室町無頼(上)(新潮文庫)
垣根涼介(著)
/新潮文庫
作品情報
応仁の乱前夜。天涯孤独の少年、才蔵は骨皮道賢に見込まれる。道賢はならず者の頭目でありながら、幕府から市中警護役を任される素性の知れぬ男。やがて才蔵は、蓮田兵衛に預けられる。兵衛もまた、百姓の信頼を集め、秩序に縛られず生きる浮浪の徒。二人から世を教えられ、凄絶な棒術修業の果て、才蔵は生きる力を身に着けていく。史実を鮮やかに跳躍させ混沌の時代を描き切る、記念碑的歴史小説。
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商品情報
- シリーズ
- 室町無頼(上)(新潮文庫)
- 著者
- 垣根涼介
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2019.02.01
- Reader Store発売日
- 2019.07.19
- ファイルサイズ
- 3.5MB
- シリーズ情報
- 全2巻
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この作品のレビュー
平均 4.3 (22件のレビュー)
-
たった1回の予告編で「観たい」と思わせる映画は久しぶりかもしれない。そのまま原作を読む運びとなった。
映画の方(来年1月公開)はエグい描写もあるようだが、不思議なもので原作版だとそこは何の気なしに読み…進められる。(※あくまで!個人の感想です) (下)で全てをまとめようか迷ったけど、(上)から凄かったので各々書いていくことに決めた!
時は室町時代後期、応仁の乱前夜。
土倉の用心棒として雇われていた天涯孤独の青年 才蔵は、ある事件をきっかけに骨皮道賢に見込まれる。道賢(恐らく姓名ともに偽名…)は市中のならず者を率いる頭目でありながら、幕府直々に市中警護役を任されている。
やがて才蔵は蓮田兵衛(こちらも多分偽名…)という男に預けられ、戦闘に必要な技術を身につけるための修行へと身を投じていくこととなる…
「そもそも善悪など、見る側の都合によって決まる。それだけのものじゃ」
京都人が言う「先の戦争」とは応仁の乱を指す…と言うのは有名な話。
それによって市中は荒れ果てたのだと自分も授業で聞かされていたが、乱よりも前から荒廃していたというのは目新しい情報だった。建物は焼き払われずとも、人々の暮らしが荒廃していたのだ。
当時の京は政治経済の中心地であると同時に貧富の差も激しかった。鴨川や四条大路は大量の餓死者で溢れ返り、他方では金融業や輸送業で私腹を肥やす者がいた。才蔵が守っていた土倉も貸し付け後に不当な額の利子をつけていく、いわば闇金だった。
その地獄から道賢に拾われた才蔵は、幸運でしかなかったのだと思わずにはいられない。
「自分の居場所というものは、自らの手で作っていくしかないのか」
生きるためには手段を選ばない。道賢と出会う前の才蔵然り、遊女の芳王子然り。自分のやりたいことを優先する現代とは大違いだ。
先述で「才蔵が幸運でしかなかった」と書いたのは、彼が食い扶持を確保しただけでなく夢よりも命を繋ぐことで精一杯の世の中で、志を持った道賢と兵衛に出会えたことでもある。(芳王子も2人の確固たる自分を持ったところに惹かれたのだろう)
世間にとって自分は塵芥でしかないと思っていた才蔵が、2人から世の中や生き方の心得を説かれ自分の進む道を見極めようとしている…。そこから才蔵が自我に目覚め、自分の居場所を確立していくと想起させるような流れである。
(上)では道賢や兵衛以外の人物らにスポットが当たっていたが、終盤にかけての才蔵の修行にも注目したい。(修行の描写が鮮明に頭に焼きついていた影響もあって、冒頭にて「凄かった」と書いた)
棒術を極めるための修行なのだが、特訓メニューがなかなかにユニーク。そのため才蔵同様戸惑うこともあるとは思うがそれぞれがちゃんと意味をなし、繋がっていることが後々分かってくる。
これが映像化されるとどうなるのか、今から楽しみ!道賢役が堤真一さんなのはちょっと引っかかるけど笑(本書に書かれているビジュアルから渡辺謙さんくらいの迫力を想像していたもんで汗)続きを読む投稿日:2024.03.14
室町時代、没落武士の子で天涯孤独の少年才蔵は用心棒として土倉を営む法妙坊暁信に雇われる。
ある日土倉は盗賊に襲われるが、頭目骨皮道賢に見込まれ、百姓からの信頼を集める浮浪の徒蓮田兵衛に預けられ、棒術の…修行を経て生きる術を身につける。
応仁の乱前夜を一揆側の視点から描いた歴史小説であるが、歴史に従いながらも一つのドラマの様な読み方ができる。歴史があまり好きじゃ無い人にもお薦めの作品。続きを読む投稿日:2024.03.30
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