんあことしたって、そこにいてくれたらそいで」(P.402)
3投稿日: 2020.12.29
powered by ブクログ2020.10.26.読了 何とも興味深い奥深い作品。 由人、野々花、正子、それぞれの生育環境がとても切ない。貧しいこと、二番手なこと、愛すること、愛されないこと。 この作品に共鳴できない方は至極まれで、尚且つ、 金銭面、肉体的精神的健康面、人間関係、愛情、諸々すべてに満足されている方であろう。 現代社会においてはどこかに心当たりがある方のほうが多数派なのではないか? なんかホッとしたなー。この作品。 みんな頑張って生きてる!って思えた 哀しい出来事満載なのに、大丈夫!って誰かに言われてる感じ たくさんの人に読んで欲しいオススメ作品
2投稿日: 2020.10.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
死にたくなくなるヒントがあるかなって思いつつだった 1番最後の段落が好き。 おっきなぬいぐるみを抱きしめて泣いててもいいんだよって許された気持ちになった。 しかも由人はたった一人で。それでも、死なない、たぶんって。
0投稿日: 2020.10.15
powered by ブクログ主要な登場人物は3人。 広告会社勤務でデザイナーの由人24歳。その会社の社長で48歳の野乃花。引きこもり高校生の正子16歳。それぞれに深刻な事情を抱えて、それぞれ病んでいる。 そんな3人が、偶然、南の地方の湾に迷い込んだクジラを見に行くことになり、湾の近くの老女とその孫が住む家に何泊か泊めてもらえことになる。その老女も孫もまた、心に暗闇を抱えている。 完全なハッピーエンドではないが、物語の最後は、それぞれの登場人物が前を向いて歩ける状況で終わる。ストーリーに少し無理があるようには思うけれども、物語自体はとても興味深いものだ。 物語の最初、由人・野乃花・正子の順番で3人の長い物語が語られる。病んでも仕方がないであろう状況に、3人ともが放り込まれ、実際に病んでいく。実際に心を病んだ経験はないので、この物語にリアリティがあるのかどうか、本当のところはよく分からないが、感覚としては、リアリティを感じた。 それを読むのは辛かった。
13投稿日: 2020.09.06
powered by ブクログ窪美澄さんの3冊目。 ボロボロで生きてくのも辛くなった3人が座礁クジラを見に行く。 登場人物のおける環境や価値観、性格も全然違うのに共感できるのはなんでだろう。すごく文章がリアル。 おばあちゃんの、若い頃に亡くした友達を語るところで大号泣。あっちで会えるの楽しみにしてる、きれいな景色見たりやおいしいご飯食べたりするとき心の中で話しかける、そばにいる感じ、はぁ久しぶりに泣いた! 心が辛くなったときにまた読みたいな。
0投稿日: 2020.08.13
powered by ブクログ傷ついてココロを病んで、もう死ぬ生きるというようなギリギリの状態になっている人に、果たしてどんな言葉が届くだろうと言うことを、3人の主人公の物語を通して結果的にじんわりと優しいラストに導くところがさすが。 由人と野乃花と正子というなんとも奇妙でいて、でも不思議と一緒にいても違和感がないような偽の親子を演じる三人が連れ添って、入江に迷い込んだクジラを見物に向かう。 その訪れた村でのおばあちゃん達との交流がラストをとても素敵なものにしているだなぁ。 「ふがいない〜」もそうだったけれど、この人の底に流れるテーマは「生きるってしんどいよな、でもなんとか生きていこうよ」ということだとおもうのだけれど、それを押し付けがましくなく、静かに優しく語りかけてくるような雰囲気がとてもすき。 うん、これはいい話だったなぁ。
1投稿日: 2020.07.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
年齢も違う3人の男女が人生に追い込まれ、自殺を考える。でも、クジラを観に行き、ある家族に出会い、自殺を踏み止まることを考える。 てか、なんでクジラなの?笑 って思ったけど、クジラがというよりはそこで出会った環境とか人々の中で考えを一度リセットしてみたくなったのかなぁと思った。そんだけ人との出会いって人生を変える事があるんだね。
1投稿日: 2020.05.06
powered by ブクログ由人と野乃花、正子と、皆居場所がない立場に置かれた3人が出会いクジラを見に行くという 結構突飛なお話。 母が子に接する難しさが描かれている 親が兄弟に対する態度や扱いがその兄弟に精神的に辛い思いや居場所のなさを感じさせてしまうことは怖いことだ
1投稿日: 2020.01.19
powered by ブクログサクサクと読めた。 小説っていいなあって改めて思った。窪さんの作品は2作目。 前回も今回もなんだか元気の出る作品だった。 他の窪さんの本も読んでみようと思った。 生でも死でもなく、いのちを描くというのが 人情がたっぷりと感じられて わたしも息を吸うのが楽になった。
4投稿日: 2020.01.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
タイトルにひかれて。 最初は重めの鬱小説だなーというかんじだったんだけど、読み続けていくと由人はどうにか自分で立ってる。 野々花の少女時代からのギャップがすごい。九州女子は強いね。 溝口さん、偉大だ。 だれかがだれかを大きく救うわけじゃない。 めちゃめちゃ励まされるわけでもない。 もとの現実に戻らなきゃいけなくて、ぜんぜん好転なんてしてない。 それでも、ひとやすみしたから、また歩きだす。 そんなはなし。 予想外によかった。
2投稿日: 2019.08.30
powered by ブクログ3人の過去の話が辛い。とにかく辛い。 とくに野乃花の過去は、ただ人を好きになったそのことが、突然意味を変えるところにぞくっとしました。 どの話も親の存在が大きく絡んできます。 放任する親、縛り付ける親…。 親の存在の大きさがどの話からも感じられました。 親になる方の都合は子供には関係ない。 でも、心配だから、そういう親の気持ちも少しわかりました。 だけど、子供は子供で意思があり、親の愛情や、安心を求めているんだなと考えさせられました。 辛い過去の話が終わると、3人がクジラを見に行く。 そこで出会う人たちにも心に秘めたことがあって…。 正子とおばあちゃんの話に思わず涙が滲みました。 登場人物の心の機微が生々しく鮮烈に描かれます。 とても読み応えがありました。
5投稿日: 2019.06.20
powered by ブクログ「ふがいない僕は空を見た」につづき2冊目の窪美澄さん。この本も、どうしようもなく引き込まれて、むさぼるように読んだ。生きることに行きづまってしまった3人。それぞれの辛い事情がこれでもかこれでもかと描かれて、胸が痛くせつなくてたまらない。生きるって、難しい。 この結末で、よかった。
2投稿日: 2019.06.20
powered by ブクログ生きることに疲れてしまった三人それぞれのそこに至るまでの日々が読んでいてとても辛かったです。彼らの母親の行動はとても重く子供たちが可哀想で泣きたくなりました。正子の母親は既に病気だと思うし母親に寄り添う父も間違っていることは明らかなのですが、それでも自分自身が母親という立場なので、彼らの行動が全く理解できないというわけでもないことがとても辛いのです。「生きる」ことはとても難しい。でもとにかく「死なない」こと。正子が最後にきちんと言葉にできて本当にほっとしました。鯨の薀蓄にも考えさせられるものがありました。
0投稿日: 2019.06.14
powered by ブクログ由人、野乃花、正子。 それぞれ3人の中で足りない?欠けてる? 失敗とか悪いという表現ではなくて、上手く言えないけど 死んでしまいたくなってしまった人生のお話し。 共感できる事もあったし、ひねくれて考えてしまう事もありました。 あぁ、あのお店のお肉もう一度食べたいなぁとか、すごく小さな希望からでも生きる力に繋がるかもしれないって思えたし、自由な命だけど誰かに必要とされているのかもしれないとも思えた。 だけど… いやいや。 やっぱりひねくれないで… 3人の決断が良かったです! ちゃんと必要とされてたネ! ただそこにいる事ってスゴい!
2投稿日: 2019.04.23
powered by ブクログ3人の主人公がそれぞれ絶望の人生を終えたいと思う時に出会い、クジラを見る目標で繋がる。それぞれの辛い状況の時は興味深く、先が気になり読み進めるが、3人が出会った後の最終章は雰囲気もペースも変わり、まるで落としどころを作者が考えあぐねている様な感覚になった。 日々の生活に疲れた人たちがすがりたくなるような展開ですね。 由人は少々残念な感じ。説明は省かれているが会社は立ち直ったのか? 表紙に違和感。
2投稿日: 2019.04.11
powered by ブクログ窪美澄さんの作品に出てくる登場人物はどこか脆く、壊れやすいと思う。 だからこそ最後の希望が嬉しく感じられる
3投稿日: 2019.03.17
powered by ブクログ面白かった。面白かったんだけど、前回読んだ「ふがいない僕は空を見た」と否応無しに比べてしまい、それ相当のレベルを期待していたため、相対的に所々つまらなく感じた。 「なんでクジラなんだろう?他の動物ではいけない理由があるのか?」結局読み終わってもその気持ちは解決しなかった。 鯨が出始めた場面から退屈に感じた。この物語の本質は3人がそれぞれ絶望に陥っていく過程にある気がする。現実味がとてもある。窪さんの描写は本当に上手い。 生きていて辛いことは沢山ある。そしてその大半は本当の答えがわからない。みんな手探り状態で自分は間違ってないか、相手を傷つけていないか、自分は傷ついてないか、そんな葛藤を抱えて生きている。みんな正答がわからず湾に迷っている鯨なのかもしれない。沖に出れるといいね
2投稿日: 2019.03.01
powered by ブクログ往来堂書店「D坂文庫 2017夏」からの一冊。 デザイン会社の激務と失恋が重なってうつになった由人(24)は死を意識し、そのデザイン会社の社長・野乃花(48)は、会社倒産に合わせて自分の命も絶とうと決める。そんな二人と出会った正子(16)は、過干渉の母親からただただ逃げ出したかった。この3人の登場人物に共通するのは絶望だ。 4章から成るこの小説は、この3人それぞれが絶望に到るまでの経緯に1章ずつを割き、3人が出会ってクジラが迷い込んだ湾で共に過ごした時間を最終章として締めくくられる。もちろん、絶望に至る経緯はそれぞれなのだが、その描写が圧倒的なリアリティーを持って迫ってくるから、感情移入せずにはいられない。最終章の展開にも吸い込まれるが、この絶望への経緯がこの小説の肝だろう。 人間は弱くて脆い存在なのだということを、胸が痛くなるほど突きつけられる。絶望しない方がおかしい。でも、その一方で、人間はそれに負けない強さも秘めている。そして、その強さがある小さなきっかけで表に顔を出して、生きることに向き合うようになったとき、人間の姿は美しく輝いてみえる。 そんな詩的な思いを抱かせてくれる極上の小説。
1投稿日: 2018.11.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人は人生の長短に関わらず生きているのが嫌になる瞬間がある。エアポケットのように唐突にはまってしまっった、社長と従業員、道端で拾った女子高生。この3人の再生の物語。家族というのは期待や心配という鎖で縛ってみたり、血の繋がりしかない放棄や放置してみたりと中々厄介な存在ではある。理解して欲しい、理解したい。だけど、理解なんてできないのは家族で、人生の迷路に迷い込んだ3人の出口はどこにある。「あいつもなんか、迷っちゃってんですかね」
1投稿日: 2018.10.28
powered by ブクログぼちぼちでしたね。読みやすいから読み進めるが、なんとなく感情移入がしきれない感じで。 3人揃ってからやっと話が進み始める。 最後は救われる結末で。 好みがあるかと思いますが、窪さんの作品は2作目ですが、少し合わない感じです。
1投稿日: 2018.09.02
powered by ブクログいい小説を読んだなという読後感。 三人の主人公の人生のどこかに感情移入ができるのではないかと思う。 そして、鯨を見に行くという設定もなんだかおしゃれ。 大きな出来事が起こるわけではないけど、それもまたいい。
2投稿日: 2018.07.17
powered by ブクログ彼氏が貸してくれた本。読書は苦手だが、センセーショナルな内容とテンポのよさで一気に読み進められた。読み応え抜群で面白かった。
1投稿日: 2018.05.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
すごくするすると文章が身体に入ってくる。 私はそんなに壮絶な人生を生きてきたわけではない。 だけど、するする入ってきた文章は、身体のうちから私の心に傷をつける。 母に愛された記憶のない由人。兄が、妹が母に愛されても、自分はおばあちゃん組なのだと思う。 おばあちゃんに申し訳ないから言えないけれど、本当は自分だってお母さん組に入りたかった。 でも、母が由人の方を向くことはない。 子どものころから絵の才能を褒められて育った野乃花。 貧しくて生活は苦しくても、身体の弱い母親代わりに家のことをし、バイトをして生活の足しにし、母の看病をする毎日。 ただ、絵を描いていられるのなら、そんな生活も苦ではなかったのに、たった一度の恋が人生を狂わせる。 生後半年で病死した姉の代わりに、いい子でいることを強要される正子。 だって、お母さんに心配をかけるわけにはいかないから。 だけど、生活の全てを母の監視下に置かれ、母と自分と時々父だけの生活だった正子に、初めての友達ができた。 普通の家庭で普通に育った私にも、彼らの痛みはひしひしと伝わってくる。 「うん。わかる。わかる」なんて軽く言うことなど決してできない、必死の彼らのもがきが、喰いしばった歯から漏れる嗚咽が、どうして我がことのように感じられるのだろう。 特に正子が親の束縛から逃れたくて、逃れられずにいることが不憫で不憫で。 “自分の気持ちをのみこむたびに、自分がどんどん透けていく。自分が全部透けてしまったそのときには、仏壇の、お姉ちゃんの隣に、自分の写真が飾られるんじゃないかと思うとたまらなく怖かった。” 大人の正論の前に子どもは無力だ。 だけど、正論でがんじがらめにされてしまった子どもは、どうやって息をしたらいいのだろう。 “「なーんも我慢することはなか。正子ちゃんのやりたいことすればよか。正子ちゃんはそんために生まれてきたとよ」” たまたま知り合った老婆に丸ごとの自分を受け入れられ、ゆるやかに死んでいた正子の体が少しずつ甦る。 人は何かきっかけがあったら、簡単に死んでしまうこともある。 だから死ぬまでは、生きろ。 生きていける場所を探せ。 クジラは生きていける場所を見つけることができただろうか。
3投稿日: 2018.03.14
powered by ブクログ「ふがいない僕は…」に続いて、窪美澄さん作品2作目。 ふがいない…が、ちょっと衝撃的でとても好きだったので期待しすぎた感あり。 死にたいと追い込まれる事情を抱える登場人物たちになぜか感情移入できず。でも、展開が気になり読了。 変態性とか、狂気みたいな雰囲気はなく、 何だかちょっと物足りない。 他の作品も続けて読んでみようと思う。
1投稿日: 2018.03.10
