
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読んでてすっごい楽しい本だった 誰でも聞いたことがある「ハーメルンの笛吹き男」という寓話に見られる、130人の子供が失踪したということは事実である、ということを述べた上で、この伝説の原体験を明らかにすることを試みる その上、この体験が今ある伝説の形にどのような経過をたどって転化したのか、〈笛吹き男〉伝説の研究史をも鮮やかに描き出す 伝説の実情を解明するためにただ単に民俗学的なアプローチをするのでなく、事件を探る上で当時のハーメルン社会はどのようなものだったのか、子供とはどういう存在だったのか、子供たちを連れ去った「笛吹き男」とはどのように扱われていたのか、の三つの論点に分けて研究を進めていく この過程で、「笛吹き男」というアウトサイダーの受容、中世市民社会の心身両方における荒廃、宗教改革によりカトリック教会への挑戦を試みたプロテスタント勢力の打算が絡み合った多層的な社会史が説明されている 中世社会における市民の困窮さは筆舌に尽くし難いが、その中でも特に1550〜53年にかけてのハーメルンは河の大反乱、飢饉、大火、さらには宗教戦争に巻き込まれ市内でも打ち壊しが起きるなどこの世の地獄の様相を呈していた そのような流れでかつての悲惨な記憶である〈笛吹き男〉伝説を思い出し、これと照らし合せることで現状を相対化する民衆の営みには切なさを感じた 啓蒙主義の合理的精神により批判されたり、近代に入ってからはドイツ民族の統一国家を作るための「共通の遺産」として過度に高尚なものとして扱われた こうした研究の過程で伝説が変貌していくことをライプニッツの書簡やグリム童話など様々なジャンルの文献を挙げていくことで、当時の「知識人」の思潮を追いながら述べる しかしあくまで著者は「伝説は本来農民の歴史叙述である」という視点に立脚し、概説的なヨーロッパの社会史や経済史では触れられることの無い「庶民の社会史」を描くことに努めており、あくまで本書は「長い間知識人が行なってきた知的営為そのものに対する批判的反省」として位置づける この姿勢には非常に感動した 著者がヴァンの理論に与えている 「この理論を構成する一齣一齣は、それぞれ人間の心にあるイメージを喚起する力をもっているのであって、この伝説には関係のないところで『人間の生涯』に触れてくる」 「幻想的な、読む者を思わずひき込んでしまうような魅力」 という評価は著者自身にも当てはまるものであり、文献に基づき冷静に論を進めながらも、民衆の気持ちを追体験しようと思いを馳せていることがありありと伝わった。
2投稿日: 2025.11.11
powered by ブクログヨーロッパ中世に生きた人々のリアリティと共に語られる、中世の都市伝説! (福村任生先生) 日本大学図書館生産工学部分館OPAC https://citlib.nihon-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=1000237262&opkey=B176187340425211&start=1&totalnum=2&listnum=1&place=&list_disp=20&list_sort=0&cmode=0&chk_st=0&check=00
0投稿日: 2025.10.31
powered by ブクログ歴史の真相が徐々に明らかにされていく様。 ゾクゾクした。 最初はそれほど多くなかったであろう資料を集めて読み解き、真実を追求していく学者魂に敬服した。
5投稿日: 2025.10.05
powered by ブクログ《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。13世紀ドイツの小さな町で起こったひとつの事件の謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明、これまで歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の差別の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。 ずいぶん前から積読していた。一般人向けではあるが、結構内容は難しくて、かなり時間をかけて読みました。結局伝説の裏の真実は分からない、というオチで肩透かしをくらったものの、丁寧に当時の背景を紐解く姿勢はすごいなと思った。学者ってこういう根気強く研究を重ねることで大発見が生まれるんだろう。ただ興味本位で読んだので、同じような内容を繰り返し書かれて少し退屈になってしまったのと、中世の市井の人々の過酷さに悲しい気持ちになった。人権がないって恐ろしいことだわ。
2投稿日: 2025.08.02
powered by ブクログ名前はよく耳にする「笛吹き男」、おとぎ話の中だけの存在だと思っていたが。いろいろな説があって驚いた。
0投稿日: 2025.07.28
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男の伝説がどのような経緯を辿って生まれていったのかということを、歴史的な文書を渉猟しながら、何より当時の庶民の生活はいかなるものであったかという実態を踏まえつつ考察されている。 およそ研究というものはかくあるべしというお手本のような書である。
0投稿日: 2025.06.29
powered by ブクロググリム童話で知られる「ハーメルンの笛吹き」の説話の真実ついて、中世ヨーロッパの社会状況や宗教、民族、風習など、様々な観点から分析し、考察していく大変興味深い一冊。 最終章のドイツの老学者の話はちょっと胸が熱くなる。
0投稿日: 2025.03.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
村から忽然と消えた子供たちの伝説を紐解く道すがら、中世社会の人々の息遣いが聞こえてくる一冊。 身分制度の原理と金銭・財力の原理が確執し合う中世の社会において、そこから漏れてしまう人々がいたことを指摘し、その例として、職人の弟子、下僕、賃金労働者とともに、女性が挙げられている。ここでも、男性のみの世界が広がっているということが、まず印象に残った。 そして次に、大人と子供に決定的な差はなく、子供は子供で己の生存をかけた毎日を過ごしていたことにも驚かされた。ヘンゼルとグレーテルなどの童話にも、言われてみればそのような片鱗があるように思われる。 この本を読みながら、頭の片隅には網野善彦氏の名前がチラチラと浮かんできたが、解説の石牟礼氏によれば、日本では一時中世ブームが起こったらしいとの記述があり、そのような反応となったのは自然だったのかもしれない。 各段落の文章が緊密で、出版から何十年経っても読み継がれている理由がよく分かった。
0投稿日: 2025.02.12
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男の伝説について、包括的な解説がなされている。 東方ドイツ植民説、あるいはその過程での遭難説を否定し、ヴォエラーの主張する沼地での事故死説を支持する。 筆者の専門分野であろう、ヨーロッパ(特にドイツ)の民衆の生活の解説にかなりの紙幅が割かれている。巻末の参考資料の分量を見ても明らかである。 ヴォエラーの説を支持するのも、このような分野の解説ないし歴史観と繋げやすいからであるようにも感じるが…。 いずれにせよ、刊行されたのが1974年ということで、近年の研究が反映されていないことを念頭に置かないといけない。
0投稿日: 2024.11.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
事件を追うということで、当然事件のことだけでなく背景として当時の社会などを事細かく書いている。そのため地名など固有名詞が多くでてくるのでドイツに馴染みがありそれら名詞からマップなどをイメージできる人でないと理解が難しい。地図なども記載されているがすべてではないのでそこから想像するのも慣れてる人でないと中々に困難である。 結局犯人は誰なのかはわからない。資料が不足しているため答えはでないが、少なくとも実際にあった事件であるといってよい、といったところだろうか。植民説なども紹介されるが無理があるそう。この事件のことだけでなく、この事件に関わる研究史の本である。
0投稿日: 2024.09.22
powered by ブクログネズミ、笛吹き男、ドイツ、子供たちというモチーフしか知らなかったけどこの本を読んで包括的に当時の社会が分かった。「感染地図」のように一つの結論に向かって論をまとめていくというよりは様々な角度から調査、検討している。
0投稿日: 2024.07.30
powered by ブクログ中世都市の飢餓と疫病と暴力と差別に満ち溢れた宇宙が眼前にズーンと拡がってくる。事件当日の謎解きではなく伝説の変遷を追跡している。
0投稿日: 2024.06.29
powered by ブクログ以前より書店平積みで目立つ帯 「伝説化した実在未解決事件の謎を解く歴史学の名著」 は気になっていた。 1976年出版1988年文庫化で版を重ねているという事は 何かきっと魅力があるに違いない。 読みたい感が強まり先ずは図書館で借りて読んでみた。 これは座右としたい。 多分グリム童話で知った事だと思うが「子供130人行方不明」は1284年6月26日に起こった史実だった。 25も様々な説が出るも未だ真相はわからない。 更に事実が尾ひれの付いた伝説になる過程は興味深いものだった。 クラオタな私は古楽好きで専ら後期バロックが好みだが 時代を知るうえでもこの本は面白かった。街の地図まで付いているしドイツ贔屓なのでハーメルンにも是非行ってみたい。
0投稿日: 2024.05.16
powered by ブクログ内容はかなり本格的で重い。でも読んでいくと筆者と一緒に謎解きをしてるような感覚がして、それが面白くするすると読めた。 ハーメルンの笛吹き男の伝説を当時の一般庶民や更にその下の被差別階級の人たちの生活や文化をもとに紐解いていくという内容で、ハーメルンの笛吹き男自体の検証も興味深かったけどそれと同じくらいあまり語られることのない庶民の置かれな状況や歴史を知ることができるのが魅力的に感じた。 差別や階級化をされる側の描写が現代の基準から考えるとあまりにも悲惨で、そういった感情の発露として口伝でハーメルンの笛吹き男を含む色々な伝説が語り継がれていったんだなと。 一方で差別や階級を作る側の心情描写も興味深かった。自分とは違う存在への恐怖やその恐怖を発散させるための差別の正当化がリアルに感じた。 この本に書いてあるような庶民や被差別階級の人たちが抱えてる問題は現代においても決して無関係なことではなく、自分たちとは違う属性の人たちへの偏見やそこから生まれた都市伝説的なデマは現代にも沢山あるよね。 数百年くらい経ったらそれらもハーメルンの笛吹き男みたいに伝説になるのかな、それとも当時と違って当たり前に印刷やカメラやインターネットがあるからまた違った結果になるのかな。
0投稿日: 2024.04.09
powered by ブクログもっとエンタメ的で読みやすいのかと思ってたけど、めっちゃ本格的でかなり時間かかった。 でもすごく面白かった。この方の本はその時代の空気そのものが見えてくる気がする。時代を覆っていたパラダイムを外側から眺めるのではなく、そのとき生きていた人々の内側から出てくる思いに近づきたい、という感じがする。なんと根気のいる、緻密な繊細な研究なんだろう。
0投稿日: 2024.02.27
powered by ブクログ前に読んだ際には、あまり面白くなかったのだが、最近、エロール・ル・カインの絵本を見て、ふと、思い出して読み直した。 深い!一気に読んだ。中世の街と民衆の暮らしや、伝説の変遷、研究の歴史がよくわかる。たぶん、前に読んだときは、謎解きミステリーのようなものを期待して、外れたんだろうな。
0投稿日: 2024.02.12
powered by ブクログ巻末の石牟礼道子の解説「泉のような明晰」も含めて、読んだ後胸がいっぱいになる歴史書。ハーメルンの笛吹き男の伝説の解明だけでなく「学者」も伝説の型(パターン)作りに多かれ少なかれ加担しているということ、それを持ってして民衆を中心にすえた歴史学を追究するために必要なのは知に驕らない謙虚な心構えであることなど、力強い言葉が綴られている。
0投稿日: 2024.02.11
powered by ブクログ阿部謹也(1935~2006年)氏は、一橋大学経済学部卒、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学、小樽商科大学助教授、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨学生としてドイツ連邦共和国(西ドイツ)滞在、小樽商科大学教授、東京経済大学教授、一橋大学社会学部教授・学部長、一橋大学学長・名誉教授、国立大学協会会長、共立女子大学学長等を歴任した、西洋史学者。専門はドイツ中世史。サントリー学芸賞、大佛次郎賞等を受賞。紫綬褒章受章。 私はこれまで、著者の著作では、『自分のなかに歴史をよむ』、『日本人の歴史意識―「世間」という視角から』を読んだことがあるが、今般たまたま新古書店で著者の代表作である本書を目にし、手に取った。 本書は、グリム童話で有名な「ハーメルンの笛吹き男」の話が、いかにして生まれ、今日まで伝承されてきたのかを、著者がドイツ滞在中に様々な文献史料に当たり、考察したものである。尚、グリム童話の話は、中世の時代、ハーメルンの街でネズミが大繁殖して人々を悩ませていたある日、街に笛を持ち、まだらの服を着た男が現れ、約束した報酬と引き換えに、笛で街中のネズミを川に誘い出して溺死させたものの、街の人びとが約束を反故にして報酬を払わなかったため、再び街に現れた男は、同様に笛で街の子どもたちを連れ出して、その130人の少年少女は二度と街に戻ってこなかった、というものである。 本書でまず確かめられるのは、1284年6月26日に、130人の子どもたちが、まだら模様の男に連れられてハーメルンの街から姿を消した出来事は歴史上の事実だということで、驚くべきは、その原因・背景について、既に17世紀から様々な研究が為され、その解釈は26にも上るのである。 そして、著者は、それらの様々な解釈について、仔細に分析・考察を行うのであるが、最終的に結論に至るわけではない。しかし、その過程では、それまであまり取り上げられることのなかった、中世の都市や農村の民衆(特に、都市下層民)の日常生活と、その思考世界が浮かび上がってくるのだ。 本書は1974年に刊行(1988年文庫化)され、日本中世史研究の網野善彦らとともに、中世史ブームを作るきっかけとなった作品だが、それらが気付かせてくれるのは、どの時代においても、歴史のメインストリームとして残るのは、支配者が書いた支配者側の歴史であり、実際には、そこには描かれていない大多数の人間の歴史が存在するということである。 グリム童話の一編をもとに、ヨーロッパ中世の民衆の生活に光を当てた、興味深い作品と言えるだろう。 (2023年12月了)
2投稿日: 2023.12.31
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男という題材を元に、中世の民衆史を描く。特に被差別民の姿は、陰鬱だが、現代まで続く問題であり、着眼点が見事。
0投稿日: 2023.09.23
powered by ブクログ阿部謹也氏が1988年に刊行した歴史学書。 私が大学入学とすぐに教授に薦められた本の中の一冊。 グリム童話「ハーメルンと笛吹き男」は実は13世紀に実際に起こった出来事である。という歴史に興味がなくても惹きつけられる例を基に、中世ヨーロッパの社会を解き明かしていく作品。 歴史学をこれから学ぶ大学生や、これまで歴史学に興味がなかった社会人などにオススメ。 作者と一緒にまるで謎解きをしながら歴史を解明していくような爽快感が魅力な作品です。
0投稿日: 2023.08.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
テーマはすごく興味深い本であるが正直難しかった。特に序盤の知識がなくて読むの大変だった。思っていたよりもたくさん説があることが分かった。自分の読解が正しければ、有力な説は「笛吹き男」と「鼠取り男」が合体したということかな??
0投稿日: 2023.05.18
powered by ブクログ歴史とともに物語を読むことで、今の自分では考えられない状況も、そよときならそうなるだろうと思わせられる。歴史とセットで物事を知ることの重要性を学ぶ。
0投稿日: 2023.04.02
powered by ブクログ世界史の知識の薄い自分にとっては、なかなか読み進めるのがたいへんだった。それでも阿部氏の情熱のこもった探究心に押される形で読了。 興味深い内容ではあったが、自分のレベルが追いついてなかった。
0投稿日: 2023.01.07
powered by ブクログランケ学派ではなく社会民衆史の嚆矢となった一冊。 「ハーメルンの笛吹き男」を当時の社会事情、庶民の動向などあたれる限りの資料をもとに、伝説の成り立ち、背景、変形の理由を解き明かす。そして当時(ヨーロッパ中世)の社会を浮き彫りにする。 「すごい執念」としか言いようがないけど、この手法だと大きな歴史のうねりを捉えるのは難しいような。いや、そう思えるのは、それだけ自分の考え方が硬直してるってことかな。
0投稿日: 2022.11.07
powered by ブクログそういえば話題になってたのを見たっけ、くらいの軽い気持ちで読み始めて止められず、一気に読了。伝説を軸に、中世の庶民がどんな状況でどんな気持ちで生きていたか語られる。伝説の変容とともに、その変容をもたらした庶民の歴史が語られ、さらに知識人の伝説の扱うことの危うさ(愚かさ?)も論じられる。
0投稿日: 2022.07.31
powered by ブクログ50年前の話なので、今の基準からすると、ややユルくも感じるが、臨場感があって面白い。最近、自分のルーツを考える上でも、日本の中世史を見てるんだけど、この本の解像度にはまだ達してないなと思った。50年前に阿部先生がドイツの文書館で史料を調べてたようなことが、オンラインでできるようになってきてるので、史学の民主化は進んでるかも知れない。
0投稿日: 2022.07.09
powered by ブクログコロナ前の19年の国慶節で日本に帰った時、ちょうど増刷されたタイミングで平積みされていたのを見かけてお買い上げ。大学入学した時の学長だし。アベキン。でも、そのまま積読。 ハーメルンの笛吹き男はグリム童話の話だと思っていたけど、実は実話だったのね。笛吹き男が子供を連れ去った日はうちの結婚記念日だったのね。そして、アベキンって「世間」のことを語る人ってだけじゃなかったのね。 もとは論文として書かれたものを一般向けに再構成されたものだったので、すんなりと読めた。
0投稿日: 2022.05.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
グリム童話の「ハーメルンの笛吹き男」のエピソードが、ドイツのハーメルンの町で過去に実際に起きたことである、という仮説を立て、それを学術的に検証している作品。文庫サイズながら読み応え抜群で、このクオリティの「学術論文」を文庫で読めてしまっていいのか、と不安にすらなる。 歴史学者の著者は膨大な史料を読み解き、子どもたちの失踪が起きたとされる1200年代のドイツの庶民の生活や社会環境もふまえ、謎に少しずつ迫っていく。これまでに様々な学者や研究者によって提唱された仮説や主張も挙げ、再考に値するものを取り上げて検証を重ねていく過程を読み進めていくうち、学者の探求というのはこういうことを言うんだなぁ、という感動すら覚えるようになる。 結局のところ、本書を読了しても「ハーメルンの笛吹き男」における「子どもたちの失踪」は何だったのか、「笛吹き男」とは誰だったのかについては、明確な答えは出されていない。しかし、そこに至るまでに著者によって整理され、説明された種々の史実を読み、知るだけでも相当に面白い。一つの童話の検証だけに300ページかけつつ、最後まで楽しく読ませてくれるというところに、本書の凄さと読むに値する価値がある。
0投稿日: 2022.03.16
powered by ブクログ13世紀のドイツの村から生まれ、今に至るまで語り継がれている「ハーメルンの笛吹き男」伝説をめぐる歴史研究の書。この寓話の成立の過程および起源を探求する諸説を紹介し、また、当時の中世ヨーロッパ社会の庶民の生活、都市の問題、身分制度などの視点から分析している。 ______ 当時の庶民の暮らしを説明しているところが面白い。祭のときの狂乱っぷりはものすごかったんだなと思った。 飢饉で人を食べていたそうなので、全世界的にも飢饉のときは人を食べていたんだろうなと思う。 ネズミ除けのために「通路に昆布を埋める」とあるが、そんなことするものなの? 本書は「当時の庶民はどう思って暮らしていたのか」という点に焦点を当てている。その問いは、わくわくするとともに昔の人も同じ人間だったのであろう、と感慨深い気持ちになる。これは、中世ヨーロッパに限らず、自分の生まれ育った日本の過去の歴史を顧みるときも同様であるし、その場合、より感情は強まる。 ただ、「笛吹き男」伝説のような、原初の庶民の心情を反映させた表現としての伝説や寓話が、学者たちによりゆがめて解釈され、政治利用や民族団結といっ別の手段としてもつかわれるようになったことを筆者は批判している。 p162「行列の旗を持っている男が、旗の棒の端をズボンの前の開口部の布あてにおいて支えていたことなどが、前述の『チンメルン伯年代記』には出てくる。」 笑う。
0投稿日: 2021.12.02
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男伝説の元となった子供の大量失踪事件(1284年、日本だったら北条時宗の死亡した年)が史実だったことを解き明かし、いかにして伝説化したのか、当時の社会情勢や被差別民の意義を踏まえながら論じている。馴染みの薄いドイツ中世史で、しかも著名な人物も出てこないので知らないことの連続だが、ついつい引き込まれて読み進んでしまう。
0投稿日: 2021.11.12
powered by ブクログ以前、テレビで「ハーメルンの笛吹き男」の特集を観てすごく興味を持ちました。 謎を解きたい、現地に行きたい、そう思いました。それから少し時間がたってしまいましたが、ブクログでフォローしてる方の本棚を拝見していたらこの本の存在を知り手に取りました。 少し難しかったです。読み終えて思った事は、身分差、貧富の差、覇権争いは全世界共通してることです。過去も現在も一緒。たぶん未来も変わらないんだろう、被害を受けるのはいつも民なんだろうと思う。 結局、謎は解けなかったです。でも、この本を読んで私なりに考えはまとまりましたけど。
23投稿日: 2021.11.09
powered by ブクログそんなにお気楽に読める本ではない。まず、舞台がヨーロッパの中世。 現代の日本人にはそれだけで理解が難しくなりますが、本書は史料を読み解きながら丁寧に時代とハーメルンの町と人々を叙述して行きます。 庶民や一般大衆を中心にした社会史は、網野善彦さん等の考え方に連なるものであると思うが、人間を根源的に解き明かす一つの考え方でもあると改めて感じた。 また、作者が巻末でふれている老学者のあり方も、作者の学問に対する考え方をよく表していると思う。
6投稿日: 2021.03.14
powered by ブクログハーメルンの笛吹男の伝説というか、おとぎ話というか、この伝説がどうして生まれたのか、1284年6月26日にドイツのハーメルンで130人の子どもが失踪したという出来事が、歴史的事実であると確認した上で、渉猟した文献を丹念に紐解き、慎重に歩みを進めながら、ヨーロッパ中世における民衆の暮らしを浮かび上がらせるもの。知的好奇心を掻き立てる極めて興味深い一冊でした。
0投稿日: 2021.02.21
powered by ブクログ本屋で衝動買い。まずは帯に騙された。著者は15年ほど前に亡くなった西洋中世社会史がご専門の大学教授。本書は「グリム童話から見える西洋中世での賎民の生活」という感じの内容だった。しかし本題の内容としても、やや時代遅れなのは否めず少し期待外れであった。
0投稿日: 2020.09.22
powered by ブクログ13世紀当時のヨーロッパの庶民の暮らしがわかるのが面白い。様々な説を検証していく。 でも、ちょっとくどいかな…
0投稿日: 2020.07.09
powered by ブクログ迫害、差別、そして、格差社会。 そんな時代背景が、この物語として語り継がれてきた核になっている。 いや、大半の物語がそうか? どの国や地域にも、伝説として残っている話がある。 事実が問題だと深堀りすることも当然必要だろうけど、真意という意味では、史実がどうだとかはあまり関係も意味もない気がする。 そこに共通して感じるものは、何なのか? 大切なものと、どう向き合っていくのか。 一人一人に何かを芽生えさせる物語が大事ですね。 地政学とキリスト教。 ヨーロッパの歴史を知ろうとすると、この事象を通してでないと見えてこない事もある。 ハーメルンという街も、深い部分でそれが繋がっている気がした。 未来へ伝えられ、語られ、残っていく。 ミステリアスであることは、人の想像を掻き立て、考える余地を残してくれる。 もしかすると、はっきり分からないことこそ、人が活き活きと出来る大事なファクターだと感じる。 簡単に手短に、知れる、分かる、理解できる。 そこに、現代の闇が出てきているのかもしれないですね、、。 謎は解けないでもどかしい。 それが、ある意味、ベター!。笑
0投稿日: 2020.07.03
powered by ブクログ史料を丹念に紐解き、伝説が生まれた社会的、心理的構造を明らかにしていく。日本も当時は鎌倉時代。被差別問題も似たような構造であったことに気づかされる(外圧(モンゴル帝国:元寇)まで含めて)。思考過程も丁寧でそつがなく分かりやすい。
5投稿日: 2020.03.20
powered by ブクロググリム童話の「ハーメルンの笛吹き男」。ドイツのハーメルンの町に現れた男が笛の音でねずみを駆除してやるのだが、町は彼に報酬を支払わない。怒った男は笛の音で町の子どもたちを連れ去ってしまうというお話。ちょっと怖いが教訓も含んでいる、よくできた有名な童話だ。 一方、中世ドイツの地方都市の文献を研究していた著者は1284年のハーメルンで130人の子どもたちが行方不明になっていた事実を知る。つながった童話と事実。なぜ子どもたちは消えたのか、笛吹き男は実在したのか、著者の歴史探求がはじまる。 本書では、中世ヨーロッパの社会や生活、宗教、差別などを説明し、笛吹き男のような旅芸人やネズミ捕りの職人が実在しことを明らかにする。また、当時は植民のための市民の大量移住が起きていたし、子供だけの十字軍も編成されていたらしい。著者はこれら事実を組み合わせ、先人の歴史家たちの発表なども紹介し、様々な説を検討する。 が、13世紀の小さな町での出来事だ。本書では断定的な決着までには至らない。しかし、それはしょうがないことだし、わからないままでいいんじゃないのか。ハーメルンでの悲劇が童話として現代まで語り継がれたことで歴史のすごさ、おもしろさを十分に味わえるのだから。
2投稿日: 2020.02.16
powered by ブクログ面白かった 歴史が時代の突出した部分や特異点ばかりを探していくのに対し、ここではそんな「表舞台」とされたものの裏にある、時代の変化に右往左往するしかない一般庶民、その反動として時に自暴自棄に極端に走ってしまう一般庶民の歴史が紡がれている。 事件が少ない故にあまりに長い、あまりに長い中世の一般庶民。場合によってはドイツでは19世紀まではそういうものが残っていたということで。 こういうのを読むと、キルヒャーの見え方も随分と変わってくる。 また、商業の復活などのルネサンスへの萌芽も見えてくる。 12世紀ルネサンスというものとは程遠い世界だが、中世後半にあって教会と諸侯の権力バランスの変化もあり激動の最中にもある。 まさにこの頃、アリストテレスの再発見などから世界が変わっていく準備が、進んでいる。 あとは、ゲルマン民族にとって、あくまでカトリックが外来の文化である、という感覚は面白かった。 土着の、ゲルマン的な文脈を見逃さないようにしている。 定着民による秩序世界と、放浪者の世界とが常に緊張感を孕んで接しているのも面白い。 ストレンジャーへの恐怖は、街の外の世界を知らない人がほとんどの定着民にとって、どのようなものなんだろう。 半ば、モンスター的な。レイシズムとは違う、まるでマレビトのようですらある放浪者への恐怖。 レイシズムは別にある。ユダヤ人へのそれだ。ユダヤ人はいつの時代も差別されている。それは、その閉塞的な規範のせいで、都市にいても常にストレンジャーだからだったのだろう。 そして、高利貸しの恨みもあった。 放浪の楽士が受け入れらるのは、定着によって、であり、放浪を続ける楽士は相変わらず差別されてたというのも面白い。 大事なのはやはり、定着しているか動いているか。 顔を、素性を知っているかどうか。 どこからともなくやってきて、変な音楽で人々をハイにしてお金なりなんなりを得て去っていくような、そういう存在は愉しさと恐ろしさが表裏をなしている。 ここ、と、ここではないどこか、とが中世にはあるのだ。 それは、都市と都市間や自然であったり、日常と魔術的世界であったり。 なので、ハーメルンの笛吹にあるのは、その間を動く人がいる、ということ、日常に非日常を持ち込む、もしくは日常を非日常に連れ出す、そういうインターフェイスが存在している、という恐怖なのではないか。 1284年6月26日という日付や、130人という数字は、歴史学的に重要かもしれないし、そこからこれだけの多くの視点がうまれるのには驚くべきことだか、どうしても普遍化して理解したくなる自分としては、この本を経て理解したのはそういうものだった。 そして恐らく、これは中世の日本にもあっただろう。 各地の申学とかがもたらしていたものには、ここに通じるものがあるんではないか。
0投稿日: 2020.02.05
powered by ブクログかなり学術的な内容だったが、面白かった。帯にあるようなミステリー的なものではなく、かなりしっかりした中世ヨーロッパに関する学術文献だと思う。謎自体は、他にも同じような話がある事からそれほど重要ではなく、どうしてそのような伝説が生まれたのかという社会背景を明らかにすることに主眼が置かれている。文体が独特で、70年代に書かれたからか、この筆者特有のものなのかは分からないが、巻末の解説も何となく似た文体で好ましかった。今はこんな文体にはお目にかかれない。少しいつもとは違う本を読みたいなぁという人にお勧め。
0投稿日: 2020.01.30
powered by ブクログ面白い。子供の頃に絵本で聞いたことがあったが、こんなに様々な考察がされているとは思わなかった。ハーメルンの成り立ちや、庶民の暮らしぶりについても述べられていて、非常に勉強になった。
0投稿日: 2020.01.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白いかった。 資料が異常に少ないブリューゲルの作品の気持ち悪い感覚 子供が【ただの小さい人】としての地位の低さ 中世の貧しさ混乱不安からくる文化のカタチ そこらへんが良くわかった。 あらたな考え方として 町に住む人々の言い伝え、伝説みたいな話を、文書化の時点で=知識人(専門家)のフィルターが入る→地下層の人々の不安や思いが薄くなっていく→伝説の変化が生まれる 事件の具体的な内容に隠れる当時の歴史的背景 その社会から差別されていた対象とその変化 宗教的な違いによる考え方捉え方の違い→悪の化身になった要因 不安や抑圧されすぎて 祭りとかして発散しないとやってられんわ!の気持ち 無心に奇妙に踊る中世絵画の人々の顔 帯に書かれている【歴史的推理小説!】というところよりも、 著者が、自分が文書化する事で、 最下層にいた、本当に地下に住む人たちの思いや、息づかい 伝説の重み?伝説の色合いが変わらないように、 とても気を配って描かれている所が感銘。 いままでの この伝説の研究をしてきた専門家の時代やその人本人の立場まで考えて偏見がないか?の疑問を常になげかけている。 薄い本だが、 著者がこの伝説に出会った時の【鷲掴みされた】気持ちを大切に大切に研究し、分かりやすく私たちに伝えようと文庫化してくれた事に感謝
1投稿日: 2019.10.29
powered by ブクログ誰もが知っている『ハーメルンの笛吹き男』。この伝説はどのように始まり、どのように伝播したのか? 宣伝文句にあるように、ミステリ的な面白さもあるのだが、所謂『都市伝説の発祥と伝播』と言えそうに感じられた。 将来、この『笛吹き男』の伝説が、解明される日は来るのだろうか?
0投稿日: 2019.10.29
powered by ブクロググリムが記した童話として知られるハーメルンの笛吹きの真実を探求する興味深い書物。 社会情勢や環境変化、身分制度やプロパガンダなど多方面から謎を解きほぐそおと試みる。 どこまでも私達にはミステリーとしてしか映らない事件の真相はいつか暴かれる日がくるのだろうか。
3投稿日: 2019.10.13
powered by ブクログご存じ「ハーメルンの笛吹き男」の謎を解き明かそうとする,真面目な本. この話はグリム童話の1編として広く知られているが,果たして実話なのか? 実話でないとしたら一体どうしてこの話が形成されたのか? を作者(後に一橋大学の学長にもなった人らしい)が丹念に追う. ハーメルンの笛吹き男は古くから研究対象となっており,様々な説が唱えられてきている.それに対して,中世ヨーロッパ史を専門とする作者は,当時の社会背景を手がかりに,謎を解き明かそうとする.むろん,1284年の出来事に対して作者が導き出した推論が正解かどうかを確認する方法は無く,単なる想像かもしれない.しかし,歴史上の事実を前提として,従来の説も丹念に検討していく過程は,それ自体が興味深く,そのうえで導かれた結論は,一定の説得力を持つ.
0投稿日: 2019.10.13
powered by ブクログ帯に赤マジックで書いたような太文字で、「伝説化した未解決事件の謎を解く歴史学の名著」とか、「まるで推理小説」とある。 西洋の中世に興味があるわけではないが、ちくまに推されて購入。 西洋の中世というと暗黒の時代で停滞していた印象しかなかったが、本書を読むとカトリックと領主の支配権の移行とか、東ドイツへの植民とか、意外と社会変動の萌芽があったことを知る。ただ、やっぱり生産量は弱く、庶民は貧困。特に底辺層の悲惨な状況、固定した社会階層とか、鬱屈した時代だったと認識する。それが差別に繋がっていく。 古代ゲルマンの祝祭の記憶をカソリックは教化しようとする動きに対し、協会の押し付けの祭りに仕事に勤しむみボイコットし、教会内行事に貶めたとある。庶民は教会に素直に従っていたわけじゃないんだな。庶民にとっての宗教革命ってどういう意味があったんだろう。 貧民と乞食は異なる。乞食は技術であり、乞食の組合があった。 聖職者になるはずの修道士が放浪学生となり、遍歴楽師に加わってゆく。オルフの「カルミナ・ブラ―ナ」にそういう学生の歌があるという。 へ~、と思うこと多々。 笛吹き男以外のことばかり書いたけど、勿論、本筋の考察も面白かった。 伝説が変節していく社会的な理由や解釈する立場により意味が全然違っていくことが面白かった。
0投稿日: 2019.10.12
powered by ブクログ誰がどの立場・タイミングで何を語るのかに着目するとみえてくるもの、それを考察するのが歴史学なのか。 物語の成立した時代背景には何があったのか。 語り継がれる理由はなんだったのか。 人間社会は面白い。
0投稿日: 2019.10.09
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男伝説についての先行研究を引用しつつ、批判的に検証した上で、自身の見解を添えている。 ミステリーを読むような面白さ!というような謳い文句の新帯を携えて再ブレーク中の本書。 ただ本書の主眼としては、伝説は事実なのか・子供達はどこへ行ったのか、などの謎解き要素よりも、どのように伝説が読まれてきたか・何故広く流布するに至ったのか、という受容史の考察に重きが置かれている。 ナショナリストは祖国解放戦争の暗喩として、教会は庶民を教導するためのツールとして、啓蒙思想家は民衆の愚昧さの根拠として、ハーメルンの人々は市参議会への怨念の結集点として…主体や時代が変わる事でその意味付けも変化していく。 もともとローカルな言い伝えに過ぎなかった笛吹き男伝説が、鼠捕り男伝説と合流し普遍性を獲得したという仮説は、他の民話の成立過程にも適用出来そうな考え方で、面白い。
6投稿日: 2019.09.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
グリム童話にも入っている「ハーメルンの笛吹」の真実に迫る、といっても伝説の真相よりも(有力な説を提示しているけど)、伝説が時代を経てどのように変容にしていっているかを中心においている感じ。どの章もその当時のヨーロッパの社会情勢を通して論理を展開していて、とても読み応えがある。実際の出来事から、伝説や神話が作られていく一例として大変興味深い。
0投稿日: 2019.09.08
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男の謎から解く、中世ヨーロッパの市民たちの姿。良書!一般向けの歴史書としてはAランクレベル。
0投稿日: 2019.07.16
powered by ブクログ1284年6月26日にハーメルンの町で130人の子どもたちが消えた、というのが事実だと発見すれば、著者が興奮するのも無理からぬであろう。中世ヨーロッパの小さな町で130人が消えたとは、人口との比から言っても大変なことである。この伝説を巡る文献、地図、絵画、統計などを、広くそして仔細に分析して積み上げていくことで、身分や差別の問題、当時の民衆の心理まで探る社会史となっていて、面白い。
1投稿日: 2019.07.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み始めるのが難しかった。ハーメルンの笛吹き男について、ある程度調べてから手に取るのがおすすめ。ドイツや当時の時代背景を考察しており、そういった謎解きが面白い。
0投稿日: 2019.04.19
powered by ブクログ往来堂書店「D坂文庫 2017夏」からの一冊。 柴田元幸が選者だというだけで、柴田ファンのワタシは何の迷いもなく購入。そして、その内容は、選者の「最高に面白い歴史書」というコメント通り。 1284年にドイツの街ハーメルンで130人の子供たちが一度に行方不明になったという史実の謎に、「ハーメルンの笛吹き男」の伝説を様々な形で結びつけて、その解明を試みる。最終的にその謎が完全に解けたとは言い難いのだが、解けたか否かを気にすることが二の次になるくらいこの謎解きのプロセスが抜群に面白い。伝説の解明を進めるにつれて見えてきたヨーロッパ中世社会の状況や、市井の人々の暮らしぶり、そして、その人々の中に存在した差別の問題。知性に満ちた筆致で伝説が伝説たる理由がつまびらかにされると同時に、歴史研究の面白さも味わえる。さすが柴田選。
0投稿日: 2018.11.18
powered by ブクログヨーロッパ中世史なのでまさに著者の本領と思っていたが、専門ど真ん中ではなくて「研究生活に咲いた小さな花」であるらしい。その意味では「世間」論と通ずるものがある。 著者の真摯な問題意識や、研究対象への敬意を持った接し方を感じる一冊。笛吹き男伝説の真相に新たな説を付け加えるものではないが、伝説をはぐくんだ背景にある、当時の下層民の暮らしなどを描いていく。ドイツでの研究生活の長かった著者には、ここに書き表した以上の、中世の庶民の生活への思い入れがあったような気がする。またドイツの文化の奥底にある非キリスト教的なゲルマン土着文化が、祭りやプロセッションで表に噴出してくるさまが興味深い。
0投稿日: 2018.11.05
powered by ブクログ【由来】 ・本の使い方 P210 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】
0投稿日: 2018.10.28
powered by ブクログ「ハーメルンの笛吹き男」阿部謹也さん。ちくま文庫。もともとは1974年の本です。 # 「世界史の本としては実にオモシロイおすすすの一冊」とほうぼうで褒められていて。いつかは読んでみたいな、と思っていました。 「ハーメルンの笛吹き男」というのは、グリム(だったか?)童話で有名ですが、実はグリムの創作ではなくて、ハーメルンに伝わる伝説。 どうやら、実際にあった事件なのでは?というか、実際にあった事件をネタに作られた伝説では? と、いうミステリーを追う趣向です。面白い。 「子供たちは、戦争で死んだ若者たちの事だ」 「別の地方に植民に行った人たちだ」 「人買いだ」 など、いろいろな説、これまでの研究を紐解きながらも、「どれも違う」と阿部さんは言います。 もちろん、どうしてそう思うか、という論証も。 (ちなみに、傑作漫画「MASTERキートン」でも、ハーメルンの笛吹き男はジプシーと絡めて論証されていました) さまざまな論を検討しながら、この本の白眉は、阿部さんが「中世ドイツ、中世ヨーロッパの実相」を見せてくれることです。 物凄く大まかに言うと、「歴史の授業で学ぶだけぢゃ判らないと思うけれど、実はものすごく哀しい差別社会だった。多くの人が、子供が、人権なんかなかった」みたいな状況です。 ちゃんとした史料を紐解きながら、宗教や財産、市民権などから見放された多くの貧民の日常、そこでの子供たちの唖然とするような愉しみ少ない暮らしを、丁寧に見せてくれます。そして、笛吹き男、つまり楽師や旅芸人というのも、被差別の人たちでした。 そしてそういう差別と同時に、教会にせよ行政にせよ、歴史の教科書のゴシック文字だけでは分からない様な、腐敗や問題を抱えていたことも。 それはものすごく、謎解きの旅であり、わくわくするものがありました。 そして、この本が凄いなあ、と思うのは、 「で、ハーメルンの笛吹き男は、実際のところ、どういう史実事件に基づいていると思われるか」という、味噌の部分。 推理小説で言えば、真犯人の指名。 それが、無いんです(笑)。 「まあ、実際のところはまだわからないけれどね」で、終わってしまう。 なんだけど、それで本としては正しんだなあ、という満足感。だって、判らないものは判らないわけですからねえ。 無理に派手な仮説に固執するよりは、「なんだろうね」と探っていくなかで見えてくる世界観みたいなものが、オモシロイ。 そういう教科書の太文字だけではない歴史の実際を知ることは「僕たちはそこから来たんだ」という発見であり、回りまわってニンゲンがどうありえて、どこに向かう方が愉しそうか、ということも示唆してくれます。 「世界史読書案内」でも推奨されていた一冊なんですが、まさに、日本語オリジナルの世界史読み物の、傑作でした。 # 実は、阿部謹也さんは、昔、とある大学の学長をされていたことがあって。 良く考えたら、僕がその時期にそこの大学生だったんです。 入学式も卒業式も出なかった無精者なので、恐らく会ったことが無いんだろうなあ、と思いながら、そんなちょっとしたご縁も感じて手に取った本でした。それに、ちくま文庫だし。 ちくま文庫、好きなんです。
0投稿日: 2017.08.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
実話だったのか。 子ども130人が行方不明になったっての、事実だったんだね。最初から最後までおとぎ話だと思ってた。 ただ、その行方不明になった詳細な原因は分かってないみたいで、その理由がいくつか挙げられてて、なかなか面白かったです。 当時のドイツ、ヨーロッパの文化や歴史を知らないので、難しくなるとななめ読みしたけど。 とりあえず、最初は笛吹男が出てくるだけで、ネズミ捕り男は出てこない、ってことは理解しました。
0投稿日: 2017.03.08
powered by ブクログ歴史的事実が、普遍的な伝説へと昇華してく過程を丹念に解明していく傑作。 権力者やインテリが書き残す歴史ではなく、押さえつけられた庶民や賤民の呻吟の隙間から浮かび上がる、中世ヨーロッパの暗黒っぷりを解き明かしてみせた良書です。 そしてハーメルンでの子供たちの失踪事件から700年ものの歳月の中で、なぜ人々がこのローカルな事件を語り続けてきたのか、それぞれの時代でそれぞれの学者たちがどのような態度や距離感でこの事件と向き合ってきたのか、利用してきたのか。 グリム童話にも収録されている世界的にも有名なお話ですが、その中には、歴史では語られることのない中世ヨーロッパの民衆たちの生活史が滲み込んでいる。 東ドイツ植民運動、律院による圧政、強固な身分制社会、キリスト教と古代から続く民俗宗教、十字軍、差別される女性や子供や遍歴芸人、ユダヤ人襲撃、魔女裁判、洪水、ペスト、飢饉、そして宗教改革と農民戦争。 これらの要素がすべてこの童話に内包されているのですね。 1284年にハーメルンというドイツの田舎町で起こった事件は、後世の人々が、それぞれのおかれていた時代の社会的・心的境位の中でこの伝説を受けとめ、その内面からの要請に応じてこの伝説を変容させていった。 悲惨な運命に襲われたとき、庶民はどのようにしてそれに耐えうるのだろうか。彼らは現在の不幸を過去の体験や言い伝えと比べてその深さを計るのである。 ブリューゲルの一連の作品群を並べてみると、なおのこと本書の迫力感が増す。
0投稿日: 2016.03.05ためになった
童話の定番の一つハーメルンの笛吹き男の伝説を元に、伝説が形作られる過程とその背景が描かれています。 背景を通して中世ヨーロッパの地方都市がどんな様子だったのか知ることができ大変興味深かったです。
0投稿日: 2016.02.15
powered by ブクログ「ハーメルンの笛吹き男」伝説の謎について考察を展開しつつ、ヨーロッパ中世の都市下層民の生活と精神に深く分け入っています。 民衆史や社会史といった新しい歴史学の手法が取り入れられており、中世の都市に生きた名もなき人びとの息遣いが聞こえてくるようなおもしろさを感じました。とくに、当時の人びとが「子ども」をどのように扱っていたのか、また、遍歴芸人に対する恐れと蔑みの意識の実態などについての考察には、興味を覚えました。
0投稿日: 2015.05.07史実から伝説へ!? ハーメルンの謎を解き明かす
子供の頃に読んだ童話『ハーメルンの笛吹き男』。それは単なるおとぎ話ではなく、中世のドイツ・ハーメルンで起きた子供たちの大量失踪事件がもとになっていた!? ひょんなことからこの話に興味を抱いた著者が、当時の歴史や伝承、文学を辿ってハーメルンの謎を解き明かします。 130人もの子供が忽然と姿を消した失踪事件。大量発生した鼠を駆除する職業人の存在。この2つがどのようにして結びつき、ハーメルンという土地に根付いたのか? 著者と一緒にロマンを追いかけてみませんか。
12投稿日: 2015.03.11
powered by ブクログ経済雑誌で紹介されていたので。 ハーメルンの笛吹き男の伝説の元となった歴史的事実に関する諸説の紹介と、伝説の変容を通してヨーロッパ中世の社会史にふれている。 その歴史的事実が、東独への移民や子供十字軍という説は聞いたことがあったが、 抑圧された日常生活からの解放である祭りの興奮のあまり、子ども達が町の近くの崖に火をともす行事にでかけ、沼地にはまってしまったという説は知らなかった。 このヴォエラー女史の説によると、中世において笛吹き男の属する遍歴芸人は賤民であり、不幸な出来事の原因を去ってしまった遍歴芸人に押しつけてしまうこともしばしばあったため、この事件の際に存在していなかったとしても問題ないとしている。 また、笛吹き男の話と鼠捕り男とは別々の伝説だったことにも驚いた。 ハーメルンが古来水車の町であり鼠の被害も大きかったこと、現実の社会で市参事会の政策に苦しめられた庶民たちの恨みが、別の伝説だった鼠捕り男を裏切った市参事会の話を合成した、ということらしい。 著者は元となった歴史的事実としては、 ヴォエラー女史の説を支持しているようだが、 これという結論を強く示している訳ではないので、 今一つすっきりしない。 でもまあ、金銭がまだ魔力を持っていなかった中世社会が、服装も階級によってしばられ、貧民は半地下の部屋に生活し、貧しく固定化された社会だからこそ祭りが激しかったことなどが描かれていて面白かった。
0投稿日: 2015.01.24
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男の童話には、その元になる歴史的事実があり、この童話が作られたと言う話で、それを探っていく話であるが、元の話がその時代の変化を受けて変化していく様子を見ることが面白かった。私としては、東方への移住、あるいは、子供十字軍の関係で、不幸な話が元になったと思うのだが、すでに失われた話で、真相を知りたい苦しい思いがある。筆者も同じであると思うが、しかし、新しい話が出ないと真相は、このまま、わからないままになるかもしれない。また、中世の民衆の生活がわかって面白かった。どこかで、感想文に真相が書かれていないと書かれていたが、確定するような資料も新たに出ていないのに、研究者である筆者に真相の要求は、無理だろうと思った。面白い歴史ミステリーであった。
0投稿日: 2014.08.23
powered by ブクログ神も悪魔も魔女も幽霊も出てこない、ドイツの片田舎の逸話はいつどのようにして生まれたのか。前半は、その誕生の探求。なにかの事件があった13世紀。その100年後に記されたたった3つの一次資料。そして、渦巻く多数の二次、三次資料。さらには事件とは全く関係ない膨大な歴史資料から、なぜ130人の行方不明者が生じたのかというたった一つの事実を調査する。そして、資料の調査といっても、その中身をただ比較して紹介するわけではない。例えば13世紀について語る16世紀の資料では、それぞれの時代の歴史・社会・宗教などの事実を洗い出すだけでなく、人々の思考が、生活が、背景がどう変化したのかを見極め、その変化量から「16世紀においては13世紀がどう見えたのか」を考える。さらには「資料が語る真実」ではなく、「作者が喧伝したかったストーリー」を浮き彫りにし、虚実を見極める。探偵のようなその手法は、小中学校の国語の授業であった「筆者の気持ちを考えよう」をプロがやるとこうなるということか。 そして後半の主題は、伝説の形成。16,17世紀以来、文献を残すことができなかった農民が語り継いだこの逸話は、出版技術の発達に伴い、知識階層の世界像のなかにとり込まれることになった。例えば「ネズミ取り男」と「笛吹き男」の合成は、当時魔術的な神秘へ反抗の姿勢をみせた中世都市の町人に対する、教会側からの脅迫地味た教訓を含ませたものだった。このように、時には教会や神学者による民衆強化の手段として、時には不可解な運命に弄ばれてきたドイツ民族の過去の解明の一手段として、時には解放戦争、ドイツ統一運動へ民衆を結集する手段として、時には民衆精神の発露として、時には単なる知的好奇心の対象として、それぞれ進学、啓蒙思想、ローマン主義、歴史学などの対象とされ、さらには文学や音楽の分野でも格好の題材とされた。本書ではそれぞれの立場でのそれぞれの解釈・願望・想いを否定的に見ることなく、それぞれの時代における思考世界の次元をくぐり抜けていく過程こそ逸話が伝説として形成されていく理由であるとして、それらを紹介する。 民衆の血が知識層の筆となって語られた伝説は、時として史実よりも多くのことを伝える。ただしそれは、それを読み解く研究あってのこと。1974年の日本で本書のような逸品を書き上げるには、どれほどの苦労と才覚が必要だっただろうか。伝説の探求はかくあるべしと望むのは、現時点では当然のことなのだろうか。それともまだまだ高望みなのだろうか。まずは、1974年と2014年の間の思考・生活・背景の変化量から考えたい。
0投稿日: 2014.07.05
powered by ブクログ大学の歴史学のゼミで読みました。(輪読形式)作り話だと思っていたことが歴史的事実であること。歴史をみるにあたり、史料を事細かに検討すること。この二点を学びました。難しい内容で、再読してます。
0投稿日: 2014.03.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
特に驚くべき種明かしがあるわけではない。あくまで実証的に中世の人々の暮らしと、その幸多きとは言えない人生の中で代々にわたり語り継がれた彼らの「思い」に迫っている。その「思い」の中には日々の暮らしの辛さがより弱いものへと牙を剥くおなじみの構図が「笛吹き男」の存在と重なって見え隠れする。 20世紀の当地の研究者の中世の人々へのまなざしが丹念に追われているが、それは著者の姿に重なるものを感じさせる。
0投稿日: 2013.12.16
powered by ブクログこういう歴史学の本は学部生時代を思い出すな~・・・懐かしい。 1284年6月26日ドイツの小都市ハーメルンで起こった事件に端を発した伝説を、中世時代の資料を用いて読み解く。 史実そのものよりもそれが伝説となる過程で何が作用したかを考えるのが大事とな。
0投稿日: 2013.09.25
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男の童話、事実に基づいているとは聞いたことがあったが、社会情勢や権力の意向によってその内容は変遷してきたようだ。 当時からのヨーロッパ社会を丹念に考察することによって伝説化されていく物語の表皮を剥がして元にあった真相を推察する内容。 そもそも笛吹き男自体が当初は存在していなかったことも知らなかったので新鮮だった。 ヨーロッパに無知な為、拡大する教会勢力、土着の領主層の動向を理解しないとなのだが、カタカナの地名や名前がとにかく頭に入らずまいった。。
0投稿日: 2013.09.17
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男の伝説の謎を、様々な観点から解明していく作品。これまでの研究を下積みとしていくだけではなく、これまでの研究をなした研究者達の見解がその時代に縛られているということを客観的にみて判断し、冷静に分析している点が見事と感じた。
0投稿日: 2013.08.25
powered by ブクログ中世の暗い現実を描いたことは、現代に生きるわれわれが自分の苦しみと対置して、理想化して理解しがちであることに対して強力な批判となる。著者の描く中世像はそれだけの迫力を備えている。封建制を維持するために鬱積していく下層民のエネルギーが、伝説へと流れ込んでいくさまは、見事な筆致と構成で描かれている。しかし、何かが物足りない。それはおそらく、著者自身の熱意みたいなもの、既存の研究方法に対する憎悪に近い研究へと向かわせる熱量みたいなものであると思う。著者は、これまでの研究は知識層による知的遊戯に過ぎないと喝破する。所詮、貴族の暇つぶしであり、歴史に寄り添うものではなかったというのである。しかし、それらにしても、研究へと向かう強い動機と情熱が感じられる。著者の研究にはそれがない。あまりにも客観的で冷淡だ。 こういった批判は、生産的でないのでこの辺にして、内容について書いておきたい。著者の既存の研究に対する批判はもっともなものである。あまりに論者の個人的感情に影響されてしまっていたり、為政者の側からいわば上から観点で伝説に結論を押し付けるのが常であった。これに対し、著者は庶民の生活の中から伝説が生じてきたことを重視すること、ひいては庶民の観点から社会史を行うための方法論を確立していく必要性のあること、を主張する。その具体的実践として、本書があるわけである。しかし、著者は庶民の側から「だけ」みることで、既存の研究と同じ誤りを犯していないだろうか。庶民不在の社会史と庶民の社会史は表裏一体である。庶民の生活は、貴族や市民と独立に営まれるのではない。伝説の継承の営みもまた同様ではないだろうか。日本人はほぼ文字を扱うことができるが、伝説に魅了されないわけでもあるまい。
0投稿日: 2013.04.28
powered by ブクログ中世のヨーロッパ社会の庶民の生活の厳しさ。 寡婦、遍歴芸人といった人達が味わってきた差別と貧困。 祭りの熱狂。土着の信仰とキリスト教会との綱引き。 そして宗教改革、カトリックとプロテスタントの対立。 市当局に対する民衆の不信と批判。 13世紀のハーメルンで起きた130人の子供たちの失踪事件が、どのように伝説化し、またその伝説がどのように変奏していったか。 膨大な資料を渉猟しながら解き明かしていく労作。 豊富な図版を見るだけでも楽しい。
0投稿日: 2012.12.31
powered by ブクログ「伝説」そのものの解明よりも、そこから見える社会について述べた一冊。伝説に対するイメージは変わるかもしれません。
0投稿日: 2012.10.17
powered by ブクログ「無縁・公界・楽」を読んで、ついでにこれも読み直してみた。実際に数百人の子供が一斉に行方不明になった事件が民間伝承の物語として伝わったという話を検証。先日、ハーメルンが「世界ふしぎ発見」で取り上げられていた。意外と知られてないのだな、この事実。
0投稿日: 2012.06.11
powered by ブクログちょっとしたきっかけで(多分)3回目の読了。 やっぱり内容をすっかり忘れていたが、何故か読了感は同じ。 何か物足りない、学者であれば怨念めいた思い込みを感じさせてくれないと。 学者たる作者からすれば、研究書ではなく(もしかすると)片手間に書いたエッセー的作品なのかもしれないが、その後の作者の評価を考えると、こういう学者としては「安易な」方向に走るともう研究という険しい道には戻れないのかもとふと感じた次第。
0投稿日: 2012.06.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
研究成果そのものというより、態度的なものについての覚え書きとして価値があるような・・・ 必ずしもそれを求めているわけではなかったので微妙ですが、 とりあえず同著者の『社会史とは何か』に読み進めます。
0投稿日: 2012.05.30
powered by ブクログ誰もが知っている童話、『ハーメルンの笛吹き男』。 ネズミ退治を依頼された男は笛を吹いてあっという間に集めて駆除したけれど、町の人々は報酬を払わなかったので腹を立てた男は笛を吹いて今度は子供たちを集めて連れ去っていった…という内容だったかな。 130人もの子供が一斉にいなくなったのは様々な記録に残っていて、どうやら事実らしい。どうしたらそんなことになるんだよ。現代なら考えられんよな。昔、桐生操さんの「本当は恐ろしいグリム童話」とか夢中で読んでいた私はすぐに飛びついた。でもそのノリで読むと読了はキツイかも。 学術的に伝説・歴史的背景など丁寧に説明されていてとても興味深い。 随分大昔から研究がなされているよう。一度手を出せばおそらく嵌ってしまって逃れられないのではないのかと想像。 言わばテーマは『笛吹き男の真の正体は?!』か。 最初は「上等な服を着た30歳くらいの美しい男」、次に「見知らぬ笛吹き男」、「いかさま師」はたまた「魔術師」や「悪魔」などなど、その姿は時代によって解釈は七変化。予想外にも、宗教,政治,社会的情勢,民衆の生活・心情などが影響している。 事の真相は解明されていない。それよりも笛吹き男さんが何だか気の毒というか何と言うか。象徴的なもので実在したのかどうか分からないけれど。
0投稿日: 2012.05.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
グリム童話で有名な「ハーメルンの笛吹き男」の伝説の正体を探った本。 歴史学者、阿部勤也は中世の一般の人々の心情を探っていく。 その過程の中で当時の人々の生き生きとした、しかし悲惨な実情も垣間見えてくる。 当時の人々の躁鬱の様な明るさは、日常の暗さを反映したもので、その二つのギャップから「ハーメルンの笛吹き男」やそれに類似した逸話、伝説が生まれてくる。 この話を読んでる時に以前見たインド映画、「スラムドッグミリオネア」が脳裏に浮かんできたのは、あの映画も明るさと暗さの激しいコントラストを持つ映画だったからだと思う。 この本は中世がそうした激しいコントラストを持つ時代だったことを示している。
0投稿日: 2012.05.01
powered by ブクログ1284年6月26日、ハーメルンの町で130人の子どもたちが忽然と姿を消した。これは中世史料から確認できる歴史的事実だ。しかしどの文書にも、子どもたちがどこへ行ったのか、失踪の原因は何なのか記されていない。 何にでも根拠や起源や整合性のある結論を求めるのは、科学万能主義の哀しさであるかも知れない。実験畑の出身者としては、はっとさせられる部分も多かった。例え真相に至らなくても、追求の過程で既存の説の一長一短が明らかになり、新しい視点に気づかされる。それが史学の(そして人文科学全体に共通する)醍醐味なんだろう。 …と書いていて気づいたけれど、この本自体が出版されたのも1988年、私と同い年だ。それから23年、さらに新たな知見が蓄積されていることだろう。また調べてみよう。。
0投稿日: 2012.02.19
powered by ブクログ「ハーメルンの笛吹き男」は、グリム童話等でも有名な「笛吹きが子供をさらい、子供達は二度と戻って来なかった」という民間伝承である。1284年に実際に起きた、子供130人の失踪事件がその源流とされる。 本書は、「笛吹き男」の話が、どのように形成され、また、時代とともに、話の内容がどのように変質していったのかを、中世ヨーロッパの政治史、経済史、民族史を糸口として解明を試みるものである。統治の都合で、時の執政者が、時には伝承を最大限に利用したり、また違う時には伝承を真っ向から否定したり、といった下りが興味深かった。 謎解きモノが好きな人は勿論、世界史に興味のある人は、十分楽しめる本だと思う。
0投稿日: 2012.01.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なんとなくミステリーっぽい謎解きがあるのかと思って読んでみた。 著書は学者らしくその膨大な知識を駆使して、緻密にそして控えめに自論を展開している。 「この事件は伝説通りの事があった」というが著書の見解のようだ。 800年も前の出来事なので、、「子供たちがどこにいったのか?」を直接に調べる事はもう出来ない。なので当時の社会状況の観点から①「なぜ子供たちが出て行かなければならないかったのか?」と②「なぜ子供たちの失踪がこれほど有名な伝説となったのか?」を検証している。 有名な既存説に「東方ドイツ植民地説」がある。 まだ未開だった東欧の地に、若い男女を多数う送り込んで開拓させたとう説だ。これが子供たちが失踪した伝説の原型になったというのだ。 当時、人口増加になやんでいた都市にとって、いわば口減らしになる植民は大いに魅力的であった。①があてはまる。しかし著書はこの説を検討に値するとしながら、最後には否定している。②があてはまらないからだ。 「計画的に行われた植民がこれほどの寿命をもつ伝説にはなりえない」というのだ。当時、かなりショッキングな事件が実際にあったからこそ、今日まで語り継がれるのであって、植民のような行政計画が伝説にまでなるとは考えられないと著書はいっている。 著書がもっとも信頼する説は「事故説」だ。当時の社会情勢下で、子供達は異常なストレスにさらされていたらしい。年端もいかない子供たちも、大人と同じような試練にさらされていたそうだ。何かの"きっかけ"で、小さな子供たちが"狂い踊り"だすのは簡単なことだった。その"きっかけ"が当時の民衆の唯一の楽しみだった"祭り"であったのは想像に難くない。苦しみから逃れる為に忘我の状態になった子供たちが、沼地にはまったり、崖から落ちたりしたという、容易には信じられない出来事があったのではないかと著書は説くのだ。もしこれが事件の真実なら、当時の社会の人々の心に大きな傷を残したことだろう。それらの人々の心の痛みがこの伝説に、今日まで続くような命を吹き込んだのだろうとしている。 伝説はその時代の内面の要請に応じて変容していくものだとしている。 "笛吹男"も当時の祭りに招かれていた遍歴芸人かもしれない。しかし各時代の要請によって、この事件での重要な役割をはたすように変容してきたようだ。 ちなみに20世紀初頭にイギリスで、笛をふいて大量のネズミを操る人物が存在したそうだ。 狂った子供たちを笛でたくみに誘導する"笛吹男"が、実在したとしても不思議でもなんでもない。
0投稿日: 2011.10.02
powered by ブクログ阿部謹也先生の本。しかし、やっぱりすごい。何がすごいかって自分は国も時代も異なる分野を勉強しているが、それでも飽きさせない。現在の問題を過去と関連付けるその姿勢がものすごいためになる。
0投稿日: 2011.08.13
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男について、どういった謎があり結果として伝説になったのか、を噛み砕いて説明している本で、別に謎の解決をしている本ではありません。 資料をもとに当時の社会情勢などを詳らかにしているので、その点では勉強になりました。 長所:挿絵が充実 短所:読んだら余計モヤモヤした
0投稿日: 2011.04.03
powered by ブクログもう少し気軽な気持ちで読めるものだと思っていたけれど 認識が甘かった。読み進めるうちに 中世の知識がある程度 必要だと感じて 少し別の本で知識を補強しながら読んだので 読み込むまで 時間がかかった。でもハーメルンの事件を通して 当時のいろいろなことを 勉強し直してみたいと思わせてくれる 私にとっては 貴重な1冊。
0投稿日: 2011.02.14
powered by ブクログ<ハーメルンの笛吹き男伝説>の謎解き。 伝説は学者や聖職者のようなインテリ層ではなく、庶民たちの日々の暮らしの中から生まれた結晶であるという信念の下、膨大な資料を丹念に解きほぐしながら中世ドイツの庶民の暮らしを浮かび上がらせていく。 その描写は正に見事としかいいようがない。ゴシック様式など、きらびやかなイメージのあるあの時代に確かに存在した最下層の人々の、餓えと差別に苦しむ耐えがたい暮らしぶりがありありと想像できた。 非常に学問的な内容だけども、伝説の謎解きという要素により単純な読み物としても面白い。 「スリルある知の探求」ができる本ってこういう本のことを言うんだろうな。
0投稿日: 2010.12.16
powered by ブクログ130人の子供たちが1284年6月26日にハーメルンの町で行方不明になった。この歴史的事実が、現代まで伝わるハーメルンの笛吹き男の基だ。 歴史学の著者が、文献をたどりその日に何が起こったのかを次第に明らかにしてゆく。この紛れもない史実が、その後の政治情勢、都市形成、人々の価値観によってストーリーがジワジワと添削され伝説化されてゆく変遷がおもしろい。そして中世とは、宗教が権力であり、教会建築が象徴となりつつある時代だった。 時間がこのストーリーを徐々に歪めていったが、当時には時間という概念そのものがなかったという。建築の根本は、「時間」と「空間」によって成立するといわれている。しかし、もし時間という考えがなければ、当時の都市、教会建築は純粋に空間のみで成り立っているといえるのではないか。つまり極論として、中世から存在している教会建築を語るときに、「時間」をあてはめ解説することはできない。
0投稿日: 2010.10.22
powered by ブクログご存知「ハーメルンの笛吹き男」伝説がどのように生まれたのかを作者が掘り下げてゆきます。 オカルト的な話ではなく、当時のヨーロッパの状況や遍歴芸人の当時の境遇などからまじめに「ハーメルンの笛吹き男」を探求します。 読み始めは楽しめるのだが、中だるみ。
1投稿日: 2010.05.15
powered by ブクログハーメルンの笛吹き男の解明を是非にもお願いしたい!気になる!! 中世ヨーロッパにすごく興味がわいた。
0投稿日: 2010.01.15
powered by ブクログ当時の(13世紀位から16.7世紀)の世相、雰囲気が垣間見えれて大層興味深い。 当時の欧州の歴史はだいぶ頭から抜けてしまったがそれでも、世相、風俗と歴史のかかわりが絡み合っている部分がダイナミックで面白かった。 ハーメルンの笛吹き男 と ネズミ捕り は 別の出来事が口承の間に一つになり、そしてそのないがしろにされた笛吹き男の仕返しというそのストーリーが、当時の民衆の鬱積した感情の吐き出し口として表出した一つの思いの形であるというのは腑に落ちる。 しかし子供十字軍だの当時の王の子殺し政策だのイロイロ説があるんですね。
0投稿日: 2009.12.08
powered by ブクログ例によって敬愛する予備校講師のブックリストを参考に手にした本です。中世史オモシロ本として、日本中世史が網野善彦、西洋が阿部勤也ということで載っていました。さて、「ハーメルンの笛吹き男」といえば、知らぬ人がいないほど有名な伝説でしょうか。僕自身については、この伝説はちっともおなじみではなく、河合雅雄『小さな博物記』という、全く関係のなさそうな本で割と最近その存在を知ったに過ぎません。「はじめに」を読んで、これは来た!と思い、ある意味ではこれに騙されて読み切った感じも少しあるのだけれど、騙されて損するわけではないときは騙され続けるのも大切です。高校の世界史で中世を学んだときは、十分の一税だの、ツンフトだの、どうもユーグ・カペーが出てきたあたりからその風景を明確に思い浮かべることができず、興味が薄れてしまっていたと思う。そのときにこの本を読んでいたらそんなことはなかったかも知れない。著者の本はちくま文庫に入っている場合とちくま学芸文庫の場合があるのですが、面白くて、勉強になるこういう本は、ちくま学芸文庫にこそふさわしいですね。まあ「学芸」の方に入ると(吉川幸次郎の本のように)値段が高くなるので、自分の心の中の学芸文庫に入れておけば良いのです。解説は石牟礼道子。
0投稿日: 2009.03.30
powered by ブクログ予備知識もなく衝動買いした本だが大当たりだった。社会史の書だが、ゾクゾクするような面白さはまるで推理小説を読んでいるよう。 笛吹き男について、一般的に知られている話はグリムのドイツ伝説集によるものである。だが「鼠捕り男の復讐」というのは、どうも後付けのテーマらしい。最古の資料、リューネブルグ手書本に鼠捕りの話はなく、ただ1284年、笛吹き男に引率された130人の子供達がハーメルン市から姿を消した、とだけ書かれている。その理由は一切説明されていない。 著者は、1284年に130人の子供達がハーメルンから消えたのは史実であると結論し、⑴なぜ子供達が失踪したのか、⑵なぜそれが有名な伝説となって今日の形で伝えられたのか、と疑問を投げかける。それに答えるべく、①当時のハーメルン市を取り巻く状況、②子供達を含む市民層の実態、③笛吹き男の正体、という3つの因子について、資料や論文をもとに自論を展開してゆく。 本書の意義は、従来の西洋史学で黙殺されてきた都市下層民を取り上げた点にあるらしい。都市の最下層に生きる寡婦や被差別民である放浪者を、伝説の主役または語り手としてクローズアップしたところに新しさがあったようだ。 民衆に光を当てるという、高邁な精神のもとに書かれた本なのだが、引き込むような語り口のおかげで、学問的下地がなくとも楽しめる。興味がある人には、肩肘張らずに一読することを薦めたい。
26投稿日: 2009.02.13
powered by ブクログ阿部謹也は、中世ヨーロッパの「虐げられた人びと」「差別された人々」を生涯の研究テーマにしていた。今から約720年前、日にちまで分かっている、6月26日、ハメルンから子供130人が消えた、笛吹き男が連れ去った、といわれているが諸説ある。これらの諸説を逐一検討していく・・・・
0投稿日: 2008.03.18
powered by ブクログヨーロッパ(ドイツ)の歴史を知る取っ掛かりになるかな?と思って読みました。 土着の信仰とキリスト教の対立が色々な文化を生み出したり壊したりするさまが面白かったです。勉強しようと思った。
0投稿日: 2007.12.20
powered by ブクログ中世ヨーロッパ社会学の一番星!!と言える本でしょう。世界的に有名な伝説である「ハーメルンの笛吹き男」を、当時のヨーロッパのお国事情から民衆の生活、キリスト教の立場、経済、政治を、“学者”の視点からなるべく離れて解析されている。ハーメルンの笛吹き男」の存在した意味、行動の原因、連れ去られた子供たちの行方・・・。 これほど現実に即して論じられ、かつ民衆の心を示唆している伝説はないのではなかろうか?
0投稿日: 2007.11.06
powered by ブクログ不思議な笛でねずみを退治し、礼金を払わなかった市民たちへの仕返しに笛を吹いて子供たちを連れて行ってしまった「笛吹き男」の事件が実際に起きたのだという。中世ドイツを取り巻く環境、当時の人々の暮らしがよくわかります。歴史が息づいている。
0投稿日: 2007.07.12
powered by ブクログAO入試と言うなんだか不思議な手法で大学に合格して、最初のガイダンスで「入学までに読んでくれ!」と提示された参考書の1冊。そうですか・と素直に読んだら高校までの世界史とは違う“西洋史”が見えてきて面白くって、やたらと大学の授業に期待を抱いたものです。民間伝承と歴史の関わりをわかりやすく解きほぐした論文だと思います。歴史学初心者にオススメ!
0投稿日: 2007.02.23
powered by ブクログ★高校時代に最も傾倒した本の一冊。多分これが今の私の稼業を決めた。 思いがけない訃報に打ちのめされてます。 合掌。
0投稿日: 2006.09.16
powered by ブクログ今夏、ドイツに行ったこともあり、ハーメルンの伝説にちょっと興味を持ちました。 伝説の解明・・・とまではいきませんが、様々な説を紹介してくれています。資料を丁寧に読み解いていくのも、私には交換が持てるとゆぅか・・・好きなやり方です。 ハーメルンを通じて、当時のヨーロッパ社会も見えてくるので、中世のヨーロッパ好きには良いかもしれません。 ・・・とゆぅか、中世ヨーロッパ好きなら知っていると思われる、安部謹也さんの著作です。
0投稿日: 2006.04.21
powered by ブクログ突然、西洋史本。日本における社会史開拓第一世代としての著者の貢献・・・とかなんとか、そういうことを知らなくても、この本は純粋に読み物として、おもしろい。一度は鼠を退治し、次には子供たちを連れ去った、まだらの服の男とは何者なのか?消えた130人の子供たちはいったいどこへ行ったのか?・・・伝承の起源はさまざまな説として、あるいはさまざまな徴候として、各地に各時代に眠っている。しかしそれらの中から唯一の答えを探し出すのではなく、筆者の関心は伝説の変貌をもたらした背景そのものへと向かっていく。自治をめぐる闘い、貧困、社会的迫害への視点。そして人々の苦しみと願望の声を徴候の中に聞き取ろうとする姿勢。 この本は厳密に言えば歴史学の文法で書かれていないのかもしれない。筆者が提示する論は、現存する素材と史料を組み合わせて構築される像の領域を超えているからだ。しかし歴史的想像力というものがもつ豊かさと生命力を、この本は十全に見せてくれる。もうずいぶん前の本だけれど、いまなお、歴史を考える者が立ち戻らなければならない一つの地点を示した仕事だと思う。
0投稿日: 2006.03.01
powered by ブクログ「ハーメルンの笛吹き男」伝説の真実を求める前半と、伝説の担い手となった一般民衆の置かれた社会的状況の変化をたどる後半部分からなります(こちらのほうがメインの内容だと思います)。伝説の変容には、語り手となった人々の周囲の状況が、重要な要素だからです。筆者の視線は、それまで光の当たらなかったごく普通の人々、下層階級の人々に向けられています。読むたびに心に響く、何度読んでも飽きない本です。
0投稿日: 2004.09.23
