Maxwellさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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神様の御用人4
浅葉なつ / メディアワークス文庫
次回作への期待が高まりました
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3巻までは1冊の中に「神様の御用聞き」案件が2~3件入っていましたが、4巻は1件だけです。その分だけお話も深く、心に染み入ります。
主人公の良彦も良い意味で変わってきていて(以前から兆候はありましたが…)、神様の依頼に真摯に取り組む姿勢も好感が持てます。
3巻までも読み物としては良いですが、印象に残ったことを思い出すと、たいがいが、黄金さま(キツネの姿の神様)のお茶目な言動、でした。
一方、4巻で印象に残っているのは、依頼主の神様のなくした記憶を取り戻すために少しずつ歴史を紐解いていく過程、辿りついた結末です。この神様が人として生きていた2600年前の情景、人の営みが目に浮かぶようで古代日本の歴史にちょっと興味が出てきたり、神様の御用人1~3巻を読み返してみたくなったりしました。
いわゆる続き物にはマンネリ化して面白みがなくなっていくものがありますが、本書の場合は、次回作への期待が高まりました。
続きを読む投稿日:2015.09.05
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小説 盛田昭夫学校(下)
江波戸哲夫 / 講談社文庫
読み終える頃にはすっかり感情移入していました
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ソニーとソニー創業者の盛田さんの物語(後半)です.
トリニトロンテレビ,ウォークマンなど「技術のソニー」のイメージを
定着させた製品の開発,発売から,盛田さんが亡くなるまでが含まれて
います.
前半…部は馴染みのある製品が登場してわくわく感がいっぱいでしたが,
最終章は盛田さんが倒れて以降,ハワイでのリハビリ生活,亡くなる
までのことが記述されていて,ちょっとしんみりします.
盛田さんは写真でしか拝見したことがない(声も知らない)ですが,
読み終える頃にはすっかり感情移入してしまっていたみたいです.
事実に基づいているとは言え,「小説」と題しているだけあって,
読みやすいです. 続きを読む投稿日:2014.03.28
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政治改革の熱狂と崩壊
藤井裕久, 菊池正史 / 角川oneテーマ21
発端は「時事放談」
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著者の藤井さんがTBSの番組「時事放談」(日曜朝6時~)に出演しているのをたまたま見かけ、
その時の説明がものすごくわかりやすかったので読んでみたのがこの本。
期待を裏切らず、ものすごくわかりやすく、…且つ内容の濃い本でした。
著者の大蔵官僚+政治家としての歩みを辿る形で話が進みますので、田中角栄元首相以降の日本の政治の流れが把握できます。
特に前半は近現代政治史の流れを辿る色彩が強いです。
読み進めるにつれ、政策上の主張(「消費増税は必要である」など)やそう考える理由といった内容も増えてきますが、わりとすんなり納得できます。
もちろん、説明がわかりやすいから、というのもあると思います。
ですが、それ以上に、言葉の端々に信念(私利私欲とは無縁で、且つブレない軸)を感じました。
本書から読み取った、政治家藤井裕久氏の信念は、「弱い者、恵まれない者に目を向けるのが政治である」です。
だからこそ、増税などの嬉しくない主張も含めて、すとんと胸に落ちたのだろうと思います。
ちなみに本稿冒頭の、「時事放談」でのすごくわかりやすかった説明、というのは、
「集団的自衛権とは、(アメリカ合衆国と)対等の軍事同盟を結ぶことである」
です。
安保関連法について総理の説明とか何度聞いても残念ながらよく理解できずモヤモヤしていましたが、この一言でスッキリしました。
ということで、安倍総理の言っていることが理解できなかった時は、藤井先生の意見を検索してみるつもりです。 続きを読む投稿日:2015.10.24
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テレビの「敗戦」とテレビの「復活」
西田宗千佳 / impress QuickBooks
コンパクト.ちょっと物足りない
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内容は少なめです.30分程度で読み切ってしまいました.
「テレビの敗戦」とは,(主に)日本のメーカーがテレビ事業で大赤字に陥った理由を説明しています.
これは過去(といってもここ数年の話ですが)の事…実をわかりやすく整理していて非常に明快です.
一方,「テレビの復活」の方はかなり物足りない印象でした.
実際,まだ復活もしていないし復活の兆しも見えているとは言えない現状なので「はっきり言えばわからない」と
いうことなのでしょうが,そこはいろいろな仮定を置いた上でも構わないからいくつかシナリオを書いてほしかったと
思います.
ただ,見えていないということは,今は思いもつかない素晴らしい製品が世に出てくる可能性もあるわけで,
今はちょっとそれに期待したいです.
続きを読む投稿日:2013.11.02
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プロジェクトX 挑戦者たち 未踏の地平をめざせ 復活の日 ロボット犬にかける
NHK「プロジェクトX」制作班 / プロジェクトX 挑戦者たち
ソニー創業の精神
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「土井君.人の真似はするな.新しいことをしろ.それがものづくりの原点ですよ.」
作中に出てくる,ソニー創業者井深さんの言葉です.
この言葉にも込められている,創業の精神が失われようとしている西暦200…0年頃のソニーの中で,ロボット犬「AIBO」が生み出されるストーリーです.
「AIBO」自体は完成し,そこでこのストーリーは終わるのですが,その後10年以上に渡ってソニーから革新的と言える
エレクトロニクス製品が出ない歴史を知っているせいでしょうか,読み終えた後,言いようのない淋しさが残りました.
ソニーが再び創業の精神を思い出して復活してくれることを願っています.
続きを読む投稿日:2013.09.26
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されど、愛しきソニー 元役員が本気で書いた「劇的復活のシナリオ」
蓑宮武夫 / PHP研究所
いいこと書いてあるけれど,ちょっと感傷的
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かつてソニーが輝いていた理由が判ります.
簡単に言うと,能力の高い人を集めて,やる気にさせる.
口で言うのは簡単ですが,実現するのは簡単なことではありません.
これをソニーではどうやって実現していたの…か,ということが具体的なエピソードを通して説明されています.
なるほどと思うこと,そのとおりだと納得できること,そして引用して誰かに伝えたくなる言葉が散りばめられています.
ただ残念なのは,著者がソニーで携わった仕事を思い返しながら「昔はよかった」という感傷に浸っているかの
ような雰囲気が醸し出されていることです(特に後半).
そのせいか読後感としては,愚痴を聞いてちょっと疲れた,というところでしょうか.
続きを読む投稿日:2013.09.29