モッキンポット師の後始末
井上ひさし(著)
/講談社文庫
作品情報
食うために突飛なアイディアをひねり出しては珍バイトを始めるが、必ず一騒動起すカトリック学生寮の“不良”学生3人組。いつもその尻ぬぐいをさせられ、苦りきる指導神父モッキンポット師──ドジで間抜けな人間に愛着する著者が、お人好し神父と悪ヂエ学生の行状を軽快に描く笑いとユーモア溢れる快作。
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商品情報
- シリーズ
- モッキンポット師の後始末
- 著者
- 井上ひさし
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 1974.06.15
- Reader Store発売日
- 2016.03.25
- ファイルサイズ
- 0.2MB
- ページ数
- 266ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (27件のレビュー)
-
▼中高生の頃、というと1980年代だったんですが。携帯以前、そして書籍界的には「BOOKOFF以前」だったあの頃、首都圏郊外の小さな「駅前本屋さん」の文庫本コーナーに文字通り日参していました。毎日買う…わけではなく、毎日のように文庫本コーナーで、文庫本の「背表紙の紹介文」をとっかえひっかえ読む。割と毎日のように読む。当然ながら同じものを何度も読む。そうやって気になったものをやがて買う。同じような思い出がある人は、この世代には多いはず。
▼そんな時期によく井上ひさしさんを読んでいました。そして、この本はその頃からのお付き合いで、なんだけどなんとなくご縁がなく未読だったグループの一員。幾星霜を経て特段深い意味は無く読んでみました(近所のBOOKOFFで安く売っていたから)。
▼終戦後数年の東京、東北から来た大学生、半自伝的。貧乏暮らし、毎日空腹。食べるがために、悪友たちと、あの手この手の悪だくみ。毎回失敗、抱腹絶倒、今日も夕日が目に染みる…。という青春爆笑小説です。実に井上ひさしさんの得意なゾーン。
▼何より素敵なのが、タイトルになっている「モッキンポット師」。この人は主人公じゃありません。主人公は一人称の大学生含めた三人組。この三人は(井上ひさしさんと同じく)カトリック信者なんです。とはいっても敬虔な信者であるというよりは、恐らく全員が「親とか、そういう理由でなんとなくカトリック」なだけ。そしてモッキンポット師はこの三人が身を寄せるカトリック団体の学生寮の寮長さんである神父さん(イタリア人)。来日歴が長いので、日本語がペラペラなんだけど、それが関西弁である。そしてモッキンポット師は毎回毎回、この三人組の尻ぬぐいに東奔西走させられます(この小説は連作短編です。恐らく月刊誌掲載だったのでは)。
▼このモッキンポット師と、悪だくみ三人組とのやりとりが面白い。「全く神も仏も無いですよ」「仏さんは知らへんけどな、神様はおんなはんで」みたいな。連作短編のはじめ2~3編は、瞠目するオモシロサ。本当に爆笑もので、「これは井上ひさしさんの最高傑作…少なくともAAA級の作品グループに入る」と思いました。「本当に笑える日本のユーモア小説ベストテン」があったら個人的にはランクイン。浅草フランス座事件、などはほんとに息が苦しくなるくらい笑いました。
▼後半はちょっとパワーダウンかな、と。何しろこれだけ爆笑できるオモシロサ、というのは、縦軸のドラマ性とかっていう野暮なものが無いから面白いのであって、「爆笑できる」ということと、「後半終盤まで見事な感動と展開に満ちている」、ということは基本的に矛盾しますからね。続きを読む投稿日:2023.10.21
聖パウロ学生寮で生活をすることになった小松という青年が、悪友の土田、日野とともにさまざまなアルバイトに手を出しては失敗し、その尻ぬぐいに寮長であるモッキンポット神父が奔走するユーモア小説です。
三人…の学生たちに振りまわされるモッキンポット師は、コテコテの関西弁をしゃべるアクの強いキャラクターですが、彼のひろく深い慈愛のまなざしのもとで、三人の学生の自由気ままな振る舞いが成り立っており、そんな彼にキリスト教の信仰に裏打ちされた強さをかいま見るようにも感じました。
ただ古い作品だけに、ユーモア・センスが現代の読者の感覚からズレてしまっているように感じられたのもたしかです。エンターテインメント性の強い作品は、やはり賞味期限が短いところが弱点なのかもしれません。続きを読む投稿日:2023.03.29
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