日本語のミッシング・リンク―江戸と明治の連続・不連続―
今野真二(著)
/新潮選書
この作品のレビュー
平均 3.5 (3件のレビュー)
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正しい日本語は明治以降に大きく変わった
特命全権大使米欧回覧実記の岩波版は漢字カタカナ混じりで読むのにえらい苦労した。それでもリズムが良く名文だというのはわかる。当時は漢字にルビを振る文語が出始めていたが、この本にはそういうものはなく、きち…んとした漢文の素養の上で書かれたフォーマルな文体のようだ。明治時代に入り言文一致と言う運動が生まれ文語は漢語から離れ話し言葉に近づいて行く。通常言文一致と言うと文末表現の違いがフォーカスされるがこの本ではむしろ元々の漢文がどれだけ使われ、対応する話し言葉にどれだけ置き換わっているかを注目している。
実は今でも言文一致はしていない。新聞など短い言葉で伝えるためには文章をはしょり、密度を上げている。俳句などもそうだ。同じ情報を伝えるのにテレビは語数でなく映像でカバーしているとも言えるのだが。(こういう体言止めも文語だわ)
段落をあけ一文字下げ最後に句点を振るというのも明治以降に始まった。正しい日本語の歴史は思ったほど古くない。
明治6年福沢諭吉は使用する語に注意すれば漢字は2千から3千で足りると述べた。平成22年に改訂された常用漢字表は2136字、明治20年頃にはかなの会ができ全部ひらがな表記を推し進めたが定着せず、漢字仮名交じりに落ち着いたのは日本語との相性だろう。中国語は基本1文字1意でおそらく最も少ない文字数で意味が伝わる代わりに覚えるべき言葉(しかも話し言葉では同じ音)がめちゃくちゃ多い。対照的に日本語は同音異義語は有るが少ない漢字で伝わるようになった。全部ひらがなもまた読みにくい。中国語に比べ日本語のかな表記は抽象的になりやすいからともいえる。
江戸時代は文語は基本的には漢文だったのが旧幕府の出した五箇条の御誓文の高札は翌日には撤去され、明治政府は漢字仮名交じりの五榜の掲示に置き換えた。庶民にもわかりやすい言葉にしようとしていたわけだ。和語と漢語との融合体としてあった江戸時代の日本語は明治期に一気に現代語に近づいて行く。幕末から明治期に活躍したリーダー達は漢学と洋学を共に学んだことが多い。外来語のカタカナ表記の対照は元は西洋語ではなく漢語だったのだ。西洋語との相性の良さから横書きも広まっていく。
二葉亭四迷の余が言文一致の由来では、円朝のはなしのように書いたらいいとアドバイスした坪内逍遥が「も少し上品にしなくちゃいけないちいふ」のや徳富さんは「文章を言語に近づけるのも良いが、も少し言語を文章にしたほうがよいと云ふ」それに対して四迷は国民語の資格を得ていない漢語は使わない、役目の終わった和語(例えばはべる)も使わないとしている。毎年のようにカタカナ語の氾濫を問題にする人が出るが要は受け入れられた言葉はカタカナでも使えばよいと言うことなのだろう。正しい日本語と言うのも文語については割と最近できあがったものなのだから。続きを読む投稿日:2015.09.20
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江戸時代の日本語が明治になって、どのように変化してきたかを克明に記した好著だ.文書の事例が多く掲載されており、楽しめた.英和辞典に見られる日本語の縦書や横書きは時代の流れを感じる.漢字の左側にその意味…を書き、右側に読み方を記する方式は面白い様式だと感じた.漢語を使わなくなった若者用に採用してみたらどうだろうか.続きを読む
投稿日:2014.10.27
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