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ヒロイン【毎日文庫】
ヒロイン【毎日文庫】
桜木紫乃/毎日新聞出版
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総合評価

(7件)
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    いやぁ、すごい読み応えだったなぁ。 誰かの半生を描いた物語っていつもなら長くて途中で飽きてしまうんだけど、これは一気読みだった。 主人公を含め女性の登場人物が多く、みんな強くてかっこいい。読んでいて気持ちが良かった。 最初の教団での生活から逃亡劇へ。プロローグで17年間逃亡するのはわかってるのに、もう捕まってしまうんじゃないかというハラハラと、何もやってないのになんで、という理不尽さでどんどん読めてしまう。 最後まで読んで改めてプロローグを読むとなんとも切ない。 巻末の梶原阿貴さんの解説を読んでさらに驚き。 何、本当に逃亡していた人!? しかもラストまで一気読みして初めのページに戻って読んでるし、その時私が感じたのと同じ事が書かれているし。 解説でこんなに心持ってかれることなかなかない。なんてこの本に相応しい人なの。

    69
    投稿日: 2026.09.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    啓美は一流のバレリーナになれという母親の重圧から逃れてある宗教団体に入信する。しかし成り行きで教団の毒ガス散布による無差別殺人の現場に居合わせてしまう。 母親から逃げただけのはずが今度は指名手配犯として衆人の目から逃れる逃亡生活が始まった‥。 次から次へと流され続け、どんどんとのっぴきならない状況へと堕ちていく啓美。何度も引き返すチャンスはあったのに。思わず啓美の腕をとって引き止めたくなるような場面だらけだ。 逃げ続ける生活に未来はないと分かっていながらそうやってしか生きられなかった啓美と彼女に手を差し伸べた女性たちに、間違っているよ、と思いながらも惹き寄せられる。

    1
    投稿日: 2026.09.13
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    力作だった。17年間、逃亡していた女性の逃亡生活。しかも産むんかい!!と思った。どうか、無罪でありますように。 岡本啓美は光の心教団に入信して5年間体操部を任されている。教団立ち上げから10年。本部施設に出家という形で住み込むのが信者のステータスだ。創始者光野現師の子を宿すと最上階で暮らせるが、手狭になってきている。 その現師の子供がほとんどを占める幼年部の子達が体操部に来なくなった。本来立ち入ってはいけない5階に様子を見に行ってみるともぬけの空だった。側近の貴島がいて、俗服に着替えてきてくれと言われる。ジーンズとTシャツに着替えた。ジーンズは入らなくなっていて諦めて白ジャージのままとした。20キロは太った。教団が鏡など見なくていいと言ったのだ。車に乗せられる。私語は禁じられる。車から降りて歩き回り、ラーメンを食べ、トイレに行き、ペットボトルから飲む。暗くなってきて一軒家に着く。携帯電話が鳴り、貴島が電話に向かってさまざまな疑問を畳み掛けるが何も得られなかったようだ。日下部と呼ばれる家主が戻り、新聞を差し出した。捕まったら死刑だと言われて追い出される。新聞には渋谷駅で大量殺戮とあった。現師は無人島にいるという。貴島がトイレに立った隙にお金を2束掴み取る。 現師はリゾート施設跡で逮捕された。新潟の父のところへいく。啓美の顔写真が出回っていたので、髪を切り黒眼鏡をかけた。一晩泊めてもらう。母は大阪だが行く気はない。再婚相手がもう少しここにいてくれというので甘えた。父は再婚相手みどりと異母妹すみれに暴力を振るっていた。みどりとすみれの協力があり、ほぼ父と顔を合わせず生活できている。啓美はダイエットしてだいぶ減る。 啓美は鈴木真琴になった。5年過ぎた。鈴木真琴本人はフリーライターで、自分のフリをして祖母梅乃と住んで欲しいという。中国人のワンウェイと関係を持つが、一回につき一万円とられる。梅乃が入院する。余命は半年。梅乃が亡くなる。 2年半経った。教祖が死ぬ。貴島は手記を書き終えたが、出頭が嫌だったのか、教祖のいない世界がダメだったのか自死する。

    19
    投稿日: 2026.09.11
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    堂々と生きるのが好きな私だったら すぐに出頭して詳しく話す。 何にも全く悪いことしてないやん。 そして捜査に協力した後 自由に生きる。 なんでコソコソしたのか? また毒親。親で人生左右されるけど気持ちよく割り切って縁を断つのがいい。それは早い方がいい。毒親は自分の支配できる人を常に見つける。それにならないように自分を優先すればいいんだ。

    0
    投稿日: 2026.09.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    描写が丁寧で表現がとても綺麗。 冒頭で物語の行き着くところが明示されているからこそ、そこまでの道を苦しく愛おしく読むことができた。 寂しさを受け入れながら生きてゆく強さを感じた。 満足に“逃げおおせた”形で終わってくれたのはよかった。お疲れ様、と声をかけたい。

    1
    投稿日: 2026.08.22
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    桜木紫乃『ヒロイン』毎日文庫。 指名手配犯となった主人公の女性の数奇な運命を描いた逃避行小説。 主人公の岡本啓美は何処で道を踏み外したのか、それとも単に運が悪いだけなのか。タイトルの『ヒロイン』が虚しく感じる。 岡本啓美が指名手配犯となった事件のモデルは言わずもがなオウム真理教による地下鉄サリン事件であろう。本作では事件そのものについては深く描いておらず、主人公の17年間に及ぶ逃避行に焦点を当てている。 既にプロローグで指名手配犯となっていた岡本啓美が警察に捕まることが明らかにされている。 1995年3月、東京の渋谷駅で毒ガス散布事件が発生する。実行犯として手配されたのは宗教団体『光の心教団』の男性幹部の貴島紀夫と全く何も知らずに行動を共にしていた23歳の信者の岡本啓美だった。 この日から無実の啓美の長い逃亡劇が始まる。かつてバレエ教室を主宰する母親の勧めで、バレエを習っていた啓美は母親の強制と食べ物の制限が嫌になり、叔母の紹介で『光の心教団』の信者となり、教団の建物で暮らしていたのだ。一方、啓美の父親は若い女性と一緒に暮らすと言って、母親と離婚して新潟に住んでいた。 啓美は実の父親を頼り、新潟へと向かい、父親と妻のみどり、その娘で啓美の妹にあたるすみれの3人が暮ら家で約1ヶ月の間、身を潜める。その後、啓美はその家を出て、ライターの鈴木真琴の誘いにより、鈴木真琴に成り代わり、埼玉でスナックを経営する真琴の祖母の梅乃と暮らし始める。ライターの鈴木真琴は地下鉄毒ガス散布事件を取材するために啓美の他にあの貴島紀夫を匿っていたのだ。 永住の地も見付からぬまま、家族も作れぬまま、浮き草の如く駄目な男に翻弄されながら、微かな光を求めて啓美は長い長い旅路を続ける。 本体価格1,200円 ★★★★

    73
    投稿日: 2026.07.29
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    桜木紫乃さんの『ヒロイン』読了。 読み終えて一番感じたのは、「人間の心の強さとは、現実に向き合う強さなのではないか」ということでした。 啓美は、バレエだけを見つめる母親と、家庭という現実から逃げた父親のもとで育ち、自分の苦しみを誰にも相談できず、宗教へ救いを求めます。一方で、みどりとすみれ母娘は現実から目を背けず、DVを繰り返す夫と向き合い、自ら状況を変えようとしました。 また、渋谷ガス事件の実行犯・貴島も最後まで現実や責任と向き合うことなく人生を終えます。 他の登場人物たちも、それぞれ異なる形で現実から逃げ続けていたように感じました。 特に印象に残ったのは、 「ひとは弱気でちいさくなり、弱気でおおきくもなる」 という言葉です。 自分の行動に責任を持つこと、自分が正しいと信じるなら逃げずに向き合うこと。その強さも弱さも、結局は人の内面から表れるのだと考えさせられました。 真面目さゆえに利用される人もいれば、その真面目さを悪用する人もいる。 誰も救われない重く苦しい物語でしたが、人間の弱さと向き合うことの意味を深く問いかけてくる、非常に印象的な作品でした。

    6
    投稿日: 2026.07.26