ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代
萩田 光雄(著)
/リットーミュージック
作品情報
「プレイバックPart2」、「木綿のハンカチーフ」、「少女A」・・・・・・名編曲家・萩田光雄がつづるヒットの秘密。編曲家、それは楽曲の伴奏を作る人のことである。インパクトのあるイントロをひねりだし、曲に合った伴奏をつける。ヒットするかどうかはその出来にかかっていると言っても過言ではない。時は70~80年代の歌謡曲黄金時代、何人もの編曲家がしのぎを削った。その中でも、ひときわ抜きん出た存在が萩田光雄である。総編曲数4,000以上。「プレイバックPart2」「ロックンロール・ウィドウ」(山口百恵)、「木綿のハンカチーフ」「赤いハイヒール」(太田裕美)、「少女A」(中森明菜)、「異邦人」(久保田早紀)、「待つわ」(あみん)、「シクラメンのかほり」(布施明)などの大ヒット曲のアレンジはどのようにして生まれ、時代にどのような影響を与えたか。本人の証言、関係者のインタビューなどで、そのアレンジの手法と魅力を明らかにしていく。昭和~平成の歌謡曲の現場のうねりが体感できるエキサイティングな書。【目次】◎萩田光雄半生記◎アレンジャー鼎談萩田光雄×川口真×船山基紀◎インタビュー太田裕美川瀬泰雄クリス松村小池秀彦佐藤剛◎論考萩田アレンジの音楽的特徴と歌謡界への貢献◎萩田光雄編曲作品リスト
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商品情報
- シリーズ
- ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代
- 著者
- 萩田 光雄
- 出版社
- リットーミュージック
- 書籍発売日
- 2018.06.11
- Reader Store発売日
- 2018.06.14
- ファイルサイズ
- 75.8MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
全6章。
1章の「生い立ち」、2章のヤマハ所属時代の仕事「習作時代」はさらさらっと手短に。
本編スタートは3章の「歌謡界の最前線に躍り出た70年代」から。
南沙織太田裕美山口百恵岩崎宏美桜田淳子布…施明梓みちよ小柳ルミ子新御三家久保田早紀新井満岸田智史大場久美子の名曲編曲の思い出が綴られる。
読み手が音楽ど素人のアイドル好き高齢者になることは筆者も分かってるはずだが音楽用語をバンバン入れてくる。勿論脚注はあるけれどそんなの読んだって分からない。(脚注が音符なのはかわいい)でもそこがいい。萩田ほどの天才が一読者にそんなに気を遣わなくていい。説明されたところで理解はしても分かりはしない。音楽を聴かせていただいただけで、思い出を飾ってくれただけで十分なのだから。
それでも音作りに対する思い出反省、歌手や作詞作曲演奏家に纏わるエピソードはシンプルにおもろい。
すんごい派手な編曲もたくさんあるし作曲家も色とりどり。でも筒美京平が多いんですかね。音楽的な「美」の追求が筒美作品と相性がいいからなのか。都倉俊一とはあまり仕事をしてない?(巻末の全曲リストでも都倉俊一の作品は10未満?まぁ偶然じゃなさそう。どっちが嫌いなのかな。)
さて3章では好きなフレーズがいくつも。
勝手に要約すると
「思秋期はあまりのメロディの良さに泣いてしまった。余計なことをしてはならない。。そう思ってしまったのかボツになった。(採用は作曲した三木たかしの編曲)」→ヒロリン本人も泣きすぎてその日はレコーディング出来なかったらしいし
「真珠のピリオドは好きな歌。ダイナミズム」→わかる
「来夢来人はルミ子さんならもっと上手く歌えたはず。まぁ初見だから仕方ない。でも他のアイドルもみんな初見。」→こんなこと書いてるのはここだけ。何か言いたげな。ルミ子はいい子よ?他より強いってだけで虎や豹を毛嫌いするのはあなたの弱さが原因なのでは?うちのルミ子はただ一所懸命なだけよ。
「確かにアイドルとしてはギターは上手いけどそんなことしたらファンが引くぜ(野口五郎)」→プロが見ても売れない方向に行ってたんだなぁ、勿体ない。19時の街で路線戻したけどね。
「大場久美子は角ばらない歌い方。演奏を気にせずスルッと歌う。小賢しさがなく徹底してピュア。」→人は欠点に惚れるとはよく言ったもので。これから能天気な人を見かけたらこのフレーズを使おう。便利。
4章「アレンジャーは料理人」
自身が考える編曲の定義、作り方、ギャラや報酬、実際の譜面も。
インタビューは太田裕美・川瀬泰雄・小池秀彦。
ここでも音作りについての専門的な記述が目白押し。太田裕美もアイドル歌手というよりは半ば演奏家、作曲家としてのコメントを寄せている。
それまでの章でもそうだったが、この章では特にスタジオミュージシャンへの敬意が感じられる。
ファーストコールのプレイヤーに向けたアレンジ。それぞれが「あ、これは俺用に作られたアレンジだな」と分かるなんてね。我々音楽ド素人はそんな細部には気づきもしないけれど、でもそれぞれの作品が上質なのはまさにこの念の入った細部の作り込みによるもの。
すみれ色の涙が萩田本人の演奏だったり、万華鏡を幽霊だと断言したり(宣伝のため)、日本で1番上手い歌手は森繁だとする評があったり、H2Oディスりすぎたり、川瀬対談では酒井プロデューサーの無茶振りや閃きがヒットの源泉であることが垣間見えたり、百恵にもっと下世話に書けと依頼されたのに恥ずかしいと断ったら「京平さんだって東京ららばい書いてる、あれくらい恥ずかしくていい」と謎の説得したり、異邦人はイントロのおかげで売れた歌としたり、専門的ながらも軽さと楽しさを忘れない4章。
5章「ひと皮むけた80年代」
70年代に劣らず大ヒット曲満載の80年代。喋ることは山ほどありそう。。。なのだけれどたった17ページ。駆け足というよりは逃げるように語っている。その短い中でも筆圧高く語るは南野陽子。ナンノの仕事には自身のアイデンティティを感じるとまで断言。そして彼女についての記述は「発声に”うん”が入り甘えて聞こえる。多少わがままだけどプロの指示通りやってくれる正統派アイドル。プロ意識と根性は一流。その辺のぽっと出とは違うオーラ。」そうね。ドラマの運から始まったけどあの美貌に名曲揃いだし。8作連続オリコン1位も納得。にしても紅白は誰と入れ替わったんだろね。バーニングかなぁ。(本と関係ないけど)
勿論明菜ちえみ知世ひろこ有希子美幸も。
明菜についてはあなポから飾りまで、ページを割いて語っているが全て曲やアレンジについてのみ。明菜の声や歌い方については一切触れていない。鷲尾いさ子の声は好きだというのに?
安田成美の歌い方について「可愛いじゃん。今どきの、これ見よがしに歌い上げるよりいい。そういうのは結局全部同じに聴こえる。そういう意味では西村知美も王道だ。」と。
これには100パー同意。
そりゃひばりやみこちゃん、はつみくらい上手けりゃ歌い上げればいいし、聖子や明菜くらい暴力的な美貌と魅力と歌唱力のパッケージでねじ伏せるならね。だって高い音が出て声量があるだけだと規模のでかい愛の歌しか歌えないでしょ?ココロが1センチズレて痛いっていうの歌えないでしょ?何歌っても宇宙とか地球とか人類愛だから。
あとこの「これ見よがし」ってフレーズ、都倉俊一との仕事があんまりないのがなんか分かる。それでもピンクレディのアルバム曲とかやってるけどね。
章の最後はアニメドラマ映画音楽など。本人は「あんまり好きじゃない。シーンに合わせて美しくないものを書く必要があるから。」と。
太田裕美は「職人」と評してたけどやはり編曲者は作曲家であり芸術家だよねぇ。でも印税は入らないと。(その理由も本文で語られている)
6章「マイペースの90年代以降」
自身の編曲を◯◯風として展開、世界の音楽が土着のアコースティックなものから打ち込みの米サウンド物真似になっている現状に触れ、結局歌謡曲は全て◯◯風だよね、ホンモノなんてないよねとしている。同意。ただここでも演歌を民謡などと別枠で語っている。はて。演歌って歌謡曲でしょ?フォークやロックと同じで。流行歌だよね?
まさか筆者が演歌を「伝統的な日本歌謡」と位置付けてるとは思えないが、演歌はただの新しい流行歌だよねぇ。だから淡谷のり子が嫌ったんだし。
「アレンジャー鼎談」
川口、萩田、船山トップアレンジャーによる鼎談
始めたきっかけ、印象深い自身の作品、編曲は作曲か否か、編曲は作曲の2次創作か、歌謡曲とJ-POPの違いなどなど。
「我々職人だから。こうやったらこれだけ売れますと見通しつかないといけない。でも小室哲哉以降はサビでキー上げたら上手くいったとかグルーヴ借りてきてなんか乗っけたら出来たとかだよね」とはまさに。印税なしの8小節の作曲家として商業的に職人を極めているからこその発言なのか。
にしてもやはりイントロの作曲は著作権が発生しそうなもんだけどねぇ。
クリス松村インタビュー
アイドルに詳しいオカマは数いれど、ほぼ全員が独りよがりの雑学。そこから知識まで昇華している人は多くないが、彼はそのうちの1人。決して音楽専門性のあるコメントではないけれど、散らばる星を星座に読みとる才能というか、思い込み力というか、まぁそこがオカマとしての質の高さなのかしら。(オカマとしての質の高さとオカマとしての幸せライフは反比例します)
編曲ベスト10もさすがのラインナップ。60歳以上にはドンピシャだろう。
佐藤剛インタビュー
ここでも久保田早紀「異邦人」が代表作として挙げられる。我々素人が感じる以上のイントロなんだなぁ。あと百恵と明菜について「百恵はかっちり、明菜は自由の幅」と。わかりみ。ポスト百恵の明菜。その中でも中盤からは宇崎阿木サウンドで固めた百恵と作詞作曲をどんどん変えていった明菜、ドメスティックな世界観を歌い続ける百恵から世界旅行感の明菜へとアレンジしているようで、実は編曲者は萩田メインのまま。ここに両者の「スタート同じ、途中全然違う、でも結局また同じ」的な印象創造が出来てると思うけど、百恵の菩薩的な凄み?洗練の仏教美術的?なものと、明菜の明日はもういないかも知れない、不安定の美は音楽の作り方から違うのね。
歌謡曲のスタートは1959の「黒い花びら」から。
納得。
論考
「歌メロから導き出されたものでありながら歌メロには存在しないイントロ」が萩田イントロだと。
巻末には萩田編曲リスト。ヤバくない?この量。そりゃ「脳の襞に刻み込む余裕なかった」ってなるわ。
さてと。
中高年アイドル好きには全ページ楽しめる本。
「音」の人ですから阿久悠のように各フレーズの攻撃性は高くないけれど、都倉俊一の本とはまた異なりどこか理屈っぽく読み手を考えて音楽専門性を限りなく低く設定した物言い(それでもまだ専門的過ぎる)ところも職人感があっていい。
萩田光雄が大場久美子、南野陽子や西村知美の歌唱を好んだことは、どこか筒美京平が平山みき、郷ひろみ、松本伊代の声を好んだことに重なる。
「技術は魅力に負ける」「どんなに人真似をしても消えないのが個性」「人は欠点に惚れる」
楽しい本でした。続きを読む投稿日:2024.02.14
「木綿のハンカチーフ」も「異邦人」この先生。巨人ですな。「異邦人」は派手に全然ちがう曲にしてしまったのでいまだに怒られが発生しているっぽい。
投稿日:2021.04.23
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