「痴呆老人」は何を見ているか
大井玄(著)
/新潮新書
作品情報
「私」とは何か? 「世界」とは何か? 人生の終末期を迎え、痴呆状態にある老人たちを通して見えてくる、正常と異常のあいだ。そこに介在する文化と倫理の根源的差異をとらえ、人間がどのように現実を仮構しているのかを、医学・哲学の両義からあざやかに解き明かす。「つながり」から「自立」へ――、生物として生存戦略の一大転換期におかれた現代日本人の危うさを浮き彫りにする画期的論考。
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商品情報
- シリーズ
- 「痴呆老人」は何を見ているか
- 著者
- 大井玄
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮新書
- 書籍発売日
- 2008.01.17
- Reader Store発売日
- 2012.03.30
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 223ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (35件のレビュー)
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いずれ私も歩む道、と読み始めたのですが…
タイトルから、自分もいずれそうなるかもと軽い気持ちで手に取ったのですが、あに図らんや、とんでもない内容の本でした。1度目は、そのまま通読。すぐに読み返し、今度はメモを取りながら熟読。でもまだ足りませ…ん。近いうちに、今度はノートを取りながら、読みたいと思っています。それほど含蓄のある、私がここ数年読んだ本の中で、最も知的好奇心をかきたてられる一冊となりました。単に痴呆老人について書かれた本では、決してありません。
まず、認知症とはなんぞやの説明から始まります。そこでは、認知力の低下と知力の低下とは異なることが語られます。そして認知能力に衰えがないとうぬぼれているのは私たちの方であることが示唆されます。認知している世界は、我々がつながっている世界でしか通用しない世界なのです。それはただ、本質を見ず、そう思い込んでいるだけかもしれません。
次に、日米の認知症に対する考え方の違いが示されます。これはよく言われていることですが、日本では他人に迷惑かけたくない、というのが第一義になりますが、アメリカでは自立性を失うことへの恐れが一番となります。そして、そこから話は日米の文化の差に及んでいきます。
またコトバは重要な要素であり、それは情報を伝達手段であるとともに、情動を伝える手段でもあることが、ゲラダヒヒの事例を挙げて説明され、話はいつしか9.11のブッシュ大統領の振る舞いにまで及びます。
さらに、ニンゲンは、最小苦痛の原則によって行動することが論ぜられ、昨今の「自立」を強制される欧米文化の弊害が語られます。「ひきこもり」という英語では正確な訳さえない行為は、自立したニンゲンを育てる教育を、その訓練さえしてこなかったオトナが進めた結果であるとします。「ひきこもり」も、そして徘徊や夜間せん妄も、最小苦痛の原則による防衛手段の一つなのでしょう。一方、そもそも日本は、「つながり」を重視してきた環境であったことが、大化の改新後の律令制度における班田収授の法によって説明がなされるところなどは、もはや脱帽以外のなにものでもありません。
論の結びは、現在の日本社会で正しいと思われている人間観は、アメリカという開放系の世界で創られたモノで、そこには、長い江戸時代という、まさに平和かつ閉鎖社会で培われた「つながり」というものを軽視していると、警鐘を鳴らします。
これらの事柄を、膨大な引用資料を提示しながら、細かく論じられていきます。仏教、哲学、心理学などが駆使されていて、私にはかなり難解な部分もあり、とても一度読んだだけでは把握しきれないモノでした。近いうちに3度目となる読み直しをしたいと思っています。続きを読む投稿日:2014.10.05
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ある地域では痴呆の中核症状は出ていても問題行動はないという話しが面白かった。介護の仕事しているので大いに参考になった。周りの人の理解、というか敬老思想って中国ではないけれど大事な事なのですね。当たり…前の事を当たり前には言えない時代……続きを読む
投稿日:2023.09.10
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