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双調平家物語1 序の巻 飛鳥の巻
双調平家物語1 序の巻 飛鳥の巻
橋本治/中央公論新社
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総合評価

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  • 長い長い時の中で重なり合い、響き合う物語

    何故『平家物語』なのに古代中国や飛鳥時代から始まるのか? それは、元祖『平家物語』の序が、「遠く異朝をとぶらへば・・・」と、古代中国から連綿と続く「おごりたかぶる逆臣」の流に平清盛を位置づけていることに由来するが、 そのことが小説として成功につながっただろうか? 私は大きく「YES!!!」と言いたい。 一般的な『平家物語』の主人公である平清盛が登場するのは結構後の方になる。 清盛の造形がちょっと変わっていて無欲な人である。たいていの描き方では、たいそうな野心家とされがちであるが、 最初は摂関家の忠犬として登場する。狗(犬)なので、普通に、主である藤原氏に尽くす。自分の利益ではなく、主に認められることに喜びを感じる。 「その狗は、人となることを望まなかった。ただ、狗であることを、理解されたかった。」 しかし、人は彼が狗であることを理解してくれない。彼は望まぬ栄達を遂げ、人に憎まれる。 しかも、清盛が望まぬ栄達を遂げた理由には、恐るべき陰謀がある。それを仕組んだのは他ならぬ後白河院である。 が、清盛にはそのようなことがわからない。栄えぬ昔が恋しかった。 「なぜに院は、我が一門をお疎みになられるのか?」 怒りと悲しみに震えながら、何度もその問いを繰り返す清盛。 ここで、1巻の安禄山の話がフラッシュバックする。稀代の逆臣として語られる禄山を、作者は愛されること、認められることのみを求め、得られなかった純朴な蕃将として描いていた。 怒りよりも悲しみに震える清盛は、まさに「本朝の安禄山」なのである。 本書はこのような「双調」の連続である。 一度目には気付かなかった調べが、二度目に読むと新たに聞こえてきて、ポリフォニーをなす。 何度も読み返したい名作。

    5
    投稿日: 2014.09.06
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    壮大な歴史絵巻、開幕の書。 権力と栄華にとりつかれた人間の物語。 期待を持たせる第一巻。この先の展開が楽しみ。

    3
    投稿日: 2013.06.02
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    大河ドラマ「平清盛」とは関係なく、平家物語に関心を持ち、解説本等をいろいろと読んでいるうちに、この作品に出会いました。 全16巻で、初めは原典の現代語訳をもとに橋本治が発展させた作品かなと思いましたが、第1巻をパラパラとめくってみると、冒頭にこそ「祇園精舎の鐘の声には」とあるものの、その後はどうも平家や源氏とはあまり関係ないことが続いていて、「?」と思ってしまいます。 しかも、18ページからは古代中国の秦の時代の話が始まります。 そして、ようやく日本に話が戻るのが285ページ。しかし、それは「飛鳥の巻」と題された章で、蘇我蝦夷や中臣鎌足の名前がでてきたりします。 背表紙の解説によれば「これは、『栄華』という幻想に憑りつかれた男達の物語である」とあります。 読み進めていくと、かつて日本史の授業で出てきた懐かしくもどんな人だったかは覚えていない名前が次々と出てきます。いや、それ以上に全然知らない人物が数多く登場しますが、次第に平家物語につながる何かが見えてくる作品です。 平家物語のことを考えるとき、それまでの歴史の中での男たちのドラマと、またそこに関わる女たちのドラマを、この作品を通して知ることで、さらに深い人間の真実が見えてくるのかも知れません。 そんな期待を抱きながら、平成24年1月現在、第5巻まで読みました。 日本史の知識がそれなりにないと、ちょっと読み進めるのは辛いと思いますが、平家物語に関心のある方には是非おすすめです。

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    投稿日: 2012.01.14