
総合評価
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powered by ブクログ16世紀末のイスタンブール。当時、あでやかな細密画を眼にすることができたのは発注主である王侯貴族だけ。優れた技術を持っていても名もない名人のひとりとして埋もれてしまうのが絵描きのさだめ。教義に反し、個性ある絵を目指そうとする者には地獄行きが待っているのですが…… 芸術家の抑えられぬ情熱と過酷な運命が胸を打ちます。
0投稿日: 2026.02.22
powered by ブクログオスマン帝国における細密画絵師たちの世界。名人絵師は対象を実際に目撃することなしに描くことを良しとし、いずれは盲目になることをむしろ望んだ等々のくだりは我々の理解の範疇を超えているが、自身の個性などは超越し神の目線で描くことに徹するという絶対的な価値観には瞠目させられる。宗教の待つ矛盾や理不尽と本来誰もが持つヒューマニティの葛藤。 上巻から不穏なまま続く殺人事件の犯人探しは最後の最後に判明するが、エンディングはやはりほろ苦く悲劇的だ。歴史の理不尽さに唸らされる。 我々の常識とは全く異なる異世界と価値観世界観。読書の醍醐味を存分に楽しめる長編。
0投稿日: 2024.12.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
数ヶ月前に読んだ同じ著者の『赤い髪の女』がとても面白くて、ぜひ同じ著者の本を読んでみたいと思って読んだ本。歴史と美術が関係していてミステリーらしい、ということがあらすじで分かり、なんかダヴィンチ・コードみたい、ぜひ読んでみたい、と思って読んだ。「訳者あとがき」に書いてあるあらすじがとても分かりやすいので、少し引用する。 「舞台はイスラム暦一千年紀の終わりがおし迫る十六世紀末のイスタンブル。半世紀前には栄華を極めたオスマン帝国も、隣国であるサファヴィー朝ペルシアとの長い戦に疲弊し、巷には雁金が横行、人々は音曲や絵画、葡萄酒や珈琲に耽溺し、そうした不品行を過激に糺そうとするエルズルム出身の説教師とその一党が帝都には跋扈している。そんなある日、皇帝の細密画工房に属する絵師が何者かの手によって謀殺された。その背後には、愚像崇拝を固く戒めるイスラムの教義とは相いれない、秘密の装飾写本の存在が見え隠れするのだが、犯人の正体は杳として知れない。ときを同じくして十二年ぶりに帰京した主人公の一人カラは、否応なしにその事件の解決を迫れていくー」(p.427-8)という話。それぞれの章で、「わたしは○○」と言ってそれぞれの立場でストーリが語られていき、死人や動物、悪魔までが話し出し、タイトルにもなっている「赤」色が自分のストーリーを語るという、何とも独特な形式。「わたしは人殺しと呼ばれるだろう」という章がいくつか挟まったりして、ドキドキしながらページをめくることになる。 (ここからはネタバレになります。)正直言って、結構読むのにエネルギーを使った。中東の歴史におれが馴染みがないことも大きな理由だし、結構ストーリーの展開がゆっくりで、なかなか見えてこない。あと、拷問とかグロテスクな描写とか、生々しい筆致はすごいと思うけど、別にそんなに読みたい内容ではないし。さらに、カラの相手で、物語の半分くらいに出てくるシェキュレという女が気に入らない。なんて自分勝手なヤツなんだ、という不快感で、読んでいて疲れていた。ただこのシェキュレの台詞で、「神様、どうかお力をお貸しください。愛とは無為に苦しむためのものではなくて、あなた様の御許へ至る道のはずでしょう?」(p.34)ってなんか遠藤周作みたいだなあとか思ったけど。そして、ここからは本当にネタバレになってしまうが、『赤い髪の女』で感動したどんでん返しが、なかった。最後の最後の方、4人のうち犯人が誰なのか、というところまで来るが、実は4人のうち誰かと思わせつつ全然違う人物が犯人であることを期待していたが、遂にその中の1人だった。そしてその1人が犯人だからと言って、別に何の驚きもなく、終わってしまった。なので、文庫本2冊読んだけど、スイスイ読んだというよりは、義務感に駆られて読んだみたいになってしまった。でも確かにドキドキしたところはあるのは確かだし、いくら展開は遅くても結末を知りたいという気になりつつ結局最後まで読んだのだから、すごい本といえばすごい本なのは確か。(24/04/05)
1投稿日: 2024.04.15
powered by ブクログ冗長な部分を読み飛ばしてしまった。 オスマン棟梁はカラと一緒に犯人探しをしてるのかと思ったら、実はそうではなく、工房の様式を守ることに固執して?自分の眼を潰してしまうというあたり、よくわからない展開。 確かに『薔薇の名前』に似た要素が多いけれど、視点が次々変わる形式のせいか、(写実的に描かないという細密画と同じように)制限された表現のせいか、背景に馴染みがないせいか、読みにくさがある。
0投稿日: 2023.11.23
powered by ブクログこれは、、、ミステリーなのかな、、、。 細密画の様式から犯人を推理していくシーンがスリリングなんだろうけど、全然分からん。 様々な当時人物ばかりか人以外の物まで語り手として登場し、多視点で物語られる物語は、常に緊張感をはらんでいて面白い。 背景知識が乏しかったのでよく分からないところも多かったけれど、それでも十分に面白かった。知らない世界だから面白いし、こんだけ人を惹きつけている。さすが、ノーベル文学賞作家。 『雪』と本作、長年の積読作品がようやく読めた。
0投稿日: 2023.07.29
powered by ブクログ西洋美術の卓越と限界、そして、イスラムの細密絵師の世界を対比する形で、物語は進み、終わる。 謎解きの要素は少ない。
0投稿日: 2022.11.07
powered by ブクログ門井慶喜氏の「マジカル・ヒストリー・ツアー」を読んで興味を持った作品。細密画やイスラム教について、多少予備知識があった方が分かりやすいと思う。一人称多視点という珍しい形態のミステリで、犯人が分かったところでもう一度読み返してみたくなった。
0投稿日: 2022.05.14
powered by ブクログ後半、怒涛の展開。最後まで先が読めなかった。 ストーリや作品全体の仕掛けも、なるほど面白い。 他の作品も読んでみたい。
0投稿日: 2021.05.14
powered by ブクログ西洋の絵画と細密画では、根本の芸術に対する考え方が違い、それがオスマンの絵師には脅威に写り、自分の存在基盤を揺らいでいく。 時代は遠近法の西洋が、個性を盾に細密画を飲み込んでいく。
0投稿日: 2020.11.11
powered by ブクログ面白くないわけではないが、努力のいる本だった。 ある程度、イスラーム法学派などの知識がないと、かなり読みにくいのではないだろうか。
0投稿日: 2020.09.28
powered by ブクログ訳者あとがきを見ると、この小説は、「東洋絵画と西洋絵画の相克に対峙した芸術家たちの葛藤というスリリングなテーマ」で書かれているようだ。 それに歴史小説、推理小説としての娯楽性や神秘性が混ざりあい、イスラムの細密画といういまは失われた美麗な世界を通して、滅びゆく東方の文化世界が絢爛豪華な装飾写本さながらに描き出されていると述べられている。 まとめれば、確かにそうだと思うが、イスラム文化やオスマン帝国と西洋諸国との対峙といった歴史的背景になじみのない自分には、ほとんど理解できず、読み流すだけに終わってしまった。 また、描かれている「模倣を強いられた絵師がその名誉を守るため、針で自分の目を潰すとか、盲目になることに栄誉を感ずる」といった恐ろしいほど崇高な境地には、とてもついていけず、離脱するべきかと思いながら、加えて、睡魔に何度も襲われながら、なんとか読み終えたというのが、正直なところ。
0投稿日: 2020.06.18
powered by ブクログ物語の挿絵を様式に則って描くことを是としてきた細密画師が16世紀イタリアルネッサンス期の肖像画(テッィツィアーノか)を見てその手法のみならず,画家とのその対象の自意識(Identity)に触れた衝撃を記している。 パムクは,万華鏡のように視点を変えて物語を紡いでいく中で,命なき者にも語らせている。絵画に書かれた犬,大木,金貨,そして"赤" シェキュレとカラの愛の駆け引きもとても奥深く,官能的。
0投稿日: 2019.12.19
powered by ブクログイスラム版『薔薇の名前』。知的好奇心をくすぐられるところと、あと、読み終わった後、よくわからんことがいろいろ渦巻いてもやもやするところが。再読したいと思い続けて、早4年が経ちました。(2013年9月8日読了)
0投稿日: 2018.03.05
powered by ブクログいや、これきたね。上巻読み終わった時は、音読したら文字が途切れず酸欠になるほどの圧倒的文字量と、のべつまくなし面倒くさすぎる登場人物に心折れそうになるも、ジワジワくるものあり、下巻を時間を空けて読み始めたら、まぁ、これがのっけから、上巻の凪がいっきにぐらんぐらんと大きな渦になって、あれれって間に巻き込まれちゃって、どんどこ先が読みたくなって、あれよあれよと完読してしまった。 誰が殺人を犯したかとか、東西の相克とか、そんなんはどうでもよくなって、坩堝な地相のイスタンブールそのものの物語として、その甘美で残酷な美を堪能しようではないか、なんてな。
0投稿日: 2016.12.09
powered by ブクログTwitterのフォロワーさんが感想を書かれていて面白そうだなと思い、読んでみました。すごくよかったです。訳者あとがきにもあったように薔薇の名前にも通ずる展開があり、自分は伊坂幸太郎の夜の国のクーパーを思い出しました。これからパムク作品を全部読もうと思います。
0投稿日: 2016.07.24
powered by ブクログ「雪」「わたしの名は赤」とパムク作品を続けて読んだ。物語のあとのそれぞれの主人公たち、Ka、カラ。どちらの男も物語のそのあと、魂を抜かれたように生きていった気がして、哀れで心に残った。そういえば、どちらもKだ。 それに対して女たちは逞しい。イベッキもシェキュレも恋をしても自分を見失わない。父を殺されたあとのシュキュレの判断の早さと行動力には驚いた。一人で自由に外を出歩くこともできない女たちの処世術なのか。イスラム世界の女たちのしたたかさと逞しさは、パムクの描く女だけの特徴なのか。 しばらくパムクを読んでみよう。 「薔薇の名前」を思いだした。ストーリーの面白さだけでなく細密画の世界、イスラムの世界への扉も開かれた。得した気分になれる本だ。
0投稿日: 2014.03.02
powered by ブクログイスラム文化の頂点たるコーランの特徴はアラブの民族性に由来したその視覚・聴覚的側面にある。それは視覚的表現に満ちた内容を指すと同時に翻訳されたコーランを経典として拒絶する理由となる。しかしながら偶像崇拝禁止の教義は絵画文化の発展を抑止し、結果として書体や挿絵に意匠を凝らすイスラム文化が確立した。パムクはヒジュラ暦ミレニアム直前における細密画職人の文化を現代に再構築することで、失われた技術への憧憬とイスラム文化のルネサンスを喚起する。芳醇な文化的背景に裏打ちされながらも、歴史推理ものとして楽しめる娯楽小説。
0投稿日: 2013.06.12
powered by ブクログ細密画なんて全く知らない私でも、この本で語られる緻密かつ繊細な描写を読んでいくうちに、心の中に自然と筆で線や色が引かれ、画が浮かびあがり、その美しさに、ただただ圧倒されました。 「私の名は紅」と両方読みましたが、やはりこちらの方が読みやすかったです。
0投稿日: 2013.04.20
powered by ブクログイスタンブルと細密画の濃密な描写の背景に、近代化・世俗化というテーマが見え隠れし始める。 「東も西も、神のものである。」
0投稿日: 2013.03.03
powered by ブクログ上巻の「赤」が恍惚として扇情的で、色鮮やかな原色の「赤」だったとしたら、下巻の「赤」は暗く、深く、いくつもの色が混ざり合った「赤」なのだろう。 幾つもの血が流され、混じり合い、赤は濃さを増していく。トルコという地で東と西が混ざり合い、16世紀という時代に旧い様式と新しい手法が交わり合ったみたいに。 『お前はどうして純粋であろうとする? わたしたちのようにここに留まれ。そして交わり合うんだ』 一つの文化が失われていく瞬間が、一人の絵師の死という形で語られているように思った。その絵師に掛けられるこの言葉は、混じり合う文化の中で失われてしまった「細密画」そのものへの哀惜と追悼の辞に思える。 今度の休みには美術館に行ってみようかな。 近くに細密画が見られるような所があればいいんだけど。
1投稿日: 2013.01.25
powered by ブクログどんどん引き込まれていく。。。 16世紀末のイスラム世界なんていう、21世紀日本の平凡な読者としては相当に遠い世界が舞台にもかかわらず。 たくさんの登場人物に共感し、最後は悲しみというよりも悲しくないことが悲しいというような、不思議な感覚を登場人物の一人と深く共感できた。
0投稿日: 2012.12.15
powered by ブクログ下巻になると俄然面白くなってきた。 イスラムの細密画と、 その宗教的背景に強くひき込まれた。 思索し苦悩する人間の、 多視点の物語は圧倒的な作品であった。
0投稿日: 2012.09.26
powered by ブクログひとつの細密画の製作にかかわる人たちのそれぞれの視点で、殺人事件とその犯人探しを語らせている。この中で、実在の細密画の絵師も登場させ、細密画の歴史と、細密画の絵師について丁寧に語られている。 この話の16世紀末から17世紀初めにオスマン=トルコに珈琲が広まったとされており、珈琲店での噺家による小噺や細密画の絵師による文学の一遍などが差し挟まれ、その時代のオスマン=トルコの情勢を描き出している。 自分としては読むのに時間(上下2冊で10日間)がかかりました。
0投稿日: 2012.04.22
powered by ブクログイスラム教では偶像崇拝が禁止されている。そしてそれが徹底しているが故に絵画芸術の発展が非常に限定的になってしまった。 神を現した像も、絵もその制作は許されない。絵に描けるものは神の眼で見られたものだけに限られる。このため、描かれるものは、先人が描いたものの範囲を超えることはなく、絵を描く者はひたすら模倣し続けるしかない… そうした中でも細密画というものは発展し、名人と呼ばれる芸術家を輩出もする。 しかし、西洋絵画の発展が、細密画を追い詰めていく。 作品を芸術家そのもののものとすること、すなわち署名。そして、遠近法。 細密画は神の眼を通したものであり、細密画師個々人の手によるものの、無名(アノニマス)なものにしかなりえない。 この小説は16世紀のイスタンブールの王室の細密画工房を舞台としたもの。 一人の細密画師が殺され、やがて、第2の殺人が、その背景には、描かれてはいけない絵が絡んでいるという… 章ごとに語り手が変わり、登場人物以外にも時に死者が、絵に描かれた者や物が話を進めていくという手法は結構斬新。この時代のイスタンブールが彷彿される情景描写も素晴らしい。何といっても小説としてかなり面白く、読ませる本。 日本ではほとんど知ることの無い細密画の歴史にも触れることができるという点も興味深かった。お勧めできる本。 作者のオルハン・パムクはノーベル文学賞を受賞した人。訳者の宮下遼氏は仏文学者宮下志朗氏のご子息。宮下司朗氏は「本の都市リヨン」を書いた人で、この本も面白かった。
1投稿日: 2012.03.20
powered by ブクログゆっくり味わうように一日に一章か二章ずつ読んで最後の数章は一気読み。続きが気になって早く先を読みたいのだけれども、物語の世界の濃密さに足を絡め取られて「先を読むのがもったいない」と思ってしまう不思議な本でした。先が気になると寝食忘れて読みふけるタイプなのでこんな風に「先が気になる」「でもこの文章の余韻に浸りたい」という葛藤を感じる本はとても久しぶりに読んだ気がします。 殺人犯はだれなんだろうというミステリー要素や遠近法が発明されたルネッサンス期の絵画に触れたことによって生じるトルコの細密画家達それぞれが抱える苦悩、カラとシェキレの恋の行方ももちろん気になるし、一章ごとに変わる物語の語り手達の個性豊かさにもうっとりして色々楽しむことができた本でした。 またゆっくり再読したい!
0投稿日: 2012.03.09
