旱魃世界
J・G・バラード(著)
,山田和子(訳)
/創元SF文庫
作品情報
十年ほど前から徴候を見せていた世界的な旱魃は、ここ五カ月のあいだ、各地で急速に文明社会を崩壊させつつあった。マウント・ロイヤル市の住人たちが競うように水を求めて海岸へと殺到する中、医師ランサムはハウスボートの船上で、破滅まで引き延ばされた時間を緩慢と生き続けていた。やがて、妄執に囚われた建築家ローマックスの不穏な企みをきっかけに、彼も海を目指して南下を試みるが・・・・・・生物を拒絶するように変質する世界をシュルレアリスム絵画のように描き出した、バラード〈破滅三部作〉の一端をなす『燃える世界』の完全版、本邦初訳。/解説=牧眞司
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商品情報
- シリーズ
- 旱魃世界
- 出版社
- 東京創元社
- 掲載誌・レーベル
- 創元SF文庫
- 書籍発売日
- 2021.03.19
- Reader Store発売日
- 2021.03.19
- ファイルサイズ
- 1.8MB
- ページ数
- 348ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (4件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
突如現れた謎の有機物によって世界中の海洋の表面が覆われ、海水の蒸発が阻害されて水の循環が機能しなくなった世界。湖も河川も次々に干上がり、水を求める人々が海岸地帯へと避難していく中、医師ランサムは湖に係留したハウスボートの中で、色々と理屈をつけながらぐずぐずと内陸部に留まり続けていた。彼を見捨てて愛人と海へ向かう妻を見送り、不思議な安寧を感じながら町に留まる彼の周囲に見え隠れする、同様に海への避難を良しとしない独自の価値観に囚われた人々・・・絶望的な状況の中、次第に暴力に満ちていく町で、ランサムが選択した行動とは?
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バラードの「破滅三部作」のひとつ、「燃える世界」の改稿版。鴨は「燃える世界」未読ですが、かなり印象が異なるそうです。
鴨は「破滅三部作」の他2篇「沈んだ世界」「結晶世界」を読了しており、この2作との印象の違いに、何よりも驚きました。極めてリアル。海水面の上昇によって人類の生活圏が急速に狭まりつつも、熱帯性の動植物の暴力的な生命力に満ち溢れた「沈んだ世界」、万物が結晶化して活動を停止させ、静かに緩慢に滅びていくという”作り話”そのものの「結晶世界」と比して、旱魃で地上の水分が干上がり、水を求めて海辺に殺到する人々の姿(でも海水をそのまま飲むことはできないので、必然的に暴力的な争奪戦が発生して・・・)という、バラード作品にはまずあり得ないと言っても良いぐらい現実的で絶望的でヒリヒリした舞台設定は、眼からウロコでした。バラード、普通にリアルな作品も書けるのね・・・。
ただ、リアルな舞台設定とは言ってもそれはあくまでもバラード作品における比較論の話であって、バラードが描きたかったのはやはりいつも通り、滅亡そのものではなく、滅亡の風景の中を彷徨する人間精神の変容だったのだろうと鴨は思います。その観点でも、主人公ランサムの行動の意味がある程度合理的に理解できるこの作品は、他の作品とは一線を画すると感じました。
最後の最後のあの1行は、どういう意味なんでしょうね。普通に読めば、死の淵に瀕したランサムが最後に見た幻覚、と捉えるのが順当かもしれません。が、幻視者バラードが読者に見せつけた”救いの光景”なのかもしれません。どちらとも決めつけずに、良いお酒を飲んだ時のような心地よい酩酊感を持って読了したい作品ですね。投稿日:2021.06.15
旱魃世界
人類の愚かな振舞いにより、海からの水の恵みが途絶えた世界。
湖は干からび川は流れを止め、生き物は死に向かい、陸地は砂漠化していく。
人は海水を蒸留して得るわずかな水と引き換えに、愚かにも、…更に塩で海を浸食していく。
連想されるのはマッカーシー「ザ・ロード」でありマルセル・セロー「極北」であり、映画「マッドマックス」や「風の谷のナウシカ」だろうけど、水を求めて南へ向かう姿は、なぜかスタインベック「怒りの葡萄」をイメージしてしまう。
主人公が「意識の中に携えてきた内なる景観(イナーランドスケープ)の周辺領域を越える旅」とは、なんだったのか……最後まで読んでも捉えることは難しい。
初めの頃に書かれていたハウスボートの中に飾った「雑誌から切り抜いたイヴ・タンキーの『緩慢な日々』の写真」が、最終章のタイトルとされていること……うーん、わかりません。続きを読む投稿日:2024.02.14
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