人間のしわざ
青来有一(著)
/集英社文芸単行本
作品情報
この世界のどこに救いや癒しがあるのか――戦後70年に問いかける衝撃作。男は戦場カメラマン。紛争を追いかけて世界中を駆け回り何十年も家庭を顧みず、結果、妻の死を知ったのは葬儀が執り行われた後だった。今は、テロリストとの関係が疑わしい引きこもりの息子と暮らし、妻の裏切りの記憶に苦しんでいる。かつて、互いに惹かれあいながら結ばれなかった女との逢引先で男が語り始めたのは、青春の日々に長崎の町で掘り出された喉仏の骨、黒こげの殉教者の慟哭、そして30年前の雪の日の、爆心地での教皇の祈りだった――。デビュー20年。『聖水』『爆心』に続き新たに殺戮と紛争の世紀を問う衝撃作。長崎という土地の記憶を探り続けてきた著者の、到達点であり出発点がここに。【目次】人間のしわざ/神のみわざ
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商品情報
- シリーズ
- 人間のしわざ
- 著者
- 青来有一
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文芸単行本
- 書籍発売日
- 2015.04.08
- Reader Store発売日
- 2015.07.07
- ファイルサイズ
- 0.2MB
- ページ数
- 192ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (5件のレビュー)
-
2015.7記。
むごたらしい殺戮の現場を撮りつづける戦場カメラマン、息子はその写真をネットで売りさばき、原発へのテロを夢見ながら引きこもっている。
広島で教皇が演説した時にいったという「戦争は人間…のしわざです」という言葉は、原爆さえ神の御心による試練だと信じようとしていた長崎出身の主人公に動揺をもたらす。
主人公がみる幻覚の形で描かれる江戸期のキリシタン弾圧のすさまじさ、島原の乱における籠城戦の悲惨さ(これはバルガス・リョサの「世界終末戦争」を彷彿とさせる)。
そして息子とともに撮影に赴いたぬかるんだ干潟に溢れる生命。
表面的なところでいうと、意外と文体に村上龍との共通点がある気がした。すなわち、グロテスクを正面から強調する表現、句点ではなく読点でつなぎながら延々と長い一文。
「干潟に流れ着いた兵士たちのうつぶせの死骸もだんだんと崩れてしまい、シオマネキが毛の生えた耳をつついて、流れていく皮膚や体液をバクテリアはさらにこまかく崩してしまい、シャミセンガイやふしぎなかたちの二枚貝も融けた肉をすすり、ひとつの死とひきかえに微細な数億、数十億、数え切れないいのちが沸騰してきて、あれらが氾濫して、それは潟のなかの兵士の亡骸だけのことでなく、世界中でぼくが見つめてきた兵士たち―――すかっとした青空のもとにある後頭部が吹き飛んだ兵士の死体だけでなく、砂漠や、廃墟にいる彼らの身の上にも起きていたことで、あれは自然のしわざで、神のみわざであろうはずがない。」(P.163)
上手な朗読とかで聴いたらすごく感動するのではなかろうか。私としては、小説というよりは詩に近い感覚で読み終えた。続きを読む投稿日:2019.01.05
「人間のしわざ」とは、ヨハネ・パウロ二世が戦争について語った時の言葉だ。
主人公、といってよい男は戦場カメラマンで、家族を顧みず、戦場で死体の写真を数多く撮り続けてきた。息子はそのことでおかしくなっ…ている。
男とかつて「いい仲」だった女との逢瀬の中で、そうしたことが語られるのが、前半の「人間のしわざ」。後半は「神のみわざ」と題しているが、やはり戦争という試練は神のみわざではなく、人間のしわざ、なのだ。
前半は、性描写と登場人物達の壊れ具合とがヘビーであり、後半には多少の救いもあるが、神の救いではない。これも人間のしわざ。
過去と妄想と幻想が入り混じる。ただとにかくわかるのは、今もなお行われている残虐行為はみな人間のしわざ、ということだ。小さなしわざから大きなしわざまで。ああ、嫌だなあ…。
続きを読む投稿日:2015.07.24
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