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イスラーム国の衝撃
イスラーム国の衝撃
池内恵/文藝春秋
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総合評価

111件)
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    「イスラーム国の衝撃」 https://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51926572.html

    0
    投稿日: 2025.10.24
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    かなり細かいところまで書かれており、難解だが、最終章の中東秩序の行方の章を読めば、頭の整理ができてこの本が読みやすくなる。 むしろ、最終章を序章に持ってくるべきだったろう。

    1
    投稿日: 2024.08.27
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    (「BOOK」データベースより)amazon 謎の「国家」の正体に迫る――イスラーム国はなぜ不気味なのか? どこが新しいのか? 組織原理、根本思想、資金源、メディア戦略から、その実態を明らかにする。 「イスラーム国」そのものは、イラクやシリアの現地で不満を抱く粗暴な若者たちに、目的意識と冒険を求めて流入する先進国育ちのムスリムが加わって、国際政治のパワーバランスの変化の過程で不必要に強力な武器と資金を手にした集団にすぎないという面もある。しかし、このような集団が誕生した背景には中東世界の構造変容がある。にもかかわらず日本のマスコミも知識人も、実態からかけ離れた日本的な理想を投影して「イスラーム」を論じてきたため、中東の現実も、「イスラーム国」の正体を正確に捉えられていない。本書は、以下のような視点から「イスラーム国」の誕生と勢力拡大がもつ意味を解きあかす。どこが画期的なのか? これほど大規模に武装・組織化したのはなぜか? どのような組織的特徴をもっているか? 資金源は? テロ行為だけでなく領域支配を実現できたのはなぜか? 周辺地域にいかなる影響を与えるか? 米国とイランの接近は何を意味するか? 「イスラーム国」とイスラーム教(コーラン)はどのように関係しているか? 「イスラーム国」にいかに対処すべきか?

    0
    投稿日: 2019.09.26
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    9.11以降、アラブの春を経てどのようにイスラム過激派が振興し、イスラム国がカリフ制復活を宣言するに至ったのかをかなり詳しく描いている。 新しい知識が沢山。

    0
    投稿日: 2019.05.21
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    イスラーム国の衝撃というタイトルにあるように、何が衝撃だったかといえば、以下の部分に端的に描かれている。 「『カリフ制が復活し自分がカリフである』と主張し、その主張が周囲から認められる人物が出現したこと、イラクとシリアの地方・辺境地帯に限定されるとはいえ、一定の支配地域を確保していることは衝撃的だった」(14頁)。 さらに、「既存の国境を有名無実化して自由に往来することを可能にした点も、印象を強めた。既存の近代国家に挑戦し、一定の実効性を備えていると見られたからである」(14頁)とあるように彼らは「挑戦」をしたのだと、つまり新しい展望を切り開くかのように見えたこと。 そのように見えたことが重要である。 なぜならそれは「現状を超越したいと夢みる若者たちを集めるには十分である」からだ。 また、メディア戦略とその卓抜さも指摘される。「『イスラーム国』は…少なくとも『ドラマの台本』としては、よくできているのである。ラマダーン月の連続ドラマに耽溺して一瞬現実を忘れようとするアラブ世界の民衆に、あらゆる象徴を盛り込んだ現在進行形の、そして双方向性を持たせた『実写版・カリフ制』の大河ドラマを提供した」。(19頁) こうした戦略は「イスラーム世界の耳目を集め…それによって一部で支持や共感を集め、義勇兵の流入を促がし、周辺の対抗勢力への威嚇効果を生んでいるとすれば」(19頁)、その効果は単なるPR以上にイラクやシリアでの戦闘や政治的な駆け引きでも有効だと指摘されている。 そしてこうした「イスラーム国」はどこから現れたのだろうか。基本的には「2000年代のグローバル・ジハード運動の組織原理の変貌を背景にしている」(34頁)。ここでいう組織原理の変貌とは2001年の9・11事件以降の「対テロ戦争」によってアル=カーイダという組織が崩壊したためである。これは「『組織なき組織』と呼ばれる分散型で非集権的なネットワーク構造でつながる関連組織の網を世界に張り巡らせ…アル=カーイダの本体・中枢は、具体的な作戦行動を行う主体というよりは、思想・イデオロギーあるいはシンボルとしての様相を強めた」(34頁)ことによる。米国によるアル=カーイダへの攻撃に伴い、「それに共鳴する人員と組織は生き残り、新たな参加者を集め、グローバル=ジハード運動が展開していった」(45頁)。この運動の展開を、以下のように筆者は四つの要因として指摘している。 「(一)アル=カーイダ中枢がパキスタンに退避して追跡を逃れた。 (二)アフガニスタン・パキスタン国境にターリバーンが勢力範囲を確保した。 (三)アル=カーイダ関連組織が各国で自律的に形成されていった。 (四)先進国で『ローン・ウルフ(一匹狼)』型のテロが続発した。 」(45頁) (一)及び(二)はパキスタン、アフガニスタンという国家機構の脆弱な地域において組織の回復が行われたことを指摘している。これは今のシリア、イラクと似たような状況に陥っていた地域、つまり国家機構の脆弱性を突く形での勢力範囲の拡大ともとれる。一方、(三)(四)は「フランチャイズ化」と呼べるようなものであるが、これも様々な形での脆弱な部分を突く形である。特にインターネットを介しているという点が目新しいといえばそうだ。 この本が刊行された時期はイスラーム国の衝撃が盛んに唱えられていた。そのイスラーム国誕生までの経緯は2000年代の9.11テロおよびイラク戦争を背景に、90年代のジハード主義者の国内テロ路線から対米およびグローバル路線への転換、80年代の冷戦構造下における対共産圏への対抗馬たるアフガンゲリラへのアメリカの支援等、イスラームの歴史として捉えるだけでなく、冷戦構造を支え、その後の唯一の超大国となったアメリカと関連する歴史上の産物でもある。もちろんその特性が宗教的特性と無関係ではない。 しかし、私にとってのこの「衝撃」は現状の支配的な価値観、つまり近代ヨーロッパ的な様々な枠組みに対しての極端な相対化とそれを行う実効力があった事は間違いない。

    2
    投稿日: 2019.03.29
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    一見メチャクチャにもうつるISだが、かれらなりにオーセンティックなイスラムの教えに準拠しているということ。キリスト教が歴史的にそうしてきたようにイスラム教の世俗化が可能かどうかなど。

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    投稿日: 2018.11.05
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    イスラム国解説本として一般向けでは良書というレビューを見て手に取りました。 図書館予約から実に半年待ちました。人気はあるようです。 しかし、内容は序盤の概説がひたすら表現を変えて繰り返されるだけで 最も興味のあるイスラム国統治の実態、今後の領地拡大の可能性、米国などの対応(無人兵器の実験場にならないか?)といった内容はありません。 (2名の邦人殺害事件以前の著作でもあります) 2001年同時多発テロからの2014年イスラム国が認知されるまでの政治思想、国際関係がメインです。 著者は学者であり、ジャーナリスではありません。 そのためか、過剰なレトリックで文脈が追いづらく、難解なものになってしまっています。 また、一連の事件を歴史書にとどめる視点で扱っており、全くと言っていいほどイスラム国への批判はみられません。 ◆メモ グローバルジハード 2001年米国同時多発テロあたりに、アルカイダによって、分散型組織によるグローバルジハードの「ローンウルフ」型テロは成立していあ。 ネット進展とともに成長していく。 本書では「ネイバーフッド」テロというワードは未使用。ただし、ほぼ「ローンウルフ」と同義と思われる。実際にテロ訓練経験の有無などニュアンスが違うかもしれない。 イスラム教には、グローバルジハードを裏付ける教義があり、分散型テロの共通認識となっている。 イスラム国の領地支配 アラブの春が皮肉にも環境整備のステップになっていた。 シリア、イラクと国境を超えたことを本書は持ち上げ過ぎ。たまたまの偶然の側面が大きいのでは。

    0
    投稿日: 2018.10.29
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    【由来】 ・ 【期待したもの】 ・大学図書館でサラリと読んで国枝本や中田考本と比較 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】

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    投稿日: 2018.10.28
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    最近のISILの事件の報道を見て、イスラム圏の事情を全く知らなくてニュースが理解できないと思っていたときに、@unmotored さんが推薦してたのでkindle版で購入。 #図書館の本には長蛇の待ちが入ってました。 なるほど、これは非常にわかりやすく、時宜にかなった良い本でした。 中東の地理すら危ういので、家では地図帳とにらめっこしながら読みました。 ところで、本題とは全然違い不謹慎ですが、国家に対抗するために、中央集約的組織に拠らない個別の行動が、不特定多数に宛てた宣伝やプロパガンダによって、全体としてある目的に沿って機能するというシステムの存在は目から鱗でした。 この考え方は、高等動物の脳による中央集権的な身体の支配に対して、昆虫のようなプログラムされた反応と分散的な神経系の生命の違いのようにも感じます。 常識的に考えると、統制がとれた組織の方が効率も良く、強そうですが、構成員の自主的行動による活動はそれを完全に止めることは大変難しいですね。 組織論として興味深い点も多く、もう少し、この考え方を突き詰めてみたいところ。 そうそう、本が増えるのが嫌で、ここ数年は本は図書館で借りて読むようにしていましたが、最近kindle版にあってすぐに読みたい本はkindle版で買ってしまいます。 #持ってる本すらkidleで買い直したものも(^^;; 今回の本みたいに巻頭の地図と読んでるところを行ったり来たりしながら読むのも出来るし、本に書き込むのが嫌いな私でも、電子的にならマーカーを引いたりするのも躊躇なく出来るし、辞書も引けるし、思い出したときにすぐ見れるしで、kindle、便利だなぁと。 いっそのこと、全ての本のkindle版が出て欲しい(笑)。

    0
    投稿日: 2018.10.20
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    ISは一見、信者からすると目から鱗のような新しいことを言っているのだと思っていたが「新しい思想を提示することへの無関心こそがイスラーム国の特徴」とあって、今まで知らなかった事実を本書に教えられた。 ムスリムが一般的に信じているか、あるいは強く反対はできない基本的な教義体系から要素を援用している。 ISの特徴はメディア戦略。ビデオにおいてはハリウッド並みの技術を持つ。映像における構成もしっかりしており、人々が目をそらさず、思わず見てしまうような演技、演出をしている。 表立って欧米人を使うことで話題性を作っている。組織が大きく見えがち、噂されがちのため、本当の実態はもっと小さい可能性がある。

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    投稿日: 2018.04.14
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    アル・カイーダ、アラブの春、イスラーム国とそこに一連の流れがある。それにしてもアラブ諸国やイスラムは洋語が複雑すぎる。(笑)もう何冊か読んで状況を俯瞰してみよう。

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    投稿日: 2018.04.04
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    9.11アメリカ同時多発テロ以降、各メディアで言われるように なったイスラム過激派またはイスラム原理主義者という言葉。 世界各地で起きたテロのニュースを見ながらも、どこかで日本 には無関係だと思っていなかっただろうか。過去には日本人が 人質になったこともあった。殺害された日本人もいた。 だが、日本も無関係ではなくなったのがイスラム国による 邦人ふたりの拘束・殺害事件だったのではないか。 あの事件以降、イスラム国に関する書籍がいくつか出されて いる。既にジャーナリストの常岡浩介氏の著作を読んでは いるのだが、もう少し歴史的背景から知りたいと思って 選んだのが本書である。 感情を廃し、実に冷静にイスラム国の成立からその背景に あるもの、彼らが行う報道活動、外国人戦闘員の有効な 使い方を解説している。 ただ、読み手の私の知識不足で十分には理解出来ていない 部分も多い。 結局はアメリカの中東政策の失敗だったのか?湾岸戦争以降、 アメリカは中東に自分たちの都合のいい政権を作ろうとした。 それがことごとく失敗している。統治能力がなかったり、 アメリカが手を引いたそばから暴走したり。 部族、民族、宗派の対立。そして、抑圧された一部の集団が 権力の隙をついて支配を広げて行く。 「ビンラディンを殺害しても、第二・第三のビンラディンが 生まれるだけだ」と言った人がいた。 もし、アメリカがアサド政権と手を組んでイスラム国殲滅に 成功したとしても、似たような組織はまた生まれて来るのでは ないだろうか。 中東が安定するには国境線を引き直すしかない?まさかね。

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    投稿日: 2017.08.21
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    ポピュリズムの本を読んで、西欧においてイスラムに対する風当たりは思った以上に強いんだな、と感じたので、積んでたイスラーム関係本を読んでみた。聞きかじった知識が断片的にあるよ、くらいの状態だったので、まとまったものを読んで整理されたような気がする。

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    投稿日: 2017.01.20
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    イスラーム国(IS)について解説する一冊です。なぜ中東の情勢が不安定で、この地域でイスラーム国が台頭したのか?本書を読むとその背景がだんだんと浮き上がってきます。イラクを筆頭に米国の武力によって民主主義が破壊されてしまったという事実が中東地域をさらなる混乱に陥れたのではないか?そう思わずにはいられない一冊です。

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    投稿日: 2017.01.03
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    イスラーム国の背景、来歴、特徴をイスラーム政治思想史と政治学の視覚から分析。イスラーム国について知るのに最適の一冊。 イスラーム国の衝撃のポイントして、全イスラーム教徒の政治的指導者になることを志向していることを示すカリフ制を宣言したこと、領域支配を行っていることを挙げている。 イスラーム国の成立・発展の背景として、思想的要因(グローバル・ジハード、アル・カイーダのフランチャイズ化)、政治的要因(アラブの春)を指摘している。 そして、イスラーム国には、独自のイスラーム思想を打ち出しているわけではないところに特徴があり、一定のイスラーム教徒から支持される可能性があるとしている。 日本とイスラーム国の関係については、左翼思想の代替としてのイスラームに警鐘をならしている。

    0
    投稿日: 2016.12.28
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    2年近く前の本なので、情報が古いのは仕方ないが、近代~現代における中東の状況をきちんと説明してあって、イスラーム国が生じるまでの背景がわかりやすい。

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    投稿日: 2016.12.22
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    いゃぁ、難しい。いろんなことが複雑に絡み合って今があり、ISILを生み出したことはわかった。しかし、結びにも書いてあった通り、ISILは根絶することはできない。世界はこれから彼らとどのように共生していくんだろうか。 しかし、知りたいのはISILはどうしたいんだろうか?ほっといてくれ、なのか世界征服なのか?後者であれば抗戦すべきだし、前者であれば本当にほっといた方がいいんじゃ無い?とはいえ、ここまでグローバル化している世界で、全く付き合いを断つことは困難だろうね。 理解できないことを理解することをこれからの世界はできるんだろうか? 疑問しか思いつかない… そして、結局のところISILの正体は書かれていなかった。コアとなる物事かわ無いのだろうね。

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    投稿日: 2016.07.26
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    発行から1年以上経ち、ISを巡ってはその間にも色々なことが起きているが、本書は中東の「今」を知る最初の一冊として最適であると思う。抑制の効いた文章が、著者の地に足のついた取り組みをよく表している。

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    投稿日: 2016.05.05
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    ISILにもそれなりの理屈があり、やっている行為は 到底私たちには容認出来ないものであるにしろ、 ある一定のイスラム教徒の人や、他宗教の新しい 政治原理やパワーバランスを求める人を惹きつけている という事実は、今も変わっていない。 その、それなりの理屈とはどんなものなのか。 めまぐるしく変化するニュースの情報は、 センセーショナルな事象だけが残って 何がどんなふうに変化しているのか 誰がどうなっているのか 諸外国がどう噛んでいるのかが整理できないまま 置いて行かれる。 この本は出版されてから時間が経っているが 出版された時点までの、こういう疑問を明確に してくれる。 イスラム教徒の人たちの国の中で、宗教がどんなふうに 機能しているのか。訳の分からない怖い組織としか 見えないISILにも、いろんな考え方や蓄積があった 事がわかる。 それを踏まえて、この本以降の起きた事象を 新聞などから追って、自分なりに図式にして みたりすると、ニュースの解説番組以上に 深読みできたり考えたりさせられる。 あそこから抜けたい人が殺されたり 新たな標的としてテロが強行されることが すっぱりとなくなればいいのに。 紛争や武装の力でこれ以上いろんな事態を こじらせるより、一旦武器を置き リセット!と言えればいいのだろうけれど… 人間って意外と拘る生き物なのでそれが出来ない。 世界はどこに行くのだろう。ね。

    0
    投稿日: 2016.04.21
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    書店でも出版から時間がたっても一番置かれているだけあって、IS系の新書をいくつか読んだ中で、思想背景、国際情勢などよくまとまっている印象。

    1
    投稿日: 2016.03.30
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    2014年6月以降、イラクとシリアの広範な領域を実効支配し、単なる「テロ組織」を超越した存在になろうとしているイスラーム国について、わかりやすく、論旨明快に叙述。 イスラーム国の来歴(アル=カーイダ「ブランド」からの発展)、思想(ジハード論=イスラームの基本的教義の援用。異教徒や、ジハードを阻害するイスラーム支配者との戦闘を、一般的義務とし、高い価値を見出す)、台頭の理由(「アラブの春」による辺境統治の弛緩、イラク国内における中央政府(シーア派)とスンナ派勢力の関係悪化、シリアの混乱、巧みなメディア戦略etc.)、今後の展望(イスラーム国を模倣したカリフ国宣言や近代国家の分裂の可能性、イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプト等の地域大国による解決の可能性)…等々、様々な視点からの分析がなされている。 イスラーム国とは何か?何が問題なのか?をよく知ることのできる名著。

    0
    投稿日: 2016.03.09
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    昨年は日本人人質を殺害するなど話題になり、最近では報道の量も減ってきたが、いまだに中東の一角で猛威を振るっているいわゆる「イスラーム国」(この呼称にも議論はあるが、ここでは書名にもあるこの呼称で統一)について書かれた新書。「イスラーム国」に限らず、広く中東問題全般については、何度報道を見てもどうにも理解できない印象が強く、関聯する書物を繰り返し読んでおかなければとかねてから思っていたところ、第59回毎日出版文化賞特別賞受賞や「新書大賞2016」第3位の報が折よく聞こえてきたため、今回は本作をチョイスしてみた。読んでみるとなかなかわかりやすく、なるほどその高評価も頷けるわけであるが、とりわけよかった点は、長年の個人的な疑問が完全に氷解とまではゆかないにせよ、大部分が解消されたこと。それはつまり、なぜイスラーム教徒の過激派ばかりがそういった行動に走るのかということ。世界中のあらゆる宗教には当然狂信者というべき存在があり、じっさいに古今東西で事件を起こしてはいるのであるが、イスラーム教過激派ほど世界じゅうでテロリズムに走ったり、長年紛争を続けたりといった行動を起こしていない。キリスト教の信者のほうが人口的には多いはずで、それなのになぜこういう事態となっているか、個人的にずっと疑問であったのだ。本作のタイトルは『イスラーム国の衝撃』であるから、この疑問に対する100%の回答はもちろん書かれていないのであるが、それでも「イスラーム国」が既存の教義や権威をたくみに利用しながら勢力を拡大していったことが書かれていて、中東地域における過激派の同様に活潑な活動についても、おそらくおなじであろうと得心がいった。宗教学者ではないから断定的なことはいえないが、イスラーム教はほかの宗教と比べて信仰心が篤く、また信者間の紐帯が深いから、過激派思想にも簡単に染まってしまうのではないであろうか。これはあるいはほかの局面においても使える論法で、なにかに対するこだわりが強ければ強いほど、それを間違った方向に誘導しやすくなる。つまり、「イスラーム国」はなにも中東固有の現象ではないのかもしれない。世界中に警鐘を鳴らすという点で、本作を読めたことはじつに有意義であった。

    0
    投稿日: 2016.03.06
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     うちの両親はカトリックで、毎週必ずではないにしても日曜日は教会でミサを受けるのが幼少期の常識だった。長じて、科学的思考に親和性を持ち、SFなんか読みふけっていた少年にとって信仰の相対化はたやすいことであったが、それに先だって子供心にまず疑問に思ったのは、ミサのあとの集会で「布教しましょう」とか言っているのに、両親がちっとも布教しないことだった。  教義を守ってねえじゃねえか。ということだが、では厳格に守るとどういうことになるのか、というと、原理主義となるのである。  本書によると、「イスラーム国」は何ら新しいコンセプトは出しておらず、ムハンマド時代に確定された教義、つまり世界のイスラム教徒の常識に基づいた主張をしているのだという。それもものすごいこじつけ解釈というわけではなく、イスラム教徒なら誰でも知っているような、あるいは正面切って反論できないような教義に基づいて自己の行動を正当化しているだそうだ。この辺はイスラーム教に明るくない平均的な日本人にはピンとこないところだろう。  例えば、「カエサルのものはカエサルへ」と一応は政教を分けるキリスト教、異教徒による支配を諦めているかの感があるユダヤ教と異なり、イスラームはムハンマドが多神教徒を武力で倒してイスラーム法の国を作ったということが教義の中心にある。「アッラーの道のために」という目的にかなった戦争がジハードであり、それへの参加がイスラーム教徒一般に課せられた義務である、というのはイスラーム法学上、揺るぎない定説である。よって、イスラームの民が異教徒に支配されているとか、イスラーム教が危機にあるという認識があれば、ジハードに身を投じなければならないというのが、アル=カーイダから「イスラーム国」までの論理である。  イスラーム教ではムハンマドの正統的な後継者がカリフである。「イスラーム国」の指導者バグダーディーがカリフを宣言するのもまたイスラームの常識に則って世界中のイスラーム教徒の盟主であると宣言しているわけである。もちろんそれに同意するイスラーム教徒は少ないが、イスラーム統一国家への夢をかきたてるという意味で支持する者が出てくるのだ。  しかも「イスラーム国」ではやはり聖典のハディースによって、世界の信仰者と不信仰者の全面対決が起こるという終末論的な教えを唱えている。いまこのようなテロ集団が生じたことは、オスマン帝国崩壊後のアラブ世界の分割やイスラエルの建国など欧米の勝手な振る舞いに端を発するという批判は正しくとも、非信仰者であるわれわれ日本人は「イスラーム国」に滅ぼされるべき敵であるということも認識しておかなければならない。  よって筆者は「神の啓示による絶対的な規範の優位性を主張する宗教的政治思想の唱導」を日本の法執行機関と市民社会がどこまで許すか許さないか、確固とした基準を示さねばならないと述べる。  こうしてみていくとイスラーム思想は大変危険な思想ではないかと思う。上記の思想は過激派の思想というわけではなく、穏健なイスラーム教徒も広く受け入れている教義だからである。もちろん危険視は西欧的価値観のもとにある日本の思想的な現状からみた限りのことかも知れない。しかし結局われわれは何かに価値観の基盤をおかねばならない。そのとき最大公約数的に受け入れやすいのは、民主主義や自由主義のイデーしかないだろう。われわれがイスラーム法を受け入れるわけがないからであり、「イスラーム国」が奴隷制を復活するのを許すわけにはいかないからである。  そこで筆者は「イスラーム国」が呈示する過激思想を世界のイスラーム法学者が反論できるような宗教改革をしなければならないのではないかと述べる。  本書の論点は「イスラーム国」成立に至る思想的・政治的な流れ、その実情、今後の中東情勢の見通しなど多岐にわたり、たいへん勉強になった。ただ、中東の今後の見通しを読むだに弱者が踏みにじられていくのだろうと思わざるを得ない。

    1
    投稿日: 2016.02.18
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    イスラーム国の成り立ちのためにイスラーム教やカリフ制を理解する必要があるし、戦闘員をならず者と大くくりしないようグローバル・ジハードという崇高な共同主観があることを理解する必要があるし、でまだまだ消化に時間がかかる本になりそうです。

    0
    投稿日: 2016.02.07
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    著者の専門とするイスラム政治思想史の知識に立脚したイスラム国の分析は説得力があった。イスラムの専門家といわれるものが、往々にして露骨にアンチ西欧に立脚して立論にしているのに対して、誠実な印象を持った。

    0
    投稿日: 2016.01.14
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    2014年に日本人がシリアで拉致されて斬首され、その衝撃的な映像で存在を世界に知らしめた「イスラム国」の正体を書いた本。 欧州では、イスラム国の存在は日本にいるよりずっと身近であるが、日本に住む著者がここまで書くのはすごいと思う。 アルカイダと何が違うのか、など謎の部分を丁寧に簡潔な文章で説明してある。中東情勢を知るのに一番分かりやすい本ではないだろうか。 まとめると、イスラム国は2011年の「アラブの春」により中東諸国の政治基盤が緩んだ環境で、ジハードを呼びかける過激派が、シリアとイラクの無統治地区で勢力を広げて発生したものらしい。また、代表者がメディアで宣伝をしたアルカイダと違い、地下組織的なネットワークで個人単位で活動しているケースも多い。 斬首映像がいかに心理的効果を考えて工夫して作られているかや、オレンジの囚人服が意味するものなど、本書で初めて知った。読んでよかった。

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    投稿日: 2016.01.13
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    イスラーム国関連の概要を知ることができた、ような気がする。巻末の関連書等も読んでみたい。 今「つけ」が回ってきているのだなと思う。

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    投稿日: 2015.12.23
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    Islamic State に至る経緯、2015/1出版だが特に最後の二十年、その論理の位置付け、メディア戦略について知ることができる。 知らないいことばかりだった。精読すれば膨大な情報が得られると思うが、理解しながら読むには相当な時間がかかりそうで、表面的にしか読めなかった部分も多い。 IS がどうなるにせよ、中東の前途は悲観的にしか考えられない。 IS が出している生の情報には接していないが、説明によりその質の高さはよくわかった。

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    投稿日: 2015.12.19
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    イスラーム国はアルカーイダの理念に共鳴した者たちが各地でローン・ウルフ型のテロを行う一方で、「アラブの春」によりイラクやシリアなどの政権が崩壊したことに乗じて組織化していった。 イスラーム国が発する教義はイスラーム法学上は極めてオーソドックスであり、特別なものではない。 イスラームを脅かす異教徒や侵略者が現れればジハードを行うというのは、イスラーム法上の義務でありそれを実行しているに過ぎない。

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    投稿日: 2015.12.07
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    73年生まれの東大准教授による著作。リアルタイムで進行しているシリア・イラクでのISISの勢力拡大を、イスラム教の教義や、中東各国・欧州各地の近年の政治イベントと照らし合わせながらひもといている。参考になる記述が多数あり、片っ端からキンドル本でハイライトした。

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    投稿日: 2015.11.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    イスラム世界の事を少しでも知ろうとして読んだか、想像以上にややこしかった。丁寧にイスラム国の成り立ち、資金源、外国人戦闘員はなぜ集まるのかが解説してあり、あまり詳しくない身としては為になった。 資金源は主に、石油(日100万ドル)と身代金(年2000万ドル)で、サウジアラビアなどが支援しているというのは、アサド政権やロシアのプロパガンダで流された情報らしい。 外国人戦闘員は貧困からイスラム国に身を投じるのではなく、思想に感化されて加わる者が殆どらしい。白人戦闘員は少ないがイスラム国のメディア戦略により、象徴的にクローズアップされているようだ。 主な外国人戦闘員の内訳(15年1月時) チュニジア約3000人 サウジアラビア約2500人 ヨルダン2089人 モロッコ約1500人 レバノン890人 ロシア800人 フランス700人 リビア550人 英国400人 トルコ400人 この一年で状況が変わっているから新刊も読みたい

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    投稿日: 2015.11.21
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    突然現れたわけではなく、近現代の歴史の中で大きくなっていったイスラーム国。詳細は覚えられない。 最近ニュースをちゃんと追ってない、、、

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    投稿日: 2015.11.02
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    イスラム国の成立の歴史的・地政学的背景、宗教的背景等について理解が深まった。 アラブの春の意義、宗派対立、部族、流れ込んだ大量の武器。中東に平和的国家が誕生するための解は見えない!

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    投稿日: 2015.10.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    現時点でこれだけ整理するのは、大変だったと思う。 未知数が多いとはいえ、イスラム過激派の特徴が概観できた。 ●組織: 現在のISももともとはアルカイーダの末裔であること。 アルカイーダ自体は弱体化し、直接・間接的に関係ある組織が乱立し、個人的に思想に共鳴するテロも発生している。また、それを推奨している。 1.正統アルカイーダ、2.アルカイーダ星雲(フランチャイズ、別ブランド含む)、3.勝手にアルカイーダ に分類できる。 グローバルジハードの思想では共通していても、組織間のつながりはあったりなかったり。その中身はバラバラ。→とらえどころがない。 ISはアルカイーダ星雲の一つ。イラク戦争後の混乱地域で元イラク政府関係者を取り込み、土着化に成功。シリアの混乱にも乗じて勢力拡大。支配地域を有すること、カリフ制の復活等のイスラム教徒の心をくすぐる宣伝が巧みで新しい。 斬首はそのものを映像化しない。映画を見ている気分にさせる。→主張の一つ。 ●目的及び方法: 7つの段階を提唱している。 2000-2003:目覚め 2003-2006:開眼 2007-2010:立ち上がり 2010-2013:復活と権力奪取と変革 2013-2016:国家の宣言 2016-2020:全面対決 2020   :最終勝利 結局、イスラム教等の根本にある最終審判の終末観により不安をあおり、異教徒を打ち破ったマホメットの事績と重ね合わせることで、高揚感や希望を与えるという手法のようだ。 イスラム教徒はコーランのみに従うのが原則であるため、「国の法律は仮のもの」という考え方に同調しやすい。また、それに準ずるハーディス(マホメットの言動録)にある事績は、時代背景により、例えば奴隷や戦争といった意味合いが現代と異なる場合でも、そのまま示されると否定しにくい。 過激派でありながら、イスラム正統派が真っ向から批判できない、あるいは取り込む「大義」を巧妙に掲げているところが、これまでとは違う。 ●状況: 2011年に始まったアラブの春はただの不満勢力の結集にすぎなくて、民主主義の成熟にはつながらなかった。そのため、国の統治能力は弱まり、その空白地域(無法地帯)にアルカイーダをはじめとする過激派が息を吹き返せる空間が出現した、というのが現在の状況らしい。 しかし、これらの勢力はばらばらで、国家をつくるだけの統一思想や支持はなく、中東地域に安定した国家(民主的な国家が望ましいが)をつくることが、テロ対策にとって一番重要であることが理解できた。 無法地帯があるから、武器を持ったものが力をもって支配できる。住民の支持や自治のもとに「国」づくりされているわけではないことに留意する必要がある。しかし、スキマに対する適切な対処法を国際社会はまだ知らない。

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    投稿日: 2015.10.08
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    なんだかよくわからないものは恐ろしい。読んだ結果、恐ろしいことには変わりはないが、多少これが出来上がった歴史、思想的経緯、この組織の規模感、今後の見通しなどがうっすら想像できるようになった。

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    投稿日: 2015.08.24
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    イスラム国の成り立ちからここまで勢力拡大することに至った背景をわかりやすく解説。 彼らのロードマップ(行動計画)からすると、来年2016年から全面対決期に突入する。テロの危機が広がっていくのだろうか。

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    投稿日: 2015.08.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    正直、全くイスラム世界の知識のない初心者が手にとるような入門書的なものではなかった。まず、登場人物の名前が覚えづらい。組織の名前も覚えづらい。不勉強なので、国名を聞いても場所をイメージできない。このような人間が読んでも、全く頭に入ってこなく、最終的には途中で読むのをやめてしまった。他レビューも★が多いので、きっと理解力の高い人や予備知識のある人が読むには有用な本なのであろう。とにかく、イスラム教徒=「テロリスト」的なイメージがついて回るのは、そもそもの貧困の問題であるとか、過去のイスラム世界と西欧世界との争いの歴史の遺恨に原因があることとか、イスラムの教えを極端に解釈する一部の人間の行動によるものと理解はしているものの、やはり解釈によってはそのような暴力的な行為ができてしまうことや、同じイスラム教徒の中でもスンナ派、シーア派など、それぞれの考え方の違うものたちによって絶え間なく争いが繰り返されている現状を見ると、やはり「イスラム教」=「怖い」というイメージはぬぐえない。

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    投稿日: 2015.07.16
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    ネットや新聞の解説記事を含めて、イスラム国やイスラム社会の現状について体系的に説明されたのはこの本が初めてだ。 過激な映像などでグローバルな存在として注目されているが、結局は部族間、地域間、宗派間の争いを行っているに過ぎない。 イスラムにはどの宗派にも多数の穏健派と少数の過激派が存在するが、教義上は後者も(の方が?)正しいため、後者を抑えるためには中央集権的強権政府が必要となり、更にそれが過激派を生み出すという悪循環となる。 教義上、政(軍)教が分離されておらず、異教徒を武力で制圧することが正当化されるためだ。 現状を打開するのに非イスラム国家ができることは(余り騒ぎ立てないこと以外には)殆どなく、イラン、エジプト、トルコといった地域大国に任せるしかないらしい。 そのことが認識できただけでも、収穫である。

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    投稿日: 2015.07.06
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    70億もの人間がいれば、一般人には理解できない異常な行動をとる人がいても不思議はないし、広い世界ではそういう人たちが組織化することもあるだろう。イスラーム国についてなんとなくそう思っていたが、事実はそんな単純な話ではない。 2011年の『アラブの春』から、2001年の9.11から、1991年の湾岸戦争から、さらには1919年の第一次世界大戦後からもその萌芽を見ることができる、連綿と続く中東の歴史問題の一面が、イスラーム国の登場だ。 大戦終結後、多くのアラブ諸国は不安定な王政からクーデターにより安定した軍制へ移行した。しかし、当然のように腐敗した軍制国家の一方は、資金の確保のため親米派となり、それに対抗する形で成り立つ反米派は、軍備を増強した結果、戦争により崩壊した。しかし、親米派にしてもその腐敗を発端にして『アラブの春』が起こり、一時的に宗教性の薄い民衆派が政治を担うこともあったが、多くはその統治能力の無さから崩壊した。そうしてできた空白地帯を占拠したのがイスラーム国だ。 それが単なる火事場泥棒を狙う盗賊集団であれば、いくら空白地帯といえども勢力の拡大に限界はあっただろう。だが、イスラーム国にはその名の通り、イスラム国家としての覇権を夢見る宗教的意義がある。 王政、軍制、民主制に失望し続けた人々が唯一すがることができるのが宗教だけだとしたら。また、その人々が暴力の歴史に慣れさせられていたとしたら、異教徒の奴隷化、斬首処刑、種々のテロ行為が『異常な行動』ではなく、『歴史の延長』であり『宗教的に正しい行為』とさえ見えても不思議はない。 こうして歴史を学んでも、『自分がイラクに産まれたとしても、イスラーム国には組みしない』と言える人はいるだろうか。 過去、強固な国家システムに変革を与えることが出来たのは戦争だけだったが、過去の戦争の結果が今の状態なのだとしたら、一体何が出来るのか。行動経済学、社会心理学、分子生物学、そして数多の科学技術の先に、答えが見つかる日が来るかもしれない。

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    投稿日: 2015.06.28
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    テレビを見ない世間知らずな私には難しく、またショッキングな内容でした。こういう組織を構成しているのが志願兵だというのもまた衝撃でしたが、その心も解説されており、こういう考え方もあるのだと、見聞が広がりました。

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    投稿日: 2015.06.07
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    所謂イスラム国が主張するような過激思想自体は真新しいものではない。そして、実はそれへの反駁も尽きている。故に穏健派と過激派の対立はどこまで行っても「見解の相違」になる、というのが一番の衝撃のように思われる。話せばわかるというものではない。所謂イスラム国という現象は、中東独裁政治、イラク戦争の残滓、ジハード論、アラブの春での穏健派の失墜と行った問題の症状に過ぎない。そのため、どの問題に着目するかで書きぶりが異なり、当然新書一冊で足りるものではない。僕はジハード論の発展についてもっと知りたいと思った。

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    投稿日: 2015.06.05
  • 「イスラーム国」の成立の歴史的な必然を解説する好著

    著者は、イスラム政治思想史及び中東の国際関係論の分野で、2015年現在、我が国随一の学者の一人と呼んでよい。その著者が、新書という一般読者向けの形式で、昨今の報道では IS とか ISIL とか呼ばれている「イスラーム国」について分かりやすく解説した好著。第1次世界大戦後の中東史の中でイスラーム国の成立の必然性を語る部分は素人にも大変分かりやすい。また、イスラーム国が自らの行動の正当化するため、イスラム教の教理を巧みに引用していることを丁寧に解説しており、イスラーム国が過激なイスラム教徒を世界各国から引きつける理由もこれで理解できる。 正しい現状認識なしには、妥当な解決策は立案できないという観点から、本書は基本的な理解を促す良書である。ただし、読後は陰鬱な気分になることは覚悟したほうがよい。読者は、イスラム教自体にはイスラーム国の暴力を止める力がなく、例えばアメリカのような他者がイスラーム国を止めようとすることはかえってイスラーム国の求心力を増す方向にしか働かないということを思い知ることになる。

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    投稿日: 2015.05.25
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    タイトル通りイスラーム国(IS)について、誕生に至る歴史、イスラーム思想史の中での立ち位置、国際政治における影響、メディアの利用をはじめとする現代的な戦略など、様々な観点から解説した本。類書の中でも優れた本としてベストセラーになっていた。それも肯ける内容で、内容的には非常にバランスが取れている。文章自体も決して難しいわけではない。しかし一行一行全てが情報の洪水で、いかにも学者らしい謹厳実直な文体であるため、読み進めるのに非常に難儀した。イスラーム国に関するアウトラインは一応理解出来たと思うが、詰め込まれた細かい情報はほとんど右から左へ抜けていった感じ。途中で疲れて、かなり長く放置していたため、読み終わるのに2か月ほどかかってしまった。思い出したように残りを読み切ったものの、私はあまり良い読者とは言えないようだ。 なお最終章「8 中東秩序の行方」にある〈「サイクス=ピコ協定の拒否」を掲げて近代の国境を否定すれば、このような大混乱と民族浄化を再発させることになりかねない〉といった一文は、この前に読み終えたカズオ・イシグロの『忘れられた巨人』で描かれていたテーマであり、あの小説の普遍性にあらためて感じ入るものがあった。

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    投稿日: 2015.05.13
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    自分も高校生の時は、ウマイヤ朝、アッバース朝などの版図拡大に無邪気に歴史ロマンを感じたものだが、ジハードもその拡大方法の1つだった。統治されない空間で指導者なきジハードが繰り返される中、カリフ制国家再興というビジョンは若者たちにどう映ったのか。今現在日本との距離感はあるが、これはさらに学ぶ必要がありそう。6月に著者の話を聴くのが楽しみ。

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    投稿日: 2015.05.10
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    たいへんに勉強になった。新書なのに質量ともに大満足。大当たりです。ISがなぜこんなにも勢力を拡大できたのか、何がそんなにウケたのか、その限界は、というのが良く分かる。時機・時流って大事。あと半年くらいしたらもう一度振り返りたい。

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    投稿日: 2015.05.10
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    「イスラーム国」の巧みなメディア戦略。鮮明で、洗練されていて、話題にあがるほどショッキングな映像だけど、残酷すぎず、視聴に耐えうるものであるため、第三者によって広められる、という著者の解析です。

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    投稿日: 2015.05.06
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     三国志を僕らは「楽しむ」。「戦国時代」を映画やドラマや小説で「楽しむ」。十字軍やレコンキスタの物語も「楽しん」でいるかもしれない。いずれもずっと昔の出来事として。  でも、実際には物語は続いている。  今日の中東の状況を分析するにのに、本書では1914年、第一次世界大戦まで遡って、その後の1952年ナセルのクーデター、79年イラン革命・・・と幾つかの分水嶺を上げて解説していく。そのなかで、イスラム思想、ジハード思想がどう変わっていったのか、変わらなかったのか、受け入れられていったのか。    それでも結局よくわからない。宗教ってなんだ?

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    投稿日: 2015.05.05
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    邦人人質事件で騒がれたころに一度ちゃんとまとまった本を読まないとと思っていて、やっと借りて読んでみた本。 なぜ今こんなことになっているのか、とてもわかりやすく書かれていました。 ブログはこちら。 http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/4862537.html

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    投稿日: 2015.05.04
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    イスラム政治思想史の専門家によるイスラム国の台頭の裏側にある歴史的・宗教的背景や、その台頭を招いた中東の政治的状況などがまとめられた一冊。論旨が非常に明快であり、なかなか理解しにくいイスラム国を巡る状況の見取り図がぱっと頭に入ってくる点で、非常に貴重。 このわかりやすさは、著者が冒頭で説明しているように、イスラム教という宗教が持つ政治思想史の文脈と、中東の政治的情勢の文脈の両面からの説明がなされていることに起因しているのだと思う。読了して実感したが、確かにイスラム国がアルカイダ以降の政治思想を引き継いだ政治思想的な内在的側面と、アラブの春以降、独裁国家が崩壊したことによる中央集権的政府の空白の誕生という外在的側面の両面からの説明は非常にロジックとしてわかりやすい。 読み終わって個人的に感じたのは、国民国家(Nation-State)という枠組みの限界が、こうした問題にも現れているということだった。本書では、イスラム国が最初はイラク北部から勢力を拡げつつ、シリア内戦に乗じてシリアへ勢力を広げることで、イラクからの軍事攻撃を避けることができたという意味合いが語られているが、これはまさに一方は国民国家という枠を超えて自由に動いている中で、他方はその枠組みに縛られて動かざるを得ないという問題を露わにしている(もちろん、21世紀に入ってからの過激派テロは概ねそのような国家の枠を超えた活動をする点に特徴があるわけで、特段イスラム国が顕著だとは思わないが)。 もちろん、新書ということもあって、詳細な点は語り足りないところはあるのだと思うけれど、イスラム国について何かを知りたいという僕のような人が最初に読むには適切だと思う。

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    投稿日: 2015.04.29
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    イスラム国による日本人人質事件が起きて、得体のしれないものの恐怖に慄いたので得体が知ればちょっとは怖さが和らぐかなと思ったのがきっかけ。 あのときはニュースでもちきりだったのに、今じゃどうだろう。みんな忘れてるんじゃないかな。とかいいつつ私自身も人質になった方の名前が思い出せない。後藤さんだったか。 第三次世界大戦が起きるときはイスラム国が発端になると思ってるんだけど、それを予期させるものがあって怖い。 イスラム国が作った年表 1.目覚め 2000-2003年 2.開眼 2003-2006年 3.立ち上がり 2007-2010年 4.復活と権力奪取と変革 2010-2013年 5.国家の宣言 2013-2016年 6.全面対決 2016-2020年 7.最終勝利 2020年 9.11は2001年に起きている。 国家を名乗り出したのも去年あたりと記憶している。この年表どおりに世界が進んでるとしたら、2016年に戦争が…考えたくないけど、これまでの歴史がそれを証明しちゃってる。 その他、目にとまった箇所抜粋 ・最終目的は世界規模でのカリフ制イスラム国家の再興 ・アラブの春以降、独裁政権が倒れるもそれに代わる政権樹立に至っていない国が多い→国が管理できない無法地帯が生まれる ・それがシリア。イラクに駐留していた米軍が捨てて行った(撤退)武器がイスラム国に流れる ・戦闘員は金銭的な代償よりも、崇高なジハード目的のために一身を犠牲にするつもりで渡航している この本を読んだ後に、「アメリカンスナイパー」を見てとてつもない空虚さを感じた。イラク帰還兵のPTSD、心の病について。 宗教VS宗教の争いは、いつ終わるのだろう。

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    投稿日: 2015.04.22
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    最近立て続けに出版されているイスラム国関係の書籍の中では良書に属する。 著者の池内氏は現在中東政治とグローバルジハードに関してそれぞれ執筆中とのことなので、上梓されるのを心待ちにしている。 この本が良書である所以は、綿密な情報分析がベースにあることである。特に、2020年の世界規模でのカリフ制の再興に至る行動計画も記述されている。 (1)目覚め(2000年〜2003年) (2)開眼(2003年〜2006年) (3)立ち上がり(2007年〜2010年) (4)復活と権力奪取と変革(2010年〜2013年) (5)国家の宣言(2013年〜2016年) (6)全面対決(2016年〜2020年) (7)最終勝利(2020年) イスラム国をテロ活動と認定して戦っている欧米諸国は、この行動計画と戦っていることになる。 では、日本はどうすべきか。このことについては著者は以下の様に述べている。 ”「イスラーム国”への対処は、日本の自由主義体制と市民社会の成熟度を問う試金石となるだろう。” つまり、まずはイスラーム国の歴史的背景を正しく理解し、日本が欧米と共同戦線を張るのか、独自の立場をとるのか、国政レベル、市民レベルそれぞれで十分な議論が必要だということだ。 今はまだ他人事となっている部分が大勢を占めていると思われるだが、原油問題も含めて生活に直結する問題でもあるので、日本としてどうあるべきか、日本の利益だけを考えるのではなく、国際社会の中でイスラームとはどういう付き合い方をするべきかの姿勢を明確にすることが、日本が国際社会の一員として果たす役割と言えるだろう。 一方で、著者はイスラーム社会にも提言をしている。 ”イスラーム世界にも、宗教テキストの人間主義的な立場からの批判的検討を許し、諸宗教間の平等や、宗教規範の相対化といった観念を採り入れた宗教改革が求められる時期なのではないだろうか。” どちらかの一方的な勝利ではなく、相互理解による共存が望ましいという著者の意見には賛成だ。

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    投稿日: 2015.04.18
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    僕がイスラーム国について知っていたことなんて、本当にごく一部でしかなかったということをこれでもか、これでもか、と見せつけられた気がします。

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    投稿日: 2015.04.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「イスラーム国」が世界を驚かせたのは,2014年6月にイラクで広範な地域を制圧した時である.(冒頭の一文) 自分用の要点 ISISの原点は,アルカイダの一派.アフガン戦争後,地下に潜ったアルカイダは,テロ組織のフランチャイズ化を図る. アラブの春以降の混乱に乗じて,政治空白地帯を占領.スンニ派の支持も得る(政権がシーア派,クルド人も自治権が与えられていた). 2011年の米軍全面撤退後,マーリキー政権の失策.スンニ派を迫害.フセイン残党も合流. シリア内戦を機に,イラクとシリアの両国に拠点を持つことで幅が広がった.国境を越えて追えないため. アラブ諸国は自国内の反体制の過激派を真面目に制圧しなかった.イラクに流れさせておけば,自国は安全.

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    投稿日: 2015.04.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ISIS、ISIL、ダーイシュと呼ばれるテロ集団のことを理解するのに、最も適した入門書と紹介されていたので買ってみた。 やっぱり、歴史的経緯を鑑みて国境線は引き直した方がいいのだろうけど、そんなの簡単にできないよね。 1)オスマン・トルコ崩壊時に列強が勝手に国境線を引いて火種が元からあったが、これまでは強権的な政権がその火種を抑えてきた 2)強権的な政権が倒れ、米軍が撤退した後の政権の空白地帯に、ISのようなテロネットワークが拠点を得た 3)テロネットワークは、アル・カーイダのような従来型のテロ組織と違った性格を持っている  ・明文化された「グローバル・ジハード」という思想で自律的に活動し、中心・強い連携を持たないので行動が把握しにくい  ・イスラム法に則った国を作ると宣言していて、欧米や世俗的な政権に対する対抗勢力として、ある程度支持を集めてしまう  ・倒された強権的政権のメンバを取り込むことで軍事的プロ集団になっている 4)アラブの春後に選挙によってできた政権は、これまでの強権的政権に抑圧されていた恨みから、対立勢力を弾圧してしまうので国を統一するような力を持てない 5)ただし、国を作るために都市を制圧して拠点を作るので、従来型の軍隊での対処が可能で、全世界的に広がるという可能性は低い

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    投稿日: 2015.04.05
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    イスラム国ないしISILないしISISの出現とその伸張について私は、正直、先日の日本人人質事件があるまでほぼ無知に等しかった。中東にこれだけの大激変が起きているのに知らなかったとはやはり忙しさにかまけててはいけない、ということだと思う。著者の池内氏はこの分野は日本の研究者の中では図抜けて詳しいという。なので2月、急ぎ読んでみた。 なるほど。オレンジ色の囚人服を着させてやたらに残酷な映像をハイ・メディアリテラシーで前々から流していたのはこの勢力だったのか。そして、このオレンジ色の囚人服はアルグレイブ等米軍収容所の囚人服を意図的に使っていたのか。。なぜいまイスラム国が成立しているのか、本書を読むとその文脈がわかる。イラン革命、アフガニスタン紛争、湾岸戦争、9.11、イラク戦争、そしてアラブの春。。これら混乱と報復の数十年間の経緯の上に、21世紀、突然にイスラム教の本願であるイスラム一神教国、カリフ制の樹立のような歴史的なものが乗っかってくるのだから、人間のなすことはなんとも複雑で不思議としかいいようがない。 とまあ、知的好奇心だけでみればそういう一神教世界の他人ごとで興味深く読めるのだが、世界は経済や情報の力でどんどん小さくなっており、アジア多神教圏とも一衣帯水、現実の影響がどんどん出てくるので見逃すことはできない。これからは定期的に情報を更新してきちんとした理解を持つ事にしよう。 イスラム国や世界情勢を理解したい人にはオススメの本。

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    投稿日: 2015.04.05
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    学術的な側面からしっかりとイスラーム国が検証されている。単純な感情的な批判ではなく、では我々は何をしなければならないのか、ということのヒントになる。テレビではしきりに貧困や差別が原因と位置づけられているが、そんな単純なものではないよと諭しているようだ。

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    投稿日: 2015.04.01
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    読みにくいと。さすがは東大教授。アカデミックな人特有の回りくどさ。オバマ本に引き続き、読んでいる最中に主節を何度も見失ってしまった。内容自体はそれなりの面白かった。地図とにらめっこしながらの読書となったけれど、こんなにも広範囲に無法地帯があうるとは驚き。イスラム教の聖典から都合の良い部分を引き出し、斬首したり、奴隷にしたりと、まあやりたい放題。本当にそんなに好戦的な宗教なのかな?ちょっと調べてみたくなった。★3。

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    投稿日: 2015.04.01
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    イスラーム国関連の記事をCARで扱ったりすることもあるし、現状把握のためにも読んでおこうと手にとった本。 911以降のアルカーイダ⇒グローバル・ジハードの思想/主義の変遷+アラブの春で生まれた政治的空白 ⇒ イスラーム国的な領域支配 アラブの春の評価には四半世紀はかかる、というのはなるほど・・・。

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    投稿日: 2015.03.30
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    邦人人質殺害によって一気に国内における認知度が上昇したイスラーム国。 本書はその存在の生い立ちや背景、なぜ彼らのような組織が誕生したのかと言った経緯を解説した解説本です。 その為、内容はイスラーム国や中東情勢、歴史等に関するものが多いのですが、そればかりではなく、日本国内におけるイスラームの取り上げられ方についても論じています。 ※それによれば、実際には少数派に過ぎない欧米出身のジハード戦士に注目して欧米諸国における差別、貧困構造を論じる等、イスラームが欧米コンプレックスや現状否定、破壊・破滅願望を満たす存在として扱われる可能性があるとの事です。 また、中東各国の中央政府の弱体化やアメリカ等、域外の大国の影響力の低下によってイスラーム国を始めとする様々な組織が力を増強させてきており、今後、アメリカが中東への関与を強めるか、弱めるか次第で同地の先行きが変わってくるそうです。 関与を強めた場合については特に言及がありませんでしたが、弱めた場合については、イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプトと言った地域大国が影響圏を拡大させるのではないかと予想しており、またそれが今の中東地域を安定化させる唯一の手段ではないかと論じています。 しかし、この場合でも地域大国同士の対立によって紛争の激化は避けられず、当分の間はこれは問題への処方箋ではなく、問題の一部そのものになるであろうとも予想しています。 尚、アメリカが中東関与を弱めた場合の影響は上記にとどまらず、 ・アメリカとの同盟によって安全保障を確保している世界の国々が、アメリカの意思と能力に疑問を抱くようになり、その結果、独自に行動し始める ・各地域の地域大国や反米国家の行動への抑えが利かなくなる 等が起こり始め、それによって同国の覇権衰退が一気に進む可能性もあるとしています。 この様にイスラーム国をただイスラーム国だけの存在として解説しているのではなく、大きな流れの中の一部として解説している本書。 ここ最近の報道によれば、サウジアラビアのイエメンにおける軍事活動の強化やイスラーム国攻撃へのイラン民兵の参加など、著者が本書で述べている地域大国の活発化が起きている様子です。 仮に事態の進展が著者が本書で述べた通りになるとすれば、日本のある東アジア地域も無関係ではいられなくなりそうです。

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    投稿日: 2015.03.29
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    ブログに掲載しました。 http://boketen.seesaa.net/article/413806373.html 池内の本はあまりにも、欧米の中東政策に無批判過ぎて、イスラムフォビア(イスラム恐怖症)を増幅しかねない要素をはらんだ本と感じました。 その点で、重大な保留をしながら読むべき本と思います。

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    投稿日: 2015.03.25
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    イスラーム国について。近年になってイスラム原理主義の危険について国際社会が叫んでいる。原理主義の様々な変遷とイスラーム国に至るまでの流れがわかりやすく書かれている。イスラムの教義の解説も添えて、未来的に原理主義集団が何を目標としているのか、大づかみであるが理解することができる。

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    投稿日: 2015.03.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    最近のイスラム国関係の本の中で、いちばんわかりやすいと書評にあり。ビンラディンの911から、アラブの春、そしてイスラム国に至る歴史もよくわかるし、なぜ、NYマラソンやフランスの新聞社など、組織だっていないテロがあり、なぜいつもオレンジの囚人服なのか、これから彼らが何を目指そうとしているのか、よくわかる。読み終わってチェニジアの事件、ニュースへの理解が変わると思う。

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    投稿日: 2015.03.22
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    本書は「イスラーム国」の誕生から現状まで体系的かつ網羅的に概括されている。感情面に偏ることなく歴史的背景と事実に基づき構成しているため「イスラーム国」を理解するのは適した一冊であろう。 本書内で特に印象的なのは「グローバル・ジハード」という新たな潮流だろう。形なき思想と姿なき敵、我々はそういう時代に生きていることを理解せねばならない。

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    投稿日: 2015.03.18
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    イスラーム国が派生した歴史と現代におけるこういったテロ組織が生まれる経過などが詳細に記されています。イラク・シリアなどの中東をはじめとした世界に於ける紛争があるかぎりこの手の集団は消えることはないでしょう。

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    投稿日: 2015.03.18
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    彼らはどうやって食べているのだろうというのが疑問だった。 なんとかなるもんなのかな… 戦闘員ばかりでは食べていけないはずなんだけどな… 人類はやっぱり誰かを屈服させて自分の思い通りにしたいと思うものなのか。 戦争って無くならないんだな。 Mahalo

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    投稿日: 2015.03.18
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     これまであまり中東情勢について意識することはなかったが、日本人がテロに巻き込まれるケースが増え、知らないでは済まされない状況になってきた。中でもテロ組織「ISIL(イスラーム国)」のケースは、日本人が殺害された経緯について様々な議論はあるとしても、今後の世界情勢を考える上でも理解しておいた方がいいだろうと思い本書を手に取ってみた。  著者の池内氏は長年にわたって中東の思想や政治について研究をされてきた専門家であり、「イスラーム」「アル=カーイダ」等の用語にも専門家としてのこだわりが感じられる。  本書ではISILの来歴や特殊性を詳細に解説されているが、正直なところ、すらすら読める本ではなかった。中東を取り巻く状況の複雑さに何度も前に戻って読み返したり、事態の深刻さに気が重くなって読むのを中断したり。それでも読み通すと、今までバラバラだった知識や情報の関係が理解できるようになってくる。特に最終章「中東秩序の行方」では第一次世界停戦後のオスマン帝国の崩壊から現在までに至るまでの経緯が解説されており、歴史と現代とのつながりが見えてくる。  中東での米国の影響力低下の中で、著者はイラン、トルコ、サウジアラビア、エジプトの動向が今後の展開を左右するとみている。一次エネルギーのかなりの割合を中東に依存する日本としてはこの問題にどのように関わるべきだろうか?

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    投稿日: 2015.03.14
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    現在の状況が簡潔に記されているように思えて有意義な本かと。 日本社会に生きる人間、つまりは原則として米欧の志向を是とする共同体に身を置く人間から見ると、昨今の軋轢は解決不能かなと思わざるを得ない。 拠って立つ位置がそもそも違う人とどうやって共感の場を設ければ良いのだろう?この本からその回答もしくはその足掛かりは見出せなかったなぁ、、、

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    投稿日: 2015.03.13
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     まさに識者による良書だろう。イスラーム国、ことISISについて、その歴史的な位置づけから彼らのメディア戦略まで、知るべきことはこの一冊でほとんどカバーしているだろう内容である。  概念や思想を順序立てて説明してくれている点も非常にわかりやすく、読みやすい。いま求められている話題に対して、極めて高い密度で、なおかつ素人にも読めるような書き方で説明してくれているのだから、本当に頭が下がるところだ。  良い本だった。文句なしに星五つ、老若男女問わず多くの人に読んでもらいたい本である。  むすびの部分によると、より深く突っ込んだ本も刊行予定だそうで、これは楽しみである。

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    投稿日: 2015.03.13
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    「イスラム国」の成り立ちや背景事情、どうしてこんな酷いことする集団に世界各地から人が集まっているのか?というよくわかってなかったことについて、よく解説してくれていた。イスラム政治思想史と国際関係論、両方を以前から研究してきた筆者だからこその本では。 カリフ制の再興などをうたった、グローバルスタンダードな世界宗教の教義の一部を援用したグローバルジハードの思想、ジハード思想史の辺りの説明に一番なるほどと思った。 この本以後の出来事もブログやFacebookでフォローしてくれているようでありがたい。

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    投稿日: 2015.03.10
  • こいつらって一体、何? これが手にした切っ掛けです。

    何故、シリアとイラク、二つの国にまたがって占拠できているのか?何故、地元住人たちは従属せざるを得ないのか?そもそもイスラム教とは何なのか? 穏健なはずの本来のイスラム教が、何故、過激思想に発展し、残酷な処刑方法をも厭わないのか? 遠く離れた場所での出来事だった為、漠然としか考えていなかったが、今回、邦人が巻き込まれた事から、その恐るべきテロリストの実態について興味を持った。 私達には、馴染みのない宗教に基づいているし、また世界的規模の大問題な為、理解するのに、少々難解な部分があったが、読後は、わだかまっていたものが少しはすっきりした。 常日頃から、こいつら一体なんなんだろう?と思っている人は、読んでみるのもいいでしょう。

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    投稿日: 2015.03.10
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     国際政治の最もホットな話題であるIS「イスラム国」を解説した本で、今年の1月に発行された本である。  ISの誕生した背景や主張、思想、活動方法などを詳しく書いており、情勢変化が速いテーマだが、まだまだ賞味期限は切れていない。  本書を手にするような読者は、ニュースや雑誌記事などで中東での動きを概略は把握しているだろうが、本書はそれらを支持し根拠や裏付けを丁寧に説明している内容になっており、読者の考えをひっくり返すような驚きはない。  今後中東の地にどのような変化が生じたとしても、混乱が収まることはなさそうな予感までも本書で裏付けられたように思う。  

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    投稿日: 2015.03.07
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    イスラム国の成立までを学術的に解説してくれる。分かりやすく素直に置けいれられる。日本の学者はイスラム圏内の貧困が背景であるように主張するが、この著者は否定する。問題は複雑で簡単には解決しそうもない。時間が解決する唯一の方法なのか?

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    投稿日: 2015.03.07
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    巷で話題になっているだけあって、さすがに読みごたえがある一冊。 イスラームの思想と現代の国際関係をわかりやすく説明しつつ、「イスラーム国」の内実を解いていく。 特に「アラブの春」が何をもたらしたかについては「なるほど~」の連続。なんか民主化のお祭りみたいなイメージしかなかったけど、現実は複雑だ。 複雑なものを複雑なまま理解することの大切さもまた教えてくれる書。

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    投稿日: 2015.03.07
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    過激派集団ISイスラミックステートが、テクノロジーをつかったメディア戦略で世界を席巻している。歴史的に見ても大きな世界情勢の転換ポイントのひとつだ。だからこそ、イスラム教の始まりから今に至るまでの中東情勢についてきちんと知識を頭に入れておく必要がある。その上でこの本はオススメ。

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    投稿日: 2015.03.01
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    イスラムの問題の複雑さがよくわかった。イスラーム国を消滅させたとしても、また新たなイスラーム国をうむことになるであろう。解決策がまったく思いつかない。

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    投稿日: 2015.02.23
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    元々国際情勢を知るのは好きなんですが、イスラム教各国に関しては知識不足でこれまで敬遠気味でした。で、最近のイスラーム国のニュースに触れる度に、このままではいけないなということで、勉強気分で購入し読んでみました。 本書は読み始めるとイスラム各国の歴史と宗教に関する平易な説明がとても面白く、構造的なものが学べて非常に興味深い一冊でした。読み終えた成果としては、911とアルカイダとフセイン政権とブッシュJrのイラク戦争とアラブの春とISISの関係性を説明できるようになります(笑) ISISの思想的な新しさと構造的な新しさを知ることは、この時代に生きる者として必要な気がします。ぜひ一読を。 また、残念だったのは、Facebookを中心としたインターネットというツールがアラブの春を裏で支えたのは事実で、たしかにあの瞬間は成功だったけど、今はその手法でISISが台頭してしまっていること。政治的に運用するわけにもいかないし、とても難しい問題だけど……(2015.2.15ごろ読了)

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    投稿日: 2015.02.22
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    私が今抱く疑問、「イスラム国は一体どこから発生したの?」とか「あの映像にはどんな意図がかくされているの?」とかに対して、丁寧に、偏ることなく答えてくれた。 イスラム諸国のそれぞれの事情や、「アラブの春」の影響やアメリカの対応の変遷。 日本人にとって、直接の対話が無理である以上、逆に表面上のプロパガンダ的な映像や日本国内の中途半端な報道に惑わされてはいけないと思う。 ただむやみに怖がるのではなく、正しい理解。それが私にできる唯一の手段だ。

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    投稿日: 2015.02.18
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    テレビでよく聞くイスラム国。実際はどのようなものなのかよく知らない、ということで本書を購入。 自分が思っていたよりずっとイスラム問題は複雑で根が深い。 ただの悪の組織かと思いきや、彼らは宗教上は筋を通しており、彼らなりの正義を実現しようとしていることがわかった。 アラブの春によって露呈した中東地域の政治の脆弱さと政治力の無さには正直呆れた。せっかく独裁政権を打倒したにもかかわらず、新政権もアメリカの指導がなくなった途端に崩壊する国家というのはどうなのだろうか。 また、アメリカの絶大な影響力に中東の未来が左右されることを思うと、中東地域は少しずつで自立していくべきだと思う。 イスラムの問題は日本とは縁遠いという考えは甘かったことを痛感した。

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    投稿日: 2015.02.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    第一人者によるイスラム国の解説本。 これは、アル・カーイダを本店としたテロのフランチャイズ化だという。もともとイスラム国も2004-6年には「イラクのアル・カーイダ」を名乗っていたが、新たな家元になった。さらに、今度はイスラム国への忠誠を誓ってイスラム国の暖簾分けを希望する勢力も現れている。 ボストンマラソンテロのようなローン・ウルフ型のテロリストが先進国の若者に現れる一方、「アラブの春」以降の中東やイスラム諸国の政府の弱体化、紛争の激化によって「統治されない空間」ができた。イラクとシリアの国境をまたいだ空間はその最たるもので,そこに世界各地からジハード戦士が集結した。特に、アラブの春によって自由で穏健な政権交代が期待されたが、エジプトであからさまに武力による排斥が起こったのをみて、イスラム過激派が勢いづいた。アサド政権もいまや、一族の生き延びを再優先の目標とした民兵集団の一つと見做すべき。 ・バグダーディーというのが指導者だが、このバグダーディーは2006年から3人目になる。この名前はバグダッドの、つまり、イラン人である、ということを言いたいだけなので、イスラム国の指導者は代々この名前を使っている。2006からアブドラ・バグダーディー、同じく2006にアブー・オマル・アル・バグダーディー、2010からはアブー・バクル・アル・バグダーディー。

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    投稿日: 2015.02.15
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    イスラム国はテロリスト集団と揶揄されるが、彼らには彼らなりの思想がある。そして、この状況を生み出した背景には、欧米の過去のイラク戦争、アフガニスタン侵攻などの中途半端な軍事介入もある。そういった事を知ってからイスラム国を見ると、少し見え方が変わってくる。また、彼らのメディア戦略を知ることで、あの脅しに使われる殺害予告映像の裏側に隠された思惑通りに、不用意に拡散する人も減るのではないか。

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    投稿日: 2015.02.15
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    それまでは、ふむふむと読み進んで来たが、最後の8章はノートをとって読んだ。 世界史の知識が致命的に欠けているのを実感する。ましてや中東の歴史やアフリカの歴史なんて真っ白だ。 高校の教科書でも読んでみるべきか。

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    投稿日: 2015.02.15
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    イスラム政治思想史と国際政治学の二点からイスラム国を分析する。イスラム国をもたらしたのはジハード主義の拡大がもたらしたグローバルジハードの運動と、アラブの春で中央政府による地方統治の弛緩にあるとする。イスラム国はカリフ制の復活を主張し、既存の近代国家に挑戦し、一定の領域を支配していることが新しい。アル・カーイダのような国際テロ組織としての性質と、領域支配を行うタリバンのような土着勢力としての性質の両方を兼ね備える。動画の編集は計算されており、米人処刑動画の公開には米国を戦争に巻き込んで大義を得るのと同時に軍事介入を控えさせる狙いがある。 アル・カーイダがどのような道を辿ったか、ザルカーウィーの二十年計画、アルブの春でのシリアやリビアの内戦について、イラクでのスンニ派、シーア派、クルド人の抗争があり、イスラム国にフセイン政権残党が合流したこと、イスラム国の外国人戦闘員について、などなどとても知りたくて気になるところをおさえていて、イスラム国について知るのに必読の入門書と思う。

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    投稿日: 2015.02.14
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    話題の「イスラム国」ISIS。 サイクスピコ協定とか、あったあった。 久しぶりに中東の歴史をおさらいした感じ。これからどうなるのだろう。

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    投稿日: 2015.02.13
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    イスラムの思想と関係各国の政治的な関与をメインにイスラーム国を解説している本。ニュートラルな立場で書かれており、さて日本の皆さんはどうする?と問いかけている。 この本は湯川さんと後藤さんが拘束される以前に書かれているのだが、安易な回答に飛びつくのではなく、この様な本を読んでじっくり検討した上で個々人が中東に対して意見を持つ事が重要だと思う。 などと言いつつ本書は難読で一回読むだけだと大まかな流れしか頭に入って来ていない。 投票権を持つ全ての方と、これから持つ予定の全ての方にオススメです。

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    投稿日: 2015.02.12
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    ぼくはたぶん、この本に書かれていることの前段階が知りたいのだと思う。 彼らは何を求めているのか。 現地のひとはどう思っているのか。 彼らにとって、人質殺害や各国でのテロはどのような意味があるのか。 有志連合 vs ISILの戦いは、当局とメキシコのギャング、イタリアのマフィアとの戦いと同列に考えていいのだろうか? 現地の治安部隊が彼らを止められない理由や、世界から戦闘員が集まってくる理由(の一部)はなんとなくわかって、それだけでも十分読んだ意味はあったけれど。

    1
    投稿日: 2015.02.11
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    米国の対テロ戦争やアラブの春によって既存の支配構造が崩れ、そうしてできた空白地帯に今までよりもっとヤバイ奴らが現れてしまった、というのがイスラム国ってところか。 他人に「正義」を押し付けようというなら、自分も相当な覚悟をしないといけないってことだな。

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    投稿日: 2015.02.11
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    日々垂れ流されている報道では見えないことも多かろうと思い、過去からの経緯も踏まえて幅広く理解するために購入。 内容についてはすでに各方面で触れられているのでここでは割愛しますが、こうやって地道な研究や調査を続けておられる方々には頭が下がる思いです。

    0
    投稿日: 2015.02.11
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    一般の日本人が今、知りたいであろう事柄を急遽まとめたー冊。イスラム思想史、比較政治学という著者の専門家としての見解を解りやすく書いている。 「イスラーム国」を過大でなく過小でなく評価し、彼らの来歴、行動原理を分析する。 メディアに情報はあふれているが、多数派の関心事のみが強調されがちなので、本書で大きく整理できたことは良かったと思う。

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    投稿日: 2015.02.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    中東情勢ももう日本と無関係ではなくなってしまったな~って気がして、イスラム圏のことを知ってみようと思って読んでみた。けど複雑すぎてさっぱりわかりません。ただ、いろんな国やいろんな政権が、いろんな思惑であぁいう過激派組織を野放しにしてきた側面も否めないんだなってことが分かってきた。それぞれの思惑が入り乱れて最終的に(まだ終わってないけど)「イスラム国」の台頭を許してしまった感じがする。そういう意味でも、やっぱり遠く離れた日本にいるからといって無関係ではいられないんだな、という怖さを感じました。

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    投稿日: 2015.02.10
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    今世紀急速に拡大してきたグローバル・ジハード運動。それが生み出したISILの組織や活動について,思想的/地勢学的という二面の背景を軸に歴史を繙いて明らかにしていく。専門の先生の著作だけあって非常にしっかりした内容でとても勉強になった。 それにしても,西洋諸国にとって喜ばしい変化のはずだったアラブの春が,地域に混乱と無秩序をもたらし,ISILやそれに共鳴する過激派組織に拡大し,根を張る場所を提供してしまったことは痛恨の事態。彼らはイスラムの教えを利用して国際的な犯罪行為を繰り返しているが,これをコーランの記述に真っ向から反する行為ということもできないのが難しいところ。イスラム教が宗教改革という洗礼を未だ受けていない宗教であることが一因で,この問題をどう扱っていけばいいのか本当に悩ましい。力による解決しかないというのはいかにも残念なのだが。

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    投稿日: 2015.02.10
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    内容は最近の新聞社説などを読んでいれば目新しくは無いが、面白い。イスラム文化という長大なストーリーを、イスラム国を軸にして読み解き鳥瞰する体裁。「グローバル化」が、民主主義を金科玉条にした価値観の押し付けになっているところに、危うさの源泉がある。

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    投稿日: 2015.02.09
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    「イスラーム国」の伸張の背景には、思想的要因(明確な組織・指導者を持たずに拡大するグローバル・ジハード運動の成立)と政治的要因(「アラブの春」を背景に政治的空白地域が発生、イラク・シリアでの現地化に成功した)の二点がある。 ・「イスラーム国」が引用してくるイスラーム法上の典拠は通説を逸脱したものではなく、イスラーム教徒が強く反対できない一般的・基本的な内容である。 >指導者バグダーディーは2014年6月、カリフ制の再興を宣言した。イスラーム法ではカリフの存在の必要性は明確に規定されている。『コーラン』と「ハディース」に依拠して、歴代の法学者が議論で合意に達した見解を疑うことは宗教上許されない。 >征服地の異教徒を奴隷化することは、イスラーム法上明確に規定された行為である。(近代では奴隷制の廃止という国際規範をイスラーム諸国も受け入れているが、奴隷制を規定するイスラーム法学の通説に反して奴隷制を否定する近代の法体系そのものが、違法・誤謬であるというのが「イスラーム国」の立場。 >戦闘員らは、金銭的な代償よりも、崇高なジハードの目的のために一身を犠牲にしている状況が基本。貧困が原因、ならず者の集まり、というとらえ方は一面でしかない。欧米出身者も数としては少なく、「イスラーム国」側の宣伝・強調に起因する側面に注意。 ・「イスラーム国」の資金源は諸説あるが、①支配地域での人質略取による身代金の強奪、②石油密輸業者などシリアやイラクの地元経済・地下経済からの貢納の徴収といった「略奪経済」の域を超えないというのが著者の見立てであり、現状の「イスラーム国」は略奪で賄える程度の組織である。(石油密輸にしても、市場価格の1/4というダンピング価格であり、「イスラーム国」台頭以前から地元業者が握っていた権益に過ぎない)。

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    投稿日: 2015.02.09
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    ◎ISILとは、理解することがだいぶできた。 ◎宗派、部族。日本人である私にはわからない違い。でもそれが大きな紛争の種になっている。 ◎預言者、後継者、穏健派、過激派。

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    投稿日: 2015.02.08
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    これからますます多くなるであろう、イスラーム国に対するニュース。 そんなニュースに接する上での、予備知識補充のために。 ですが、そんな甘い覚悟では立ち向かえないほど情報量と考察量が多い本でした。 2015年2月初頭現在において非常にタイムリーなテーマなので、他社新書でも類似テーマの書籍が刊行されています。 2014年より国際情勢で目立ち始めた通称「イスラーム国」について、その台頭までの歴史的政治的背景・行動の原理・メディアを使った宣伝方法について独自の分析がなされています。 イスラーム世界ということもあり、語られる名詞や言葉があまりに多く、読むのに一定の体力を要します。笑 おそらく私のように、ニュースを読み解く基礎知識だけが必要であれば「2 イスラーム国の来歴」「3 蘇るイラクのアル=カーイダ」だけでよく、 ”なぜこれほどまで台頭したのか?””どこに向かうのか?”といった問題意識を持つのであれば「4 「アラブの春」で開かれた戦線」以降の章をじっくり読み進めてよいのかなと思います。 読了後に深い考察にふける。。。ほど深くは読み込めず、悔しさの☆3つです。

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    投稿日: 2015.02.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    【125冊目】池内先生による「イスラム国」の解説本。「イスラム国」をイスラム思想史・宗教学の側面と、アラブ諸国を中心とした政治学・地政学の側面から分析した本。池内先生の論文は何本か拝読したことがあるが、いずれも豊富なイスラム教と中東諸国の政治・歴史に関する知識に裏付けされており、他の解説者とは一線を画す印象。「イスラム国」についてしっかり勉強したい専門家や学生向けの本。一般の人に向けにするにはちょっと内容が込み入りすぎているのではないだろうか。 イラク戦争以降のイラクにおける宗教・民族に沿った政治権力の配分の構図、過激なイスラム教解釈に対する論駁の困難性、イスラム穏健主義の衰退と「統治されない空間」の出現に関する時系列的な整理等は非常に役に立った。あとは固有名詞(グローバル・ジハード思想及びその実践については、本書よりも池内先生の過去の論文及び松本光弘の著作に詳しい。)。 本書はイスラム教(とアラブ諸国の政治)そのものを対象としていることから、西欧諸国による対応の検証及び日本を始めとする非イスラム圏の諸国での政策的対応への提言は弱い。むしろ、本書が提起する認識を基に、別個、これらの考察が求められるところ。

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    投稿日: 2015.02.07
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    [分水嶺形成の一撃]2014年の6月にイラク第2の都市・モースルを陥落させ、度重なる人質略取やその処刑により国際問題の筆頭格に挙げられることになった「イスラーム国」(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも)。目まぐるしいこの組織の変遷と特徴を明らかにするとともに、「イスラーム国」に結晶化し、そしてそれがまた今後もたらすであろう中東地域の不安定化についてまとめた作品です。著者は、中東地域、イスラーム政治思想の研究を専門とする池内恵。 「イスラーム国」を正しく怖がるために非常に有用な一冊。急速に変転する中東情勢の内幕をイスラーム思想史と国際政治学の二方向から読み解くことによって、地に足のついた視点から、何故にこの組織が問題なのかという点が明らかになっていると感じます。今や日本にとっての対岸の火事ではなくなった「イスラーム国」をこのタイミングでここまで把握できる新書が出たのは本当にありがたく嬉しい限り。 突然発生したかのように見える「イスラーム国」が何故に「2014年」という時期に勃興したのかを歴史軸から読み解く試みも、この組織を不必要に「神秘化」しないための素晴らしい視座だと思います。中東政治の紹介は、一般には馴染みのない組織名や人物が乱立することから複雑になりがちですが、一般に興味をお持ちの方であれば、本書はその分野への窓口になるとともに、国際知への良い導き手になってくれるはずです。 〜「イスラーム国」は、当事者や共感する者たちから見れば、病状を一挙に解消する「夢の療法」なのであるが、実際には、中東の抱えた問題のいわば「病状」なのである。〜 池内氏の作品はたびたび手に取りますが本当に勉強になります☆5つ

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    投稿日: 2015.02.06
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    この薄い新書の中に、現在中東で、世界で起こりつつあるイスラーム社会の台頭の構造が、素人にもわかりやすく解説されていて、大変良い本とおもいます。この後、さらに詳述した二冊の専門書を発刊予定とのことですので、さらに進んで学ぶこともできます。大変勉強になりました。

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    投稿日: 2015.02.05
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    ISについての基本的なことを勉強するつもりで読みました。とても読みやすくて、客観的な視点で書かれてて良いです。 一応他の人が書いたのも数冊読んでみるつもりですが、必要ないかも。

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    投稿日: 2015.02.04
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    著者の池内さんは、長年、中東地域の政治や、 イスラームの政治思想を研究をされていて、、 なんて風に書くと、一見とっつきにくい感じですが、 非常にわかりやすく、丁寧にまとめられています。 当初、池袋のジュンク堂で探していたのですが、 新書にしては珍しく売り切れていて、地元で発見しました。 そういった意味では、ちょうど時節に合致しているのかなと。 その内容は、第1次大戦後の秩序形成からイラン革命、 湾岸戦争、9.11テロ、そして「アラブの春」。 この辺りをざっと俯瞰しながら、 イスラーム社会の質の変容をまとめられています。 キーワードは“グローバル・ジハード”、 明確な指導者を持たない拡がり、とはなるほどと。 興味深かったのは、こちらと前後して読んでいた、 『新・戦争論』や『賢者の戦略』とシンクロしている点。 アンダーソンの言う“遠隔地ナショナリズム”とも関連する、 “新しい国家”のカタチなのか、どうか。 ん、個人的には“イスラーム法学”が、 次のキーワードとして、気になっています。

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    投稿日: 2015.02.04
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    基礎知識としてよくまとまっておる、というのは今更俺が言う必要もないですけどまあ。 なんでイスラム国はうまくいっているのかはよくわからん。メディア戦略が洗練されていると言われてもよくわからぬ。過去の聖典に結びつけた宣伝というのも、他の人にもできそうなものなのだが。今のところ、数多くある同じような中小団体の中から偶然出てきた一つで、環境が異なれば他の団体が出てきたのかなあ、と受け止めておる。

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    投稿日: 2015.02.01