うらおもて人生録(新潮文庫)
色川武大(著)
/新潮文庫
作品情報
優等生がひた走る本線のコースばかりが人生じゃない。ひとつ、どこか、生きるうえで不便な、生きにくい部分を守り育てていくことも、大切なんだ。勝てばいい、これでは下郎の生き方だ・・・・・・。著者の別名は雀聖・阿佐田哲也。いくたびか人生の裏街道に踏み迷い、勝負の修羅場もくぐり抜けてきた。愚かしくて不格好な人間が生きていくうえでの魂の技術とセオリーを静かに語った名著。(解説・西部邁)
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商品情報
- シリーズ
- うらおもて人生録(新潮文庫)
- 著者
- 色川武大
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 1987.11.25
- Reader Store発売日
- 2022.11.25
- ファイルサイズ
- 1.1MB
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この作品のレビュー
平均 4.1 (71件のレビュー)
-
1.著者;色川氏は、小説家・随筆家・雀士です。学校生活に馴染めず、学校をさぼって、映画・寄席・喜劇に熱中しました。人生哲学は、「ツキの流れを読んでそれに従う」「欲張りすぎず、九勝六敗を狙う」と言われて…います。著書の「黒い布」は、三島由紀夫・伊藤整・武田泰淳に激賞され、中央公論新人賞を受賞。「離婚」で直木賞、他にも泉鏡花賞・川端康成賞・読売文学賞を受賞。また、“阿佐田哲也”名で発表した「麻雀放浪記」で脚光を浴び、麻雀ブームの火付けとなりました。
2.本書;アウトローの道を進んだ色川氏のエッセーです。「1.“さて、なにから”の章」~「55.“おしまいに”の章」までの55章構成です。若者向け人生論を説いています。勝負師らしく、著名な人生論にはない言霊の数々に共感します。「もう手おくれかな」「まず負け星から」・・・。
3.個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
(1)『“学歴というもの”の章』より、「昔だったら、手に職をつけにくい条件の者が必死で勉強したんだけどね。今は皆、免状を取ろうとするね。・・学歴を得たからって、それで終わりじゃないんだ。学歴はパスポーなだけで、入り口を入って、実生活は別にあるわけだから、学歴さえあれば人間が空っぽでいいというものでもない」
●感想⇒確かに、猫も杓子も大学進学する時代です。大卒でなければ希望の職に就けない人、取り敢えず進学する人もいて、動機は人それぞれでしょう。高校生では、世の中が十分に見えていないので、止むを得ないと思います。問題は入学してからです。充電期間として、勉学は言うに及ばず、部活やアルバイトで人間修養するべきです。読書もいいでしょう。親は学資を出すのは良いとして、遊びの為の車を与える等は言語道断。若い頃に、何らかの挫折を味わう事も場合によっては必要です。某メーカーでの話です。職場の新人を現場応援に出したそうです。二日程して、応援先の責任者から連絡があり、「連れて帰ってくれ」と。理由を聞くと、「仕事が出来ない事を言っているのではない。現場の若手に学歴差別的発言をした」と言います。若手に仕事を教えて貰っている時に、「僕は、(大卒で)こんな仕事(現場仕事)をする為に入社したのではない」と。著者が言うような「学歴さえあれば人間が空っぽでいいというものでもない」の事例です。本人は親の庇護の下で、叱られた事もなく、苦労知らずに育ってきたのでしょう。プライドが高過ぎるのです。成人の性根を直すことは難しく、三つ子の魂百まで。
(2)『“嫁に行った晩”の章』より、「一番大切なのは、生地がずるくないこと。これから成人しようという人たち、まず要領だ、なんて思ったら、それははじめからマイナー指向になっちゃってるんだよ。まず、誠意だ。これが正攻法だ。そうして誠意や優しさや一本気な善意がスケールにつながるんだ。だから、人格形成期に、まずスケールを大きくしていくことを考えよう」
●感想⇒要領が良いという事は、悪い事ではありません。しかし、要領だけで世渡りは出来ません。要領だけの人間に、重要な仕事を任せられないと思います。そういう人は、得てして仕事をなめてかかり、雑になります。自信過剰なのです。鈍間でも愚直に、正直な人の方が信頼できます。また、若い時は失敗を恐れずに、何事も果敢に挑戦してほしいと思います。他人を見る眼を持った人は必ずいます。豊田佐吉の名言、「障子を開けてみよ、外は広いぞ」。
(3)『“球威をつける法”の章』より、「友人は、障害児という、自分の外の、しかし身近なものを、生き方の軸にしている。俺は、小さい頃の感性、というか、思考の癖を、自分のモラルのようなものに置き換えて、やっぱりそのことが生き方の軸になっている。・・人間は、結局、ここだけは死んでも譲れないぞ、という線を守っていくしかないんだ。その、ここだけは、ゆずれないぞ、という線を、いいかえれば、自分の生き方の軸を、なるべく早く造れるといいんだがな」
●感想⇒“軸”は難しく考えないで、何でもよいと思います。著書では、「障害児を抱えた親が、何よりも長生きをポイントに置くようになった」と言います。子供を守る事が生き甲斐なのです。気の毒な人生と思う人がいるかもしれません。私には真似る事の難しい、大変立派な軸と思います。「お前の軸は何か」と問われれば、「事実の前には謙虚にありたい、嘘をつかない事」で、キーワードは“誠実と感謝”です。十分には実践出来ていませんが、今後も行動を律したいと考えます。
4.まとめ;色川氏は、“はじめに”で、「私は不良少年の出で、どこから見ても劣等生です」「この本も、学校の成績でいえば十番以内のエリートよりも、それ以下の成績の若者を念頭において記しだしました」「思想めいた、或いは道徳めいたことの示唆がこの本に欠落しているという御批判もありましょう」「この世の原理原則、不確実でないと思える部分については、一生懸命に記さなければならない」と書いています。わたしの読後感は、『①若者全員と子育て中の母親にも読んでもらたい ②道徳めいた本を凌駕する人生訓の数々 ③物事の原理原則を逸脱してはいけない』です。机上の理論ではなく経験に裏打ちされた本書は、自己啓発本にはない、思いやりと優しさがあります。某新聞のコラムの一節にありました。「自分に嫌気が差した時に決まって手に取る本(うらおもて人生録)。毎度すがるような思いでこの本を開く。確実にこの本は新しい一歩を踏み出す力を与えてくれる」。( 以 上 )
★明けましておめでとうございます。昨年は、皆様に“いいね”や“コメント”を頂き、有難うございました。このレビューが私の書初めです。本年もよろしくお願い致します。続きを読む投稿日:2022.01.03
著者は、阿佐田哲也名義の『麻雀放浪記』が有名で、"ギャンブラー"という負のイメージが私には障壁でした。そう、過去形です。
なぜ本書を読まれた方々が、こぞって「永久保存版」「座右の書」「生涯大切にし…たい一冊」などと表明するのか‥、確かめるべく手にしました。
結論から述べます。本書は、阿佐田哲也さんが本人名義で書いた素晴らしい一冊でした。今更の読了は遅きに失した感じですが、読んでよかったです。
色川さんは、戦後数年間、放浪と無頼、博打など、職を転々とアウトロー生活を送っていたそう。後にカタギとして生きると決心し、出版社に就職。最終的には作家になり、麻雀小説から直木賞作品、純文学まで幅広く執筆し、平成元年(1989)に60歳で逝去されました。
本書は、1983~1984年に毎日新聞日曜版に連載された著者唯一の全国紙連作作品だそうで、1984年の刊行となっています。
自称劣等生の著者が、悩める学生たちに向けた、劣等生がよりよく生きるための指南書と言ってよいでしょう。ただし、指南と言っても生きるための技術より、ものの考え方や進むべき方向を導くヒント満載の書かな。"俺流セオリー"です。
若者が陥りがちな悩みを細かく55に章立てて、語りかける口調の文体がとても優しさにあふれています。とにかく独特の言い回し、言葉も平易で、嘘や偽善が微塵も感じられません。説教臭さがなく、不器用ながらすーっと心に沁みてくるメッセージです。なにしろ強烈な実体験に基づいてますから‥。
大人が読んでも唸らされ腑に落ちる、どんな世界でも通用するヒント満載の書でした。折々に読み返したい気持ちがよく分かりました。40年前の書という古さを感じさせない、まさに発掘本でした。続きを読む投稿日:2024.04.04
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