チョッピーさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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小野寺の弟・小野寺の姉
西田征史 / 幻冬舎文庫
相手を思いやる姉弟の物語
5
共に「中年」(失礼)になりながら、2人暮らしを続ける「姉弟」の些細で平凡、それでいながらも、何故か愛おしさを感じさせる「日常」を描いた作品でした。自分よりも相手に幸せになって欲しいと考える2人の思いが…ベースになっている為か、非常に心地よく読める物語でした。後半のエピソードには少し涙腺が刺激されていまいましたが、ほんわかしたい気分になりたい時にお勧めしたい作品です。 続きを読む
投稿日:2016.05.17
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もう過去はいらない
ダニエル・フリードマン, 野口百合子 / 東京創元社
癖のある主人公と物語
5
『もう年はとれない』で大立ち回りをした後からの続きとなる「バック・シャッツ」シリーズ2作目です。前作で大けがをした関係(+加齢)の影響もあり、前作以上に「動き」が取れない主人公をカバーする為か、現在と…過去の事件を同時並行で描き、双方にかかわる人間(敵役)との物語を進めようとはしていますが、どちらの物語もなかなか動かない(これは前作にも感じましたが)為、少々物語としては弱い気がしました。主人公のキャラクターの強烈さと凶暴さへの感じ方も人それぞれ(私は許容範囲かな?)だと思いますので、万人にお勧めとはいかない作品で、作中の「人種」に関するエピソードも日本人としては理解が難しい点のように思います。主人公の息子の死の「謎」が未だ解明されない展開の為、必ずあるであろう「続編」を今から待ちたいと思います。 続きを読む
投稿日:2015.11.24
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シャーロック・ホームズ 絹の家
アンソニー・ホロヴィッツ, 駒月雅子 / 角川文庫
良質なシャーロック・ホームズのパスティーシュ物。
8
コナン・ドイル財団公認の正「続編」という肩書きはともかく、シャーロック・ホームズのパスティーシュ物として、あるいは良質なミステリーとして面白く読了しました。発端となる依頼人の登場から始まった物語が途中…で横滑りしたかと思いつつ、読み進めた先に現れる奇怪な事件と、発端となった事件の真相も、それまでにちりばめられた伏線がすべて回収された形で解決されるという、語り口のうまさが光る作品でした。事件そのものは正直「現代」向けとも思え、読んだ後で考えれば色々引っかかる部分も多い気がしますが、満足度は高い作品でした。シャーロック・ホームズが好きな方、シャーロック・ホームズのパスティーシュ物が好きな方、あるいは全くシャーロック・ホームズに関心の無い方にも一読をお勧めしたいと思います。 続きを読む
投稿日:2015.11.24
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髑髏の檻
ジャック・カーリイ, 三角和代・訳 / 文春文庫
ジェレミー!
4
そこで登場するか!ジェレミー!というこのシリーズを読んでいる人間としては嬉しいもう一人の主人公の帰還に大笑い(失礼)しつつ、のカーソン・ライダー最新作です。本来の勤務地からは離れてとなる為、同僚ハリー…との掛け合いは楽しめませんでしたが、今まで同様(恋愛も)のライダーのセリフの面白さと、このシリーズの事件の変わらない猟奇的な展開にハラハラしながら今作も面白く読了しました。前作程の衝撃的な展開はありませんが、ジェレミーの役割は1、2作目辺りとはかなり違ってきているかもしれません。今後も期待のシリーズです。 続きを読む
投稿日:2015.11.17
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いちご同盟
三田誠広 / 集英社文庫
「生きろ」!
6
傑作。どこにも自分の居場所を見つける事が出来ないという思いから「死」という向こう岸への思いを募らせる主人公が、あるビデオ撮影を頼まれる事で2人の人間と係る事になる所から始まる「死」そのものの物語と、「…死」を見届ける事になる主人公が最後に「生」へと向かう事になる「再生」の物語に心が震えました。自分の年代という視点から読むと、物語に出てくる様々な「親」の立場にも色々と考えさせられる点がある物語でもあります。主人公の感情の揺れ動きが細やかに描写され、主人公に絡む2人それぞれとの関係も繊細且つ深いものがあり、素晴らしい余韻が残る物語でした。 続きを読む
投稿日:2015.05.06
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ようこそ、わが家へ
池井戸潤 / 小学館
面白さ「2本立て」!
38
池井戸さんらしさ爆発の「会社内」サスペンスの物語が描かれる一方、同時並行で今作では主人公に振りかかるもう一つの「私生活」を巡るサスペンスの物語が描かれ、今1作で2本分の面白さが味わえる作品となっていま…す。それぞれの物語の描かれ方が少し物足りないと思われる部分とも裏腹だとは思いましたが、一気に読ませる面白さは今作でも健在ではないでしょうか。「会社」と「私生活」それぞれでそれぞれの「問題」を抱えている部分は人それぞれである訳で、今作はそういうある意味万人が共通して持つ「悩み」の部分を物語的な誇張はありながら、池井戸さんなりに提示した作品なのかも知れません。 続きを読む
投稿日:2015.03.31