Unaken66さんのレビュー
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51
このユーザーのレビュー
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三国志全八冊合本版
吉川英治 / 吉川英治歴史時代文庫
紙の本と比べて
13
紙の文庫本=吉川英治歴史時代文庫版も所有していますので、軽く比較レビュー。
・文庫だと全八巻、かさばるし、価格も高いのに比べ、電子書籍版は安く手に入って一気に読めるのが最大のメリットでしょう。しかし全…5千頁ともなると、ただでさえ動作もっさりのREADERで読む場合、ページ読み込みなどはかな~り待たされますので、そこは我慢が必要です。
・文庫版にあった、当時の地図、用語の注釈、尾崎秀樹の解説などは、作品を読み解く上でとても有用なのですが、電子書籍版では「全て省かれています」! せっかくの電子書籍だから、端末の辞書機能やネットなんかと上手く連動できれば、注釈がないのも補えるのですが、READERの場合はこの点ももっさりダメダメですからねぇ……。
結論:再読の人や、三国志の世界に詳しい人には、お買い得な電子書籍版は文句なしにおすすめ!! しかし、初めて読む人には、地図や注釈のある紙の文庫版の方が分かりやすいと思います。 続きを読む投稿日:2015.04.02
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クッキングパパ(1)
うえやまとち / モーニング
今読んでも面白い
5
紙のコミック第一巻は、1986年発売だそうですが、時を経て今読んでもちゃんと面白いから大したもの。冒頭の場面で「荒岩さんがノーヘルでバイク乗ってる!」と驚くかもしれませんが、原チャリのヘルメット義務化…が1986年ですから、雑誌掲載時点ではまだ違反じゃなかったんですねぇ。同様に「料理する人がタバコ吸ってる!!」とか、「そもそもなんで料理すること秘密にしてるの!」とか、今の時代から見ると不思議に思うかもしれませんが、昭和の男にとってはそれが当たり前だったんですねぇ。男子厨房に入るべからず、なんて言葉がありましたから。その辺は時代ってことで、おおらかな気持ちで読みましょう。 続きを読む
投稿日:2015.06.17
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親鸞全三冊合本版
吉川英治 / 吉川英治歴史時代文庫
食わず嫌いはもったいない
5
仏教の話? 抹香臭いんじゃね。とてつもなく偉い人の話!? 説教くさいんじゃねーの! と、読みもしないうちから敬遠していた一冊なのですが、食わず嫌いはもったいないです。
小説には、親鸞が人生に悩み、青春…のたぎりに苦しみ、権力や運命に翻弄されるさまなどが描かれますが、その苦悩は我々凡俗となんら変わることもなく、だからこそ共感できる部分もたくさんありました。悪人正機説というのは、哲学=思想としても素晴らしいものがありますので、この小説を入り口に、もう少し勉強してみようと思いました。 続きを読む投稿日:2015.08.17
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雨の日には車をみがいて
五木寛之 / 集英社文庫
素敵な小説!
3
9台の個性的な外国車と、その車に関わる女性たちとの出会いや別れを描いた、連作短編です。登場する車は1960年代のものが中心で、自分にとっては必ずしもリアルタイムの想い出はないはずなのですが、自分の青春…の原風景を見ているような気分になれる素敵な小説です。単なる恋愛小説とも違う、不思議な心地よさがあり、車のことを知らない人でも楽しめる一冊ですよ。 続きを読む
投稿日:2015.04.02
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新装版 ムーミン谷の彗星
トーベ・ヤンソン, 下村隆一 / 講談社文庫
大人にこそ読んでほしい
3
彗星接近により地球が大変なことに! という本作の設定は、作者トーベ・ヤンソンの戦争体験に由来するものだとか。そう聞くと、この日本に戦争がなく、素晴らしい物語を楽しめることに、しみじみ感謝します。
さて…本作、そんな極限状態を設定したからこそ、主人公ムーミントロールの気持ちがストレートに伝わります。仲間を想い、地球の風景を慈しみ、ヒロインにはめろめろ! その純な気持ちに、読んでるこっちの気持ちも若返ります! 大人が読んでこそ楽しめる極上のファンタジーだと思います。
なお、私の様なオッサン世代には“ノンノン”、もう少し若い人には“フローレン”の名で知られるヒロインのキャラ、あれ原作では「スノークのおじょうさん」と呼ばれてるんですね。先の名前はアニメ用のものだそうで……。この年まで知らなかったな(笑。 続きを読む投稿日:2015.05.04
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日はまた昇る
アーネスト・ヘミングウェー, 高村勝治 / グーテンベルク21
改訂版を希望します
3
本書「グーテンベルグ21版・日はまた昇る」には、誤訳・誤用・誤変換などが散見されます。読書の興がそがれること甚だしい! 訳者の方は高名な文学者であり、下記のようなミス表記を繰り返すとも思えないので、こ…れは電子書籍化の際の入力、あるいは校正のミスではないのか? 版元さんはすぐに改訂版を出すべし。せっかくの名著が泣いてます! 以下、私が気付いたおかしな箇所を列記。
「彼翌」……辞書等調べたが、どうしても意味不明。喫煙の場面なので、もしかしたら「比翼煙管」の誤変換かもしれない。
「こんばんわ」……小学生レベルか!
「Sバス」……もしかしたら、パリにそういうバスがあるのかもしれないが、たぶん「バス」の入力ミスでは。
「部情報を手に入れる」……これも意味不明。単に「情報」の入力ミスか。
「風が麦にそよいでいた」……そよぐのは麦では? 「風に麦がそよいでいた」だと思うけどなぁ。
「すばらしだったよ」……「すばらしかったよ」の入力ミスか。
「ロースト・ジェネレーション」……これは巻末の解説部分より。失われた世代なら「ロスト・ジェネレーション」じゃないですかねぇ。ローストだと「炙り世代」ですよ。
以上のような箇所が気になり、作品に没入できなかったのが残念! しかし内容は、やはりすばらしくて、一読の価値はあります。決して満たされることのない、不毛の愛にとらわれた主人公とヒロインの関係が切ないのです。虚無を感じさせる場面の乾いた筆致と、釣りや闘牛の場面での活写ぶり、それらの対比も見事です。 続きを読む投稿日:2016.03.23