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総合評価

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    動物と関わり、それでしか生きていく術を持たず、黙々と人生を歩む男たちを中心とした人間模様。基本的に暗い雰囲気なのだが、それを照らす暗い輝きが、こちらの走光性を呼び起こしてくる。捕鯨を描く表題作は迫力があって、時代の移りを見る、まさに絵巻。併録4篇も吉凶禍福の一言では片付けられない、ままならぬ生が描かれる。追い求めることは不足を埋めていく行為なのか、それともすり減ってしまうのか。個の深淵は他人に計り知れず、当人だけが抱え続ける。吉村昭ならではと思える短編集。

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    投稿日: 2026.06.10
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    吉村昭『鯨の絵巻』新潮文庫。 5編収録の短編集。古本屋で貯まっていたポイントを使って購入。 意図してなのか、5編共に様々な生き物と人間との関わりが描かれている。いずれの短編でも主人公を演じる男たちは生き物と自然との関わり方は得意でも人との関わり方は不得手であるのか、男たちの殆んどが妻に逃げられている。 『鯨の絵巻』。表題作。明治12年から昭和20年まで、太地で捕鯨に携わる親子孫の三代に亘る人生と変わりゆく捕鯨の歴史を描いた傑作短編。現代でも如何に新しい技術に対応出来るか否かが社会で生き残るための鍵になるだろう。新しい技術に対応出来ぬ人間は淘汰されても致し方ない。太地と言えば、現代でもイルカ漁が行われ、米国映画の『ザ・コーヴ』を始め、様々な環境団体や動物愛護団体を名乗る過激派組織から槍玉に挙げられている。昔から脈々と受け継がれて来た伝統的な食文化を否定する権利など他国の人間には無い。 『紫色幻影』。紫色の鯉を創り出そうとした養鯉業を生業とする男たちの儚い夢の結末。現代ではワークライフバランスなどと大層なことを言って、仕事よりも家庭や家族を大切にする傾向が強いが、昭和の頃は兎に角仕事が優先だった。 『おみくじ』。世の中には次々と職を変えたり、定職にも就かずに怪しげな仕事で暮らし続けるおかしな男が居るものだ。信用金庫を辞めて、父親の遺産を頼りに文鳥やヤマガラに芸を教える暮らしを続ける無職の男が嫁をもらうが、直ぐに嫁は出奔し、違う男と暮らし始める。 『光る鱗』。奄美大島で教職を追われ、山の中に移り住み、ハブ獲りを生業とする男の話である。教職を追われたことで妻は子供を連れて出奔する。本土復帰前の貧困と物資不足にあえぐ島民の暮らしぶりが描かれる。 『緑藻の匂い』。妻に逃げられて、牛蛙の漁り子を生業とする男の話。である牛蛙とは食用蛙のことであり、その牛のような鳴き声から牛蛙と呼ばれるのだ。 定価360円(古本0円) ★★★★

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    投稿日: 2026.05.29
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    吉村昭「鯨の絵巻」読了。仕入れた絶版を勿体振ってチビチビ読んでいる我が心の作家104作品目は、題名作を含む5つの珠玉短編集。僭越ながら改めて、無駄の無い文章で綴る、生々とした豊かな情景表現は、拙者のような未熟練読者にもスッと入って来て感動を覚えるので御座るな。 #読了 #吉村昭 #鯨の絵巻

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    投稿日: 2020.02.14
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    動物たちと男の物語。何かと女に捨てられる話が多いが、ストーリーがそっちに引っ張られずに淡々と濃密な展開なのがよいな。

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    投稿日: 2018.11.18
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    最後の太地の伝統的鯨漁の漁師の生涯、ハブ獲り、紫の錦鯉生産に生涯を傾ける老人、ウシガエル獲りなど、孤独な人生を、生き物相手の生業で過ごしていく肖像。ハードボイルドかな。

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    投稿日: 2014.11.03
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    全編に亘り、静謐な情念と孤影が行き渡っている。これだけの深さの作品。なぜあの文学賞が取れずに終わったか、賞の価値がそれだけのものでしかなかったということか。

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    投稿日: 2013.11.15