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雪〔新訳版〕 下
雪〔新訳版〕 下
オルハン・パムク、宮下遼/早川書房
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総合評価

7件)
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    上巻では恋敵であるはずのムフタルの伝言を素直にイペキに伝えるKaの純真さに、恋心の薄さや幼稚さを感じたけれど下巻になってからはKaの想いにはくるおしさを感じた。 イペキもKaから詩を読んでもらった時にしきりに自分の感情的感想は述べずに「綺麗な詩ね」とばかり答えていた。 イペキはKaのようにはまだKaを愛していなかったけど、幸せになりたかったし、Kaはムフタルや他の男性とは違うと思って愛せると思ったのだろう。 純真そうで幼さも感じるKaには身勝手さを感じたけれど、嫉妬心を感じだしたKaの方が好きだった。

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    投稿日: 2024.02.10
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    全く予備知識のないトルコの作家の長編小説。2002年の発表で世界中でベストセラーとなったノーベル賞作家の作品。イスラム世界の辺縁が少しでも垣間見れるかと思う。しかし圧巻は主人公の密告、報復による死という結末であった。私にはどうしても手放したくない宝物を手中に収めるための覚悟の行動に思えた。一気に読ませる快作ではある。

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    投稿日: 2019.09.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    オルハン・パムクは、ノーベル文学賞を受賞した、トルコを代表する作家です。 題名から受ける印象とは違い、この小説ではトルコにおける政治の複雑な状況が描かれています。 オスマン帝国後に誕生したトルコ共和国が国是とする共和主義や世俗主義、そしてそれに対するイスラム教や民族主義、更に社会主義や共産主義といったそれぞれの政治信条が絡み合い、主要な登場人物達の思惑が交錯します。 久しぶりに帰郷した主人公のKaは、ある事件についての記事を書く目的で地方都市カルス(トルコとアルメニアの国境付近)に来ますが、そこでかつて恋心を抱いていたイペキ、イスラム主義運動家「群青」など、さまざまな政治背景を背負った人々に出会います。 詩人であるKaに思想はないのですが、イペキと結ばれて幸福を得ようとする過程で、図らずも思想対立に絡めとられていきます。 パムクは作中でKaにこう言わせています。「人は何かの信条を守るために生きているんじゃない、幸せになるために生きているんだよ」 この一言に作家の普遍性が垣間見える思いがしました。個人の幸福の希求の前に、政治信条や思想の構図が一気に後退するシーンでした。

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    投稿日: 2018.11.10
  • 信仰と貧困についての理解は残念ながら深まらなかった

    詩人のKa(カー)はトルコの地方都市カルスで暴動に巻込まれるが愛する女性イペキをドイツへ連れて帰ろうと奔走する。本書には3つのポイントがあると思う。①信仰と貧困②政治と暴動③恋愛と孤独である。貧しさと格差から現世でかなわぬ平等を来世に期待することが信仰だとしたらなぜ福祉を求めず暴動なのか。残念ながらここで語れるほど理解は深まらなかった。スカーフをかぶることが自分を守ることだと語る少女たちも悲しい。下巻は③を中心に進むが①と②が常に潜んでいるのだった。ただ孤独だけは万国共通なのか私にも共感することが出来た

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    投稿日: 2018.10.04
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    Kaのめんどくさいところ、理屈っぽいところがまるで自分。読んでいて辛かった。これを読むとトルコに行きたくなる。

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    投稿日: 2016.08.21
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    “わたしたちは他人の苦悩であるとか、愛であるとかを理解することが、果たしてできるのだろうか?自分よりもなお深い苦悩を抱え、貧困にあえぎ、虐げられる人々を理解することができるのだろうか?” 作中で問いかけられるこの言葉について考える。 そして舞台である中東の情勢や、宗教などについて自分はまだまだ知らないことが多く、理解するにはほど遠いことを思い知る。それでも、知らないことに気付き、考え、知ろうとするきっかけをこの本に与えてもらえたと思う。 灰色に沈む雪に閉ざされた街の陰鬱さが、何故か美しく思えてしまった。 雪と共にKaに詩想が舞い降りたのだろうなぁ。

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    投稿日: 2013.01.27
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    トルコ文学。未知の世界。 トルコと聞いて連想することと言えば、 ヨーロッパとアジアの中継地。イスタンブール。ケバブ。 せいぜいこの程度の知識しか無かった。 本著はオルハン・パムクの初にして最後の政治小説のようだ。 冒頭でバルザックの引用を用いて 文学に政治を持ち込む事への遺憾を表明しつつ、 地理的、文化的、宗教的に特殊な国柄がもたらす トルコの問題を文学を通して我々に伝えてくれる。 ドイツに長らく亡命していた 主人公であり詩人のKa(カー)が取材を名目に、 トルコ辺境の地カルスを訪れるが、 様々な人間との出会いを通じて 宗教、政治の問題に翻弄されることになる。 そして、このカルスに住む 古くから恋慕を寄せていた イペキとの恋愛と彼が書く詩を通して これらの問題が濃密に結晶化されていく。 国民の99%がイスラム教徒でありながら、 世俗主義(日本もそうです)を標榜するトルコは、 正に西(欧州)と東(アジア。特にアラブ諸国)が混在し、 その特殊性が齎す問題は我々日本人には到底考えが及ばない。 Kaがカルスを去るまでの三日間が描かれているのだが、 この限定した期間、そして雪のために道路も封鎖された カルスという閉鎖された街を舞台装置として描かれる人間劇は どこかカラマーゾフの兄弟を連想させる。 ノーベル文学賞作家という冠は名ばかりではなかった。 素晴らしい小説です。

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    投稿日: 2013.01.22