まともな家の子供はいない
津村記久子(著)
/ちくま文庫
作品情報
気分屋で無気力な父親が、セキコは大嫌いだった。彼がいる家にはいたくない。塾の宿題は重く、母親はうざく、妹はテキトー。1週間以上ある長い盆休みをいったいどう過ごせばいいのか。怒れる中学3年生のひと夏を描く表題作のほか、セキコの同級生いつみの物語「サバイブ」を収録。14歳の目から見た不穏な日常から、大人と子供それぞれの事情と心情が浮かび上がる。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- まともな家の子供はいない
- 著者
- 津村記久子
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま文庫
- 書籍発売日
- 2016.03.10
- Reader Store発売日
- 2017.09.22
- ファイルサイズ
- 0.2MB
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.3 (19件のレビュー)
-
なにをもって「まとも」というのか。
誰かを「まともじゃない」と言い切る津村さんの表現力は潔くて、わたしは誰かをまともじゃないと言い切ってしまうことはその人を否定するように感じるから、思っても言わない…ようにしてしまうけれど、はっきりと言い切るこの潔さ。強いなと思った。
もし自分がこの作品を出版する立場だとして、わたしはどこかで「もしまともじゃない側の人が目にしたらどんな風に思うだろう」とか思ってしまって、このタイトルをつけることに戸惑いを感じてしまうだろう。
それは優しさとかそういう綺麗なものではなく、単純に自分が「まともじゃない人」に対して持っている差別意識だったり、自分の中にある「他人から見た自分」を捨てきれない自身の弱さなんだろう。ただただ怖いだけなんだ。見えない何かに、脅えているだけ。
たしかにこの作品に出てくる親たちはみんなまともじゃない。その状況の中で精一杯生きている人間だ。
一方で子どもにとって、家族は子どもが最初に触れる社会であるし、親は最初に触れる大人の像となる。徐々に関わる社会が広くなるにつれ、自分の家族が他と違うことや、どこかおかしいことにも気付きはじめる。特に思春期は、ありたい自分と今の自分との間でぐらんぐらんと揺れ動く。親なんて完璧じゃないのに、触れていく大人を、親と比べたりして苦しくなる。なんで自分の親はこうじゃないんだろうって。
だから、セキコは「まともな家」で暮らしていそうな、例えば室田のことを好きじゃない、と思う。すぐに家に帰ることができる大和田のことも気に食わない。まともな母親ではないナガヨシは圧倒的にセキコの味方で、一方で家にいたくないセキコにとって、ずっと家にいるクレは家にいられて羨ましい、と思う。
でもじゃあ、室田の家がまともかと言われたらそうじゃない。大和田もずっと家にいたわけじゃない。みんな、それなりに自分の居場所を探すことや、自分を守ることに必死なのだ。
ナガヨシの独特なキャラクターとその存在感、クレの包容力、室田と関わり、その全てがセキコの心の中に積み重なって、セキコは自身の家族と向き合っていく。
そして、もう一つ収録されている「サバイブ」では室田を中心に世界が描かれる。室田の世界もまた、そう簡単ではない。子どもの目線から見た大人の恋愛、という珍しい視点。
大人になって気が付く。何が「まとも」かどうかなんてわからない。
長く一緒に生活していれば大人も子どももいろいろなことがあって当然だし、みんな外から見れば「まとも」に見えるように、なんてことないように振る舞う。でも、みんなまともじゃない家族の中で、世界で生きている。
その中で、セリカのように楽なポジションを見つけられる子もいれば、セキコのようにどうしても親を受け入れられず、頑なに家を拒む子もいる。ナガヨシのように、上手に関わって、向き合っていく子もいる。
結局、「まとも」かどうかの判断なんて必要なくて、自分がその家族を通してどう向き合って、自分の人生にどう向き合っていくか、なんだと思う。でもそれが親や環境、その子の捉え方次第なんて、酷すぎるよな、と個人的には思う。人類みんなこんな十字架を背負っているなんて酷すぎるよ、神様。
淡々としつつも突き刺すような言葉で、心の機微を穿った津村さんの表現は、すごく好き。
そして、津村さんの作品に出てくる主人公は、いつも正義感が強い。わたしのなけなしの正義感が、彼女の作品に触れるたびに、敏感に反応する。続きを読む投稿日:2020.10.01
父親が«働かない»という状態の主人公のセキコ
もうすぐ受験なのに、こういう父親がいたらそりゃ、終始むかつくし家以外に居場所を求めてうろつくだろうなと思う
母親と妹が父親に対してそんなに怒っておらず、家…の中に味方がいない気がするのもまたしんどい
自分が思春期の頃の、何か分からないけどずっと何か思いつめたようにイラついていたのをまざまざと思い出した
この年代って、何だかずっとあらゆることに怒っているよな
それにしても、まともってなんだろうとずっと考えながら読んでいた
出てくる子どもたち、誰も彼も別にいわゆるまともな家は出てこないのだ
まともっていうのは何というかただの幻想で、何かあるのがフツーの家なのかもな
もう一つ、セキコと塾が同じの室田いつみを主人公にした「サバイブ」もヒリヒリしていてまさにいつみにとってのサバイブな話だった
これからお祈りに~でも思ったけど、津村先生はこの年代のどうにもならない怒りや鬱屈した感情を描き出すのがものすごくリアルで上手いなあと思う
津村先生の本は面白いな~続きを読む投稿日:2024.04.09
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。