遮断地区
ミネット・ウォルターズ(著)
,成川裕子(訳)
/東京創元社
作品情報
バシンデール団地、通称アシッド・ロウ。教育程度が低く、ドラッグが蔓延し、争いが日常茶飯事の場所。そこに引っ越してきたばかりの老人と息子は、小児性愛者だと疑われていた。ふたりを排除しようとする抗議デモは、彼らが以前住んでいた街で十歳の少女が失踪したのをきっかけに、暴動へと発展する。団地をバリケードで封鎖し、石と火焔瓶で武装した二千人の群衆が彼らに襲いかかる。往診のため団地を訪れていた医師のソフィーは、暴徒に襲撃された親子に監禁されてしまい・・・・・・。血と暴力に満ちた緊迫の一日を描く、英国ミステリの女王の新境地。
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商品情報
- シリーズ
- 遮断地区
- 著者
- ミネット・ウォルターズ, 成川裕子
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 書籍発売日
- 2013.02.01
- Reader Store発売日
- 2013.12.13
- ファイルサイズ
- 2.4MB
- ページ数
- 519ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (39件のレビュー)
-
あらすじを超える謎はなく、ミステリーとしても社会派小説としても中途半端
世評は高いのだが、あらすじを読んだだけではなかなか手が伸びず、500ページもの大著に尻込みをしていた一冊。結局ボリュームなど気にならず一気に読み終えたのだが、すんなり愉しめたとは言い難い。治安のもとも…と悪い団地に密かに越してきた性犯罪者に対する抗議から自警的な暴動に発展するまでの様が丹念に描かれるのかと思いきや意外に淡白で、地域の中の対立し合うグループも出てこず、描かれるのは家に閉じ籠った老人たちと野次馬的に集まる青少年ばかりで、殺気立つ臨場感も乏しく、警察が手を出せないほどの混乱ぶりがあまり伝わってこない。
主人公の医師を監禁する親子のどちらが小児性愛者なのかでドラマを盛り上げるのかと思いきや、孤独な患者同士を救う「仲良し電話」を発案したとは思えないほど短絡的で思慮に欠けるソフィーの行動で自ら墓穴を掘ってしまい、共感がたちどころに失せる。そもそもどちらがそうかは巻頭の人物紹介でしっかりネタバレされてるのを後で知って、なんだかなと思ったが。
もう一つの地区で起きる女児失踪事件も、本筋とは最終的に繋がらず、真相も曖昧なままで、結局暴動への不安を掻き立てる材料にしか過ぎなかったのか?
ただ一番読後感を悪くしているのは、ソフィーもそうだったが、最後に精神科医のボブが患者ともいうべき犯罪者に浴びせかける理性的とは言い難い言動で、当事者であれば医師も冷静さを失うことを作者が示したかったのかどうか判然としない。続きを読む投稿日:2014.01.19
-
イギリスの作家「ミネット・ウォルターズ」の長篇ミステリ作品『遮断地区(原題:Acid Row)』を読みました。
「ディック・フランシス」(「フェリックス・フランシス」との父子共著含む)に続きイギリス…のミステリ作品です。
-----story-------------
バシンデール団地に越してきた老人と息子は、小児性愛者だと疑われていた。
ふたりを排除しようとする抗議デモは、彼らが以前住んでいた街で十歳の少女が失踪したのをきっかけに、暴動へ発展する。
団地は封鎖され、石と火焔瓶で武装した二千人の群衆が襲いかかる。
医師の「ソフィー」は、暴徒に襲撃された親子に監禁されて……。
現代英国ミステリの女王が放つ、新境地にして最高傑作。
解説=「川出正樹」
*第1位『ミステリが読みたい!2014年版』海外編
*第2位『このミステリーがすごい! 2014年版』海外編
*第3位『週刊文春 2013年ミステリーベスト10』海外編
*第2位『IN★POCKET』2013文庫翻訳ミステリーベスト10/翻訳家&評論家部門
*第4位『IN★POCKET』2013文庫翻訳ミステリーベスト10/総合部門
*第4位『IN★POCKET』2013文庫翻訳ミステリーベスト10/読者部門
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2001年(平成13年)に出版された社会派ミステリーの問題作… 翻訳されたのは12年後の2013年(平成25年)のようですね、、、
「ミネット・ウォルターズ」の作品は初めて読みましたが、サスペンスフルでスピーディーな展開が愉しめました… 実際に、こんな暴動が発生すれば、イギリスの警察組織が、もっと早く解決してくれると思いますけどね。
教育程度が低く、ドラッグが蔓延し、争いごとが日常茶飯事である通称アシッド・ロウ(LSD街)と呼ばれるバシンデール団地に小児性愛者が入居して来た事実がナイチンゲール医療センターの巡回保健師「フェイ・ボールドウィン」の口から住民の一人でシングルマザーの「メラニー・パタースン」に漏れる… 身の危険を感じた「メラニー」は母「ゲイナ」とともに変質者を団地から追い出すデモを計画、やがて、その噂が広まり、引っ越して来たばかりの老人「フラネク・ゼロウスキー」と息子「ミーローシュ・ゼロウスキー」をターゲットにしが群衆デモへ発展する、、、
そして、彼らが住んでいた街で十歳の少女「エイミー・ビダルフ」が失踪した事件が発生し、「フラネク」と「ミーローシュ」に誘拐の疑惑を抱いた、「ケヴィン・チャータズ」、「ウェズリー・バーバー」等を中心とした凶暴な若者達が暴走して、地域の出入り口をバリケードで封鎖し外界をシャットダウンしたうえに石と火炎瓶で襲撃しようと企む… この排斥デモに端を発する大暴動と、その引き金となった近隣の中産階級向け住宅で発生した「エイミー」の失踪事件の顛末が、分刻みで刻々と変わる局面を頻繁に視点を切り替えて多角的に、そして、臨場感豊かに描きあげられていましたね。
愛する子どもたちの安全を願って始めらたはずの平和的なデモが、いつの間にかコントロール不能な暴力行為へと変貌し、悲惨な結末に突き進みます、、、
「フラネク」と「ミーローシュ」の家を往診のために訪ねていた女医「ソフィー・モリスン」が暴動の発生とともにそのまま部屋に閉じ込められ、思わぬ暴行の犠牲となって血まみれの身体でも何とか抵抗して行くヴァイオレンスの色濃いサスペンスと、刑務所帰りで真面目に更正して生きて行こうと考える黒人青年「ジミー・ジェイムズ」が恋人「メラニー」を助ける為に危険地帯へ乗り込んで行く身体を張った活躍の大迫力に満ちたシーンが印象的でしたね… 悪の道から立ち直り、懸命に奮闘する「ジミー」の活躍には、感情移入しちゃいましたね。
冒頭で読者に提示される「5時間にわたる暴動で死者3名、負傷者189名」という新聞の見出し… それによって、死んでしまう3人って誰なんだろう? というのを気にしながら読み進む展開も面白かったな。
惨い暴力や無意味で虚しい死もありますが… 全体としては救いのあるまとめ方をしてあり好感が持てましたね、、、
でも、同時に進行する「エイミー」の行方を追う捜査の模様は、アシッド・ロウの暴動に比べると、やや盛り上がりに欠けましたね… 徐々に明らかになる機能不全に陥った親子関係が理解できなかったからかも。
そして、終盤でのワンシーン、、、
凛とした元看護婦の老女「アイリーン・ヒンクリー」が、「ジミー」に対して発する「人はその行動で判断されるの」という言葉が印象に残りました… 良い言葉ですね。
以下、主な登場人物です。
「ソフィー・モリスン」
ナイチンゲール医療センターの医師
「フェイ・ボールドウィン」
ナイチンゲール医療センターの巡回保健師
「ジェニー・モンロウ」
ナイチンゲール医療センターの受付係
「ハリー・ボンフィールド」
ナイチンゲール医療センターのシニア・ドクター
「ボブ・スカダモー」
ソフィーの婚約者。精神科医
「メラニー・パタースン」
シングルマザー
「ゲイナ・パタースン」
メラニーの母
「コリン・パタースン」
メラニーの弟
「ジミー・ジェイムズ」
メラニーの恋人
「ケヴィン・チャータズ」
コリンの友人
「ウェズリー・バーバー」
不良少年
「エイミー・ビダルフ」
十歳の少女
「ローラ・ビダルフ」
エイミーの母
「グレゴリー・ローガン」
ローラの同棲相手
「キムバリー・ローガン」
グレゴリーの娘
「バリー・ローガン」
グレゴリーの息子
「マーティン・ロジャスン」
ローラの夫。弁護士
「エドワード・ダウンゼンド」
宅地開発業者
「ドリー・カーシュー」
バシンデール団地の住人
「アイリーン・ヒンクリー」
バシンデール団地の住人
「アーサー・ミラー」
バシンデール団地の住人
「タイラー」
ハンプシャー州警察の刑事
「ゲアリー・バトラー」
ハンプシャー州警察の部長刑事
「ケン・ヒューイット」
ハンプシャー州警察の巡査
「ウェンディ・ハンソン」
ハンプシャー州警察の婦警
「ミーローシュ・ゼロウスキー」
小児性愛者
「フラネク・ゼロウスキー」
ミーローシュの父続きを読む投稿日:2022.12.26
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