【感想】また、桜の国で

須賀しのぶ / 祥伝社
(103件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
55
33
8
0
0
  • 何度も何度も、反芻し、かみしめる感動

    読んだ後、何度も何度も、情景を思い出し、言葉を思い出し、
    そして感動をかみしめました。

    第二次世界大戦時のポーランドを舞台にロシアの血をひく日本の外交官を主人公に話は展開します。

    「国を愛する心は、植えつけられるものでは断じてない。まして、他国や他の民族への憎悪を糧に培われるものではあってはならない」など、いつの時代にもつきささる言葉が随所にあります。
    登場人物のひとりひとりが、懸命に生きている様も胸を打ちます。
    「ポーランドから見る世界は、過酷かもしれないがきっと美しい」
    この言葉に込められた思いに考えをめぐらすと、もう、たまらないです。

    第二次世界大戦下のワルシャワの状況は想像するだに恐ろしいものですが、
    その中でこうして人が生きている姿を描いてくれた著者に私は感謝の念すら感じます。

    素晴らしい小説というのは、その作品だけではなく、そもそもの小説というものの可能性とすばらしさを
    教えてくれるものだということを、改めて『また、桜の国で』を読んで感じました。
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    投稿日:2017.02.24

  • 時代に翻弄されるポーランド、過酷な状況でも失わない人の絆

    第二次大戦勃発前後のポーランドを舞台に、日本人外務書記生が見る現実とそれに立ち向かう人々、それぞれの選択を描く長編小説です。

    初めて知るポーランドの歴史と日本との関係、当時の世界の趨勢、色々な読みどころがある中で最も心惹かれるのは、過酷な状況でも失わない人と人との固い絆です。表面的な違いさえ除けば同じ人間同士なんだ、と確信している人達がそこにはいたのです。

    世界が不寛容で分断的な道に進もうとしている今こそ、本書のような人間の根幹を知る機会が必要と感じました。
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    投稿日:2017.02.28

  • ポーランドと日本の美しくも悲しい物語

    美しい話だった。
    戦争の話だというのに、叙情的な文体と登場人物の清廉さに心が洗われる思いがした。
    第二次世界大戦下のポーランドを舞台に孤軍奮闘する日本人外交官たち。
    アウシュヴィッツ収容所ではなく、ワルシャワ蜂起を取り上げている点が斬新だ。
    女も子供も関係なく祖国を守るためにドイツ軍に立ち向かう市民。
    壮絶な戦闘の中、固い絆で結ばれた国籍も人種も違う3人の約束は果たせるのか?
    タイトルの言葉にジーンとくる。
    そしてポーランド出身のショパンの『革命のエチュード』が、今までとは全く違う印象で耳に響くことになるだろう。
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    投稿日:2017.05.17

ブクログレビュー

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  • あゆみ

    あゆみ

    ポーランドに連れて行ってほしいと思って読みはじめた。戦争の時に連れて行かれて、頭が疲れるほど、答えのでないことを考えた。読んで良かった。

    後半、たたみかけるような進み方は心を掴んで本から離れられなくなる。『革命前夜』の時も。

    人としての痛みを知るからこそ、同情でない形で人に寄り添えるのだなと感じた。
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    投稿日:2024.02.29

  • ともこ

    ともこ

    ウクライナを思った。

    他国をたいらげる相手としか見ない大国の傲慢を思った。海がなければ同じようにたいらげられる可能性が高い自分の国を思った。その場においてはきっと見て見ぬ振りをしてしまうだろう惨めな自分を思った。

    「人が人としての良心や信念に従ってしたことは、必ず相手の中に残って、倍になって戻ってくる」

    そんな素敵な関係が続けていければいいのに。
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    投稿日:2024.01.19

  • avec toto

    avec toto

     長編で、歴史が苦手な私には難しそうだとなかなか手が出なかったこの本、読み出せば直ぐに夢中になり、あっという間だった。
    学校の歴史の時間にその言葉が出てきたとだけは覚えている「ワルシャワ蜂起」。このワードにこんな大切な深い事実があったとは…。何も知らずにいたことに唖然とした。

    そして、よく耳にするショパンの『革命のエチュード』。ショパンがポーランドの人々にとってどれほど大切なのかも知ることができた。

    自国を、そして、外国を、今まで知らなかった歴史を少し知るだけでも見る目が、想いが変わってくる。ガラッと変わる価値観に、少し恐怖も感じる。それにしてもなんと上っ面の雰囲気だけで外国を見て、そして、生きてきたのだろうと情けなくなる。
    外交官の仕事や使命も学べた。

    一人一人の人間が、例え誠実で思いやりがあるものでも、国など、より大きなものに取り入れられると、跡形もなく消えてしまう。それは、日常、私たちが生活で経験する、会社だったり、学校だったり、その他諸々でも同じ。小さな単位だと家族もかもしれない。
    この物語は、それを消しさらず、一人一人が行った真心ある行動を残して伝える大切さを教えてくれる。

    読んで良かった。自国のことも、もっと知らなければいけないと痛感した。この本を読んで私が抱いた外国への憎悪や嫌悪と似たものを、日本にも向けられている事実が沢山あるだろうから。

    [国を愛する心は、上から植え付けられるものでは断じてない。まして、他国や他の民族への憎悪を糧に培われるものであってはならない]
    という言葉が、強く心に残っている。


    備忘録として…
    ○人が、人としての両親や信念に従ってした事は、必ず相手の中に残って、倍になって戻ってくるんだ。…
    僕たちは立場上、どうしても自国にとっての損得で行動を考えがちだが、あの時の子供たちの笑顔思い出すたびに、外交の本質はあそこにあるんじゃないかと思い直すんだ。(外交官織田の言葉)

    ○おまえがポーランドから見る世界は、過酷かもしれないが、きっと美しい。(棚倉慎の父の言葉)

    ○国を愛する心は、上から植え付けられるものでは断じてない。まして、他国や他の民族への憎悪を糧に培われるものであってはならない。人が持つあらゆる善き感情と同じように、思いやることから始まるのだ。そして、信頼と尊敬で、培われていくものなのだ。

    ○この戦いは、君たちの復讐心を満たすためでも、君たちが英雄になるためのものでもない。戦闘は無残なものだ。理念がどれほど崇高であろうが、実現するための戦闘は、ただただ残酷だ。そして、戦うことのみに、意味を見出すようになったら、それはもう破綻しているのだ。我々は常に、戦闘が終結した後のことを考えて行動しなければならない。君たちは自由のために見事に散るためにいるのではない。美しい最期を望むようになったら、それはもう、理想そのものを自ら投げ捨てたのと同じことなのだ。( ワルシャワ蜂起軍幹部イエジの言葉)
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    投稿日:2024.01.19

  • はく。

    はく。

    読んでいて胸が苦しくなる、訴えかけてくるものがあった。
    教科書には「ドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まる」としか記載されていない。その一文の後ろには夥しい数の犠牲と苦しみと怒りと叫びがあったんだろうと思わせる作品だった。

    スラブ系の日本人外交官
    ドイツ生まれのユダヤ人
    アメリカ国籍のポーランド人

    その3人が織りなす物語だからこそ、民族とは、国籍とは、外交とはと深く考えさせられた。

    外交とは人を信じるところから始まる。誰かに与えた無償の愛は必ず倍になって帰ってくる。

    その信念のもと駆け抜ける日本人外交官の真っ直ぐなストーリーです。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.31

  • かんかん

    かんかん

    「ポーランド侵攻」「ポーランド分割」「ワルシャワ蜂起」ー世界史では馴染みのある言葉だったが、本作によってその実態を知り戦慄を覚えた。
    教科書では単なる1ページだが、そこには当然その時代に生きた人々のリアルがある。それが“地獄”と呼ばざるを得ないものであったとしても、語り継がねばならぬことがある。そう感じさせる作品だった。続きを読む

    投稿日:2023.10.20

  • まいまゆ

    まいまゆ

    まるで当時のワルシャワにいたかのように錯覚させるほとの臨場感をもった文体は見事というほかありません。慎の苦悩、ヤンとレイとの運命の出会い。ポーランドの人々がこんなにも辛い歴史を生きてきたのだということを初めて知りました。人と人とが信頼し合うことが外交の一歩であるという言葉は、現代にも通じます。この世界から戦争がなくなること、平和に生きられることに改めて感謝の気持ちをもちました。続きを読む

    投稿日:2022.11.19

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